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【TGS2015】レベルファイブ日野氏があかした成功の秘訣、それは経営者とクリエイターが「なかよくすること」

過去41タイトルの平均販売本数が93.6万本という、脅威のヒット率をほこるレベルファイブ。この成功の秘訣とは何か、同社の日野晃博社長は東京ゲームショウ2015の基調講演で語りました。

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過去41タイトルの平均販売本数が93.6万本という、脅威のヒット率をほこるレベルファイブ。この成功の秘訣とは何か、同社の日野晃博社長は東京ゲームショウ2015の基調講演「クリエイター兼経営者だからこそできたヒットコンテンツ創出」で9月17日、その一端をあかしました。それはタイトルどおり、トップダウンの開発スタイルによる「帝王判断」と深く関係がありました。

経営者の判断とクリエイターの感性は衝突することが多いが、レベルファイブは別・・・日野氏はこのように語ります。理由は簡単でトップ=日野氏自身がクリエイター兼経営者だからです。プログラマーをふりだしに、これまでディレクター、プロデューサーをつとめ、アーティストの経験もある日野氏。そのため強引なワンマン判断が可能な会社になっているといいます。

もっとも、この状態が決して良いことではないと思っているし、いつまでも続けることはできない・・・そう前置きする日野氏。その一方で「必勝パターンにつながる実例があったのも事実」として、経験をシェアしました。

レイトン教授は嫌われプロジェクトだった



パブリッシャータイトル第1弾で、すべてにおいて非常に気を遣ったという日野氏。まずヒットさせるという判断のもと「脳トレの次にヒットするものは、脳トレ+1でいい」として、ベストセラー『頭の体操』のゲーム化という企画を立てます。しかし、これは社内の「嫌われプロジェクト」でもありました。ゲーム機のハイエンド化に逆行するニッチプロジェクトにみえたからです。

実際、製作費と宣伝費はともに1.5億円。後に宣伝費は2.3億円まで追加されましたが、やはり「会社の中で一番小さなプロジェクトだった」といいます。しかし「低コストでありながら、最重要プロジェクト」であることにかわりはなく、最初はモチベーションを上げるのに苦労したとのこと。強引に判断をくだし、開発を牽引していくにつれて、徐々に日野氏の思いが伝染し、チームがドライブしていきました。

今では当たり前になっている「タレントを起用したボイス」も、当初は「電車の中で遊ばれるかもしれないのに、意味がない」という懐疑論もあったとのこと。しかし「純粋なユーザー視点」で押し切りました。また『頭の体操』のゲーム化が商標問題で早期実現が困難とわかると、すぐに企画の一部だったストーリー仕立ての部分をふくらませ、オリジナルキャラクターを加えて『レイトン教授』に改変。このように機敏な軌道修正が早期でできたのも、「帝王判断」ゆえでした。

イナズマイレブンは立ち場を活かしてごり押しした



本作は同社がアニメ会社とがっぷり4つに組んで開発した、クロスメディア戦略の第一弾的シリーズです。それまではアニメのゲーム化はあっても、その逆は少なく、数少ない例外においても、ゲームとアニメは完全に別モノでした。しかし日野氏は「ゲームを主役にして、ゲームの都合でストーリーやキャラクターを変えたい」と、ゲームを中心としたアニメ管理に挑戦。当初はかなり現場で反発があったといいます。

しかし「出資者&原作者である」という立ち場で押し切った日野氏。その功罪は今となってはわからないが、徐々にアニメのクリエイターとの理解が深まり、一体感を築くことができたといいます。またクリエイター兼経営者という立ち場から、アニメを含む異業種の経営者やクリエイターとも、それぞれの立ち場で関係を築けたとのこと。以後の成功方程式へとつながっていきます。

二ノ国は打ち合わせで事案を持ち帰らなかった



スタジオジブリとのコラボで話題を読んだ『二ノ国』でしたが、ビッグネームを口説き落とせたのも「帝王判断」あってのことでした。事前にさまざまなパターンを想定して打ち合わせにのぞみ、「ゲーム会社だけどアニメにも理解がある」という強みを押し出して、その場で臨機応変に話を展開。相手にイエスと言わざるを得ない状況を作り上げていったのです。「議案の持ち帰りは一切しなかった」といいます。

また「当初は予算と開発期間に明確な答えがないままプロジェクトが進んでいった」と日野氏はあかしました。通常、企業ではあり得ない話ですが、これができたのも「帝王判断」ならでは。コスト管理ではずさんな面もありましたが、海外版も含めて最終的にはプラスで終えることができました。

妖怪ウォッチはアニメのフォーマットにも踏み込んだ



「今までにないくらい優等生プロジェクトで、楽しかった思い出しかない」という日野氏。クロスメディア作品の最右翼として、会社を越えた総合プロデューサーとしての役割を確立できました。ゲームだけでなくアニメのフォーマットにも介入でき、オムニバス形式やシリーズ内シリーズ、エンディングのCGダンスなどを実現。エンディングテーマも同社スタッフが担当しました。

子どもだけでなく、親世代にも刺さる内容にするというコンセプトも、放映を進めるうちに、日野氏をはじめとした制作陣で固まっていったとのこと。さまざまな番組のパロディや、コラボは好例で、時に過激すぎるとクレームがくることもありましたが、現在は最新の注意を払って企画を進めているそうです。そのため最近では先方から「是非に」というオファーも多いとのこと。けっして「ただのパクリではない」と念がおされました。

成功のために必用な、たったひとつのこと



以上の内容から導き出される教訓は「日野は危ない奴だ!」・・・ではなく、経営者とクリエイターが深く理解しあい、総合的な視野で判断することが成功につながるというもの。日野氏は『レイトン教授』のヒットで終わらせたくなかった、一発屋と言われないために、真剣に一歩ずつ大事に作品を作ってきた、そう語ります。

その上で日野氏は経営者に「クリエイターを過保護にしないこと」。クリエイターには「理解してもらう努力を怠らないこと」という2つのメッセージを投げかけました。「好きにやらせて失敗したら切れば良い」では会社は成長しない。逆に「うちはそういう方針」「会社は変わらない」と諦めていては、いつまでも変わらない。レベルファイブの強みは全員が経営者でありクリエイターであること・・・日野氏はこう分析します。

最後に「すべての経営者とクリエイターに告ぐ・・・なかよくしなさい」と告げると、会場は大きな拍手に包まれました。1960年代生まれの、クリエイター社長による基調講演という、東京ゲームショウが新しい時代に入ったことを象徴するような内容でした。
《小野憲史》
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