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次世代ゲームの作り方を模索、PS4『KNACK』開発チームインタビュー・・・GTMF 2014直前インタビュー

ゲームビジネス 開発

左から、村上氏、飯島氏、渡辺氏
  • 左から、村上氏、飯島氏、渡辺氏
  • 左から、山口氏、舩山氏
  • ナックがメンバーを見つめる
  • 次世代ゲームの作り方を模索、PS4『KNACK』開発チームインタビュー・・・GTMF 2014直前インタビュー
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今年も、ゲーム開発者向けツール&ミドルウェア展示会「Game Tools & Middleware Forum 2014(GTMF2014)」が開催されます。今年のゲストセッションはソニー・コンピュータエンターテイメントがプレイステーション4のローンチタイトルとして発売した『KNACK』の開発陣が登壇。あの伝説のゲームデザイナー、マーク・サーニーと協働し、国産AAAタイトルに取り組んだジャパンスタジオの面々が集結します。本インタビューでは、その前哨戦としてプロジェクトを振り返っていただきました。

左から、山口氏、舩山氏、村上氏、飯島氏、渡辺氏


―――今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。それではまず、簡単な自己紹介をお願いします。

渡辺:渡辺祐介です。『KNACK』ではシニアプロデューサーを務めました。

舩山:舩山征一郎と申します。『KNACK』ではアウトソースマネージャーを任されていました。アーティストとしてアウトソース関係は7年前からやっていたのですが、今回は数百人という大規模なプロジェクトでしたから、そのあたりをご紹介できればと思っています。

飯島:ゲームディレクターの飯島貴光です。今回の総監督であるマーク・サーニーは日本に住んでいないので、日本国内の事は基本的に私が見ていました。SCEへは『WILD ARMS』の頃にアーティストのアルバイトとして入り、それから19年勤務しています。『サルゲッチュ』シリーズや『街スベリ』など、ずっとアクションゲーム一筋でやってきています。

山口:リードグラフィックの山口太と申します。アートディレクターにもう一人山口(山口由晃)という者がいますが、別人です(笑) 私は13年程前にSCEに入社しまして、PS2やPS3のタイトル、『アイ・オブ・ジャッジメント』のカードゲームのグラフィックプログラムや『街スベリ』のグラフィックプログラムなどをやってきました。ハードウェアの評価などをやっていた折、「ナックのグラフィックをやらないか?」という話があり参加しました。ローンチタイトルという制約とPS4らしい表現というバランスを考えながら仕事をしてきたので、その内容についてお話できればと思います。

村上:村上です。『KNACK』ではリードプログラマーをやっていました。SCEへは7年くらい前に来まして、PS3の『アイ・オブ・ジャッジメント』ですね、その時にもリードプログラマーを任されていました。もう長くプログラマー一筋でやっています。『KNACK』は、最初4人から始まったんです。マーク、渡辺さん、飯島さん、そして私の4人チームでした。

―――企画のスタートはいつ頃だったのですか?

渡辺: 始まりは2011年冬だったと思いますね。そう考えると長いプロジェクトなのですが、デッドラインが明確に決まっていたので最後は大変でした。

村上: スキー場で渡辺から「次はマークのプロジェクトだ」と言われて、「これは大変なことになるな」と感じた記憶があります(笑)。

―――最終的にはどのくらいの規模までチームは大きくなったのですか?

渡辺:内制チーム全体では120人くらいです。前世代と比べると人は多いんですが、それでもまだ人手が足りないくらいでした。次回は今回の経験を生かして、効率のいいやり方を模索していきます。

―――4人でスタートしたというお話ですが、『KNACK』という企画自体はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

渡辺:まずPS4のローンチタイトルとして、企画はスタートしました。コア向けのローンチタイトルばかりの中で、マークが「PS4はもっといろんな人に遊んでもらうためのハードだから、コアゲーマー以外の方々にも楽しんでもらいたい!」と考え、ジャパンスタジオへ相談に来られたところから始まっています。

誰もが楽しめるアクションゲームを


―――マークはハードの設計にも携わっていて、タイトルの中にアクションゲームがあった方がいいよね、という話ですか?

