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ニッポンのゲームは「日本」を再発見して復活した【オールゲームニッポン最終回】

2014年12月から連載してきたオールゲームニッポンも今回で最終回。インサイド初代編集長土本も招き、丸4年の連載を振り返りました。

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山崎まずは読者の皆さまにお知らせいたします。2014年12月から連載してきましたオールゲームニッポンは今回で最終回となります。安田さん、平林さん、丸4年もの長い期間、お世話になりました。どうもありがとうございました。

安田こちらこそありがとうございました。連載終了というと悲しいお知らせのようですが、充実感があります。編集部内の不評で連載打ち切りになったわけではなく……オールゲームニッポンは一定の役割を終えて大団円を迎えることができました。

山崎オールゲームニッポンが始まったときのホスト役、土本学・初代編集長も今日は来てもらっています。

土本安田さん、平林さん、ご無沙汰しています。今日は長期間にわたって対談してくださったお礼を申し上げに来ました。僭越ですが労をねぎらい、昔を懐かしむ意味で久しぶりに対談に参加させてもらいます。この連載が始まったのは約4年前でした。「日本のゲームは世界市場で競争力を失った」と言われていた時期でした。その頃に日本をテーマに対談をはじめたわけですが、ここで語られた理想がいくつか現実のものとなっています。

平林当時、土本編集長から「ゲーム業界にいる人が元気になって、未来のヒントになること書いてください」。そんなご依頼をされていました。元気、未来、ヒント……となると、私は日本をテーマにしてみたい、と考えるようになりました。そして、日本について語り合うことが多かった安田さんと対談したいと申し出たわけです。

安田そうでしたね。当時の私は日本神話を題材にした『GOD WARS』、島根県松江市を舞台にした『ルートレター』を構想中でした。特に島根県出身の私にとって日本神話の研究はライフワークでもありワクワクしてお引き受けした次第です。


土本世界市場でゲームを売るためには、「日本のメーカーもFPSをつくらなくてはいけない」「ゾンビが登場したほうが売れるだろう」。そんな通説が語られていましたが、実際に発売してみると評判はあまり芳しくない。その逆張りとも言える「日本のクリエイターは日本らしく」というコンセプトは、私もおもしろいと思いました。

平林オールゲームニッポンはこのような経緯から始まったわけですが、正直言って、最初はかなり力んでましたね。安田さんからは「ゆる~い対談にしよう」と言われていましたが(笑)、ダメですね。全力で日本論を語ってしまいました。

土本ゲーム業界の個別テーマに入るまえ段階で、日本とは何か? の本質論が展開されましたが、毎回エキサイティングでためになりました。

山崎当時をちょっと振り返ってもらってもいいですか。

平林連載第1回のタイトルがすごいですよ。「日本のゲーム業界を明るくするキーワードは日本」です。大きく出たものです(笑)。ですが初回から安田さんは、見事に日本ブームが世界的に到来しつつあることを予見なさってたんです。

安田そうでしたっけ(笑)。

平林インターネットを介して、今まで以上に日本の情報が世界に拡散するだろうとおっしゃってました。

安田そうでしたね。マスメディアでは扱わないような日本の細かなこと、専門的なこと、マニアックなことがインターネット、特にSNSによって世界に伝わると思いました。そして、世界の人々の反応を日本人も知るようになります。こうした情報発信と受信の量が多くなると、僕らはいやがおうでも日本で生まれた、日本に住んでいるということに対して自覚的になると考えていました。

土本現実がまさにそのようになりましたね。具体的なゲームソフトに当てはめますと三浦按針(『仁王』)や元寇(『Ghost of Tsushima』)を題材にしたゲームが開発され、それが世界から注目されるようになったのですから。

山崎すごい変化ですね。

安田連載開始直後の対談を見直してみたのですが、「訪日外国人が1000万人を超えた」と僕は語っているんですね。今年は3000万人を超えるとも言われていますので、当時はまだインバウンドの増加が始まったばかりだったんですね。

平林で、日本とは何か? に話を戻しますが、まずは「国家」の話をしました。国に家という字を重ね合わせて「国家」。日本という国はひとつの家、国民は家族のようなもの。国を家に見立てる考え方は本当に日本的で他の国では考えられない概念である、と。

安田そこから発展して、「古事記」にも書かれている出雲・国譲り神話の話も何回かしましたね。話し合いによって国をまとめてきた日本では、敵対した相手を恨み続けるようなことはしない。戦いが起きても、勝者の価値観を敗者に無理矢理押しつけるようなこともしない。ときには、敵方の信仰や生活習慣を認めて国づくりをしてきた。そういう積み重ねのうちに文化の幅を広げてきた。相撲も歌舞伎もアニメもロボットも、すべてが日本文化とくくれてしまう。こうやって熟成された、なんでもありの日本文化の多様性に着目しました。

