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【CEDEC 2008】Halo開発者が語るテクニカル・アーティストの重要性

ゲームの「絵作り」はデザイナーとプログラマーの共同作業などと言われますが、開発負荷の増加と共に、両者の橋渡しが重要になっています。デザイナーとプログラマーの資質を併せ持ち、ツールの開発やパイプラインの管理、最新技術の研究やシステムの開発などを担当するパートが鍵を握るようになってきたのです。しかし、日本では専門職種として確立しておらず、何でも屋や、時には雑用として認識されているケースもあります。

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ゲームの「絵作り」はデザイナーとプログラマーの共同作業などと言われますが、開発負荷の増加と共に、両者の橋渡しが重要になっています。デザイナーとプログラマーの資質を併せ持ち、ツールの開発やパイプラインの管理、最新技術の研究やシステムの開発などを担当するパートが鍵を握るようになってきたのです。しかし、日本では専門職種として確立しておらず、何でも屋や、時には雑用として認識されているケースもあります。

CEDEC2日目の海外セッションでは、バンジースタジオで「Halo3」の開発に携わり、社内でこの「橋渡し役」を牽引するスティーブ・セオドウ氏が登壇し、「Haloの開発:テクニカルアートの役割」と題して講演しました。セオドウ氏は同社での事例を紹介すると共に、肩書きでもある「テクニカル・アーティスト」の重要性について指摘し、業界内での役職の確立について訴えました。

セオドウ氏は過去にバルブで「Half-life」などの3Dアニメーターとして勤務しつつ、徐々にツールとパイプラインの開発に集中するようになりました。その後Red Game Tools、Zipper Interactiveを経てバンジースタジオに移籍し、テクニカルディレクターに就任。現在は「Halo」シリーズのアートパイプラインを監督しつつ、最新グラフィック技術のリサーチを行っています。

はじめにセオドウ氏は、199年の初代「Half-life」と2007年に発売されたPCゲーム「elements」では、モンスターのモデル制作で作業量が5倍も増加した点に触れ、Haloシリーズでも飛躍的に開発負荷が増大したことを説明しました。2001年の初代Haloでは常時35名、最大50名の体制で2年半かかりましたが、2007年のHalo3では常時100名、最大300名の体制で3年間と、約4.5倍にも増大したそうです。


Herf-lifeのハウンドアイは約300ポリゴンで作られていた

Elementsのハイブハウンドは約1100万ポリゴンで制作されている


このように現世代機では大量のアセットと開発人員を効率よく裁いて、最新技術をふんだんに採り入れたうえで、納期までに「おもしろいゲーム」を開発しなくてはなりません。いくら大作でも「二流ゲーム」では意味がないのです。そして、これを解決する手段としてテクニカル・アーティストの役割が重要になっていると解説しました。

セオドウ氏はテクニカル・アーティストを、デザイナーとエンジニアの「キメラ」のような物だと語ります。アーティストに対してはクリエイティブに必要な時間を与え、退屈な作業にかかる時間を削減すると共に、エンジニアに対しては各種エンジンの限界性能をテストしたり、デザイナーが使いやすいツールデザインの助言を行います。さらにプロデューサーに対しても、ツールやミドルウェアの予算交渉などを担当するのです。

■Haloシリーズと共に成長

もっともバンジー社内でも、テクニカル・アーティストが重要視されはじめたのは、ここ数年のことで、Halo2が分岐点だったといいます。Halo1では元々マック向けに制作されていたHaloを、Xboxに移行させて納期内に仕上げるのが最重要課題でしたが、開発パイプラインはシンプルでした。しかしデザイナーが手作業でアセットを管理しており、生産性を向上させるツールもなく、エンジニアによってパイプラインが規定されていました。



そのため、より大規模化したHalo2の開発に絶えきれず、初めてテクニカル・アーティスト部門が設立されました(これにはキャラクター・アニメーションの品質向上のため、Maxに加えてMayaを導入したことも遠因でした)。といっても当初はフルタイム専任者がプログラマー1名のみで、主な職務はキャラクターリグの作成や、シネマ向けのツール開発を通して、主にデザイナーの生産性を上げることでした。


