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いま「PULVEREX」が『フォートナイト』部門を新設する理由とは?名門「GameWith」などを渡り歩いてきたキーマンに訊く

アカツキゲームスが運営するeスポーツチーム「PULVEREX(パルブレックス)」が『フォートナイト』部門を新設。元「GameWith」所属のdokn選手、そしてプロ初挑戦となるtori選手・raru選手の加入が発表されました。その仕掛け人と言える小笠原氏に話を伺いました。

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いま「PULVEREX」が『フォートナイト』部門を新設する理由とは?名門「GameWith」などを渡り歩いてきたキーマンに訊く
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株式会社アカツキゲームスが運営するeスポーツチーム「PULVEREX(パルブレックス)」は、4月13日より『フォートナイト』部門を新設することを発表しました。

2023年にすでに強豪ひしめく『フォートナイト』というタイトル……このニュースに「いまさら?」と思う人も少なくないかもしれません。しかし、その裏側にはeスポーツシーンの最前線を渡り歩いてきたひとりのキーマンの姿がありました。

そこで今回は、その人物に“新設のきっかけ”について取材を敢行。新チームに込めた想いについて、詳しくお伺いしました。

【インタビュイーのプロフィール】

小笠原圭悟

10代で『Call of Duty』『Counter-Strike 1.6』の選手としてデビュー。大学時代に単身で海外に渡り、eスポーツリーグ『ESL(エレクトロニック・スポーツ・リーグ』Critical Ops アジア支部の立ち上げに参加し、eスポーツコミュニティーの組成・運営ノウハウを学ぶ。その後は「EAA!! FPS News」を得てシューター関連IPのマーケティングを学び、「GameWith」へ入社。社長室から事業各部を経て、アカツキゲームスが運営する「PULVEREX」に2022年12月よりゼネラル・マネージャー(GM)として参画。現在は『フォートナイト』や『Apex Legends』『PUBG』などの指導を行っている。

――まず、小笠原さんが「PULVEREX」に関わるきっかけを教えてください。

小笠原圭吾氏(以下、敬称略):もともと「GameWith(以下、GW)」でフォートナイト部門の立ち上げなどに携わった経験があり、これまで関わってきた選手の皆さんと一緒に「eスポーツって、どういったところから触れ合えばいいんだろう』と考えていたなか、お世話になっていた方から「PULVEREX」をご紹介いただいたんです。

――数あるゲームタイトルから「フォートナイト」を選んだ理由については?

小笠原:「フォートナイト」は、HIKAKINさんや小藪一豊さんといった著名人もプレイしていて、10代の層に非常に熱く浸透しているタイトルだからですね。今後もっとeスポーツが国内で盛り上がるためには、いまの10代が“eスポーツへの熱量を維持したまま大人になっていくこと”が必要です。それと暴力的な表現がない『フォートナイト』は、チームスポンサーの獲得をはじめ、対外的な取り組みを公表しやすい点もメリットだと感じています。

――今回の部門新設にあたって、元「GW」所属のdokn選手、そしてプロ初挑戦となるtori選手・raru選手の加入が発表されました。こちらの3名を選んだ決め手はなんでしょうか?

小笠原:色眼鏡が入ってしまっているかもしれませんが、今回チームリーダーとして期待しているdokn選手はGW時代から、いわば師弟関係のように一緒に走ってきた存在です。さらにファッションの造詣も深く、従来のプロ選手のイメージをガラッと変えられるような存在だと考えています。そういった別の角度からeスポーツへアプローチをしたいという考えから、まずdokn選手に声をかけました。

また、プロ初挑戦となるTori選手は、アスリート気質なところが魅力です。若くしてコミュニュケーション能力をはじめ社会人スキルがしっかりしています。そして、現在16歳と「PULVEREX」のなかで最年少であるRaru選手は、競技シーンに対する姿勢が素晴らしく、コツコツとした練習を愚直に反復できる努力家で将来が楽しみな選手です。10代ならではの熱量で、チームを盛り上げてくれると期待しています。

――部門を立ち上げた理由と、メンバー選出の決め手がマッチしていますね。これから、どのようなチームを目指していくのでしょうか?

