米田氏はまずグローバライズとローカライズという概念について解説。簡単に述べれば、グローバライズとは不特定多数の大勢に適応するような、人々が共感できる範囲を広げる作業であり、ローカライズとは逆に特定地域に合わせるような調整の事を指します。
端的な例として3枚のスライドが紹介されました。一枚目には「ASG MDR MKM」という文字。二枚目には「:D ・ワ・」という絵文字のような文字、三枚目には人々の笑顔が示されています。実はこれ、全て笑顔を表す表現です。日本のネット文化で浸透してきた「w」もそうですね。しかし我々の多くは一枚目は二枚目のスライドを理解できません。しかし三枚目は誰でも理解できます。
米田氏はこれを視力検査に例えました(ちなみに米国の視力検査は「C」ではなくアルファベットで行うそうです)。表情は誰でも見える大きな文字、絵文字は中くらいの文字、文字は小さな文字、見える人が限られます。
表情は世界共通で完全にグローバライズされた表現です。またその表情は人間だけに適応されるものではないと米田氏は言います。動物でも、例え無機物からも表情を見出してしまうのが人間だと言います(スライドを参照)。また、表情は先天的に獲得されるもので、子供であっても人の表情を理解します。世界に通じるコンテンツを作る上で、この表情という要素は十分活用すべきです。
一方で「外国人の笑いのポイントが分からない」というようなことはよく分かります。表情とは結果です。その表情に至る過程は文化的(ローカルな)ルールが支配しています。
例えばスライドで示された葬式の写真。これはマイケル・ジャクソンの葬式をある地域の住民が行ったものだそうですが、みんなが笑顔です。これはSecond Lineと呼ばれ、良い人が死んだら天国に行くはずだから、それは喜ばしいものとして理解されていて、ジャズで盛大に祝うという風習があるそうです。結果としての喜びは表情から読み取れますが、"葬式を祝う"という文化的な背景まで読み取ることはできません。ローカライズすべき点とそのまま使える点が混在しているということができます。
アメリカのアニメを見ると、キャラクターは非常にシンプルに描かれます。しかし表情を大きく動かし強い感情表現を行っている事が分かります。キャラクターの自然な演技が、リアルな造形ではなく、リアルな反応(表情)で表現されていることが分かります。そしてそれは我々日本人でも理解できるものです。
リアルな表情表現を実現するコストは低下をしています。近年ではフェイシャルモーションキャプチャーのコストも下がりつつあり、中にはウェブカムだけで実現するような技術もあります。不気味な谷という言葉でリアル過ぎるCGの不自然さが指摘される事もありますが、リアルな表情はこれを逃れる方法でもあります。
そして表情がリアルで豊かなキャラクターは親しみや理解、共感を受けやすいものでもあります。感情移入ができ、印象に残るキャラクターになります。例えばValveの『Half-Life』のAlyx Vanceは人気のキャラクターの常連です。最初からグローバライズされている表現できる表情を上手く活用していくことには大きな意味がありそうです。
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