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無意識のうちに生まれる思考の枠を外せば、人の可能性は無限大―島根県クリエイター鼎談

島根県出雲市出身で日本だけにとどまらず世界で活躍する企業の代表にお集まりいただきざっくばらんな鼎談を実施。故郷と世界の関わり、モノづくりで「ダークサイド」に落ちないための取組、人間の秘めたる無限の可能性まで幅広いお話を伺いました。

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田舎で育ったことの良さとは



――松江市って20万人ぐらいの都市ですよね。近隣を合わせて60万人くらいだと言われましたが、それってカナダのケベック・シティと同じくらいですね。自治体のゲーム産業支援が非常に盛んな地域なんですが、人口が少なくて、周りがみんな知り合いだから、悪いことができないって言っていました。

塩田それは良いですね。でも出雲って、こういうコンセプトでいくんだみたいな物がないですよね。

鮄川たしかに、出雲はなかなか。

塩田みんな仲はいいけど、要は、この市をこういうビジョンで、こういう場所にしていくんだっていう、そういうリーダーシップがないんじゃないかなって思っていて。

鮄川ばらばらですよね。直良さんの会社では地元で採用をされているんですか?

直良まだ弟と2人だけなんです。ただ、弟子を一人採ろうと思っています。自分が高校生の時、絵の道に進みたいなと思っても、誰も教えてくれる人がいませんでした。自分がガキだった時に「こんなのあったら良かったのに」といったことを、少しずつやりながら地元に恩返ししていきたいと思っていて。ちょうど出雲北陵高校に美術コースができたこともあり、そこで講演をさせていただいたり、生徒さんに職場見学に来てもらったりしています。ネットワークはあるので、弟子にいろいろと教えながら、誰かを引き合わせたりもできるでしょうし。

塩田直良さんの弟子は僕もやってみたいぐらいです。一回かばん持ちをしてみたいな。どういう感じでやってんのか。

鮄川田舎で育ってよかったなって思います?

塩田僕は思います。ピュアでいられたのが良かった。

鮄川それありますよね。

塩田みんな自然の中で遊んで育つじゃないですか。東京で子育てとか、すごく難しそうだなと感じていて。こないだ出雲高校で講演させてもらった時、先生がたの中に、おやじの知り合いがいたんです。アカツキで大事にしているビジョンについて話したんですが、講演が終わったあとで、「元規くんは気づいてないかもしれないけど、君の父親も、同じようなことを昔、言っていたんだよ」と聞き、驚きました。


直良そんなドラマが・・・。

塩田その時に、そういった考え方というのが、島根県の出雲市のあの場所で、あの自然の中で育ったことで、自然に育まれたんだなと気づきました。だから自分の子どもも、出雲市かは別として、同じような場所で育てたいなっていう想いがあります。

鮄川自分も同じですね。自分の親はもともと広島県出身なんですよ。島根県立中央病院の医者だったので、自分も出雲で育ったんですが、親が定年になって、広島に戻っちゃったんです。ただ、自分が育ったのは島根じゃないですか。それもあって、開発拠点ができて地元に帰ることが増えました。それが縁で、また繋がりが増えて。

塩田良いですね。

「足るを知る」ユニークな県民性


直良前に町おこし事業の一環として、地元の意識調査をしたことがあるらしくて、結構な人数が現状で満足しているという結果を見たことがあったんですよ。

鮄川地域別の最低賃金でも最低ランク(*1)なんですよね。だけど幸福ランキング(*2)は上位に位置していて。
(*1)地域別最低賃金の全国一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
(*2)47都道府県「幸福度」ランキング
https://toyokeizai.net/articles/-/221831?page=3


塩田それ面白い。ブータンみたいですね。


鮄川企業が出す求人の給与水準と、求職者が求める給与水準を比べても、求職者が求めるほうが低かったんです。欲がなさすぎるっていう。

塩田「足るを知る」を身につけているというか。

鮄川逆にいうと、ハングリーさがなさすぎるのかもしれない。

塩田世間の風潮とは逆じゃないですか。今の世の中は競争が是とされている社会ですよね。僕も以前は、そういったハングリーさがない点に歯がゆさを感じていたところもありましたが、それはそれですごいなって思うようになりました。そんな県民性なんだ、島根っ子は。

鮄川最近だと、出雲村田製作所にブラジル人の従業員が300人くらいいるよね。しかも同じエリアに集中してるから、教育現場が混乱していると聞きました。母国語がポルトガル語だから。

