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「Buddy」というシンボルの元、世界に通用するゲームを―いびつな三人組が立ち上げたアカツキ新スタジオのビジョン

若手・ベテラン・インターンが立ち上げた、PvP特化型カジュアルゲームスタジオ「Buddy」のゲームづくりについて。

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2019年の10月、アカツキは新たなゲームスタジオを立ち上げました。それが、PvP特化型カジュアルゲームスタジオの「Buddy」です。

・Simple × Deep 3秒で理解。だけど奥深い。
・Excitement First 驚きを与えるような体験を。
・Communication 「会話」から生まれる友情を。

この3つをポリシーに立ち上がった「Buddy」は、立ち上げと同時に、処女作『TRiPAL』をFacebookインスタントゲーム上にてリリース。2019年11月には同じくFacebook上にて『Word Wars』のサービスを開始し、現在(2019年12月)では、上記2作品に加え、『Treasure Hunt Of Pirates』『Robot Royale』『Bomber』を展開。ワールドワイドな市場へ、コンスタントにオリジナルタイトルを届けている気鋭のスタジオです。

その「Buddy」を立ち上げたのは、年齢も、経歴も、役職もバラバラな3人。このいびつな組み合わせは、どのように生まれて、どのようなゲームをこれから作り上げていくのでしょうか。

今回は、そんな「Buddy」のキーマン、佐藤恵斗氏・直井啓訓氏・折茂賢成氏の3名にお話を伺いました。


――まず3人の簡単なプロフィールをお聞かせいただければと思います。

佐藤恵斗氏(以下、佐藤)「Buddy」のスタジオヘッド・佐藤です。2016年に新卒2期生としてアカツキに入りました。当時はまだ非上場で50人くらいの小さな会社でしたね。入ってしばらくしてから『八月のシンデレラナイン(ハチナイ)』というオリジナルタイトルの開発後期に携わり、プランナーやディレクターを経て、プロジェクトリーダーを1年ほど努めていました。その後「Buddy」を立ち上げた形になります。

直井啓訓氏(以下、直井)直井です。ニンテンドーDSとPSPがロンチしたくらいのときにゲーム業界へ入り、大手ゲーム会社で様々なハードでゲームを開発していました。コンシューマーだけでなく、筐体を使ったゲームとかも少し携わったりしていましたね。前に関わっていたタイトルでも、様々なミニゲームやゲームの基礎ルール等のアイディア出していた経験から、『TRiPAL(トリパル)』というゲームを提案し、それが「Buddy」のビジョンと合うということで、「Buddy」にも『TRiPAL』の担当という形でジョインしています。

折茂賢成氏(以下、折茂)実はまだ入社自体はしていなくて、内定者インターンという形でBuddyにジョインしています。Buddy立ち上げのタイミングでアカツキにはいったのですが、「新しい市場をゼロから攻める」というのを本当にやりたいですという話をして、佐藤と一緒にBuddyを立ち上げました。インターンなので、大学で研究をしながら、「Buddy」でゲームを作っています。

佐藤蟹の甲羅の研究をしてるんだよね?鉄板ネタ(笑)。

折茂比率でいうと9:1くらいです。9が「Buddy」で、1が蟹の甲羅の研究です(笑)。


――蟹の甲羅の研究が気になるところです……。そんな理系の大学からなぜゲーム業界に入ろうと思ったのでしょうか?

