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【GDC08】任天堂・青山敬氏が語る「Wiiウェアの意義」とは

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【GDC08】任天堂・青山敬氏が語る「Wiiウェアの意義」とは
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米サンフランシスコで開催中のGDCで22日(現地時間)、任天堂の青山敬氏が「Wiiメニューをデザインする:企画からWiiウェアまで」と題した講演を行い、Wiiチャンネルを初めとしたメニュー周りの仕様や、ネットワークを用いた機能が誕生した経緯や、3月にサービスが開始されるWiiウェアの意義などについて解説しました。

初めに青山氏は「自分のことは誰も知らないでしょう」と前置きして、簡単な自己紹介を行いました。青山氏は電話交換機の制御プログラムなど、通信システムの開発に長年携わってきたエンジニアで、2000年10月に任天堂に入社してきた「転職」組です。青山氏は「電話」というインフラについて「とてもシンプルで家族全員が使用しており、世界中でリアルタイムに情報のやりとりができ、高い拡張性を持つ」と説明し、当初はまったく考えていなかったものの、この経験が今になって非常に役立っている、と紹介しました。

青山氏は任天堂に入社後、経営企画室、総合開発本部を経て、2005年10月に「Wii本体機能具現化プロジェクト」のリーダーに就任します。そこでWiiチャンネルを初めとした本体機能の開発に取り組み、Wii発売後の2007年3月にネットワーク開発部に移籍しました。そして現在はWiiウェアの開発を推進しています。青山氏が最初に所属した経営企画室の直接の上司が、現社長の岩田聡氏でした。当時の青山氏のミッションは「ネットワークを使ったサービスやビジネスの検討」で、まだダイアルアップ接続が主流の頃の話です。青山氏は「任天堂はゲーム業界で経験のない私の話も、礼儀正しく聞いてくれる会社」と、たいへん好感をもったそうです。

さて、話は2005年10月に遡ります。Wiiの開発コンセプトは既に何度も紹介されているとおり「家族全員に受け入れられる機械」「毎日なにかが新しい」というもので、前者を代表する機能がWiiリモコン、後者がWiiConnect24だといえます。特に後者については、最先端の技術を消費電力の低減に用いることで、24時間通電するゲーム機を開発することがハード側の目標となっており、技術的な目処もついていました。しかし、24時間通電させて具体的に何をするのか、ソフト側の目処は何も見えていなかったのです。そのために全社横断プロジェクトとして立ち上がったのが、この「Wii本体機能具現化プロジェクト」でした。プログラムの実装と本体の量産化を考えると、残された開発期間はわずかです。プロジェクトリーダーとなった青山氏は、手探りの状態を続けながらも、一つずつ妥協せずに決めていくことになりました。

当初の主な議論は「文字入力方式の決定」「起動時間の短縮化」「ユーザーアカウント方式」などでした。文字入力方式については、画面上でのフルキーボード形式から、携帯電話形式、「どうぶつの森」と同じ形式など、さまざまな試作版が作られ、評価が行われました。これによってチーム全体でWiiリモコンの操作感覚が幅広く共有できたそうです。「起動時間の短縮化」については、ゲーム機ならではの軽快な操作性を実現するために不可欠な要素でしたが、難題でもありました。システムプログラムとUI担当のチームが共同で開発し、画面シークエンスなどが何度も見直され、発売後も改良が続いています。「ユーザーアカウント方式」については、個人単位でユーザー・パスワード認証などをさせるのは馴染まないとして、ほぼ全員の反対により見送られたそうです。

またミーティングには可能な限り岩田社長も出席し、さまざまなアイディアが出されました。青山氏はこれが「チームにとってたいへん良いことだった」と振り返ります。ただし「岩田は時々無理難題を言い出す」として、あるエピソードを紹介しました。「家族内でゲームが敵視されないように、1日1時間以上ゲームをプレイしたら、強制的にセーブして電源を切る」というアイディアを言い出したのです。賛否両論がありましたが、最終的にもっと良いアイディアが生まれたため、実装されませんでした。それがプレイ履歴が全員で閲覧できる機能です。無理に電源を切るよりも、履歴の閲覧が家族の対話に繋がると判断されたのです。Wiiでプレイ履歴が消去できない理由もこのためで、自身もゲーム好きの息子がいるため、たいへん役に立っているとのことでした。