土本多様性といえば、多様性がもたらす日本の色の話もおもしろかったです。画面やアイコンを見た瞬間に日本でつくったゲームか、他国でつくったゲームか。色でわかってしまうのはなぜ? そんな話をしていただきました。

安田日本には四季があります。四季が色を生み、育ててくれます。 加えて文化ですね。気候の変化はどこの国でも起こる自然現象です。では、その変化をどれほど豊かな感性でとらえるか。この季節の感じ取り方が日本人は鋭いと考察しました。俳句と季語の関係や季節ごとの年中行事の多さなどに、日本人の四季への感受性があらわれていると思います。

平林桜が咲いた、梅雨になった、富士山に初冠雪、紅葉が色づいた……こんな季節ごとの変化が、全国レベルでニュースになるのは日本だけですね。


安田さらに、地形も関係します。日本の国土を考えると、色が増えるのは当然という話をしました。日本は海に囲まれています。すると植物・動物ともに固有種が生息するようになります。固有種というとガラパゴスが有名ですが、日本のほうがガラパゴスよりも多くの固有種が生息しているそうです。国土は南北に長い。標高差も大きいです。日本列島は地形が複雑で降水量も多い。こうした日本の地理的特徴は、たくさんの生命=色を育むのに適している、ということになります。植物が多いと、さらに多くの色をつくることができます。草木染めのような染物の技術が日本ではかなり昔から発達していたようです。色を混ぜたり重ねたり。昔の人は、僕らが思っている以上に色を楽しむという文化がありました。

平林私は西洋の絵画について調べたことがありますが、ルネサンス以前の絵画はキリスト教的な教えに縛られていたそうです。混色して新しい色をつくることは、神に逆らう冒涜という意識がありました。ですから、ルネサンス以前の西洋画は、特定の色を持つ鉱物を単体で塗ったものがほとんどです。パレットでもキャンバスでも絵の具を混ぜ合わせるということをしません。

山崎わくわくするような色についてのお話ですね。

平林神社や神道の話もしましたね。なんでも神様として祀る日本人の宗教観や死生観。その影響なのか、日本のゲームは死を厳粛に扱っている。日本では血が出るゲームがウケない理由などを考察しました。

土本このようにひとつひとつのお話が1冊の本になるような深いテーマをお話いただいたわけですが、あえて一言でまとめるとオールゲームニッポンでは何を伝えたかったのでしょうか?

平林一言でいうと「日本は別物」です。日本は他の国と比べて遅れている、進んでいる、グローバルスタンダードとは違っている……などと評されることがありますが、日本は世界のどの国とも違う。安易に比較しないで別物ととらえる。そんな考え方を読者の皆さんと共有したかったです。

安田僕は「日本のクリエイターは自信を持ってほしい」ですね。日本的なゲームのつくり方、そして日本というテーマは世界に通用すると言いたかったですし、自らにも言い聞かせていました。

土本そして、安田さんがおっしゃる通りになりました。日本のクリエイターは自信を取り戻して、日本らしいゲームがこの4年間できっちりと実績を残しています。オールゲームニッポンを始めたときの目標が実現できたようで、本当に意味のある連載だったと思います。

山崎まるで、この成果を体現するかのように先月『ルートレター』がハリウッド映画になることも発表されました。日本のゲーム会社が日本らしいゲームをつくり、それを世界が認めてハリウッド映画になるなんて、ドラマを見ているかのようです。しかも、私が昔に住んでいた島根県松江市が舞台のゲームですから感激しています。


平林私も「角川ゲームス ファン大感謝祭 2018」での発表の場面に立ち会わせていただきました。オールゲームニッポンを始めたときに思い描いた理想が最高のカタチになった、と心が震えました。私にとって、まさにオールゲームニッポンの大団円を象徴する場面として、あの光景を眺めていました。

安田『ルートレター』は生まれ故郷に恩返しができたらと思って立ち上げたプロジェクトでした。ゲームの中味は、世界的に見たら流行しているとはいえない、テキストアドベンチャーです。将来はハリウッド映画にしようなどとは考えてもみませんでした。それでもなお、インターネットの向こう側に、本当に偶然に松江の景色を目に止めてくれた方がいたのですね。


山崎『ルートレター』がどんな映画になるのか楽しみです。良い作品ができてヒットしてほしいですね。

平林試写会のような機会があれば、皆で観に行きたいですね。

土本では、名残惜しいですが、最後のご挨拶です。今まで連載にご協力いただきありがとうございました。

安田皆さん、どうもありがとうございました。

平林ありがとうございました。
《平林久和》
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