小笠原:応援してくださる方々を「ファン」ではなく、あえて「サポーター」とお呼びしています。様々なアプローチを試しながら、サポーター様の獲得を目指したいですね。アプローチの方法にセオリーはありませんので、時と場合に応じて、例えるならば“水”のように柔軟な対応ができるような選手育成・チーム運営を心がけていきたいです。

また他チームのようにPULVEREXも、ストリーマーのようなタレント活動、さらにはアパレルなど、あらゆる方向に力を入れたいという思いはありつつ、何かひとつは尖った部分を出したいなと思っていまして。ひとつは選手たちはサポーター様に“支えてもらっている”という自覚を持ってもらうことだと考えています。

――サポーターの存在をしっかり認識することが大切なのですね。

小笠原:僕は過去にバスケットボールや空手などのスポーツ経験がありまして、そこで“礼節”を学びました。だからこそ“スポーツ”と名前がついているからには、単に娯楽に終わらないようなラインを作るべきと言いましょうか、「サポーター様へ何を還元できているのか」……それを選手たちにはプロとして日頃から考えてほしいなと思っています。

――その考え方は選手として活動されていたから持たれていたのでしょうか?

小笠原:いえ、選手時代は今とは真逆で、「eスポーツ=エンタメ」という感覚でした。社会に出たり、応援のお言葉をいただいたりするなかで考え方が変わるようになりました。

――そのために普段は、選手とどのようなコミュニケーションを図っていますか?

小笠原:その質問はすごく難しいですね。言ってしまうと僕は意図的なコミュニケーションは控えています。いまの世代はSNSで繊細なことも呟くので、投稿に至った意図や背景を考えるようにしています。近所のおじさん感覚でフラ~ッと「この投稿見たよ」と話しかけるイメージです(笑)。いらないお節介と言いましょうか、そのような会話を通して“ちゃんと見守っているよ”という姿勢を示しています。

――そちらの方が、選手にとって安心感がありそうですね(笑)

小笠原:どうなんでしょう?(笑)。ただ、僕ならではのマネジメントのスタイルとして、考えていることがありまして。それは選手がプライベートな相談をしてくれるんです。恋愛のお話だったり、将来の不安だったり...…日常的に相談してもらえるので、そこは近所のおじさんで良かったなと。

とはいえ深入りせず、一歩は下がっていると言いましょうか。近くにいるだけ……みたいな接し方を意識しています。ドライだけど、しっかり見てくれていて相談しやすい存在。大人になってから気がつくような、そういった存在を目指しています。

「PULVEREX」に求められる“厳しさ”

――現在の「PULVEREX」に足りないものがあるとしたら、それはなんでしょうか?

小笠原:“厳しさ”ですね。僕は選手に対して、苦手意識を持たれてもいいコミュニケーションすべきだと考えています。強気のコミュニケーションは選手が離れてしまう原因になると言われますが、僕は“家族”のように選手と接していくことを重視しています。

いまは見かけることが少なくなりましたが、昔は「おい元気か!」と声をかけてくれる近所のおじさんのような方が身近にいましたよね。そのような温かい存在と言いましょうか、選手には「僕のことを目上の存在のように扱わないで、その辺の近所のおじさんぐらいの感覚で接して」と伝えています。

――小笠原さんが、プレイヤーからコーチに転身したきっかけについても教えてください。

小笠原:それはすごくシンプルに、“選手に教えられる人がいなかったから”です。選手だけの反省会では、ロジックも何もなく「Aさんがミスをしたから、Aさんが悪い」というような生産性のないやりとりが起きてしまいがちで、ミスの指摘だけでなく全体を俯瞰してこれからどうしていくのか……という2歩3歩進んだ改善案を提案できる人が当時いませんでした。

――『オーバーウォッチ』の元プロ選手で、現在は『VALORANT』でコーチを務めるZETADIVISIONのXQQさんも、過去にそのようなことを話されていましたね。

小笠原:そうですね。さらに現実的な話として、そうしないと生きていけないと思ったからですね。eスポーツの第一線で選手として活動し続けるのは簡単なことではありません。チーム運営といったバックオフィス側から何ができるだろうかと考えた結果でもあります。

――チームをまとめるにあたって、プレッシャーはありますか?