渡辺:彼は海外サードパーティーの発売タイトルも見ていたので、ジャンルの充実を求めての結果ではないでしょうか。「より分かりやすいアクションゲーム」が欲しかったんです。

村上:例えば全てが16個のボタンを使うようなゲームではなく、操作も分かりやすく、という感じです。「どうせならワンボタンだけでやろうよ!」とワンボタンでの操作も検討したくらいです。

―――企画の中心的なアイデアは何だったのでしょうか?

飯島:まず、「誰でも遊べるアクションゲーム」という考えがありました。マークは過去に『クラッシュ・バンディクー』を作った人で、次世代の「クラッシュ」を作りたいという思いがあったようです。「クラッシュ」も操作はとてもシンプルで、基本ジャンプとアタックだけで、分かりやすくて誰でも遊べる。そんなゲームを次世代向けで作るというのが彼の考えでした。しかし、シンプルなだけでは次世代感はなかなか出せないので、どうすればそれが出るのか? と言うことをかなりブレストしましたね。

渡辺:「パーツ(レリック)が組み上がってキャラクターになる」というのは初期コンセプトの中の1つでした。「次世代機らしい表現とは何か?」というところから会議やブレストをする内に、「物体の集合体でできたキャラクター」いうアイデアが出てきて、色々形も変えられるしそれはおもしろいね、と。

レリックでできたナック


―――やられた際は大量のパーツが一斉に崩れるのに、それが実にスムーズで驚きます。

渡辺:マーク曰く「秋葉原テスト」というものがあるんです。秋葉原の店頭でゲーム機のデモが流れているじゃないですか。そのうちのモニターの一つに『KNACK』の映像が流れた時に、一目見て「あっ、これはPS4のゲームのデモ画面だな」と分かるような表現にしたいと。また、集合時にキャラクターとして成立するのか、個性が出るのか等、パーツ単体の見栄えにも留意しました。

山口:発色に関しては、「ノスタルジックなゲームプレイ」というコンセプトに合わせてあるんですが、ライティングに関しては基本的にPS4の機能を生かしています。物理ベースレンダリングやポストエフェクトグラフィックなど、できるだけ新しい技術を使いながら、その中で、殺伐とした世界じゃなくて、柔らかい、暖かい世界を構築しています。

村上:マークは金属や宝石にすごいこだわりがあるんです。

山口:宝石や石の見え方だけじゃなくて、作り方の過程においても「こうした方がいいんじゃないか、この方法の方がいいんじゃないか」と言っていました。彼はハードウェアの設計者でもあるので、例えば「こういうライティングをしたい」と相談した時に「それは何サイクルかかるんだ」と言われてしまって。今までのゲームディレクターからそんなことを言われた事がなかったので、この人はすごいなと。ハードウェアとソフトウェアの並行開発をしていたので、最も良いやり方を探しました。

村上:それが逆に助かったという面もあります。バグでパフォーマンスが出てないって時に、マークから「ここのサイクル数がおかしい」と指摘していただいて原因が分かったり。マークならではです。

―――ハードも並行で作るという状況で進めていったんですか?

飯島:そうですね。ただ、さすがに僕たちもハードの詳細まではわからない部分が多かったです。

村上:徐々に教えてもらいながら実験を繰り返していました。マークから「こういう機能があるからよろしくね」と言われて、ゲーム用のデモを作ったり。そこで力量を測られていたような節はあります。

渡辺:マークって人を見るんですよ。信用できるかできないか見極めながら仕事のやり方を変えてくるから、かなりどきどきします。「本当にこのチームに任せていいのか?」って。一度分かりあえれば、それ以降はスムーズに仕事を進められますよ。

飯島:逆に、ハードウェアの質問やリサーチみたいなものを我々にしていましたね。

村上:『KNACK』チームに「メモリはどれくらい必要か」など、スペック的な話もしていました。当初は4GBだったんですが、絶対足りないから8GBでお願いします、とお願いしました。結果的には8GBのメモリが搭載されました。

―――PS4という次世代プラットフォームという意味で、苦労された部分などはありますか?

舩山:次世代機クオリティを実現するために要求される物量というのは大変でした。そこはアウトソースに頼った部分が大きかったですね。プロップモデルなどは基本的にアウトソースです。最初の1つをこちら側で制作して、それを大量発注すると。

飯島:大人数で作るとちょっとずつテイストが変わってしまいます。同じゲームなのに、ステージや場所が違うとちょっとずつクオリティや表現が違う、といったことが起きてしまう。それを統一する事に腐心しました。

―――アウトソースされた具体的な箇所ってどこですか?