Halo2で直面した問題の数々

テクニカル・アート部門が立ち上がった


これがHalo3では、Xbox360への移行に伴い、マルチスレッドやシェーダー、ライティング、フェイシャルなどの新技術に対応や、段違いに増加するデータ量、大規模化する開発体制への対応が必要でした。そこで、まず部署がマネージャーリグ担当者・Maxのスペシャリスト・プログラマー・ディレクターの5名に増強され、その下に必要に応じてプログラマーが各部門から借りてこられました。最終的にプログラマーの数は11〜12名にものぼったそうです。そして現在、テクニカルアート部門は開発チームのうち9%を占めるまでに拡大しました。


新世代機に移行したHalo3では様々な課題があった

テクニカル・アート部門が増強


セオドウ氏はこれに伴い、仕事の範囲も拡大したと言います。最も大きな違いは、デザイナーに加えてエンジニアのサポートも担当するようになったことでした。これにより両者の「橋渡し」を行うようになってきたです。その結果、今ではコンテンツパイプライン全体に対して責任を負うようになっているそうです。「これまでは(グラフィック)コンテンツを制作しない人が、パイプラインを作っていたので問題があった。それが今では、実際に制作する人がパイプラインを整備するようになってきている」(セオドウ氏)。

続いてセオドウ氏は、現在バンジーが抱えている問題と、その解決策について紹介しました。その1つが、アセットの増加に伴うファイル管理の問題です。今日のゲーム開発では、総データ容量は500GB以上、5万ファイル以上にものぼり、ファイル管理が困難になっています。重要なファイルを紛失する恐れや、属性を少し間違えただけでバグの温床になりかねません。さらに、この種のバグ解決には多大な時間がかかりがちです。

そこでiTunesのように、階層構造ではなくメタデータ検索が可能なアセット検索システム「バンジー・ライブラリアン」が開発されました。これによってデザイナーが必要とするファイルを、直感的に検索することが容易になったのです。ソースコントロールのチェックイン・チェックアウト機能もあります。「iTunesから多くのことを学んだ」とセオドウ氏は語ります。

このほかインポート・エクスポート向けのツール開発や、Max・Maya向けのスクリプト開発と、完成したスクリプトの自動配信など、さまざまな事例が語られました。セオドウ氏は、各種機能を追加され、統合化された3Dモデリングツールがゲーム開発における重要なプラットフォームになりつつあると語ります。そしてテクニカル・アーティストがデザイナーとエンジニアの「接着剤」になっていると、改めて言及しました。

■業界的な確立が重要

最後にテクニカル・アーティストの未来について語られました。セオドウ氏は、今後データ作成にプロシージャルが導入され、テクニカル・アーティストとしても、そちらの対応が迫られると予測します。群衆シミュレーションや、物理モデルと組み合わせた物理ベースアニメーション(Natural Motion)、プロシージャルアニメーション(ActorMachine)、プロシージャル・テクスチャー(Allegorithmic)などです。

ゲームの基本構造は「モニターに表示された絵が自由に動かせる」ことにあります。そのためデザイナーとエンジニアの接着剤であるテクニカル・アーティストが、いち早くこれらの最新技術をリサーチし、いかに開発パイプラインに統合していくかが、スタジオの技術力と成長に直結するというわけです。

その上で「コンピュータが芸術を生むのではなく、あくまで芸術家の道具にすぎない」と述べ、その最先端の領域に切り込んでいくのがテクニカル・アーティストだと解説。いつの日か、コンテクトリーダー(メインのアーティストや作曲家、ゲームデザイナーなど、コンテンツ作成の統括的ポジション)や、ストーリーテラーの分野にも、テクニカル・アーティストが必要とされる日がくるかもしれないと述べ、講演を締めくくりました。

このほか質疑応答で「テクニカル・アーティストを育成するには、どうしたらいいか」という質問に対して、セオドウ氏は「この役割を業界内で公式に認知させることが先決だ」と応えました。セオドウ氏はゲーム開発者向けの業界誌「ゲームディベロッパーズマガジン」にコラムを連載しており、ここでテクニカル・アーティストについての記事を書いたところ、大きな反響が寄せられたそうです。まず職分の定義付けが必要で、それに伴って求人も増加するという考えを示しました。

3Dゲームが主流となるにつれて、欧米で企画からレベルデザイナーという職分が生まれ、日本に伝播したのも記憶に新しいところです。一方で職分間の区切りを曖昧にして、柔軟性を持たせた開発体制を組むのが日本の長所であり、短所でもあります。前述の通りテクニカル・アーティスト的な役割は国内スタジオにも存在しますが、これがどのように専門化され、定義づけられていくか、注目していきたいところです。
《小野憲史》
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