直良大みそかに、近所のお寺に鐘つきに行こうと思って歩いてたら、ポルトガル語で、「最近できた24時間のスーパーはどこですか?」と、片言で聞かれましたよ。

鮄川松江市にもRubyで外国人エンジニアが集まっていて。東京より人件費も安くて済むし、落ち着いて開発をしてくれています。東京だと生活に慣れたあたりで、いろんな誘惑もあったりして、途中で転職ってのも多いんですけど。


塩田仕事をするうえで、家族と暮らす時間を増やすのは、やりやすそうですよね。それがビジョンなのかも、出雲市の。幸せ度を上げるというのが。

――外国人労働者といえば、浜松市の例が有名ですが、景気に左右されがちなんですよね。工場労働者がメインだから、景気が悪くなると雇い止めにあったりする。ただ、IT業界だと雇用調整による弊害が少ないかもしれませんね。

鮄川そもそも、全体として人が足りないですから。それにクリエイティブ系だと話は違うかもしれませんが、プログラマーだとプログラミング言語が共有言語だったりします。

直良クリエイティブでも外国人と仕事する機会が増えてきていますよ。特に中国との協業が多いですね。また台湾が顕著ですが、そもそも文化的な親和性が高いので、仕事がすごくしやすい。コミュニケーション面でも、漢字を見てるとなんとなく伝わるところがあるし。だからクリエイティブでも、ボーダーレスになってきてる感じはすごくしますね。

塩田台湾に開発拠点があるので、めちゃくちゃ実感してます。しかも成長スピードがまじで速くないですか? すごいですよね。

直良美大系が充実しているようで、みんな基礎画力がある。日本人って自分もそうなんですが、落書きや趣味から始める人が多いんで、基礎画力が弱いんです。そうした下地があるうえで、会社でも教えてもらえる、日本的なコンテンツにも憧れがある、ネットでも作品を披露できるとなると、たしかに成長速度は早いですね。

――しかも上海の方が東京より人件費が高かったりしますからね。出雲空港(出雲縁結び空港)は国内線のみですが、米子空港(米子鬼太郎空港)にはソウル便と香港便があるので、もっとアジア圏との交流が深まると良いですね。

地方と東京と世界、それぞれの距離感


塩田アジアの玄関と言えば福岡ですよね。アカツキも福岡にオフィスがありますが、福岡はハブ化してますよ。むちゃくちゃアジアの人たちが集まってる。

直良米子市にはデジタルハリウッドSTUDIO米子があるので、どのくらいクリエイティブ系の素養があるのか、今月末に戻ったら、見てこようと思っています。

鮄川デジタルハリウッドはフランチャイズだから、やろうと思ったら開校できると思いますよ。

塩田直良さんに学長をやってもらう。

鮄川直良さんは人柄も良いから。


直良まさに高知県が会社の誘致を始めた(*)じゃないですか。だから何か面白いことができる土壌だとは思うんです。ただ、エンジニアにしてもIターンが中心と伺って、ちょっと考え方を変えないといけないかなとは思いました。
(*)参考ゲームと漫画が地方を盛り上げる!課題先進地”高知県”が取り組む地域振興 https://www.inside-games.jp/article/2018/05/30/115033.html

鮄川いっそ外から人を集めるのでもいいんじゃないかなと思いますけどね。

塩田確かに直良さんの弟子を1人とはいわず、たくさん採るといったら、東京からでもバーっと行くんじゃないかなと思います。実際、アカツキからも送りたいと思いましたもん。

直良まじですか。

――20代後半で、人生で最初の踊り場にさしかかってるような人たちが、1~2年修行をかねて、無給で良いから行かせてくださいという需要は、結構あると思いますけどね。

鮄川しかも生活費安かったら、企業も行かせやすい。

塩田むしろインターン費で出すぐらいの感じで。直良塾を開校してもらって。日本のクリエイティブを高める人、フロム島根みたいな。

鮄川それいいじゃないですか。島根県はまつもとゆきひろさん(*)だけじゃないぞと。
(*)プログラミング言語、Rubyの開発者。松江市在住。

塩田そう。Rubyの次はクリエイティブだって。両方がそろってる県なんてないから。

――地方と東京と海外のバランスをどのように捉えていますか?

