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【GDC 2009】上田文人、須田剛一、エミル・パグリアルーロ(Fallout 3)・・・日米の著名開発者がゲームデザインを語った

ゲームビジネス その他

【GDC 2009】上田文人、須田剛一、エミル・パグリアルーロ(Fallout 3)・・・日米の著名開発者がゲームデザインを語った
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GDC3日目の25日(現地時間)、日米の著名開発者によるゲームデザインのパネルディスカッション“Evolving Game Design: Today and Tomorrow, Eastern and Western Game Design”(ゲームデザインの進化:今日と明日、西洋と東洋のゲームデザイン)が行われ、ストーリーゲームの企画と開発に関する議論が展開されました。

左からモデレーターのマーク・マクドナルド氏。エミル・パグリアルーロ氏。須田剛一氏。上田文人氏。


パネリストは『ICO』『ワンダと巨像』で著名なSCEJの上田文人氏。『キラー7』『ノーモアヒーローズ』を手がけたグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。そして『フォールアウト3』でリードゲームデザイナーを務めたベセスダ・ソフトワークスのエミル・パグリアルーロ氏の3名です。モデレーターは海外ゲームメディアの編集者を経て、現在はローカライズを手がける8-4のマーク・マクドナルド氏が担当しました。

グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。


はじめにゲームデザインのアプローチについて、須田氏はストーリーを考えてから、それをゲームに落とし込むというプロセスについて語りました。まず背景として映画や小説などの、他のエンターテイメントから受ける刺激があり、それらを糧として、誰も考えつかないような純度の高いストーリーを生み出すというわけです。

ベセスダ・ソフトワークスのエミル・パグリアルーロ氏。


エミル氏も須田氏の方法論に近いと語りました。ただし須田氏が基本的に一人でシナリオを書いているのに対して、エミル氏は開発チームのゲームデザイナーが分担でシナリオを作成し、最終的に自分が統括していると語りました。

SCEJ 上田文人氏。


これに対して上田氏は、まずゲーム内のさまざまなシーンを映像としてイメージし、それを絵コンテにする作業からはじめると語りました。次にデザイナーやアニメーターと、この絵コンテを映像にします。その上でプログラマーと共同で、実際のゲームに落とし込んでいくのです。

ただし、これらの映像は、もともとゲーム機で実現できるか否か考慮されていないため、実際の開発はさまざまな妥協や変更点の連続だといいます。ただし上田氏は、ある制約の中で、いかに良い物を作るかが楽しみでもあるので、こうした作業が苦労だとは思わないと語りました。

またストーリーゲームでつきものの「会話」という手法について、おもしろい違いが語られました。『ICO』『ワンダと巨像』では、ゲーム中にNPCとの会話メッセージがほとんど登場しません。一方で『フォールアウト3』では、大量のNPCと会話メッセージがある一方で、決められたストーリーは存在せず、プレイヤーのゲーム体験がそのまま物語となる構造をとっています。

『キラー7』『ノーモアヒーローズ』は会話については中間ですが、表層的なストーリーの背後に裏の物語が存在し、何度もプレイする過程で、それらに気づく仕掛けが散りばめられています。

これに対して上田氏は、自分が最も重用視しているのは、フィクションとしてのリアリティだと語りました。ゲーム中でNPCとの会話は、往々にしてプレイヤーに謎や手がかりを与える手段として描かれます。

そのためプレイヤーの求めに応じて、何度も同じ台詞を表示せざるを得ないなど、リアリティとして限界が生じます。であるならば、いっそのことNPCとの会話シーンをすべて削除しても、成立するようなゲーム内容にすればいい、というわけです。

このように、さまざまなアプローチがあることに対して、エミル氏は非常に刺激を受けたと語りました。エミル氏によると『フォールアウト3』のようなRPGは伝統的なコンピュータRPGがルーツにあるので、ユーザーも大量のNPCと会話メッセージを期待する傾向にあるが、固定観念にとらわれてはいけないとコメント。

NPCの会話や行動をよりリアルにするためにも、AIの進化が求められていると語りました。これに対して上田氏も、今後AIの進化でNPCを本当に生きているように描けるようになれば、大量のNPCが登場するゲームを作るかもしれないと語りました。

一方で3人のゲームはいずれも、仮想世界に浸らせるという共通点があります。これについては3人ともゲームデザインの方向性として「没入感」というキーワードを上げました。

須田氏は上田氏、エミル氏のゲームを共に没入感に優れた、雄弁なゲームだと評価した上で、映画「イグジステンス」で描かれた、脊髄にプラグを埋め込んで仮想世界にダイブするような、バーチャルリアリティによるゲーム体験が理想だとコメント。最終的にゲームは映画をこえる存在になるというビジョンを語りました。

これに対してエミル氏は、ゴーグルやグローブなどのガジェットを使わずに、プレイヤーに仮想体験が提供できるようなゲームの未来像を語りました。そのうえでNPCの描写をよりリアルにして、プレイヤーが現実世界と見間違うようなゲーム体験を提供したいとコメント。一つのストーリーにそってゲームが進むのではなく、ゲーム自体にストーリーを伝える力を持たせることに興味があると述べました。

一方で上田氏は、「今作っているゲームはまったく違うが」と前置きした後で、ゴーグルやヘッドマウントディスプレイを用いたゲーム体験に興味があると語りました。その上で自分の理想のゲームとは、仮想世界で少しの間、気晴らしをして、現実世界で生きる勇気をもらえるようなものだと語りました。

またアーケードゲームから始まった「ゲームオーバー」というルールを、うまくゲームシステムに組み込んで、ただ単にストレスとしての存在以上のものにしたい、というアイディアを語りました。

このほか会場からの「ゲームはアートか?」という質問に対して、上田氏は自分のゲームをそのように評価してもらえることは嬉しいが、自分は商業作品を作っているので、そのように見られるのは本意ではないとコメント。エミル氏はプレイヤーに喜ばれるものを作ることが第一で、ゲーム開発者はアートのことはあまり考える必要はないと語りました。一方で須田氏は「エンターテイメントの中でアートフォームをするのは挑戦的な行為」と語り、ゲームのブラウン管に光を照射する美しさは、芸術としても強い力を持っているとコメントしました。

3名の議論は、東西の違いを超えて、ストーリーゲームの未来に大きな可能性を示すキーワードで溢れていました。RPGやアドベンチャーといった既存の形式を超えて、プレイヤーにどのようなストーリー体験を提供できるかが鍵というわけです。ハードウェアの性能が確実に進化していく一方で、ゲーム開発者として、どのようなビジョンを指し示せるか。このことが、あらためて問われている時代だと、本パネルシンポジウムが指摘したように感じられました。

パネル終了後、4人で記念写真(左から上田氏・須田氏・パグリアルーロ氏・マクドナルド氏)
《小野憲史》

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