その後も「お天気チャンネル」「ニュースチャンネル」などの「毎日何かが新しい」機能が加わっていきましたが、家族全員で使ってもらうためには、より多くのサービスやアプリケーションが不可欠でした。しかし機能を増やすと、操作がわかりにくくなるリスクが発生します。これを解決したのが、チームの一人が電気屋でテレビがたくさん並んでいる光景を思い出したことで、ここから「メニューやチャンネル」という概念が生まれ、その後の大きな鍵となりました。ただし、このことはゲーム自体が「ディスクチャンネル」として、ゲーム以外のさまざまな機能の一部になることを意味しています。今まで「ゲーム機」を作ってきた任天堂として、これは大きな方向転換だとも言えるでしょう。青山氏は「社内でも議論はあった」と前置きした上で、「それでもプロジェクトの参加メンバーにとって迷いはなかった」と述べました。ゲームを遊ぶように、天気予報やニュース、ネットサーフィンなどを家族全員が楽しめれば、それはそれで嬉しいというわけです。

さらに「テレビは見るけど、ゲームを遊ばない人は多い」と述べた上で、Wiiのコンセプトはテレビのチャンネルを拡張することにあり、決してテレビ画面をテレビ番組と取り合おうとしているわけではない、と強調しました。Wiiにとってテレビは友達で、テレビをもっと楽しむための装置がWiiだというのです。その例として青山氏は今後、日本でテレビ番組を配信するチャンネルをリリースする計画があると述べました。これも「お天気チャンネル」などと同じく、テレビ番組を選んだり、番組を見るのが楽しくなるような仕掛けがたくさん盛り込まれるそうです。

ちなみにパソコンや携帯電話が普及している中で、Wiiが同様のサービスを展開する意義については、当初社内でも議論があったと青山氏は語りました。しかし「ニュースチャンネル」の試作品が完成し、地球儀がくるくる回るデモが披露されたとき、任天堂としての意義を皆が一斉に理解したそうです。「出席した全員から、一瞬どよめきが起きたのを覚えています」(青山氏)。テレビ番組の配信チャンネルについても、ゲーム会社のノウハウを生かした「触って楽しい」UIを提供することが、Wiiを家庭に浸透させ、ユーザー層のさらなる拡大に繋がるということなのでしょう。家電メーカーのエンジニアにも、ぜひ見習って欲しい姿勢です。

その後もMiiによる「似顔絵チャンネル」をはじめ、さまざまなチャンネルが開発されていきました。MiiはGDC2008の基調講演で宮本茂氏が述べたように、元々はDSのソフト開発チームの考案によるもので、実際の開発もDSとWiiの双方のソフト開発部隊の共同開発でした。これがその後「みんなで投票チャンネル」の開発に繋がっていきます。このようにWiiの本体機能の開発は、社内の風通しを良くすることにも貢献しました。「Wii伝言板」はインターネットにWiiを接続していなくても、「毎日何かが新しい」ための機能です。これはゲーム中からでも使用でき、ゲームをしていて気づいた点などをメモに残して、カレンダーに張り付けるなどの行為ができます。ブラウザを起動して携帯やPCとメールのやりとりも可能です。これもまた社内コラボレーションの成果でした。

ただし、「WiiConnect24」のような「毎日新しい仕掛け」、つまりプッシュ型のサービスを行うためには、世界中で数千万台という端末に対応するという、巨大なインフラを構築する見通しが必要です。これは公衆の電話ネットワークに匹敵するレベルのもので、しかも負荷の集中に強く、拡張性に富み、低コストで実現しなくてはなりません。青山氏は「専門家ではない任天堂が、これをどう構築して運営するか」を考えた結果、仕様を割り切った経済的な方法を選択したと述べました。とはいえ、その上で魅力的なアプリケーションが開発できなければなりません。この判断が短期間でできたのも、ゲームディレクターが常にそばにいて、必要な議論ができたからだと振り返りました。

さて、このようにして完成・無事ローンチを迎えたWiiですが、その後もWiiメニューの改良が続けられ、現在は「Wiiメニュー3」にアップデートされています。今では「写真チャンネル」で読み込んだ写真をWiiチャンネルのアイコンに登録できたり、ニュースや天気予報などの最新情報をチャンネル上にリアルタイムに表示できるようになりました。Wiiフィットチャンネルの追加や、Wii伝言板の機能強化などもそうです。そしてこの3月、「Wiiウェア」という新しいサービスが追加されようとしています。「バーチャルコンソール」が懐かしの名作を配信するのに対して、こちらは完全新作タイトルを配信するサービスです。

