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【hideのゲーム音楽伝道記】第18回:『かまいたちの夜』― 音と文章で味わう至高の恐怖体験!

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第18回目となる今回は、『かまいたちの夜』についてご紹介します。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第18回:『かまいたちの夜』― 音と文章で味わう至高の恐怖体験!
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第18回目となる今回は、『かまいたちの夜』についてご紹介します。



『かまいたちの夜』は、1994年11月25日にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)からスーパーファミコンで発売されたサウンドノベル作品です。サウンドノベルとは、背景映像および音楽・効果音と共に表示される文章を読みながら、選択肢を選んで進めていくゲームジャンル。1998年にはプレイステーションで、2002年にはゲームボーイアドバンスで発売。その後PC版、携帯アプリ、Wiiのバーチャルコンソール、PSのゲームアーカイブス、スマートフォン版(iOS / Android)など、多数の機種でリリースされています。

◆雪に閉ざされたペンションで巻き起こる殺人事件



本作の舞台は、雪に閉ざされたペンション「シュプール」。スキーを楽しむためにこの地を訪れた主人公の透とガールフレンドの真理は、シュプールで発生した殺人事件に巻き込まれてしまいます。ひとり、またひとりと宿泊客が殺されていく絶望的な状況で、はたして事件を見事解決できるのでしょうか?

本作は実写取り込みの背景に、人物をシルエットで描くという斬新な手法、ミステリー作家・我孫子武丸氏による本格派のシナリオなど、非常に高い完成度で人気を博しました。その完成度の高さから、のちのアドベンチャーゲームやノベルゲームに多大な影響を与えた金字塔的な作品です。

そして『かまいたちの夜』の世界を彩るのに欠かせないのが音楽です。中嶋康二郎氏と加藤恒太氏によって生みだされた楽曲群は非常に高い完成度を誇ります。本作は恐怖感をじわじわとあおってくる楽曲が多く、殺人事件に巻き込まれてゆくスリリングさを見事に演出しています。僕は本作を初めてプレイした中学生当時、恐怖におののきながらも、「殺人事件に巻き込まれる」という衝撃的な体験に本当にドキドキして、手に汗をにぎりながらも夢中になってプレイしていました。

本作の音楽の特徴としては、「イントロが無い」ことが挙げられます。ディレクターの麻野一哉氏が過去にインタビューで語った話によると、これは意図的なもので、「人物がシルエットなので、誰が登場したのかをプレイヤーの方にすぐ分かってもらうため」(麻野氏)にそうしたとのことです。そのためか、音楽がダイレクトにスッと入ってきて耳に残りましたね。また、旋律が非常にメロディアスで心に刺さるものだったので、プレイ後だいぶ時間を経た今でも、僕の中には印象深く残っています。

また、本作は“サウンド”ノベルというだけあって、効果音にも非常に力が入っています。ガラスが割れる音、耳をつんざくような悲鳴など実にリアルに表現されており、物語に引き込んでくれます。麻野氏によると特に風の音は相当こだわったそうで、10種類ほどサンプリングして作られたのだそうです。びゅおおおお……と不気味に鳴り響く風の音は、あたかも自分自身がペンションの現場にいるような気分にさせてくれますよ。

そんな臨場感にあふれた物語体験が味わえる『かまいたちの夜』。それでは、本作で印象的な音楽をご紹介していきたいと思います。

◆序盤は、平和で穏やかな雰囲気


まずはなんといってもタイトル画面で流れる「かまいたちの夜」ですね。背筋をなでるような、重々しくも寒々とした旋律が印象的です。電源を入れてすぐに、プレイヤーをかまいたちの世界に引き込んでくれます。

その後、ゲーム冒頭では、比較的明るく穏やかな楽曲が続きます。スキー場のゲレンデで流れる楽曲「ゲレンデの恋人たち」は、高音が特徴的でとても爽やか。「ペンション・シュプール」は、ゆったり落ち着いた、かつ楽しげな楽曲。このあとに起こる悲劇をみじんも感じさせない平和さがありますね。