小笠原:そういう意味では、僕自身が風変わりという自覚がありまして、周囲から「無理でしょ」と言われるほど燃えるんですよね。もちろん、プレッシャーを感じたり、落ち込んだりすることもありますが、ここで諦めたら、頑張っている選手たちにスポットライトが当たらなくなってしまう……!と奮起しています。

いままでのeスポーツチームは、恐らく「選手とスタッフ」で構成されてきたと思うんですが、僕が目指すのはそこに「サポーター」を入れた新しい形。例えるならサッカーのクラブみたいなイメージです。クラブハウスがあって、サポーター様が練習を見に来られて、選手と触れ合えて…という風に、近い距離感でみんな一緒になって組織を作っていきたいです。

◆元選手だからこそできる、選手との関わり方

――プロ選手の経験は、どのように現在の活動に活きていますか?

小笠原: 選手との関わり方ですね。 選手がどういったところで悩んでいるのか感覚的に把握しやすいのは、経験から来るものだと思います。

――そのうえで、どのような指導を心がけているのでしょうか?

小笠原:これ以上ないほど褒めるようにしていますね。とはいえ、その逆もあって。本当にダメなことをしたときは、コテンパンに叱責することも、自分的には優しさだと思っています。その場合はもちろん、頭ごなしに怒るわけではありません。

否定は絶対にせず、彼らがどう間違ってしまったのかを聞いた上で、常にQ&Aを続けさせる……つまりロジックで詰めていくことで、選手たちが自ら「ここがダメだったんだ」と気づけるよう誘導しています。

――質問は変わりますが、運営母体の「アカツキゲームス」への印象についても教えてください。

小笠原: 一般的に、同規模のチームは2~3人のスタッフで回しているところが多いのですが、PULVEREXは7~8名くらいでフォローしています。選手がちゃんと成長していけるよう時間もお金もかけていただいている、そのような姿勢にとても感謝しています。eスポーツ事業はキャッシュポイントを作ることがなかなか難しいのですが、懸けてもらった分をしっかり返せるよう、まずは今年1年間頑張っていきたいです。

――まさに土壌を整えている途中ということですね。今後、eスポーツ業界に対してどのような展望を見据えていますか?

小笠原:毎年のように「eスポーツ元年」と言われ続けていますが、ここ2年ぐらいで流れが変わってきたなと感じています。eスポーツチームの運営は、どうしてもビジネス的観点が抜けがちで、1~2年後のイメージはついていても、その先の5年、10年後の視点に立っているオーナーはそう多くいません。だからこそ、“企業としてeスポーツというコミュニティを育てていく”という視点を意識して動いています。注目される業界になってきたので、コミュニティ全体がさらに良い方向に変わっていくのではないかなと楽しみにしています。

――小笠原さんは、2~3年後またその先のeスポーツ業界に対してどう向き合っていきますか?

小笠原:実は、自分自身のことをそんなに俯瞰して考えられていません(笑)。 ひとつひとつ目の前にあるものに対してこう全力投球するしかないと言いましょうか……難しいですね。

でも今後、オリンピックの種目にデジタル競技が追加されるとも言われていますよね。そういった類のイベントに「PULVEREX」呼んでいただくことを見越して、エネルギッシュでアスリート気質なチーム作り、そして「このチームなら大丈夫だ」と多くの人に安心して応援していただける選手の育成に取り組んでいきたいです。


取材を通して、小笠原さんとアカツキゲームスは、よりマクロな視点でチーム作り、ひいてはeスポーツ事業に取り組んでいることが伝わりました。大会で結果を残すことはもちろん、eスポーツのさらなる発展のために「PULVEREX」の挑戦が始まります。

《神谷》
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