人生にゲームをプラスするメディア

【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃

「VR元年」と呼ばれた2016年、その象徴のひとつとも言えるPlayStation VRが発売されました。また同時に、多数のPSVR専用ソフトが登場して話題に。その中でも特に注目を集めていたのが、バンダイナムコエンターテインメントの『サマーレッスン』です。

ソニー PS4
【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃
  • 【TGS2017】『サマーレッスン:新城ちさと』の体験は“心理のコミュニケーション”! この1年の歩みやVRの今後についてプロデューサー・玉置絢に直撃

◆バンダイナムコエンターテインメントがVRに意欲的な理由は、その歴史にあり



──『サマーレッスン』はもちろん、「VR ZONE SHINJUKU」といった一大施設への素早い取り組みなど、バンダイナムコさん全体がVRへのアプローチをかなり意欲的に行っていますが、その原動力や活動的な理由などがあれば教えてください。

玉置氏:これについては、「バンダイナムコという会社からの見方」と「作っている中の人間からの見方」の2つがあります。前者については、「VR ZONE SHINJUKU」の小山が言ってることでもありますが、「バーチャルという概念に対して、真摯に向き合ってきた歴史」があるんですよ。これは、私が入社する前からすでにあります。

「3DCGの向こうには仮想世界があり、現実ではない第2の世界が作れる」という考えに熱中してきた色んな先人たちがおりまして。そこから、様々な思想、技術やノウハウ、多彩なデータや人材などが作られ、積み重ねられてきました。

『サマーレッスン』の最初のデモは2ヶ月で作り上げたんですが、それまで積み上げた何十年もの蓄積があったからこそ、2ヶ月で作ることが出来たんです。そういった、バーチャルに対して向き合い続けた歩みが、原動力のひとつになっていると思います。

──なるほど、その歩みの最先端が「VR ZONE SHINJUKU」であり、『サマーレッスン』なんですね。

玉置氏:あともうひとつ、これもバンダイナムコ特有の心がけかなと思いますが、ユーザーさんに対して「芸術作品」を押しつける考え方をあまりしないんですよ。

──それは、どういう意味ですか?

玉置氏:どちらかというと、ユーザーさんは暇を持てあまし退屈してるだろうと考え、どうにかして驚かせたり喜ばせてあげたいという「大衆娯楽」の精神が根底にあるんです。

そもそもバンダイは、玩具を多くの方に向けて作らないといけなかったですし、ナムコは元々ゲームセンターから始まっているので、ゲームセンターに来た方に何が出来るかという考え方を持っていました。

──バンダイもナムコも、「いかに人を動かすか」を軸に置いていたんですね。

玉置氏:元々そういった考え方があり、「とにかく集中して一点突破で斬新な要素を据えて、その人の感情を早く大きく動かしたら勝ち」という哲学が根付いていたんです。その哲学を踏まえた上で『サマーレッスン』が選んだのは、「人間としか思えないキャラクターが出てきて、距離感がめちゃめちゃ近い」という一点突破でした。

「(VRなので)銃が撃てたりした方がいいんじゃないか」「剣が振れる方が」「もっと広大なアルプスみたいなファンタジー世界が見えた方が」みたいなことを、色んな人から色んなことを言われました。でも、「ここさえクリアできれば、ユーザーさんは絶対いいって言うから!」という軸をブレさせなかったから、ここまで来ることができました。

多くの方々に、『サマーレッスン』はああするべきこうするべきと仰っていただきました。それらは間違っておらず、全て正しいお話なんです。我々は、その中で一番美味しいポイントを押さえたと思っているので、「後は『VRキャラクター業界』みんなでやっていきましょう」という気持ちです。

──ここまでが、「バンダイナムコという会社からの見方」なんですね。


玉置氏:はい。そしてもうひとつの「作っている中の人間からの見方」です。まず原田(原田勝弘氏。本作ではクリエイティプロデューサーを担当)の見方を話しておくと、原田は原田で、自分とは異なる見方があり、原田にとっては学生時代のゲームセンター体験から「バーチャル」という体験に対しての強い思い入れがあるのだと感じています。

そして私自身の見方としては、原田とは違う角度の考え方を持っていました。少し話が変わりますが、私が大学生の頃は、YouTubeやニコニコ動画ができて、アニメ文化などがまた流行ってきた時代なんです。

──「涼宮ハルヒの憂鬱」での盛り上がりや「初音ミク」の登場といった時期ですね。

玉置氏:その時代に、フィクションのキャラクターに対して、インターネットや動画を活用して表現したり語り合う量が爆発的に増えたじゃないですか。こういった際に、日本のコミュニティ文化としては、“キャラクターは『この世』に本当に存在するもの”として捉えたり扱かったりするんですよね。