舩山:背景とキャラクターとモーション。IGCと言われるインゲームシネマティックのモーション部分、ムービーですね。人月にすると400人月くらい(ムービー含まず)です。

飯島:マークと仕事をさせてもらって、日本のゲームの作り方では、次世代機クオリティで世界と戦っていくのは大変だなと感じました。今回は僕自身も大変勉強になったんですけど、より効率的により高いクオリティのものを短期間で作るというノウハウを溜めていかないと、海外の数百億円かけるようなタイトルと同じ土俵に上がっていくのは難しいですね。アウトソースのやり方は勉強になりました。

―――1つはアウトソースが鍵になりそうですが、他にこうした方がいい、というものは得られましたか?

飯島:いろんな実験をして成否を選別していくやり方だとか、同じ作るにしても、何となくなのか最初からかなり固めて進めていくのか、でしょうか。

山口:最初は、アーティストさんに自由に作って下さい、というやり方でした。そうすると良いものができるだろうという考えです。しかし人によってバラツキが出てしまうし、使える機能が多くなればなるほど設定する項目も多くなるので、使わない機能が多く出てきてしまったんです。ですから、ある程度規格を決めようという事になりました。例えば、岩だったらこの作り方、木とかだったらこれ、建物はこれ、という形で、大量生産するためにある程度のプリセット……型を決めてしまうというやり方をしたんです。そうする事で、ムラのない、機能も使い切るような形でアセットを作れたので、大きな物を作るには、ある程度形を決めてから作っていくようにしないとダメだと分かりました。アウトソースの部分だけではなくて、内制に関わる部分でもかなり大変になってきて。やろうと思えばなんでもできてしまうので、その中で何を選択して何を選択しないのかということを早い段階から決めていくことが、良いものをたくさん作るには大切なんだなと勉強させていただきました。

村上:今回いろんなシェーダーを使ったんで、あれこれどんなシェーダーにするのかってやる事でパフォーマンスが落ちてしまって……。ある程度プリセットでシェーダーの種類を限定した所パフォーマンスが上がったので、それも必要だと思いました。

―――関わる人数が増えてくると、ちゃんとした設計書というかルールみたいなものが必要になってくると?

飯島:もう職人芸的なマンパワーではどうにもならない次元に来ているので、そこをどうするかというのが課題ですね。

―――今回ゲームエンジンから新しく作れられたと伺いましたが。

村上:2010年にマーク・サーニーが日本へ来た時に、その当時プログラマーは私だけだったので「一ヶ月後にまた来るから何か作っておいて」って言われてしまって。まず『サルゲッチュ』のキャラと犬のキャラで簡単なアクションゲームを作り、そこからエンジンを作り始めました。一ヶ月後に「ピクセルを使ったゲームにしたい」と言われ、『サルゲッチュ』のキャラをピクセルへ。日本でも世界でも受けるパーツのデザインを半年がかりでやり始め、その裏でエンジンを作っていました。

飯島:一時期ネットで「Unreal Engineを使っているんじゃないか」って誤解が出ていましたが、それははっきり否定します!

―――では、ある程度スペックは流動的なところがあったんですね。技術面やデザイン面の課題みたいなものはありましたか?

飯島:今回はローンチに間に合うことが必達ミッションだったので、それに間に合わすためにいろんな事を犠牲にする部分はありました。やりたくてもやれなかった事もあるので、そういった部分が今後の課題ですね。

山口:開発ツールや使い方のノウハウについては、ローンチの時点ではまったく使い切られていなかった部分が今でも日々進んでいて、「もっと描画スピードを上げられる」とか「もっとクオリティを上げられる」みたいな部分がリリース後に溜まってきています。『KNACK』は仕様を作りながらデータを作ってもらうような形で、データをきれいに作ってもらうためのツールやフレームワークなどの整理が十分ではなかったので、そこを整備し直す事でより良いものにしていけるのではないかと思っています。

渡辺:険しいスケジュールだったんですが、みなさん何とか間に合わせてくれました。そのノウハウを溜めつつ、次回からはPS4の新しい機能にも密着して、遊びの幅が広がっていくようなものを作れればいいと思っています。

―――今回は遊んでいる様子をSHARE(シェア)できますよね。多くの人に見られる機会も増えると思うんですが、ゲームデザイン的に意識した部分はありますか?