折茂就活で色々と迷っていて、起業しようかとも考えたし、個人での活動もずっとやっていたので、それを続けてもいいかなかなと考えていたりしました。そんな中、ある会社さんの代表の方と相談していて「お金のことよりも何をやるかちゃんと考えたほうがいいよ」と言われてハッとなって。「何が本当にやりたいことなのか」って小学生の頃からの感情を一回書き出したんですよね。そうしたら、結局小学生くらいのときから、自分が作ったモノがが誰かの手に渡って「面白いね」とって言ってもらうのがすごく好きで。言葉としては「人をワクワクさせる」みたいなところに収まったんですよね。

それで、「ワクワク 会社」みたいなことをネットで調べたらアカツキの記事がでてきて。そのときまで全然アカツキのこと知らなかったんですけど、たまたま僕がゲームが好きっていうのとアカツキの「ワクワクさせるなら自分たちからワクワクしよう」みたいな記事も相まってここめちゃくちゃいいじゃん、と(笑)。気づいたら次の日には書類全部出して、その一週間後には面接。その2週間半後には「Buddy」にジョインしていました。

――決断からジョインまでがすごく早いですね。別のゲーム会社を探してみようとか、選択肢を広げて落ち着いて考えようとかは考えなかった?

折茂結構、イノシシみたいな性格をしていて(笑)。これで頑張ろうってなったら、自分の気持ちをあまり分散させたくはないんです。一応オファーをもらってたところはあったんですけども、すぐにアカツキで決めてしまいましたね。

――それにしても、会社の探し方がユニークですよね(笑)。

佐藤探され方もユニークですよね。それで出てくるんだ、って(笑)。

折茂以前、SEO対策とか考えて調べていたことがあるんですけど、「ワクワク 会社」って対策しにくいキーワードじゃないですか。それなのに検索結果の上の方に出てくるのって、マーケティング的に考えて掲げているのではなく、本当にそれを目指して考えてるんだなって思ったんですよね。結果的に、正解だったかなと思っています。

――そんなインターンの方と、気鋭の若手、そしてベテランと珍しい組み合わせですが、スタジオ立ち上げの経緯をお聞かせいただければと思います。

佐藤もともと、直井が『TRiPAL』というFacebookゲームを作っていて、それを全社員向けの報告会で発表していたんです。もちろん、自分も発表を聞いていたんですけど、そのパッションにやられまして。

自分はしばらく今後のキャリアを悩んでいました。そのときに、自分で手を上げてチャレンジするってすごく素敵だなと思ったんですよね。その熱量にあてられて、自分もなにかやりたいなと思って。「Buddy」の構想を思いついたのも、直井の発表を聞いているときでした。その後、弊社の戸塚(※)に提案して承認をもらい、それならビジョン的に近い『TRiPAL』も「Buddy」として出しちゃえばいいんじゃないか、というところで直井と組むことになりました。

(※:アカツキ取締役・戸塚佑貴氏)

インターンの折茂は、最初は戸塚の直下で仕事をやってたのですが、その後にやっていたのがカジュアルゲームの領域だったというのもあって、「じゃあお前も来い」みたいな感じでまとめられたというのがまずひとつありますね(笑)。

佐藤恵斗氏

折茂戸塚がもともと僕を「Buddy」に入れようとしていたかはわからないんですけど、1日に企画を2,3本、一週間で10本くらい書いてみなよ、という感じで始まりました。ゲームの体系がよくわからないまま企画書を出してたんです。ひたすら出しまくって全部で10本強くらいできたものを「作りたいです」と「Buddy」のところに持っていったのもきっかけだったかなと。

佐藤そうそう、だから結構偶然によるところが多くて。もしかしたら直井が『TRiPAL』を出してそもそも終わりだったかも知れないし、「Buddy」を立ち上げることもなかったかも知れない。折茂が入ってくることはなかったかも知れない。同時期に偶然が重なったっていう感じはありますよね。

――偶然が重なったとはいえ、社内で新しくスタジオを立ち上げるのは大変だったのではないでしょうか。

佐藤それが、意外とすんなりいったんですよ。「キャリアの相談」ということで戸塚と二人で飲みに行って、やりたいことを伝えたら「いいじゃん!」みたいな感じで。戸塚的にはコイツ辞めるんじゃないかなって思ったらしいです(笑)。

直井おそらく、それぞれが思ってた感じてた「課題感」っていうのが一緒だったんだろうなとは思います。「Buddy」の3人がつながったこともそうだし、佐藤から戸塚に提案して、それがマッチしたというところとか、業界や会社に対して感じてる課題感がマッチしたのではないかと。

――佐藤さんは『ハチナイ』もまだ携わっていますよね?

