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“東京”への想いを、VR空間に生み出す─中高生が取り組むワークショップ「MEMOREUM TOKYO」に密着【レポート】

『マインクラフト』の影響でプログラムに興味を持った若年層も増え、また小・中・高校におけるプログラミング教育の必修化が決定、2020年から2022年までに順次実施するなど、デジタルを介した創造・表現の機会や手段が広まりつつある昨今。

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『マインクラフト』の影響でプログラムに興味を持った若年層も増え、また小・中・高校におけるプログラミング教育の必修化が決定、2020年から2022年までに順次実施するなど、デジタルを介した創造・表現の機会や手段が広まりつつある昨今。

11月3日・4日に渡って行われた「MEMOREUM TOKYO(メモリアム・トーキョー)」も、表現を形にするユニークな催しのひとつ。プログラミング教育を手がけるライフイズテックが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントと共同で開催したこのワークショップは、中学生・高校生を対象とし、VR空間上で「自分だけの写真展」を作り上げる機会を参加者に提供しました。


今回のテーマは“東京”。参加者は事前に撮影した写真を元に、このワークショップのために開発されたソフトウェアを使いながら、自由な発想でデジタル空間に写真展の構築に臨みます。本ソフトはオブジェクトの設置をはじめ、自由度が高いという特徴があります。そのため、発想やアイディアを形にしやすく、中高生の柔軟な思考を作品に反映させるのにうってつけと言えます。



「MEMOREUM TOKYO」の募集枠は30名ほどでしたが、その枠数以上に関心を寄せる方が多く、応募総数は80人超え。当日は、中高生の男女33名がワークショップに参加し、それぞれが自分だけの写真展作りに挑みました。ちなみに、男女の割合はほぼ1:1。性別を問わず、このモノ作りに興味を持った模様です。また、中高生の割合で見ると、中学生の方がやや多めという形に。デジタル媒体によるモノ作りが、幅広い年齢層に広がっている実態を窺わせました。



「MEMOREUM TOKYO」は11月3日の昼過ぎから始まり、参加者たちが作品作りをスタート。18時に一区切りつけた後、翌4日の10時から再開し、午前・午後を使って自身が感じた“東京”をVR空間に構築。時折、メンターに助言を求めたり、参加者同士で意見を交わすシーンなども見受けられました。



全体的な雰囲気は、ワークショップながらも非常に和んでおり、堅苦しい空気などはありません。作り上げた世界をPS VRで確認する際などは、驚きや感心の声を漏らすメンターとにこやかに会話を交わすことも。それでいて、PCに向かうと一転して高い集中力を見せ、撮影するカメラの音や撮影者の動きに気を取られる様子もありません。テーマの“東京”をどのように捉え、自身の想いを如何なる形に出力して表現するのか。創作活動に向き合う真摯さに、年齢の差はありません。



作品作りの合間には、PS VRの装着に関する注意点の説明や、モノ作りにおけるアドバイスなども行われ、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの秋山氏がマイクを握る場面も。秋山氏は、思考はまず文字となり、その文字を形にしてくことは芸術作品を作るのと同じだと語り、「ビルド&ブレイク」という言葉を参加者に贈りました。構築しては壊し、壊したところからまた作り出す。ゲームでもしばしば行われるその行為は、モノ作りにおける重要なポイントのひとつなのかもしれません。



2日間に渡った「自分だけの写真展」作りが終わると、まずは出来上がった作品を披露する体験会がスタート。参加者同士が互いの作品に触れるだけでなく、参加者の保護者も作品を体験。PS VRを装着した瞬間に「すごい!」と声を上げた方もおり、若い感性が生み出す刺激を多くの方が味わいました。



VR空間は360度全てに広がるため、作品の隅々まで知ろうと真上や真後ろを向く人も続出。こだわって生み出されたの作品が、受け手の好奇心を大きく刺激した光景とも言えます。


体験者が見ている光景はモニタにも出力されており、時にはひとつのモニタに多くの参加者が集まることも。実際に作品を作り出したからこそ、他の人が作り上げた世界の魅力や素晴らしさをより感じられるのかもしれません。


また、ある参加者の作品が上手く読み込めないといったハプニングも発生。徹底して作り込んだその作品は、画像枚数もかなり多く、そのためデータが大きすぎた模様です。画像をリサイズして再度取り込んだことで、無事体験が可能に。モノ作りは、壁にぶつかることもしばしば。これも一つの良い経験になったことでしょう。







歓声や拍手も時折あがった体験会が終わった後は、各テーブルごとに発表会を実施。“東京”というテーマをどのような感情で紐解き、それを形にしのか。その想いや表現方法などをそれぞれが語ると共に、体験会で寄せられた感想なども振り返ります。自分の感情から生まれた表現が、見る者にどのような形で伝わったのか。その手応えや結果は、作品を作り上げた者だけが得られます。


各テーブルの発表会が落ち着くと、貴重なひとときを体験できた「MEMOREUM TOKYO」も終わりの時間が訪れます。その締めくくりとして、Edvation×Summitの代表であり、デジタルハリウッド大学大学院教授を務める佐藤昌宏氏が登壇。今回のワークショップで、参加者一同はPS VRやソフトウェアなどの“技術”を活用しましたが、彼らの世代が次の新たな技術を生み出すと、参加した中高生たちの未来に向けて力強いエールを贈りました。

このワークショップに参加したことで何を得たのかは、参加者個々人で異なるかもしれませんし、クリエイターの道を歩むかどうかも分かりません。ですが、自分の想いを表現し、誰かに伝えようと邁進したモノ作りの経験は、これからの人生を自ら変えるきっかけのひとつになる可能性もあります。


33名の参加者に刺激を与えたワークショップ「MEMOREUM TOKYO」のこれからについて、担当の方にお話を伺ったところ、「今後の予定として決まっているものは、まだ何もありません」と、少々残念な回答が。しかし、可能であれば開催地やテーマを変え、これからも行いたいとの意向も伺いました。「MEMOREUM TOKYO」が新たな展開を迎えれば、また新たな参加者が得難いひとときを体験できることでしょう。そんな未来が来ることを、ささやかながら願うばかりです。
《臥待 弦》
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