青山氏はこの意義について、「パッケージ販売に変わるものではなく、補完するためのもの」と、改めて強調しました。パッケージビジネスは重要な方式ですが、価格設定の弾力性に欠け、商品に一定のボリュームも必要となります。それに対して低容量、低コストで開発でき、在庫問題や機械損失もないWiiウェアは、シンプルなゲーム開発にこそ向いている、というわけです。また異業種の参入により、ゲーム以外のビジネスの可能性が生まれる点についても言及されました。Wii向けの知育ゲームソフトや健康ソフトなどが、今後Wiiウェアで配信される可能性があるかもしれません。

青山氏はWiiウェアを取り巻く背景について、Wiiは家のリビングのテレビに接続されており、家族全員に嫌われないゲーム機なので、ハードコアからカジュアルまで、あらゆるジャンルのソフトに可能性があるとしました。ネットワーク接続率も高く、ビジネス面もバーチャルコンソールで実績があります。Wiiリモコンだけでなく、バランスWiiボードをコントローラーに用いたゲーム開発もでき、斬新なアイディアのゲームを試すこともできます。短時間でダウンロードしてすぐに遊べるように、プログラムを圧縮して送信し、自動展開して起動するなどの機能も盛り込みました。マニュアルも「ショッピングチャンネル」でダウンロードして閲覧できます。

さらにゲームの検索性を高めるために、すでにサービスが始まっている「みんなのニンテンドーチャンネル」で、おすすめのタイトルを調べたり、評判をチェックするなどの機能を盛り込みました。これはWiiウェアだけでなく、発売ずみのパッケージタイトルや、バーチャルコンソール、さらにはDSのお試しソフト配信タイトルにも対応しており、大量のコンテンツの中から素早く検索できます。これによって、今後大量にWiiウェアのソフトが配信されても、埋もれることなく確実にユーザーにリーチできるというわけです。

続いて青山氏はWiiウェアのユニークなゲームの例として、イギリスのゲームスタジオによる横スクロールアクション「Listwinds」を紹介しました。Wiiリモコンをマウスのように使ってキャラクターを移動したり、風を起こしてアクションするゲームで、開発は順調に進んでいるそうです。こうした世界の挑戦的なタイトルが手軽に発表でき、市場で評価が受けられるのが、Wiiウェアのユニークな点でしょう。このことは先にスクウェア・エニックスの土田俊郎氏と白石史明氏が「Wiiウェアのライフサイクル『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』研究事例」と題した講演で示したとおり、若手開発者に対するゲーム開発の経験を増やすことにも繋がります。

さらに青山氏は「ニンテンドーWi-Fiコネクション」を拡張し、Wiiポイントを使って有料サービスを展開することを発表しました。こちらは「かんたん・あんしん・有料」となるため、新たに「ニンテンドーWi-Fiコネクション有料サービス」という別名称となり、従来のサービスと並列で展開されることになります。有料サービスの詳細については避けられましたが、追加コンテンツの有料配信などもあるとのことで、今後は月額課金モデルや、アイテム課金モデルといった、ネットワークゲームに向いたサービス環境が生まれることも予想されます。

最後に青山氏はWiiについて、あらためて「とりまく人々を笑顔にしたい」「家族全員に使われる」「いろんなものが詰まっている」「毎日何かが新しい」「世界に繋がっている」「テレビと友達になるマシン」というキーワードを提示し、これまでのところは幸いにも、多くの人々に受け入れられたとコメント。その上でWiiウェアを通して、より魅力的な世界を提供したいと述べ、一緒になって盛り上げましょうと呼びかけました。Wiiウェアはすべての開発者にオープンなプラットフォームで、関心のある人はぜひメールで問いあわせて欲しいとのことです(メールアドレスはWiiWare@noa.nintendo.com(メール送信時は@を小文字に変更してください)。任天堂が講演でメールアドレスを表示するのは過去に例のないことで、何よりもこのことが任天堂の強い姿勢を物語っているように感じられました。
《小野憲史》

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