──存在する前提で好意を寄せたり崇拝したりしますよね。「俺の嫁」という発言も、まさにそうですし。

玉置氏:あるキャラクターが好きな人にとって、「そのキャラは実際にいないけども、それはそれとして楽しもう」ではなく、「いる、と思った方が楽しいよね」というスタンスを取る。そういう文化があると思ったんです。この「いないものをいるように見なす努力」とか「いると考えて扱っていく」という楽しみ方はトレンドになると考え、日本の強みになると思っていました。

そしてこの考えが、『サマーレッスン』のバックボーンになっているんです。もともと「いない」ものを「いる」と考えているのですから、そこへ「本当に実際の人間が『いる』としか思えない」ものを作ったら、それに対して「会いたい!」というニーズは強く生まれる、と。

──おお、なるほど!


玉置氏:当時だけでなく今でも、架空のキャラクターを「いるもの」として取り扱うコミュニティは数多くありますし、実際に心の底からそうは思っていなくとも、遊んでみただけで「いる」と思えるキャラクターがいたら、それは誰にとってもやはりすごいわけですよ。

だからみんな、実際にサマーレッスンの世界で女の子に「会いたい」と思うわけで。なので、VRで実際に会えるというのは、日本発の独特の強みなんですよね。そういった世界になると予測して、『サマーレッスン』を作ったんです。

──「いないけどもいるとする」といった日本的な考え方は、“八百万”などまさにその通りですし、本来ありえないはずの形を与えて楽しむ“擬人化”もまた、日本人の感覚に合った接し方ですよね。

玉置氏:そうですそうです。その考え方が、VRとは切っても切れないと思います。ただでさえ日本は想像力が豊かな文化ですから、VRで足りない部分があっても多くと補完していただけますし、そこまで想像力がなくても「実際に本当にいる」と感じられるように作ってあるので。こういった作り方がVRの果たす役割のひとつなのかなと考えています。

もちろん、VRも未だ完璧ではありませんが、みんなが「いる」と感じているのは、日本に根付いた文化や社会が後押ししてくれているのだと思います。だからこそ、スタートアップが非常に早かったのかなと。

──歴史と文化の下支えがあってVRが発展していくと思ったら、なんだか感慨深いものがあります。『サマーレッスン』は、日本が持つ文化的側面からのアプローチでもあったわけですね。

玉置氏:「もっとゲームっぽいものにした方がいいのかな」とかをあまり考えなかったのは、こういった理由があったからで、そのためブレずに作り上げることができました。実際の反響をさまざま見ても、おおむね狙いは成功したと感じています。

《臥待 弦》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ソニー アクセスランキング

  1. 『モンハンワールド:アイスボーン』ミラボレアスを倒すために考えた7つのこと

    『モンハンワールド:アイスボーン』ミラボレアスを倒すために考えた7つのこと

  2. 『原神』稲妻には“自力で”行けるのか?ガイアやボートを駆使し、大海原を進んでみた

    『原神』稲妻には“自力で”行けるのか?ガイアやボートを駆使し、大海原を進んでみた

  3. 『原神』稲妻の各探索ギミックを解説!雷の種から結界まで、新天地の冒険を“13項目”でサポート

    『原神』稲妻の各探索ギミックを解説!雷の種から結界まで、新天地の冒険を“13項目”でサポート

  4. テトリスがちょっぴり苦手な『ぷよテト2』プレイヤー向け、テトリス基礎知識!覚えるだけで序盤の動きがグッとレベルアップするぞ

  5. 『モンハンワールド:アイスボーン』下手くそでも「ソロ用ムフェト・ジーヴァ」に勝てるのか? 新規救済に見えた“(ある意味)辛い狩猟”をレポート

  6. 『モンハン:アイスボーン』ミラボレアスの初見クリア率は約7%! 初戦の狩猟結果&先駆者たちのアドバイスを紹介【アンケート】

  7. PS5までの歴代PlayStation据え置きハードを振り返る!これまでの進歩とこれからの進歩を見比べよう

  8. 『モンハン:ワールド』俺たちの相棒「受付嬢」のかわいい姿を見よう! “全DLC衣装”でじっくり楽しむ受付嬢フォトコレクション【ワールド編】

  9. 『モンハンワールド:アイスボーン』あの「ベヒーモス」も今なら余裕で狩れる? マスター装備で挑むソロベヒーモス戦をレポート!【特集】

  10. 『FF7 リメイク』“戦うサラリーマン”、タークスの色褪せない格好良さに迫る─レノ&ルードの見習いたいビジネス観とルーファウスが描く今後の未来

アクセスランキングをもっと見る