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日本の心と『ポケモンGO』―見えないものが宿る場所を求めて【オールゲームニッポン】

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日本の心と『ポケモンGO』―見えないものが宿る場所を求めて【オールゲームニッポン】
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テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。変わるものと、変わらないもの。過去と未来。そして我々が宿命的に背負う日本という存在。なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。

ゲームクリエイター安田善巳氏とゲームアナリスト平林久和氏が、“日本”をテーマにゲーム業界の話題を語り合うコーナー「オールゲームニッポン」。第35回目となる今回は、いま世界中でムーブメントを巻き起こしているあのゲームについて。インサイドの新編集長をむかえ、リニューアルしてお届けします!

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谷理央(以下 谷): 7月から新しくインサイドの編集長になった谷です。前任編集長の土本に替わってオールゲームニッポンを担当いたします。やや緊張してますが、よろしくお願いします。

安田善巳(安田): 楽しんで日本のゲームにまつわるお話をしましょう。こちらこそよろしくお願いします。

: ところで、良いお知らせです。オールゲームニッポンはパワーアップしまして、インサイドだけではなく、姉妹サイトのGame*Spark、GameBusiness.jpでも掲載することになりました。

平林久和(以下 平林): おお、良いお知らせ。ありがとうございます。

: さっそく今回のテーマですが、やはり話題沸騰中の『ポケモンGO』についてお話いただけますか?

安田: 平林さん、いろんなメディアに登場してて大活躍じゃないですか。

平林: はい。取材されることが多いですね。最近はネタで『ポケモンGO』評論家(苦笑)、と名乗ってからFacebookに投稿しています。

安田: 週末にテレビで『ポケモンGO』のニュースを見ていたら平林さんが出てきて、すばらしいことをおっしゃってました。

平林: え? なんですか?

安田: 『ポケモンGO』が日本に上陸したら「かなりの数がダウンロードされるだろう」って。

平林: うわー。恥ずかしい。誰でも言えるコメント(笑)。それ、TBS系列の「新・情報7daysニュースキャスター」ですね。言い訳をしますと、あの時はわざわざスタジオまで行って35分間も収録したんです。ですが、使われたのは10秒程度でした。

: 35分間、どんな話をされていたんですか?

平林: 初期の『ポケモンGO』報道は、位置情報ゲームという点にスポットが当たりました。ですが、位置情報ゲームは珍しくありません。ガラケー時代の2000年の頃からありました。なので、『ポケモンGO』はすごい発見をしたのではない。むしろ、失敗例が多い分野なのに、正しいと信じてつくりきったところがすごい。異なる文化を持つ日米企業がじつにうまく共同開発した。他の業界を見渡しても数少ない成功例……なんて話をしていました。こんな感じで、他のメディアではいろいろ発言してきましたが、オールゲームニッポンでこそ言いたいことがあるんです。

: なんですか?

平林: 『ポケモンGO』は日本人の自然観・宗教観がにじみ出たゲームである! 日本では、目に見えないけれども土地には精霊が宿るという考えがあるじゃないですか。すべてのものの中に霊(アニマ)が宿っている。アニミズムの思想ですね。

安田: 八百万神(やおよろずのかみ)の国ですからね。

平林: はい。家を建てるときに地鎮祭を行ったり、玄関にお清めの塩を置いたり。体育系の部活では、誰もいないグラウンドに向かって挨拶したりしますよね。デパートの店員さんはスタッフルームに向かうとき、売り場フロアに一礼します。土地・場所に宿る見えないものに対して、日本人はいつも気にして行動しています。

: そういう精神性がさり気なく溶け込んでいる『ポケモンGO』ということですね。

平林: オリジナルのポケットモンスターからして多神教的なんだと思います。昔、イスラム教の法学者の団体がポケモンを禁じるべきだと主張している、そんな記事を読んだことがあります。多神教的である、進化論的であるというのが理由だとか。で、話を戻しますと、『ポケモンGO』を持って世界中の人が土地に宿る見えないものを探している。これは快挙ともいえるわけで。日本のゲームの力はすごい、と思った次第でした。

安田: 日本のゲームの力といえば、やはりキャラクターですね。今回の『ポケモンGO』のヒットで日本のキャラクターは世界に広がる力があることが改めて証明されました。漫画、アニメも世界で人気がありますが、ゲームから生まれたIPはやはり強かった。同じ業界にいる者として誇らしく思います。特に日本的な「かわいい」キャラクター。鳥獣人物戯画の流れをくむ、といってもいいんでしょうか。シンプルな線画から生まれたキャラクターが受け入れられたのもうれしいですね。

平林: 鳥獣人物戯画! 私も昔から鳥獣人物戯画とポケットモンスターの共通性を感じていました。鳥獣人物戯画をよく見ると、ピカチュウそっくりのキャラクターがいます(笑)。


: ところで、『ポケモンGO』の過熱気味の報道について、安田さんはどう思われましたか? 

安田: 僕はドローンが登場したときの論争と似通っているな、と思いました。ドローンは便利である、でも危険でもある。賛否両論が一気に吹き出しましたよね。

平林: 確かにそうでした。

安田: たとえばテレビ報道などを見ていて、ある人が『ポケモンGO』のことを事故につながる、迷惑になると否定的なことを言ったとします。すると別のコメンテーターが健康的だ、ひきこもりだった子供が外出したとプラスの面を言う。こんなやりとりを何度も見ました。ゲームに理解を示してくれる方が、良い面をアピールするのはありがたいことではありますが、両論が並んだだけで終わり、というのが気になりました。

平林: 『ポケモンGO』=ゲーム肯定派とゲーム否定派が交わることがない。見解の相違だけが目立ってしまうということですか。

安田: そうですね。肯定的な意見と否定的な意見が出尽くして、そこからが本格的な議論のスタート、というのが理想的だと思うのですが、なかなかそこまで議論が発展しません。

平林: 『ポケモンGO』関連の報道の大半が人の移動にまつわるニュースです。この範囲の中で、事件・事故といったマイナス面を伝えるものと、効用を伝えるものと両方に分かれています。安田さんがおっしゃるように、両論並べて終わりの感があります。地図がデジタルデータになった。その上に──ポケストップとかレアなモンスターとか──別の意味がかぶさると、予期せぬことが一斉に起きた。それが今回の『ポケモンGO』現象の本質でしょう。ですから、「メタデータ」「エアタグ」、いろいろな呼び名がありますが、地図の別階層にデータを埋め込む行為。その将来について議論が発展してほしいです。

安田: 『ポケモンGO』によって、ゲームの影響力が大きいことがわかりました。ゲームのつくり手は、大勢の人を動かすこともできます。人の生活を変えることもできます。これはすごい権力を持つことでもありますよね。なので、この影響力をどうやってコントロールするのか。どうやって社会と共生させていくのか。新しいステージに入りましたね。

平林: まだまだ『ポケモンGO』フィーバーは続きそうです。今後社会は『ポケモンGO』をどのようにチューニングしていくのか見ていきましょう。

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安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスを設立。経営者でありながら、現役のゲームクリエイターとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『GOD WARS』の開発に取り組む。

平林久和 (ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。
《編集部》

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