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「携帯ゲーム機」の枠を超えたテイルズ―『テイルズ オブ イノセンス』開発スタッフインタビュー

2007年12月6日にバンダイナムコゲームスから発売されたニンテンドーDS向け『テイルズ オブ イノセンス』は、携帯ゲーム機として初めてテイルズの本編、マザーシップタイトルとして制作された作品です。DSというゲーム機でテイルズの全てを詰め込むために、開発現場には多くの苦労がありました。そして本作でも、CRI・ミドルウェアの音声圧縮用ミドルウェア「救声主」が採用されています。今回は、開発を担当した熊本のアルファ・システムさんにお邪魔し、話をお聞きしました。

任天堂 DS
テイルズ オブ イノセンス
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―――『イノセンス』を作るに当たってポイントとなったのはどういう部分でしょうか?

大舘: 一番大きいのは、携帯ゲーム機向けにコンパクトにしたテイルズという単純な割り切り方だとユーザーさんの満足は得られないということです。『テンペスト』というのはコンパクトテイルズというコンセプトだったのですが、ユーザーさんが望んでいるのはコンパクトなテイルズというより、テイルズの記号性を全て含んだものなんじゃないか、ということです。『イノセンス』も当初はコンパクトテイルズだったのですが、途中で方針転換して、全て正面から、表現できる限界にチャレンジしようという決断をしました。

――音楽やボイスには相当注力されたということですが

大舘: そうですね、前作は戦闘にしかボイスが入ってなかったのですが、これも立ち上げのコンセプトがコンパクトテイルズということもあって、そのあり方を模索する中で最初から削ぎ落とされていました。前回はコンパクトにする為に何を落とすかという議論をしていたのに対して、今回は逆に全てを実現するために試行錯誤をしていて、ここが大きく違う部分です。やはり色々なものを全て収めるのは大変で、どこの容量を減らすか? モーションの容量を減らすか、音声データの容量を減らすか、ムービーデータの容量を減らすか、という話になりました。一番目に付きやすいのが音声で、音声データの容量を減らすにはどうしたらいいかという話になって、そこでCRIさんの「救声主」の話を聞いて、試してみようということになりました。ただ、既に音声を出すシステムは組み上がっていたので抵抗はもちろんありました。その辺りのエピソードは櫻井のほうに・・・(笑)。

櫻井: はい(笑)。2006年の12月くらいに「救声主」の話を聞かされたのですが、既に深澤の方で試作は終えて、本制作にも入る段階で基本的なシステムは構築できていた状態でした。でも、実際に救声主の音声を聞いてみると確かに良くて…。「ちょっといい」くらいだったら断れたのですが、「大分良かった」ので、あぁ、どうしようかな、と(笑)。結局、スケジュールの巻き戻しとクオリティアップを天秤にかけて、最終的に「救声主」でいこうということになりました。完成したものを聞くと、この決断は正解だったと思いますね。

深澤: 自分たちで1からやるよりは、クオリティの高いミドルウェアに乗り換えて良かったですね。

大舘: 2006年11月の段階で試作評価版というのが出来上がって、ボイスと音は『レディアントマイソロジー』のものが鳴っていたと記憶していますが、その段階で容量的に厳しいという感触がありました。その時点だとグラフィックの質を落としたり、色々とやり方はありましたが、作業を一か月くらい巻き戻して「救声主」でやってくれと、半ば泣き落しのような感じで、深澤さんに『アイドルマスター』のグッズを送るような寝技(?)を使いながら交渉した覚えがあります(笑)。

深澤: (アイドルマスターの)CDをいただきましたね(笑)。

―――「救声主」を使う前は任天堂標準のシステムを使われていたのですか

稲垣: それをベースにしたものですね。声をたくさん入れなきゃいけないとなった時にどうしようか、というのは結構頭の痛いところでした。「救声主」に乗り換えるのは難なくできましたね。特に技術的には苦労したところはありませんでした。

――――「救声主」が使われている箇所というのは?

深澤: 一部のイベント部分の音声とエンディングの2か所に絞って使いました。本当は戦闘中にも使えれば良かったのですが、戦闘では描写の処理との兼ね合いもあって、任天堂標準ライブラリを使うことにしました。

――――――「救声主」にはADX(ステレオ低負荷モード)とAHX(モノラル高圧縮モード)という2種類のフォーマットがあるのですが、どちらを使われました

深澤: ナレーション全般がAHX、エンディングはADXです。イベントシーンでは、声には救声主、音楽は任天堂標準ライブラリ、といった使い分けをしています。

―――今回はKOKIAさんが楽曲を提供されましたね

大舘: 実はもともとオープニングのテーマソングはKOKIAさんという話でオファーしていたんです。で、エンディングの話は最初の段階ではオファーには入ってなかったんです。もともとやる予定もなくて。でも、しばらくしてエンディングにも…

