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【CEDEC 2010】スクウェア・エニックス「はじめての日米共同開発」、日本人から見たアメリカの開発手法

ゲームビジネス 開発

【CEDEC 2010】スクウェア・エニックス「はじめての日米共同開発」、日本人から見たアメリカの開発手法
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昨今では「アメリカの開発手法」についてニュースや講演で見聞きする機会は増えましたが、日本人の語る現場の「体験談」は多くありません。

CEDEC初日に開催されたセッション「はじめての日米共同開発」では、アメリカのとあるスタジオで現地スタッフと肩を並べてタイトルを共同開発しているスクウェア・エニックスの塩川洋介氏と松澤雄生氏が、1年半前から進行中のプロジェクトでの経験をもとに「日本人から見たアメリカの開発手法」の貴重な体験談を披露してくれました。



最初に塩川氏はプロジェクトが発足した経緯を「北米の開発が今ほどは注目されていなかった 2年前、1か月で 100本の海外ゲームを遊んでレポートする仕事があり、その後和田社長と食事している際に話題にのぼったことがきっかけだった」と述べ、「特別英語が得意だから」などの理由で選ばれたわけではなかったことを明しました。

発足当時、塩川さんたちの想像する北米開発は、リアルなものしか受け入れてもらえない「リアル志向」で、何もかもが迅速に決まっていく「トップダウン意思決定」式の、充実した資料を効率よく揃えた「ドキュメント重視」の開発というものだったそうです。しかしいざ現地で動き出してみると、その想像は全く違ったそうです。

まずユーザーがリアルさを求めていると考えた塩川さんは、ファンタジーものだった開発タイトルの中でリアルさを成立させるために何をしたらよいか大変思い悩んだそうです。そして、試行錯誤を繰り返してやっと現地スタッフに提示したところ、返ってきたフィードバックは「地味」、「売れるとは思えない」という辛らつなもの。そこでファンタジー色を強くして再度提示したところ、今度は「派手だが意味不明だ」、「北米ユーザーのことを全然わかってない」とまた厳しいコメント。そうした経験を超えて塩川さんが辿り着いた答えが「ビリーバブル」というキーワードだったそうです。

ここでの「ビリーバブル」とは「信じられるかどうか」、つまり「説得力」だ、と塩川さんは説きます。例えば「洋ゲー主人公の多くがオッサン」になる理由も、「(ゲームの設定として存在する)困難をクリアする主人公」がどうしたらビリーバブルになるかを突き詰めていった結果ではないか?あるいは「オブジェクトが壊せる動かせる」というのも、ゲーム世界をビリーバブルにするための処置ではないか?のように、この視点で北米産ゲームを見てみると、様々なことが腑に落ちると述べました。

つまり、上の例では「ファンタジー」は「リアルでない」からだめだったのではなく、「ビリーバブルでなかった」からだめだったのだと気づいたのだそうです。

ビリーバブルについては、後の Q&A セッションでも「奇抜なアイデアをビリーバブルにしようとすると奇抜さが失われるのではないでしょうか?」という質問が挙げられましたが、塩川さんは『Fallout3』のヌカコーラを例に挙げ、「飲むと放射能が体に取り込まれる核で汚染されたコーラ」という奇抜な設定でも、ゲーム世界全体を通じて説得力があるためビリーバブルで、だからといって奇抜さも失われないのです、とも回答しています。

また意思決定のプロセスについても、当初想像していたトップダウン意思決定ではなかったといいます。

北米のスタッフは「みんなで決める」スタイルなのだそうです。ここでキーワードとして掲げられたのが「空気を読む」というものでした。例えばコンセプトアートをミーティングで披露すると、四方八方からコメントが飛んでくるものの、いつかチームの空気が「これで行こう」となる瞬間があるとか。こういう時はリアクションが大きく、皆が「cool!」「awesome!」「hot stuff!」と声をあげるそうです、また、これは逆に言えばそういう空気になるまではものが決まることはなく、強権発動することもないそうです。

スケジュールについては後の Q&A セッションで「空気を読んだ結果スケジュールが遅れてしまうことは?」という質問がありました。この質問に対し塩川さんは「たとえばアートディレクターはスケジュールを管理しておらずスケジュール管理は別の人間が担当しているため、両社の引っ張り合いでなんとかスケジュールは守られていく」と回答しています。

ビリーバブル、空気を読むに続く、ドキュメントのキーワードは「(キャラクター)バイブル」でした。



松澤さんはこれを「想像以上に充実している」と評しましたが、一方で予想に反していた部分もあったといいます。

それはアートを描き始める前にドキュメントを作ること。それも相当に細かく定義されるもので、「角を描くときに使っても良い線」と「悪い線」まで決めてからコンセプトアートを描き始める徹底ぶりだそうです。

ただ、そのおかげで全員がぶれることなくプロジェクトを進められ、松澤さんも「今となっては作ってよかった、よい体験ができた」と振り返ります。

最後にお二人は「もしも今日本のプロジェクトに所属していたら北米での経験をどう活かすか?」と自問する形で講演を締めくくりました。以下は、講演者の答えです。

「日本の独創性は素晴らしい、ただビリーバブルでないために北米のオーディエンスに受け入れられていない。ビリーバビリティを出しながら日本の独走性を発揮していく方法を模索したい」「そのためには、プロジェクトのメンバー全員でビリーバビリティの感覚を掴むことを目指していく」「何がビリーバブルなのか?それを具体的な要素を見ながらみんなで議論し、バイブルを作る」「日本の現場でこの経験をどうやって活かしていくか、とても興味があります」

両セッションが非常に有益なものであったことは論を待たないところですが、直前の益永さんのセッションで挙げられていた問題点の多くを「同じ場所で密度の濃いコミュニケーションを取りながら一緒に仕事する」ことで回避できている点も、聴講者にとって何が大切なのかを強く示唆するかたちになったのではないでしょうか。
《矢澤竜太》

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