佐藤はい、『ハチナイ』はプロジェクトリーダーとしてまだ携わっていますし、今後も続けるつもりです。ただ、先頭を切って旗振りしていくっていうのは後継者に引き継ごうかなと。インパクトの大きい施策には僕も入ったりしていますが。

――しかし、ものすごい速度でキャリアを積んでいってますね。

直井ハイスピードで積み上げているような感じがしますけど、一方で最初から全てうまく行っていたわけではないんですよね?

佐藤そうですね。もともと大型タイトルの運用プランナーをやっていたんですけども。僕の実力不足で半年後くらいに異動することになったことはありました。

直井そういう挫折経験があっての『ハチナイ』とか「Buddy」とかだと思うんですけど、ひっくるめて経験豊かではありますね。

折茂佐藤さんにも挫折経験があったんですね……。

佐藤山あり谷ありの濃密な4年間ですが、その分、経験はつめました。

マグロみたいな体質なんで、ずっと走り続けるっていうのが好きなんですよね。『ハチナイ』はずっと夢中になって取り組んできたのですが、アニメとか2周年とかも含めありがたいことにかなり好調だったこともあり、また次、新たなチャレンジもしてみたいというところはありました。

直井『ハチナイ』も成長途中にいろいろな課題があって、そういうものを真正面で見てきていますよね。

――そんな3人で立ち上げることになった「Buddy」ですが、立ち上げる前の準備期間や開発期間は長かったんですか?

佐藤『TRiPAL』がもう先にできていたので運営と設立が同時進行みたいな感じではありました。

直井『TRiPAL』自体の開発期間でいうと2ヶ月ほどですね。ただ、Facebookゲームという新規市場への投下だったので、リリースに向けてのワークフローの構築、というところで1ヶ月ほどかかっています。この時代のゲーム開発的にはかなり早めのスピード感で立ち上げました。

――実際、3人で「Buddy」を設立して色々と進めていると思うのですが、みなさんそれぞれ、他の2人からどのような刺激を受けていますか?

佐藤自分は新卒の育成とかもやってきて、後輩とかも見てきたんですけども、折茂に対してはシンプルに、見てきた中で一番優秀かもしれないですね。すごくガッツがあるのでありがたいです。インターンとかバイトとかそういう関わり方をすると、どうしてもコミットメントって下がりやすいじゃないですか。いってもバイトだしな、とか。そうじゃなくて同じ目線でディスカッションできるので、すごく気持ちいいんです。刺激がありますよね。あとは、若くしていろいろやっているので、その分トレンドではないですけど「今そういうのあるんだ」とか刺激をもらえるのですごく助かっています。

――佐藤さんと折茂さんは3歳差ですが、それでもやっぱり違う?

佐藤やっぱり「大学生」というのは大きいですね。うけている感覚が違います。

直井に対しては、自身が「ミニゲームおじさん」と自称してるだけあり、「なんとなくこんなゲーム」というのがポンポン出てくる引き出しの数と、ゲームのコアデザインとかは学びしかないなと。ゲームプランナーとかゲームプロデューサーとして入って、実際にその運用タイトルでお知らせ作ったり仕様書切ったりマスター入れたりはすれど、ゲームそのものの部分を作るっていうことは全くやってこなかったわけですよ。そこは必要なスキルも知識も全く違うと思うんですけど、プランナーってひとくくりにされているがゆえに、「プランナーならゲーム作れるでしょ?」みたいな感じの流れになりやすいと思うんです。でも、やっぱり頭の使い方もぜんぜん違うしそこはちゃんと勉強しなきゃなって思っています。ずっとゲームの運営の部分をやってきて感じている課題ですね。