稲垣: 曲を入れたいという話を、大舘に相談をして。

大舘: 容量の問題もあるし、契約面もあるから、基本的には無理だよという話でした。ただ、あまりにもしつこいから、お前が容量確保の目途をつけろよ!という話をしたんです。多分エンディングにKOKIAさんの楽曲をどうしても入れたい、容量を確保したいという一心で、いろいろ調べて俺に教えてくれたのが「救声主」だったと思うんです。

稲垣: ボイスを入れるのか、エンディングの曲を入れるのか、どっちがいいの? ってずっと言われていて、どっちも欲しい、エンディングも欲しいんです、という話をしている時に、ちょうどインサイドのページで「救声主」を見つけて、「ああ本当に救世主だ」と思いました。実際にテストしてみると音もいい。容量の見積もりをしてもらったら、ちゃんと入るということが分かって、それでエンディングもやりましょうという話になったんです。

稲垣: ボイスに関しては他社さんのゲームでも喋っているのは結構あって、音声が若干聴き辛くても『テンペスト』よりは入るぞ、と思ってやっていたのですが、「救声主」がきっかけでさらに良くなりました。高音質、容量一杯に、ということで最初は120分くらいを予定していたのが、160分くらいの音声が最終的には入りました。



―――音質が良いのは前提条件として、容量の削減でも貢献できたということですね

大舘: 最初のきっかけは容量削減ですが、テイルズの場合はユーザーさんが要求する音声というのは、役者さんの息づかいまで感じ取れるものなので、やっぱり容量を減らそうとして低いサンプリングレートでやると無理が出ます。演技が活きてこないと、感情移入ができない、キャラクターに思い入れを持てないといった事が出てきます。よく台本に「……」とか、「は……」というような息づかいとして表現されている箇所がありますが、役者さんはちゃんと収録で表現してくださるんです。そこを、レートを落とす事で削ってしまうのは失礼だし、残念な事ですよね。そこをちゃんと拾えるからこそユーザーさんが喜ぶようなキャラ作りもできるんじゃないかと思います。

―――主題歌にKOKIAさんを起用されたのは?

稲垣: 僕が以前からKOKIAさんの大ファンだったからです。特に「調和」という歌が好きだったのですが、壮大なファンタジーの世界観を持つ曲なので、ぜひこの世界観で『イノセンス』の主題歌をやりたいというお願いをしました。そして書き下ろしていただいたのが「Follow the Nightingale」です。

櫻井: KOKIAさんも世界観からきっちり把握して作っていただいて。

稲垣: もう資料を山のように持って行って、お話や、街の設定、物語のテーマとか色々と説明して、打ち合わせの後も楽器のイメージや雰囲気といった質問を受けながら、答えとして出来たのがあのオープニング曲です。だからただのタイアップとは違います。エンディング曲も、物語の中でキャラクターたちがどう動いて、最終的にどんなエンディングになるかという話をして、そこにバッチリくるようなエンディング曲を書いていただきました。

大舘: エンディング曲は元々なかった話なので、作ってもらえるとは思ってなくて、KOKIAさんで既にある楽曲の中からお薦めの曲をピックアップしてもらう形でも、という話をしたんですけど、KOKIAさんは「いやいや作ります」と言っていただけたんです。最近はヨーロッパでの活動が長かったので、久しぶりの国内の活動で力を入れてくださったということもあるようです。ただ、容量の問題が解決しなければ、曲を書いていただいても実装はできなかったので、「救声主」がなければあの素晴らしいエンディングは生まれる事は無かったということだと思います。

―――今回は、ほぼフルボイス?

稲垣: メインストーリーの部分はお話を見せたいので、完全にフルというわけではありませんが、ほぼ音声は入っています。やはり中心となる部分はきちんと役者さんの演技を見せたいので。開発中に社内でもこんなに喋るんだ、という反応はありました。しかもこの奇麗な音声で。

大舘: 恐らくメインストーリーの7〜8割くらいは入ってるんじゃないかな。

櫻井: 実はそんなにいってませんよ。

大舘: いってないですけど、そんな風に錯覚するくらい喋っているということです(笑)。いまWebでアンケートを取ってユーザーの方からの声を頂いていますが、フリーコメントを見ると、こんなに喋るとは思わなかったという言葉を沢山頂いています。本編という位置づけのゲームをDSで出すのはどうなの? というユーザーさんの不安な声というのは事前に沢山情報として入っていたので、良い意味で裏切れたんじゃないかと思います。

―――まさしくマザーシップタイトルとしての思い入れがしっかり伝わった、というわけですね。

大舘: そうですね、ちゃんとしたテイルズだよ、というのが伝わったと思います。

稲垣: 本当に、本当に助かりました。

―――逆に今後の作品はこれ以上でないと満足できないということにもなりますね

大舘: そうですね。音声を増やすとか、本当にフルボイスにするとか、そういう手段というのはありますが、やはり物量に任せて、ROM自体の容量を増やす方向だとやはり原価の方に跳ね返ってきますので、どこまでミドルウェアの方で吸収できるかというのが今後の課題かもしれません。

■今後のテイルズは


《土本学》
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