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「ものを作らなソンやと思わへん?」宮本茂が語る次世代クリエイターへのメッセージ

次世代のクリエイターを刺激する目的で様々な分野のクリエイターを招いて実施されている「コ・フェスタPAO」。19日は任天堂の宮本茂氏と劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠氏と角田貴志氏の3人で「ものを作らなソンやと思わへん?」(命名は宮本氏)として実施されました。

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宮本氏とヨーロッパ企画の共通点は「競争をしない」というところにもありました。

「競争するより他と違うことを、というのはファミコンで学んだんです。ファミコンの能力はとても限られていて、そもそも競争ができないんです。でも制約があるからこそ練り込めて、密度を上げられるんです。でもハードの性能が上がると、ゲームが面白くないからといってどんどんネタを作る人が出てくるんです。物量でいくと人以上の事は簡単に出来そうだけど、ほんとはそうじゃないんです」(宮本氏)

「競争は一つの装置で、促進する装置になると思います。でも、他に無いものを作らないとしょうがなくて、世の中にもうあるものなら作らなくてもいいですよね。それはメンバーには常々言ってます。作品の数がとても増えてるので、コピーを作ってもしょうがないですから。手ごたえもないと思います」(上田氏)

さらに宮本氏は「新しいフィールドに乗り出した方が新しい事が見つかるんです。なぜかみんな食い荒らされて物量でいかないと勝てないしんどい分野に行くんです」とコメント。

これに対して角田氏は「京都で活動しているというのはあるかもしれませんね」と返答。上田氏も「東京でモノを作ると何もかもスケールが大きくなっていく気がします」との言葉。それを引き取って宮本氏は「任天堂が京都にあってほんとに良かったと思ってます。京都は東京に憧れがないんです。それが任天堂が東京、日本ローカルにならなかった理由かもしれません」と話していました。


ちなみに、ヨーロッパ企画では「舞台に上がってないものを舞台に上げたい」(上田氏)ということで、舞台をゲームのステージのように見立てたり、同時多発的に何かを起こしたりなどゲームをモチーフにすることもあるそうです。「他のジャンルに触れることで、これまでの舞台の文法では出来なかった事が出来るようになる」(上田氏)とのことで、こうした姿勢も体重計をゲームにしたりゲームの新たな用法を考える宮本氏と通じるところがありそうです。

■ヨーロッパ企画の作った『うごメモ』を披露

ここからは二人が作った『うごメモ』の作品が披露されました。「ウケなかったら怖い」ということで5作品も作ってきた二人。それぞれ観賞しながら宮本氏の感想を伺いました。ひたすらト音記号(楽譜)についてのトークの妙で笑わせる「ト音記号」、ホラーに向いているのではないかという事から「トイレ」、メモの選択画面を使って、1コマ目に(1)(2)(3)のように数字を振って選択させていく「うごメモゲームブック」、画面表示に合わせて指を動かしていく「ツイスターゲーム」、そして一部の場面を抜かした状態で他人に描かせてみるという「うごメモ緊急企画 無事故で横断」の5つです。

少ない素材で作られた「ト音記号」といううごメモ楽譜を前に二人がト音記号とはどんなものかと議論しますうごメモの少ない容量へのチャレンジです
トイレはホラーテキストだけで長時間の作品を実現しました自分しかいない家に物音がして怖い・・・というお話
うごメモをゲームブックに指示された数字のメモを追っていき遊ぶハッピーエンドはなかなか難しかったよう


宮本氏は特に最後のアイデアに感心した様子。「うごメモ緊急企画 無事故で横断」は横断歩道を渡ろうとする歩行者がクルマに轢かれる寸前まで描かれ、空白があり、どうやら無事に渡りきったところから再開されるというもの。劇団の他のスタッフに渡して、「どうやって無事に渡ったか」を描かせます。するとなかなか良い回答が出来上がります。「誰もが"ここを作りたい"と思うようなところまでお膳立てしてあげる、これは本当はやりたかったんです」と宮本氏も感服のようでした。

劇団のみんなに続きを書いてもらおうというもの横断歩道でひかれないように・・・すると誰でも作れちゃいます


■ヨーロッパ企画から宮本氏への質問

最初の質問は「マリオで最初にマリオを右に向けて左端に置くことで"右に進むゲームだ"ということを認識させたという話がありますが、他にもそうしたことはありますか?」というもの。宮本氏の答えは「そういうことを考えるのが凄く好きなので沢山ある」ということでしたが興味深かったのは、とにかく徹底するということ。右に行けばゴールという基本は裏切りません。最後のクッパも、とにかくやり過ごして一番右にある斧を手にすればエンディングです。「シリーズが進んで後ろにも戻れるようになると、そっちにも人はゴールを置きたがる。でもしない」

また、宮本氏はユーザー(観客)との対話の重要性を説きます。「ユーザーからの期待にこたえながら、どこかで少し裏切って、共感を積み上げていくんです。ゲームはいつでも途中で辞められるのでユーザーと共感を高めるのはとても大事です」。宮本氏は演劇での観客との対話にも関心し興味を持っているようでした。

続いての質問は「アイデアは一人で?」ということ。宮本氏が言うのは、割と話しをするけど、決める時は一人、ということです。「プレストはいいけど、大勢の中に絶対仕上げたいという執念を持つ人間がいないと上手くいかないし、面白いものは出来ない」と言います。

続いては「制作が暗礁に乗り上げたときどうする?」という話ですが、宮本氏は「物凄く上手くいったゲームでもその8ヵ月前は大混乱というのはしょっちゅう」と平気な顔。具体的な解法としては、「平凡なアイデアで制作をスタートすることはない」ので、全ての要素を分解して組み直して、最初の面白さに立ち返るそうです。週末に方法が浮かぶ事も多いそうで月曜日の朝に「どうして今まで思いつかなかったんだ!」という風な感じで現れる事もしょっちゅうだとか。

若いころの宮本氏スーパーファミコン頃でしょうか最近の宮本氏。人に歴史あり


最後に宮本氏はゲームの歴史を振り返りながら、コンピューターでインタラクティブな遊びが出来るようになった時の衝撃を回想します「今日のような未来は想像しなかったけど、物凄い時代が来たと」。そして30年が経ち、今なお作るということに意欲を隠しません。「ゲームの売上がどうこう言われますが全然関係ないです。インタラクティブなものを作れる人にはまだまだすべき仕事があります。エンターテイメントだけでなく、ゲームのノウハウはまだまだ活かせる場所があります。例えばNASAのような場所でもゲームがお手伝いができることがあるかもしれません」

サービスカット楽屋へ戻るところものを作らなソンやと思わへん?
《土本学》
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