折茂僕が一番いい環境にいるなと思っています。実際にゲーム業界に入るまでは、業界に入ってもゲームを自分で作れるとは思っていなかったので。大きめな裁量権をもらい、ゲームを考えたり作ったりするという中で、僕はまだ全体的に仕事が粗い所も多いので、走りながら少しずつズレていくところを戻してもらっています。

佐藤走るの早いけどめっちゃモノを落とすよね(笑)。

折茂ようやく自分でちょっとずつ拾えるようになってはきました(笑)。そもそもどのレーンを走るかというところに対しては、直井さんがすごく教えてくれます。例えば、初めてインスタントゲームの企画書を作ったときに、一番最初にできたものって本当に「何だこりゃ?」みたいなものだったと思います。そこから、直井さんの「ここ変えてみたら?」っていうところをちょっといじっただけで、戸塚から「めっちゃ面白くなったね!」って言われたんです。そういう、これをこう直すとこういう違いがあるのかみたいなところっていうのは、感覚的にしか覚えられないところだと思うので、本当に助けられています。

折茂賢成氏

――直井さんはいかがでしょうか。

直井いやもう、ふたりとも若い。僕もふたりからすごく刺激を受けています。スピード感とかエネルギーといった部分ですね。僕も、年の割にはある方だと思うんですけど、やっぱり若い子のパッションとかエネルギーってすごく強いです。「何かを成し遂げよう」「何かを掴み取ろう」とする力に引っ張られて、どんどん物事を先にすすめていく。それがひとつひとつ色々なものを切り拓いて実現していくっていう様をたくさん見せてもらってるなと思います。

あと、ゲームっていうところに対しても、アイディアとか見せ方の部分は全然違いますね。これはもう、若さゆえのセンスかなと。センスというのは、時代に合わせて良し悪しが決まるものだと思っていて、この子達はこういうものに対して盛り上がるんだ、とか興味を引く、より良いものだと感じるっていうのがそれぞれ違うんですよ。さらにいうと、佐藤と折茂のように、たとえ3歳違うだけでも違ってきたりするんですよね。こういう若いセンスでモノが作られていかないと、業界にとっても良くないなと。だって、若い子が遊ぶものだったりするじゃないですか、ゲームは。若い子の心になにかを与えるものっていうのは結構多いと思うんです。だから、若い子がモノを作ってどんどん発信して届けていけるというところを横で見ていると、すごくいいものを見せてもらってるなと思います。そこで受けた刺激を元に、またいいものを作れたらいいなと改めて思いますね。

直井啓訓氏

――ちなみに、直井さんは2人とどのくらい離れているんですか?

直井佐藤とは一回り違いますし、折茂とはそれ以上離れています。僕がDSのロンチに携わったとき、ふたりは小学生とかですよきっと。

折茂ちょうど、これ作ってたんだよねって見せられたものが「小学生のときやってた!」みたいな。そういう肌感なんです。

――それはもう違いますよね、感覚が。

直井僕らが新しいと思っていたものに自然と触れていた世代なんですよ。自然に触れていたからこそ、当たり前にこれができていなきゃいけないとか、そういう感覚でゲーム作っていくと全然違うものができるんですよね。

――では「Buddy」のゲームづくりについて聞いていければと思います。スマホゲームでもコア寄りのタイトルが多い中、カジュアルに振っている理由などはありますか?