鮄川モンスター・ラボだと12カ国21都市に展開しています。自分たちに特徴があれば東京を経由せずに、海外から直接仕事をとってきたり、地方から海外に直接クリエイティブなものを発信していったり、普通にできるかなと。地方企業でも海外に拠点を置くことで、そこから視野が広がることはあると思います。


塩田出雲や地方って、基本、東京見る人が多いですもんね。

――地方だと外国人と出会う機会が少ないという点も、理由の一つにあると思います。

直良実は子どものときから、なぜかおやじの友達でベルギー人がいて、しょっちゅう家に来てたんです。そのため、外国の人に全然抵抗がないんです。

鮄川それは珍しいですね。実際、子どもの頃は外国人を、ほとんど見たことなかったですもんね。

直良世界中どこに行っても絵を描いて見せればわかる、みたいなところもあって、あんまりこだわりがないというか。それこそもう、iPadが1枚あれば、どこでも仕事できちゃうんで。

鮄川そんな風に考えると、地方で月の半分を過ごすという働き方も、もっと増えてもよさそうですよね。特にクリエイティブやエンジニアとか。

直良自分も人に勧めているんです。いいもんですよ。東京って仕事をしにくる場所だという感覚が強いので。それに対して地方は生活する場所というか。いろんなものを感じたり、体験できたりすることが多いから、インアウトの関係ができていいんです。

ただ、鮄川さんの場合は、もっとわけがわからなくなりそうですね。世界中を跳び回られているので。時差ぼけはしないんですか?ちょっと前にボストン行ったときも、とにかく眠くて仕方がなくて。


鮄川ヨーロッパとか西側は大丈夫ですけど、アメリカはきついです。ボストンといえば、すごくIT系やクリエイティブ系で盛り上がっている街の一つですよね。国っていうよりも、今は繁栄の単位が都市単位になっている気がする。

――20世紀は第二次産業が中心でしたから、経済発展には工場が必要でしたが、今は違っていて。特にIOT産業は人が重要ですよね。モントリオールにしろ、バンクーバーにしろ、メルボルンにしろ、ゲーム産業では都市単位で発展しているところがあります。

鮄川ですよね。だから確かに「中海・宍道湖・大山圏域市長会」にしても、わりと筋が良い話で。問題はそこにどんな絵を描くかですよね。構想だったり、戦略だったり、人材の意識改革だったりが求められていく。

塩田さっきのIターンの話じゃないですけど、今や世界中のどこでも働けるわけじゃないですか。だからこそ、何かで突き抜けてブランド化される必要がありますよね。それができれば、世界と繋がれる。

縁結びの街、縁作りの街、出雲



鮄川地元で何か将来したいことってあります?

塩田心躍る街、エンタメシティを作りたいんです。そう遠くない時期にやりたいと思っていて。それが出雲である可能性も、ゼロじゃないのかなとは思っているんですけど。

直良フリーになったとき、ディライトワークス社長の庄司と、徳島の「マチ☆アソビ」というイベントを視察に行ったんです。あの規模でイベントを定期的にやってるのがすごくて、将来的に出雲でやるのもアリかなと思ったんですよね。

塩田おもしろそうですね。

直良そんな風に何かしら「点と点」があるのは分かってきたんで、その先の将来像やビジョンみたいなのが出てくると、もう少しおもしろそうなことできそうな気がして。

――「マチ☆アソビ」のようなイベントが地元にあれば、出ていった人が一時的にでも帰ってくるきっかけになりやすいですよね。

塩田むちゃくちゃあると思います。東京の人たちって、基本的にすごく忙しいじゃないですか。「忙」という字は「心を失くす」と書くわけで。そうした状況をリブートする必要は絶対あるから。どこか地方でイベントがあると、行きたくなりますもんね。それでその街のことを好きになったりする。


鮄川ありますね。

――「NHKのど自慢」が一番盛り上がるのは、人口30万人ぐらいの都市らしいですね。お互いがお互いを知っているから。あそこのあの子が、鐘一つだったみたいな。

塩田それもまた地方都市ならではですよね。

直良自分はまだ、町おこしなんて大それたとこまでは考えられませんが、きっかけにはなれる部分もあるのかも、とは思います。地元に帰ったのも、仕事のモチベーションにつなげたいというところがあるので。逆にお二人の話を聞いていて、ちょっとうらやましいと思っちゃうんです。仕事を通して、そういったことまで表現できるというのが、すごいなと。

塩田直良さんのクリエイティブがあれば大丈夫ですよ。逆にいうと、最強のコンテンツがあるわけだから。結局、最初の火をつけるのが一番大変じゃないですか。それを表現できる能力は唯一無二だから。それを広げるのは、僕らでもできると思う。

直良塾でもつくりますか。

塩田直良塾は是非つくってほしいですね。

直良考えてみますか。古民家かなんかを借りて改造して。いろいろと考えて、また相談に乗っていただくことがあるかもしれません。

塩田ぜひ。相談したいことは僕も山ほどあります。直良さんは本当に、市長をやったらいいんじゃないですか?

直良親戚に市長やってた方がいたので真似できないですよ。

――そんなふうに、知り合いに○×がいるみたいな話が、普通に出てくるところが地方都市のよさですね。

塩田それは確かにそうだと思います。

次ページ:誰とやるか、何をやるか、どこでやるか
《小野憲史》
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