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【GTMF 2014】Havok Destructionがバージョンアップ! 大量の破片が飛び散る、次世代の破壊表現とは?

物理エンジンで有名なHavokはGTMF2014東京で「破壊エンジンHavok Destructionの最新技術情報」と題して講演を行いました。

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Havok Japan 萬本氏
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物理エンジンで有名なHavokはGTMF2014東京で「破壊エンジンHavok Destructionの最新技術情報」と題して講演を行いました。同社の萬本忠宏氏は会場で、2013年にバージョンアップした新生Havok Destructionのデモを行い、次世代ゲームにおける破壊表現の基礎技術について、その方向性を示しました。

アイルランドのダブリンに本社を置くHavok社は、物理エンジンとして有名な「Havok Physics」を提供するミドルウェア会社というイメージが根強くあります。しかし、現在はゲームエンジンの「Havok Vision Engine」と、そのモバイル版である「Project Anarchy」を提供するゲームエンジンベンダーとして、さらなる成長をとげています。

一方でHavokのDNAが物理エンジンにあることも、また事実です。2008年にリリースされたHavok Destructionは、Havok Physicsをベースに、様々な破壊表現を行う破壊エンジンとして、高い評価を集めてきました。これまでに『The Last of Us』など数々のAAAゲームで採用されています。他に萬本氏はHavok Destructionの機能が良く活用された例として、『World of Tanks』をあげました。

このHavok PhysicsとHavok Destructionが2013年にバージョンアップされ、新生ミドルウェアとして生まれ変わりました(これに伴い、従来のミドルウェアはそれぞれHavok Physics 2012とHavok Destruction 2012に名称が変更されています)。萬本氏は「Havok Physicsはリリースして15年が経過し、それまでのアーキテクチャではアップデートが限界に来ていたため、フルスクラッチが必要だった」と、その背景を語りました。

バージョンアップの目的はシンプルで「より大量のオブジェクト、より大規模な破壊を実現する」ことです。特にマルチスレッド対応により、高速化・省メモリ化・スパイク軽減などが実現できました。Havok Destructionでは新たに塑性変形と破壊の組み合わせ(物体が凹みながら破壊されるなど)も可能になっています。Havok Physicsは『Killzone: Shadow Fall』などで採用されており、Havok Destructionが採用されたゲームも、現在鋭意開発中とのことです。

ここで萬本氏は自動車が壁やガラスに激突しながら、次第に破損していくデモを披露しました。単に衝突によって車体が凹むだけでなく、ガラスや金属の破片が飛び散ったり、車体の表面に細かい傷が付くなどの処理が行われており、非常にリアルな印象が感じられます。このうち車体の凹みは3Dモデルにおけるボーンの変形と、それに伴うスキニング、破片は後述するFXオブジェクト、車体の傷は法線マップで表現されています。

ドアやサイドミラーなど衝突によって破壊されるパーツは、あらかじめ独立したオブジェクトとしてモデリングされ、エキスポート後に車体にマージされています。車体が歪むと、それに伴ってドアなどが歪むように、ジャンクションシェイプによるスキニングも採用されました。車体の各部位で異なる耐久強度を設定したり、変形の制限や制御を行うために、物理シェイプを使用したりもできます。デモではドアや天板が破壊されても、ボディが歪んだり、めり込んだりしない様が紹介されました。

車体表面の傷については、ダメージテクスチャとHavok Destructionによる変形の組み合わせで、大小さまざまな変形がリアルに演出されています。このときダメージテクスチャは無傷な状態と破損した状態のそれぞれで法線マップが作成され、両者がブレンドして使用されています。その後、衝撃度に応じて各々の頂点で破損度を更新することで、徐々に破損する様子を表現するというわけです。

一方で衝突に際して、車体から飛び散る破片の表現については、新たに「Havok FX」という技術が紹介されました。パーティクルや破片の高速シミュレーションを行うライブラリで、石や破片、落ち葉、煙などが飛び散る様子を、リアルに再現できます。実際の使用では、あらかじめ複数の破片をテンプレートとして用意しておき、パーツごとに設定しておきます。その後、衝撃が加わると破片がFXオブジェクトとして噴出される仕組みです。デモではテールライトやドア、石やガラスの壁などで用いられ、ど派手な衝突を演出するのに高い効果を発揮していました。

イメージベースフラクチャーという表現も紹介されました。これは事前に破片の境界を画像ファイルで設定しておき、オブジェクトの表面にマッピングすることで、意図通りの形に物体を破壊するというものです。デモでは壁の表面に薄い板(Havokのロゴを形取った画像をマッピングずみ)を張り付けておき、自動車の衝突によって大量の破片や煙をFXオブジェクトやパーティクルなどで表現。板が壊れた結果、ロゴが浮き出るという表現が紹介されました。

なおHavok FXは研究開発中であり、未定の仕様も多いとのことです。まだまだ公開は先の話となりそうですが、これにより破損演出が一段上がることは間違いないでしょう。車体のモデリングだけでなく、リアルに爆発・炎上するレースゲームや、機関銃で破壊されてバラバラに破片が飛び散りながら墜落していく空戦ゲームなどが遊べることを、今から期待したいところです。
《小野憲史》
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