佐藤流行り廃りというのはどんどん移り変わっていくもので、ファッションとかもそうですが、クラッシクなものからロックなものまで幅広く変わっていきます。今はどんどんリッチ化していってシステムもどんどん複雑になっていってある種キメラ的なゲームが作られていて、それをみんな消費していくじゃないですか。その流れに疲れてしまい、逆に少しカジュアルにプレイしたいとか、放置でもオートでもいいからとか、逆張りのものがこれから流行ってくるのではないかと。

それと、面白さの本質の部分で共通するものがあると考えています。例えば、昔の横スクロールACTって、とてもシンプルですよね。ボタン押してジャンプするだけ、のように。でも、そこに微妙なリスクとリターンの駆け引きがあるからこそ面白い。そこの本質的な面白さは、今でも変わらないんです。なので、カジュアルゲームが廃れることは無いと思っています。

「Buddy」ではカジュアルゲームでかつ、PvPもしくは共闘みたいなところをテーマにしていますが、これもゲームの昔から変わらない本質かなと。誰かとなにかやってそこにコミュニケーションが生まれたり、興奮の分かち合いがある。これは絶対廃れません。しかも、今はe-Sportsの流れがあり、スポーツ的な対戦ゲームは流行ってくるはずです。見ていてわかりやすく、でも実はディープみたいなゲーム性はe-Sportsとして流行っていくだろうと考えています。

直井生き残りやすさという意味合いでは、ゲーム性がシンプルであればあるほど、これから先に出てくるであろう様々なデジタル機種に残していくことが容易であることも利点だと思っています。例えば『テトリス』って、時代に合わせて媒体を変えながら、今でも残っていますよね。シンプルであればあるほど残し方の手段がすごく広くなるんです。こういう流行り方や残し方もあるなと思っているんですよね。

佐藤インゲームで勝負している以上、それがある種資産というか、IPみたいなものなので、それが残っていくかなあと思っています。

――『TRiPAL』のリリースは2019年10月ですよね。構想自体はいつ頃からあったのでしょうか。

直井8年前にほぼ完成していました。ずっと熟成させていたんですよね。この世の中に『TRiPAL』を出して、ちゃんと価値になるようなタイミング、そういう市場になっているかどうか。簡単に言うと「作ったはいいけど出しどころはどこだ」と言われていたんです。当時は。


――ということは、最初からFacebookゲームとして出そうと思っていたわけではないと?

直井一番最初は思っていませんでした。あくまで、単発のネイティブアプリとして出そうと提案したところ、そこに戸塚から「インスタントゲームの市場はどうだろう」と言われたんですよ。チャレンジしたいという気持ちもあっただろうし、試したいというのもあったんだと思います。それで、Facebookゲームのほうが合うんじゃない?と。

――実際、8年越しにリリースされてみていかがですか?

直井元々、ゲームのコア部分に関しては個人的に手応えを感じていて、たくさんの人に手軽に遊んでもらえるっていうコンセプトは達成できたのかなと。オリジナルであるというところも、ひとつコンセプトだったので、その2つが8年経ってもちゃんと守れていたというのは、先程話したゲームの本質的な面白さは変わらないというところに、改めて確信を持てたなと感じています。

面白かったのは、Facebookにあわせていくつかルールは変えているのですが、ユーザーから「前のルールに戻したほうがいい」っていう連絡が来たことがあって。それがすごく嬉しかったですね。ベトナムの方だったと思うんですけど、これはこういうゲームにしたほうが面白いっていうような感想がダイレクトに届くんです。ちゃんとそのゲーム遊んでくれて考えてくれてる人がいるんだ、すごく深く楽しんでくれてる人がいるんだっていうのはすごく嬉しかったです。Facebookゲームって、いきなり全世界へのアプローチになるんです。ここはすごく利点だと思います。

――若者代表の折茂さんに聞きたいのですが、はじめて『TRiPAL』をプレイしたときどう感じましたか?

折茂戸塚から飲みの場で「ネクストUNOを狙う」と言われて見せてもらったのが『TRiPAL』の企画でした。それを見て「面白っ!」て思ったんですよね。これが「Buddy」に入るきっかけの一つでもあります。

元々、重いゲームよりはライトめのゲームが好きで。どっちかというと最近のゲームはやっていなくて。昔からスマホでできるようなカジュアルな、シンプルかつディープみたいなところが大好きだったので。フィーリング的にはピッタリ、ドハマってる感じでした。一般的な僕世代の感覚はわからないですけど、僕的にはそういう感じでしたね。

――ライバルはUNO先輩?