あと、序盤で印象的な楽曲は、登場人物のひとり・香山誠一さんのテーマ曲「わしが香山や!~男の大往生~」でしょうか。彼は大阪で会社を経営している社長さんなのですが、演歌調の音楽が強烈な印象を残します。ちなみに、とあるシナリオにはカラオケの機械が突然登場して、音楽に合わせて画面に歌詞が表示され、実際のカラオケのように歌うこともできますよ(笑)。

◆そして、恐怖の一夜がはじまる



序盤はのんびり平和な雰囲気の本作ですが、その時間は長く続きません。宿泊客によって発見される「こんや、12じ、だれかがしぬ」という不気味な予告状。そして、シュプールの中に突如響きわたるガラスの割れる音。恐る恐る様子を見に行った透たちは、むごたらしく殺され、バラバラになった宿泊客・田中さんの死体を発見してしまいます。この死体発見シーンには「悪夢」という楽曲が流れるのですが、思いもよらぬ状況に直面した透たちの緊張感と焦りを、重低音で巧みに表現していて、プレイヤーの僕もゾクッときたことを覚えています。

その後、調査を終えたあとに最初の推理ができるのですが、ここでもし推理を誤ってしまうと、続いて第二の殺人事件が発生してしまうのです。この事件が発生した直後に流れる「レクイエム」は、とある悲劇に直面した登場人物のひとり・俊夫さんの、身が引き裂かれんばかりの深い哀しみが表現されています。このシーンは、ひざから崩れ落ちて号泣する俊夫さんと、哀愁にあふれていながらも美しさを帯びた音楽の相乗効果が絶大で、とても印象に残っていますね。

あと印象深いのは「長い夜の始まり」という、透と真理が2人きりでベッドに座って語らう時の楽曲ですね。恐ろしい状況下にありながらも、しばしの間2人きりでいられる……そんなあふれんばかりの安心感が、とてもロマンティックかつ美しい旋律でうまく表現されていると思います。

◆恐怖を乗り越えて、犯人を追いつめていく!


『かまいたちの夜』の音楽はどれも良いのですが、個人的にもっとも印象深いのは「遠い日の幻影」という、最後まで犯人が分からずにバッドエンディングを迎えてしまった時に流れる楽曲ですね。とある人にストックで刺されるという壮絶で哀しい結末を迎えた後、吹雪が舞う画面の中で重々しく陰鬱に、しかし不思議な美しさを帯びて流れるこの楽曲のせつなさ、むなしさ、やるせなさは、僕の心に凄まじく強烈な爪痕を残してくれています。ストックで刺されたトラウマとともに(笑)。

あと僕の中にトラウマとして残っているのは、「うろつく殺人犯」という、停電で薄暗くなったペンション内を探索する時の楽曲ですね。絶え間なく続く重低音がじわじわと恐怖感をあおってきます。僕は本作を初めてプレイした中学生当時、この楽曲が本気で怖かったことを覚えています。あまりにも怖すぎて、途中でゲームをやめようかなと思ったことも何度かありましたが、どうしても事件の真相が知りたくて、多少涙目になりながらも(笑)、がんばってプレイしていましたね。

そういった怖い思いを何度もしつつ繰り返しプレイして、やっと犯人の目星がつき、改めて推理に臨むわけなのですが、この推理シーンで流れる「ひとつの推理」がまた素晴らしい楽曲ですね。犯人と対峙して繰り広げられる謎解きの手に汗にぎるような緊張感と、冷静に論理を重ねながら、少しずつ真相を暴いていく高揚感をうまく演出しています。

そしてようやく追い詰めた犯人を、皆で協力して袋叩きにする時の音楽「闘い」も印象的ですね。この楽曲はRPGのボス戦で流れていてもおかしくないほど、熱くて格好いいです。この楽曲をバックに、宿泊客の皆で犯人をぼっこぼこにしていくシーンの爽快感はすさまじいですよ!(笑)

◆ミステリー編以外も名曲ぞろい!


