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来場者は今年も1万。「地方の力」を改めて示した太秦戦国祭りにみるコンテンツ展示会のこれから・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第3回

ゲームビジネス 市場

来場者は今年も1万。「地方の力」を改めて示した太秦戦国祭りにみるコンテンツ展示会のこれから
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戦国コンテンツで湧きに沸いた東映太秦映画村。お隣の任天堂ゲームイベントとの事実上の併催は確実にシナジー効果を発揮

太秦戦国祭り公式キャラクターのうじゅと太秦東映映画村のマスコットキャラクター、カチン太。うじゅは、歴ドルの小日向えりさんが演じてくれた


京都、東映太秦映画村では10月3日〜4日に、ゲーム、アニメ、時代劇などが一同に集まった歴史創作をテーマとしたイベント「太秦戦国祭り2009力~The Force~」が 開催されました。和装・戦国モノのコスプレイヤーと、本格的な甲冑武者が同じ場所を跋扈するという普段 あまり見かけない光景が広がるこのイベントもなんと今回で4回目。もはや京都の秋に欠かせないイベントにまで定着しつつあります。

KYOTO Cross Media Experience 2009の一イベントとして開催された今年のイベントは、任天堂ゲームイベントを同時期の隣接地に迎えたこともあり、これまで以上に賑わった感があります。任天堂ゲームイベントも2日間で1万人が来場。中には双方のイベントに参加した人もいるかもしれませんが。これら二つのイベントにおいて、2日間に延べ2万人ものひとが参加したことになります。では、今年もゲーム関連のイベント内容を中心にその内容を紹介していきます。

今年出展していたゲームブースは、カプコンとアクワイヤの2社。カプコンのブースでは、『戦国BASARA 3』の最新映像が公開され、多くの人たちから注目を浴びていました。ただ同時にこれまで開発したシリーズの映像も放映されていたところがミソ。おそらく出展側もこの場ではじめて『戦国BASARA』シリーズを目にするひとのことを想定していたのでしょう。

事実、今回筆者が遭遇したのはマレーシアから観光で来日していたカップル。特にBASARAファンだったというわけではなく「キャラがCool」だったから記念撮影をした、とのこと。このように既存のファン以外の方々が初めてゲームに触れファンになる絶好の機会が与えられるのも太秦戦国祭りならでは。昨年と同様、親子連れの方々も多く、東京ゲームショーなどとは違った層のひとたちに新作ゲームを披露出来る格好の機会となりました。
一方、アクワイヤブースはMMORPG『ZIPANG(仮)』をプレイエブル出展。来場者は実際に床に座りながらマウスを操ってプレイするという実にマッタリした雰囲気。コンセプトアートも多数展示されていましたがその雰囲気はまさにファンタジーと戦国を融合したという感じ。この後の展開に俄然注目です。

この他にもスクウェアエニックスは大規模なブースで出展。「戦国」、「三国志」、「幕末」;などのアジアンファンタジーをテーマにしたコミック誌「ガンガン戦IXA」(以下、「IXA」)を11月27日に創刊するということで、これまでガンガンで連載していた同テーマの作品の原画展示や、「IXA」の見本誌の配布、声優中井和哉氏の解説による「IXA」紹介映像の大判振る舞いといった感がありました。一方、コミックバンチもブース出展。『花の慶次~雲のかなたに~』や、『義風堂々!! 直江兼続-前田慶次月語り-』の他に『伊達の鬼軍師 片倉小十郎』、『天翔の龍馬』など09年より新たに連載された戦国、幕末関係の作品も展示。更にブース内には、直江兼続の甲冑を展示するなどこちらも本格的なつくりでした。アニメで出展していたのがアニプレックス『刀語』。第3クールで話題となっていた『化物語』の原作者、西尾維新作品のアニメ化の第二弾ということもあり多くの入場者がブース内の特別映像に見入っていました。 いわゆる[歴ドルといわれる小日向えりさんも「上洛」。初日は、太秦戦国祭り公式キャラクターうじゅのコスプレで、翌日はお市の方のコスプレで登場し、場内を大いに盛り上げました。

■ゲーム関連シンポジウムで最新動向を理解する

一方、ゲーム関連のトークイベントやシンポジウムも目白押し。初日のスペシャルイベントは、戦国無双トークショーが飾りました。真田幸村役の草尾 氏と石田三成役の竹本英史氏が参加したこと、当日朝に整理券を配布する方式だったことなどから、太秦戦国祭りの初日は朝早くから長蛇の列。トークショー自体も、自身の役作りについて語ったり、クイズに参加するだけでなく、CD「戦国無双 百花饗演」のワンシーンを実演したり、「仰ぎて天に愧じず」を直江兼続役の高塚正也氏の歌声を交えて披露するほどのサービス振り。無双ファンは大いに盛り上がりました。