直井構想時はそもそも新しいトランプゲームを作ろうと思ってたんです。だから、その時はトランプだったし、大富豪がライバルでした。それで、一回大富豪のアレンジゲームみたいなのを作った時がありまして。そのときに大富豪を調べたんですが、ものすごい数のアレンジルールがあって、大富豪というものがすごく広がりを見せているというのを見たんです。トランプのゲーム自体とても奥が深いという目線にまずなりました。

その後、そもそもトランプで遊べるゲームって山ほどあって、もはやトランプって、一つのプラットフォームだなと考えました。こいつは凄いんじゃないか、自分も歴史に名を残すならトランプのゲーム一個くらい作らなきゃなと。そこでいくつか作ってみたら『TRiPAL』ができて。

トランプのように、普段みんなが日常的に触れているようなものに、リスペクトを感じるんです。あまりにも日常的すぎて凄さがわからないだけなんだと。ずっとトランプの新しいゲーム作れたらいいなと考えていて、じゃあいざ、実際『TRiPAL』を作って世界中の人達に届けようとなったときに、このゲームがどういうゲームでそれを広めていこうとするとライバルというか競合ってなんだろうっていうのを改めて見直してみたところ、「UNO」ってものすごいなと思ったんですよ。そもそも沢山の人がやってるし、電子機器いらずなので色んな国で、カード一個あれば遊べちゃう。さらに「UNO」をどんどん見ていくと、そもそも色さえわかればある程度遊べるという優れたゲームになっているんですよね。そりゃあ、これだけ流行るわ、と。そういうものに並べてこそ自分が一つゲームを作るというものに対して何かができたと言えるんじゃないかと思ったんです。

『TRiPAL』は「UNO」とはまた違った楽しみ方だけど、低年齢層が触っても、もう一回もう一回って遊べるようにできています。これはもう頑張ってUNOを超えるしかない。せっかくだからそのくらいやんちゃなことにチャレンジするのも、そういうやんちゃなことを掲げるのもアカツキ流だったりするのかなと。アカツキが掲げている「ハートドリブン」っていう考え方だったりするので、そこを提唱してみました。

佐藤修学旅行で「UNO持ってきてる人!」のなかに「『TRiPAL』持ってきてる人!」が出たら勝ちですよね。

『TRiPAL』開発の際は、リアルトランプでプレイすることも。

――そんな『TRiPAL』をリリースしてからしばらく経ちますが、ユーザーさんからの評判やフィードバックはありましたか?

直井Facebookのコメントなどで結構頂いてたりします。遊んでる地域はまちまちで、ベトナム、タイ、インドネシア、エジプト、フィリピン、メキシコ、ブラジルとかとか……。

佐藤あまり普通にゲームを作っているとそういうところからの評判は届きにくいですよね。

直井そうですね。そもそも遊んでもらうまでが大変。

佐藤ありがたいことに、コメントを貰うんですが半分くらい読めないという。翻訳かけないと(笑)。

直井まず、グローバルに通用するものにする、というのを決めていて。世界観も、カジノ風だったり今のカードゲーム風だったり、宇宙案っていうのも出しました。宇宙はグローバル、どこの世界にも通ずる案です。結果的には、老若男女全世代に通ずるデザインに持っていきましたが。

――キャラは『TRiPAL』だから「トリ」なのでしょうか?

