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【オールゲームニッポン】日本は世界でも稀有な母系社会(第12回)

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【オールゲームニッポン】日本は世界でも稀有な母系社会(第12回)
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毎週土曜日0時からお届けしている「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」。第12回では世界でも珍しい母系社会である日本の成り立ちについて話題が膨らんでいきます。そうした社会のあり方も日本と世界の違うを生む一因になっているようです。それではどうぞ。



平林
 
いわゆる母系社会の話題になりましたが。女性が重要な役割を持つ社会というのは世界を見渡しても少ないんでしょうか?

安田
 
少ないでしょうね。やはり、紛争が起きる地域では男性が優位な社会ができるんだと思います。そういう場所では、戦争で勝つための知恵を持っている、腕力が強い、武器・武具の扱いがうまいことがヒーローになる条件になりますよね。たとえば、三国志という歴史書で目立つのは男性ばかりですよね。

平林
 
諸葛亮に劉備に張飛……

安田
 
今の中国だけではなくて、中東地区もヨーロッパも、もちろんアメリカ大陸も、世界中のどこでも戦いを繰り返してきたじゃないですか。ですから、世界のほとんどの地域は男が中心の社会だったと思います。そのなかにあって、母系社会として知られているといえば、離島でしょうか。太平洋に浮かぶ南の島など、ですね。

平林
 
あ、確かに。インドネシアとか、フィリピンとかの旅行ガイドブックを読んでいると、「◯◯島は母系社会の伝統があって」というような記述を目にすることがあります。パプアニューギニアにも有名な母系社会を守る部族がいたような……


島国には母系社会が多い?

安田
 
こういう離島は地形の関係から戦争は少ないでしょうから、男の戦争する力が発揮できる場面は少ない。島全体が家族のような、穏やかな母系社会ができるのかな? と考えられます。

平林
 
ということは、日本は島国だがら母系社会なんでしょうか?

安田
 
いや、単純に離島と同じとは言えないでしょう。日本は島国ですけれども太平洋に浮かぶ島よりも国土は広いですし、山があるから争いも起こりました。

平林
 
山が多いと争い、ですか?

安田
 
今の感覚だと山というのは都会からはずれたところっていうイメージがあるじゃないですか。

平林
 
はい。世俗的な話ですが、都会のど真ん中は地価が高いけど、山奥は地価が安い。そんなイメージです。

安田
 
現代はそうですよね。けれども古代の山にはとてつもない価値があったはずです。山には鉱物資源がありました。金山、銀山、銅山というくらいで貴重な金属は山にあり、鉄のもとになる砂鉄も山で取れます。

平林
 
なるほど、古代の山は宝の山ですね。


山は昔から宝の山だった (C)Getty Images

安田
 
前回、オオクニヌシの話をしました。いじめられっこだったオオクニヌシが成長していく古事記の話ですね。立派に成長したオオクニヌシは出雲の地をおさめたあとに、越の国に行きます。今でいうと新潟県の西側にある糸魚川周辺です。この土地にはヌナカワ姫という、たいそう賢くて美しい姫がいてオオクニヌシは求愛します。

平林
 
オオクニヌシは女神との交わりが多い。出雲大社が縁結びの神様と言われるもとにもなった恋愛物語のひとつですね。

安田
 
日本で初めて和歌を残したのがスサノオ。二首目が、このときにオオクニヌシがヌナカワ姫に送った恋の歌とされています。で、オオクニヌシはなぜ越の国を目指したのかというと、鉱物資源を求めていたと思うんですね。糸魚川周辺は縄文時代からの有名なヒスイ(翡翠)の産地でした。ちなみに、糸魚川のヒスイは世界最古の加工歴史があって、今では天然記念物に指定されています。

平林
 
ヌナカワ姫とヒスイを求めて越の国へ、ですね。

安田
 
山からとれる金属は実用的な価値がありました。土木、建築、農機具、武具に応用できます。ヒスイは宝飾品ですが、当時は金よりも貴重なものと考えられていました。なかでも糸魚川流域で採掘できるヒスイは最高の品質のものだったそうです。三種の神器のひとつ、八坂瓊勾玉(やさかにのまがたま)は糸魚川産のヒスイとされています。古事記に書かれたヌナカワ姫の物語は、出雲の国のオオクニヌシが日本海を北上して越の国を平定したことを示していると解釈されていますね。

平林
 
日本の山には鉱物資源があって、各地で戦いが起きていた。というわけで、太平洋に浮かぶ離島と違うということですね。

安田
 
そうです。日本人は平和を好む民族だ……と誇りたくなりますが、じつは苛烈な戦いもしてきました。時代が進むと、武士が登場しましたし、戦国時代もあったわけですから、南の島の住人とは違う歴史を歩んでいます。

平林
 
戦いの果て、日本海沿岸に一大勢力を誇ったオオクニヌシですが、のちにヤマト王権に国譲りをしました。戦争をすることもあれば、戦争を避けることもある。自分の国のことですから肯定してしまいますが、日本史から絶妙なバランス感覚を感じるときがあります。

安田
 
同じ戦争ですが、よその国と戦争と日本の戦争では意味が違う気もしますね。敵を完全に打ちのめさないのが日本の戦争です。他国では敵対する相手の文化、宗教、歴史を抹殺するようなこともあるじゃないですか。

平林
 
最悪の場合は民族を滅ぼす、民族浄化というやつですね。近現代の戦争でもいくらでも事例がありますが、差し障りがありそうなのであえて紀元前の例をあげれば、第三次ポエニ戦争。ローマはカルタゴで民族浄化を行いました。

安田
 
こう言ってはヘンかもしれませんが、日本では平和な戦争をするというか。組織だけではなく、個人同士でも「武士の情け」などと言って敗者にも名誉を与えるようなふるまいもしてきました。

平林
 
またまた宗教の話になってしまいますけど、神道には戒律がないという話を何度かしてきました。けれども、じつはこれって日本人にとってのきつい戒律かも? と思い当たることがあったんです。

安田
 
何ですか?

平林
 
死者に鞭打たない、という価値観ですね。われわれ日本人は誰から教わったわけでもなく、死んだ人をさらに痛めつけるようなことをしてはいけないと、いつも自分を律しているように思えるんです。たとえば、現代のインターネット空間で、もう読むに耐えないような、とんでもない悪口を叩かれている人がいるとするじゃないですか。ところが、その人がどんな原因であれ亡くなると、そのバッシング、罵詈雑言はスッとおさまる。場合によっては故人を急に「さん」づけで呼ぶようになったりします。日本人にとって死とは、あらゆることのリセットなんだなと思うことがあります。


(つづく)


■パーソナリティの紹介


安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスの設立に参画。経営者でありながら、現役のゲームプロデューサーとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『Projectcode -堕 天-』『Projectcode -月 読-』の開発に取り組む。



平林久和(ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。

《平林久和》

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