翌日の戦国BASARA3トークショーでは徳川家康役の大川透氏が登壇。小林裕幸プロデューサーとともに『戦国BASARA3』について語りました。キャラクターの性格や、それぞれの固有技などを示しつつ、本作で新たに登場した成長後の徳川家康と石田三成について言及。武器を捨て、素手で戦う家康と、居合い斬りで攻撃する双方を比較しつつ、「成長した家康」と「復讐の鬼と化した三成」がそれぞれのコンセプトであることを明かしました。家康役を演じる大川氏は、「CDドラマ版では、これからどうなるんだろうと不安だった」とコメントし観客の笑いを誘いながら、「疲れると大人になってしまうので、勢いを意識して演じ続けることで少年らしさを表現した」と少年時代の家康を演じる苦労を語ったうえで、「成長した家康を演じるうえでは少年役のときとは別人にならないように配慮した」と同じキャラクターながら大きな成長を見せた家康を演じるうえでの工夫する点を語りました。また途中、T.M.Revolutionこと西川貴教氏がビデオ出演。『戦国BASARA』シリーズがここまで大きくなったことを祝しつつ、オープニングテーマ“Naked arms”に対する意気込みを語り、会場を沸かしました。

そして、最後は戦国コンテンツアカデミックラウンドテーブルです。ここでは、『戦国BASARA』シリーズプロデューサーの小林裕幸氏に加え、大河ドラマ「天地人」制作統括の内藤愼介氏、映画「火天の城」の田中光敏監督、「花の慶次-雲のかなたに-」、「義風堂々!!直江兼続-前田慶次月語り-」の原作者堀江信彦氏が登壇。それぞれの視点から戦国コンテンツについて言及しました。内藤氏はテロップなどが流れない「天地人」オープニングのスペシャルバージョンを公開。撮影時の裏話などを語りました。驚きだったのが、田園から望んだ朝日のシーン。「一見、CGに見えるかもしれないですがこれ、すべて実写なんです」と内藤氏。このシーンのために撮影スタッフが1週間もかけて撮影したとのこと。この他に八海山の山頂から望む妻夫木聡氏演ずる直江兼続のシーンも、妻夫木氏に実際に山頂に立ってもらい、空撮でとられたことを明らかんしました。また、合戦シーンは、10万人という大軍が戦ったらどうなるかを見せたいという思いからあえてCGを入れたとのことで、それぞれのシーンが職人技によって丁寧に描かれていたことが明らかになりました。敗者の視点から戦国時代を描くことで、往々にして勝者の視点から描かれる歴史観に別の視点を示したかったと「天地人」制作の意図について触れながら「大河ドラマというのは、何がよくて何が悪いというのではなく、人の思いを感じて生きている人たちをありのままに描くことで、より多くの人たちに歴史を好きになってもらうために作られるべきだ」と自分の思いを語りました。

一方、「火天の城」の田中光敏監督は、同作品で「伝説の中にいる弱者の存在」について言及したかったと、作品のテーマについて語りました。田中監督は「火天の城」の各シーンの中から、岡部又右衛門の指図(図面)争いにおける命がけの取り組み、天下一の親柱を得たいという岡部の熱い思いに自らの命を賭して応えた緒方直人演じる木曾の杣頭、甚兵衛、そして、城造りを支えた無数の民衆の力を示しました。総じて、破壊の時代の中で何かを生み出した人たちの力、数多くの人が時代の流れの中で名を成す中で、本当に名を残すべき人たちの姿を映画で示すことに喜びを感じたと自身の作品に対する思いを語りました。

コミックからは、現在「義風堂々!! 直江兼続-前田慶次月語り-」(以下、「義風堂々」)を連載中の堀江信彦氏が昨年に引き続き登壇。原作者としての思いを語りました。堀江氏は少年ジャンプ時代掲げたテーマである友情・努力・勝利の「勝利」はトーナメントで優勝するといったような勝利ではなく、ひとそれぞれの勝利感を描こうとしていたと当時の思いを述懐しました。100人戦って、1番となったひとりの勝利を描くのではなく、残りの99人それぞれの勝利感を描くことが重要としながら、その発想を「負けても美しいものがある」と集約して示しました。これを実践した証左として「北斗の拳」におけるラオウやシンを挙げ、それぞれにおいて格好良いシーンを用意した点を挙げました。同様に、前田慶次や、直江兼続も歴史上は敗者でありながら、彼らがここまで多くの人たちから支持を受けるのは「引き際の美しさ」であると独自の分析を示しました。その後、堀江氏は、「引き際の美しさ」を追及する人たちの強さについて改めて言及。権力に固執することなく「綺麗な引き際」に注力するからこそ捨て身で物事に取り組めるのだとしました。また、直江兼続が担っていた執政という役割は上司の顔色ばかりを伺っていては決して務まることがなかったとし、前田慶次と同様に、直江兼続も傾奇者だったと独自の視点で同氏を分析しました。その意識が現在原作を執筆している、「義風堂々!!」にも反映されているとのことでした。ただ、傾奇者には上無しという考え方があることから、主人に仕える直江兼続は完全な傾き者にはなれなかったとし、だからこそ、兼続は前田慶次に対して友情をはぐくむことが出来たとしました。