直井これも案をいくつか出したんですよ。とにかくキャラがなんかあったほうがキャッチーになるからと。今のキャラは、頭脳戦の『TRiPAL』は知恵・賢さの象徴というところでフクロウにしました。どこかにキャラとしてのフックは付けたくて「なんかムカつく」っていう表情をしてもらうことに凄くこだわっています(笑)。そこはデザイン担当のセンスだと思いますし、何度も直してもらいました。かわいいとかではなく、何かを残したかったんです。ちょっとイラッとするけど、そこまでなんですよね、所詮トリなので(笑)。ちなみに、フクロウの名前は青いほうが「ブルーノ」、赤いほうが「レディー」です。これは単純に色から来ています。

――折茂さんは『TRiPAL』開発時に、どのような意見を出されていたのでしょうか。

折茂最初、三輪車という意味がある『トライク』というタイトルで、どこかで三輪車出てくるのかなと思ってたんですよ。でも、三輪車出てこなくて(笑)。ゲーム内容は完璧なのにタイトルが……とずっとずっと考えていたので、思い切って「ここは変えたほうがいいんじゃないですか?」と提案しました。

そのときに提案したのが『TRiPAL』というタイトルでした。3つのカードで戦うので、トライとかトリとかを入れつつ、仲間や誰かと遊ぶというのを重視したかったので、友達という意味の「PAL」をつけて『TRiPAL』です。最初、読みは『トライパル』だったのですが、日本では4文字が浸透しやすいというトレンドがあったので、『トリパル』にしました。

直井『トライク』は8年前につけていた名前なのですが、「トライ」は3つという意味で、3つのカードで戦い合う・ぶつかり合うという意味での「ストライク」に掛けていたんですよ。それが、折茂的に言うと、「いかにも日本人が付けそうな、外国人にバカにされそうなタイトルッス」と言われて(笑)。でもすごく納得感があるんですよ。確かに、と。自分たちの国の意味で三輪車って名前のカードゲームがあってやってみて一切三輪車関わってなかったら、そりゃなんだろうってなりますよ。

――タイトルのような、凄く大事なところに若手の意見が取り入れられているんですね。

直井凄く大事なんですけど、そこは若手とか関係ないなと。正しいものだけ選べば、一番いいんです。

――第2弾タイトル『Word Wars』の発案も折茂さんが?

折茂最初は本当に追い込まれていました。10数本企画を出してみるというミッションを、どのくらい大変なものかわからないまま「やります」って戸塚に言ってしまったので……。それで、ギリギリ10本目に出したのが『Word Wars』でした。

それまで考えていたのと違って、ポンっと出てきたんですよね。シンプルかつディープというのを最も体現できているかなと思います。Facebookではワード系のゲームの人気が高く、ワード系ゲームで新しいトレンドを作りたいという想いがありました。それで、海外ではあまりメッジャーではない、日本の「しりとり」というカルチャーを英語で逆輸出するという着想のもと、協力会社さんと「バディ」として企画を出しながら、ブラッシュアップしていきました。

日本に染み付いているカルチャーだからこそ、英語にするのが難しくて。例えば「ん」にあたるものがなかったりとか、aieouの母音の割合が凄く多かったので、同じ確率で出すと全く言葉が作れない難しいゲームになってしまう、とか。調整が難しかったです。


――ご自身で発案したゲームが世に出てみて、どう感じていますか?

折茂大学生時代にもゲームはちょこちょこ出してはいたんですけど、ちゃんとした企業で、数万~数十万という人に遊んでもらえるのはすごく嬉しいです。全世界向けかつ、フィードバックがすぐに来るプラットフォームというところもあり、成績表が次の日に見られるようなドキドキ感もあります。普通に大学生を過ごしていたら味わえないので、シンプルに嬉しいです。

佐藤折茂はインターンであることがもはや強みにしか思えませんね。「若い」という事とか、「入社前」とか。全てが強みですね。インターンとスタジオを組むっていうことは実はそんなに驚かなかったんですよ。アカツキらしいなと。

折茂直井みたいなベテランがいるし、佐藤みたいに『ハチナイ』をやってるような人もいて。ストーリー豊かで、アカツキらしい生まれ方な気がしています。

――それでOKを出すのが、まさにアカツキというか。

直井今回、改めてこう話してみると、スタジオ結成時や、Facebookプラットフォームを勧めたりと、重要なところはやはり戸塚が判断しているんだなと感じますね。存在感があります。