渡辺:『KNACK』で言えば、アクションゲームって通常キャラクターの背中しか見えませんよね。しかし、今作では時々ナックの顔が正面から見えるようになっているんです。そう言った意味では、「見られる事」「見せる事」を意識しました。

飯島:友達がゲットした中からもパーツを選べるので、フレンドが多ければ多いほど有利になります。PS4は最初からリアルネームを搭載すると聞いていたので、そうすればフレンドを増やしたい気持ちになるかなーと(笑)。

―――今後、さらにSHARE(シェア)を活用していく予定はありますか?

飯島:今まではグレーゾーン、「プレイ動画をネットに上げるのも著作権的にどうなの?」って部分をメーカーが黙認していました。ところが、今回はハードに最初から搭載された機能として正式なサービスになりました。ネタバレして欲しくないところはこちらでカットできるので、公開もされません。『KNACK』では入れられませんでしたが、コメントを拾ってゲームの中に反映できるって事もやろうとしていました。応援のコメントが多いとHP回復、その逆もまたあると。実況ならではの巧みな方法を模索しています。

―――ローンチタイトルですし、ユーザーの声を聞いていかがですか?

飯島:多くの意見を集めていますが、シンプルだとか単調だとか、予想していたよりネガティブなコメントも多かったので、そこは反省点かなと。ツイッターなどで「子供と楽しくやってます」とか、「60、70歳のお父さんも楽しめています」というご意見もいただきました。様々な意見を集めて、今後に活かしていきます。

―――小さなお子さんも楽しめるという部分で、1.5倍のコントローラーを作って操作感を確かめられたとか。

飯島:『KNACK』でLRボタンを使用しないのは、子供の手では届かないだろうという事です。△ボタンすら普段は押さないんですが、それは親指からの距離が遠いからです。「小さなお子さんでも遊べるのか?」という事には本当に気を付けました。

―――メカ・ナックの仕様はお子さんのことを考えてだったんですか?

渡辺:そうです。いつでも入っていつでも抜けられる。メカ・ナックを動かすお子さんが、お父さんと強力プレイで楽しむ形ですね。アクションが苦手な人でも十分遊べる部分もあります。例えば、PS4を買いたいなあというお父さんがいて、ただ自分の欲しいゲームを買うだけでは厳しい面もある。そこで、『KNACK』も一緒に「家族で遊べるよ!」って感じで購入してもらうと。本当にそういうイメージだったんですよ(笑)。

メカナックを使って一緒にプレイできる


―――それでは、最後に次世代機へ挑戦する開発者へのメッセージをお願いします!

舩山:次世代機で要求される物量をこなすにはアウトソースは不可欠です。やり方はそれぞれあるとは思いますが情報交換などを活発にして、より効率的なアウトソースのやり方を模索出来ればと思います。

飯島:凄いクオリティをどうやって安く出すか? というのが争点になると思います。プレイバリューだけで言うと、スマホなどにも楽しいゲームはあるんですけど、コンシューマーゲームを買って家で楽しむっていう価値を出していかないといけない。そういう部分は、モバイル機器では出せないグラフィックや処理能力だと思うので、今後はどう作っていくのか、僕らもまだまだ勉強ですね。

山口:PS4のポストモーテムも海外などでかなり盛り上がっていて、技術の共有も進んでいるんですが、日本だとPS4の開発事例の話はまだまだ少ないので、話の出来る場でお話しを通じ勉強させていただければと思います。

村上:PS4自体はPCに近い環境なので、開発者にとってはやりやすい環境だと思います。世界の強豪と戦うのは大変ですし、とは言え120人のチームは難しいと思うので、その半分のメンバーでも同じクオリティのもの、それ以上のクオリティのものを作れるような、ツールであるとかエンジンというものを作るのが大切ではないでしょうか。

本日はありがとうございました

ゲーム開発者向けツール&ミドルウェア展示会「Game Tools & Middleware Forum 2014」は6月25日(水)に大阪、7月18日(金)に東京で開催予定。両会場で『KNACK』の開発陣が登壇します。無料(事前登録あり)で参加可能ですので、ぜひご来場ください。ウェブサイト: http://gtmf.jp/
《平工 泰久》

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