写真提供: Getty Images
■未成年者の契約と取消権
民法は、未成年者を保護するために、未成年者が、保護者等の法定代理人の同意を得ずに取引をした場合には、原則としてその契約を取り消すことができるとしています。これは、保護者名義のスマートフォンを使用して課金した場合も同様です。
■「保護者の同意」の有無が重要
保護者の同意があった場合には、取消しができません。そこで、契約取消しのリスクを予防するため、事業者は様々な工夫をしているところです。ペアレンタルコントロールの設定を設けたデバイスが売られ、課金には保護者の同意が必要であることを平易なひらがなで示すアプリゲームがあるのはそのためです。
もっとも、このような工夫をしたことの一事をもって、同意があったと推定されるわけではありません。ですので、年齢に応じて課金限度額を設けるなど、様々な工夫が複合的になされています。
■契約の取消し
契約が取り消されると、事業者は、課金を受けた利用料を返還しなければなりません。もっとも、返還によって損害が発生した場合、事業者としては、保護者に対して損害賠償請求することが考えられます。容易に課金ができるような状態でスマートフォンを未成年者に渡した点に過失が認められれば、賠償責任が認められる余地もあります。保護者としては、高額課金の危険性を認識し、適切に監督することが求められます。
■結語
ここまで見てきましたように、保護者が同意せず未成年者が課金を行った場合には、取消しや免責の主張を封じる適法な規約が入っていない限り、課金取引の契約を取り消して利用料の返還を求めることができます。また、法的な問題はおいて、任意に返還に応じてくれる場合もあります。実際に、平成27年1月のイギリスで、7歳の息子が、保護者に無断でおよそ70万円の課金をしたケースでは、アップルが任意の返還に応じたと報じられています。
他方で、同月のカナダで、17歳の息子が、保護者に無断でXboxにチャージしたおよそ90万円を課金したケースでは、マイクロソフトが返還には応じないことを表明したと報じられています(なお、アップルのiOSデバイスにもマイクロソフトのXboxにも、未成年者が保護者に無断で課金できないような仕組みが備わっています)。
任意の返還がなされない場合には、たとえ法的に返還を求めることができたとしても、返還の実現のためには時間や費用のコストは避けられません。保護者としては、なによりもまず、無断で課金がなされないように十分に監督することが重要です。
■藥師神 豪祐(ヤクシジン コウスケ)
恵比寿南法律事務所 代表弁護士。
ゲームとスポーツに関心を有する弁護士らによる団体GamesLawの代表も務める。
多様な領域と交流しながら、「ゲーム」の地位を高めるべく活動している。
GamesLaw: http://games-law.com/
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