佐藤社内メンバーは実質ここだけなんですけど、興味を持ってくれたり共感してくれる人、手伝ってくれる人もいっぱいいるんですよ。それこそ、デザイナーとして2ヶ月だけヘルプに入ってくれる人がいたりだとか、キャラ作りを仕事終わりにやってくれたり。色んな人が「Buddy」を支えてくれています。戸塚ももちろんそうです。隣の席にいるんですけど、たまにフラフラ話しにきてくれるんですよね。本当にありがたいです。だから、あまり箱っていう感覚はないですね。「Buddy」というシンボル的なものがあって、そこに集まってる気がします。


――「Buddy」単体で求人を出していくことも考えているのでしょうか。

佐藤アカツキに共感してくれる人と、「Buddy」に共感してくれる人とでは、また性質が違うと思うので、出していきたいですね、インターンとかも受け入れていければと。

「Buddy」に共感してくれる人って、ある種クリエイター気質が強い人なのかなと思います。そういう人材は、アカツキにも今後必要不可欠になってくると考えています。その意味も込めてブランド分けしている部分もあります。

――それでは、最後に今後の抱負をお聞かせください。

直井ひとつは“ミニゲームおじさん”として今まで作ってきたもの、これから作っていくものを、色々な人に届けられたらな、そう素直に思っています。もうひとつは、若手がどんどん力を発揮できるように、自分の培ってきたノウハウを伝えていければと思っています。より活躍してもらって、若手が楽しいと思えるゲームとかを表現できるようサポートできたらなと。

箱というくくりではなく、様々な形で協力できるので、改めて日本からオリジナルゲームが出て、それが世界中の人達を熱狂させるっていうシーンをまた見てみたいですね。長く日本のゲーム業界で育ってきた自分はそんなことを思っていたりするので、自分の力をうまく使ってもらえたらなと考えていいます。

折茂ゲームに関しては、やっと少しずつ面白いものができ始めていると思っています。なので、このままカジュアルゲームに対するインプットをしながら、世の中に面白いものを出して行ければという気持ちがあります。

あとは、この立場でゲームを作ることができるのは、本当にいい経験だなと思っています。反面、人手不足というのもありますので、ここに学生たちが入ってきてくれたら「Buddy」として嬉しいですし、僕自身も嬉しいかなと。ゲーム作りたいけどあまり大きい市場で戦ったことがない、という人たちに、一番経験が重ねられて成長もできる場として、もっと「Buddy」を広めていければと考えています。

佐藤supercellさんがすごく好きで、『クラッシュ・ロワイヤル』を見ながら勉強してきました。だから、ネクスト『クラッシュ・ロワイヤル』みたいなところになりたいなとは思っています。シンプルかつディープで、世界の人々が熱狂できるようなゲームを作りたいんです。「Buddy」では“We are all Buddies”というのを掲げてるんですけど、まさしくそれを体現していきたいなと思っています。

一人の天才がゲームを作るよりは、様々な人たちが、様々な形で作っていく、というような世界にしたいですね。それこそ、なんとなくゲームの企画がある人や、芸能人の方でもいい。スポーツ選手が考える企画を、我々が一緒にBuddyとしてつくります。そんなやり方もあるかも知れません。アイディアの種はどこからでも芽になる可能性はあるはずです。そこを募りながら、絵がかけるので携わりたい、キャラクター作りたいとかとか……世の中の多くの人達が、みんなBuddyとして組んで、面白い作品を作っていき、世界で流行っていくのがすごく素敵だと思うんです。

様々な人達がクリエイターとして作品を世界に届けられる。「Buddy」も、ある種そういう思想というかプラットフォームみたいになっていきたいと考えていますね。


――ありがとうございました!
《編集部》
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