最後に小林裕幸プロデューサーが登壇。『戦国BASARA』シリーズで描かれたJapanese Coolについて語りました。基本的な内容は以前Inside誌で紹介した立命館大学での講演の中の『戦国BASARA』シリーズについて言及した部分(http://www.inside-games.jp/article/2009/05/01/35036.html)を踏襲していたわけですが、今回改めて加えられたのが、複数の企業とのコラボレーションによる作品の広がりについて。プロダクション IGによるアニメ版「戦国BASARA」の映像を紹介したり、白石市とのコラボレーションなどの例を挙げながら、ゲーム開発はどれだけ頑張っても1年はかかってしまうことから、新作が出るまでに如何にシリーズを盛り上げるかを考えることも重要であるとしました。これまでも、各種グッズや、バサラ祭、舞台からツアーと様々なイベントを推進しているのもファンの皆さんに喜んでもらうためとしました。

■ゲーム、コミック、映画、大河ドラマといったそれぞれの取り組みがシナジー効果を発揮

小林裕幸プロデューサー田中光敏監督内藤愼介制作統括氏
 

後半のパネルディスカッションでは、「戦国時代とCool Japan」をテーマとして前述の登壇者より話を伺いました。昨今の戦国ブームについては、「全国を周りながら、『戦国BASARA』シリーズファンのおかげでブームが起きていることを実感した」と小林氏。「ファンのひとたちが武将を好きになって、ゆかりの地を巡ること」でニュースにも取り上げられるような現象にまで成長したとし、ファンに対して改めて感謝の意を示しました。一方、堀江氏は、「『戦国BASARA』シリーズを行くところまで行ってしまった作品」と評しながら、最近の歴史好きのひとたちは、戦国時代を様々な視点から見てもそれを許容出来る「知的な遊び」が出来るひとたちだと分析。『戦国BASARA』シリーズも、その知的な遊びの視点から評価されているのだとしました。この状況は、「花の慶次-雲のかなたに-」の連載を始めた時にように「歴史を別の視点から見てみると面白い」という提案をするに留めていた当時と、明らかに違ってきていると指摘。20年もの時代の変化を改めて強調しました。小林氏も「『戦国BASARA』シリーズのファンは歴史に詳しい。作っている僕らより詳しい部分があるが、そのうえでファンになってくれている。」と、堀江氏の意見に同調しました。一方、「ロケハンで現地を回ったうえで実感した地方の力は」という質問に対し、内藤氏は、新潟で上田衆の子孫に出会ったことについて言及。会津に移封した際、有事の際に備えて居残った子孫が戦国時代から現代まで自らの甲冑を受け継いできており、上杉を守るように代々伝えられてきた点に触れ、戦国時代が幻想でなく現代のひとたちの間にも息づいている事実について改めて触れました。

田中監督も、岡部又右衛門の子孫に会う機会があったことについて言及。当時から伝わった巻物がありそこには、安土城築城に関わる令状、そしてその前に、船大工とともに鉄甲船をつくった記録が残っているという事を知らされたとのことです。このようにゆかりの地を訪れる中で当時の様子が現代に脈々と伝わっていることが示されました。

最後にグローバル展開については、小林プロデューサーは、『戦国BASARA3』の欧米リリースに向けて、『Sengoku BASARA Samurai Heroes』というタイトル名で着々と準備を続けている事を明かし、ローカライズを進める上で武将名や、戦場名を変えずに、できる限りオリジナルに対して忠実に展開する予定であると明かしました。これについて堀江氏は「下手に媚びると見透かされる。むしろ日本で培われたコンテンツの良さを前面に示すほうがいい」と無理に欧米風にローカライズしてしまうことに警鐘を鳴らしました。なお、当日は「天地人」、「火天の城」ともに海外展開を進めていることが明らかになり、戦国ブームもまさにグローバルな社会現象になるのではという予感を示しながら本シンポジウムの幕が閉じられました。

以上、本稿ではゲームを中心に戦国時代や歴史をテーマにしたコンテンツの展示や作り手のシンポジウムを追いましたが、第1回目から太秦戦国祭りに企画する側の立場、参加者の様子を伺う立場から見てきて実感したのは、消費者にとって、各コンテンツジャンルに垣根は存在しないということです。戦国時代や、時代モノが好きな人たちにとっては、ゲーム、アニメ、テレビドラマ、映画、ケータイコンテンツといったジャンルに関わらずそこに体現されている世界感に魅了されているのです。これは、戦国時代のファンにとどまらず、あらゆるジャンルに言えると思います。ホラー、SF、恋愛モノ、そのどれをとっても「高い質」であれば顧客はついてくるのです。欧米のパブリッシャーの間では、決算説明会などで「メディア・コンバージェンス」という言葉が使われるようになりましたが、この戦国時代の活況はそれを追及するのは欧米のみらならず日本でも然りだと、改めて実感できるイベントでした。今後も太秦戦国祭りを続けていくことで、各コンテンツの領域を越えた建設的連携関係を想定した斬新な取り組みが生まれることを心から期待されるところです。
《中村彰憲》

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