『かまいたちの夜』では、メインのシナリオである「ミステリー編」をプレイすればするほど、「悪霊編」「スパイ編」「鎌井達の夜編」「Oの喜劇編」「不思議のペンション編」など、バラエティに富んだ新しいシナリオをプレイすることができます。これらのシナリオは各登場人物の性格や役割がミステリー編とはガラッと変わるので、まったく違う物語を新鮮に楽しめますよ! その中には、ミステリー編のシリアスさとは180度違う、ギャグ満載なお話もあったりします。あまりにも多彩なお話が次々に出現するので、僕は夢中になってプレイしていましたね。『かまいたちの夜』は、やればやるほど違う物語を見せてくれる奥深さがあります。

新しく出現するシナリオの中で印象的な楽曲を挙げると、スパイ編で流れる「mission」という楽曲でしょうか。ドラムやパーカッション的な音がリズミカルに入ったアップテンポな楽曲で、非常にかっこいいです。また、スパイ編の後半ではスノーモービルで敵を追跡するという展開になるのですが、その際に流れる「雪の中の進路」という楽曲は追跡劇を大いに盛り上げてくれますね。あとスパイ編では、とあるバッドエンディングで流れる「失くしたものは……」も寒々しく、やるせなさにあふれていて好きです。

悪霊編(スーファミ版では『オカルト編』という名前)のクライマックスで流れる楽曲「ノスタルジア」も印象深いですね。このシナリオでは真理の隠された過去が明かされるのですが、せつなくも力強い、感動的な旋律が胸に響きますよ。

あと、ペンションに隠されたお宝を探す、という展開の暗号編で流れる「血のついたメッセージ」も、神秘的かつ美しい旋律で心に残っていますね。僕は初プレイ当時、この楽曲を聴きながらずっと必死に謎のメッセージとにらめっこしていたせいか、だいぶ音楽が刷り込まれました(笑)。あと、暗号編のエンディングで流れる「すてきな宝物」も、オルゴールのきらびやかで美しい旋律が印象的ですね。この楽曲はとあるバッドエンディングでも流れるので、そちらの印象も強いですけど。

◆臨場感と没入感が素晴らしい作品です


本作では、まるで自分が推理小説の世界に飛びこんだような感覚で物語を堪能することができます。“自分で行動を選択し、物語に介入できる”という点はゲームならではの面白さがありますね。我孫子武丸氏が手掛ける本格ミステリーのシナリオと、すばらしい出来栄えの音楽、そして緻密な演出が織りなす臨場感・没入感はすさまじく、僕は『かまいたち』の世界にどんどん引き込まれていきました。初プレイ当時は「殺されたらどうしよう…!」とゲームなのに本気で怖がっていましたが、今改めて考えるとそれだけ臨場感が大きく、体験する物語としてよく出来ていたのだと思います。

『かまいたちの夜』は21年前の作品ですが、その面白さはまったく色あせていません。今プレイしてもきっと楽しめると思います。ただし犯人が事前に分かっていると楽しみが大きく損なわれてしまうので、ネタバレ注意です! 未プレイの方は、インターネットで不用意に “かまいたちの夜” と検索しないことをおすすめします(笑)。現在でも多数のハードでプレイすることができますので、ご興味をお持ちの方は、是非この音と文章で味わう至高の恐怖を体験してみてください。

ちなみに、本作のPS版以降にはフローチャート機能が搭載され、非常に遊びやすくなっています。初めての方はもちろん、かつてスーファミ版をプレイし、事件を解決できなかった方も、今一度ペンション・シュプールを訪れてみてはいかがでしょうか。


なお、『かまいたちの夜』はスーファミ版の音源を収録したサントラが発売されています。「ゲームに興味はある……けど、怖いのは苦手だー!」という方はこちらを聴いてみてください。音楽自体の完成度が非常に高いので、サントラを聴くだけでも楽しめると思いますよ。音楽だけでもかなり怖いですけど(笑)。

また、スーファミ版とPS版では楽曲の音色やアレンジが異なるので、かつて本作をプレイした方も、別ハード版をプレイして音楽を聴き比べてみるというのも面白いと思いますよ。ちなみにスマートフォン版(iOS / Android)の音楽は、レコーディング専門オーケストラのGaQdanさんが演奏を担当されています。ご興味をお持ちの方は、こちらも聴いてみてくださいね。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。クヌルプ(本作に登場する「ペンション・シュプール」のモデルになった場所)に一度は行ってみたいです!

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd/我孫子武丸
「サウンドノベル」は株式会社スパイク・チュンソフトの登録商標です。
《hide/永芳英敬》

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