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【Indie Japan Rising】傑作フリーゲーム『魔王物語物語』『ムラサキ』のカタテマが語るゲームデザインと物語

国内のインディーゲーム開発者にインタビューを行う本企画。今回は『魔王物語物語』や『いりす症候群!』といったフリーゲームで知られるカタテマのてつ氏にお話をうかがった。

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◆「超大作」の挫折から『魔王物語物語』の完成まで



――てつさんは既に10年以上、フリーゲームを制作してきたベテランです。まずはこれまでの経歴やゲーム制作のきっかけなどを教えてください。

てつ:
フリーゲームを初めて公開したのは2003年の『勇者御一行様殺人事件』です。ただそれ以前にもBasicなどでゲームのようなものは作っていました。小学生の頃から『マイコンBasicマガジン』を読んでプログラムを打ち込んだり、ノートにゲームブックのようなものを作ったり。兄が新しもの好きで家にPC88や98があったんです。当時、『週刊少年ジャンプ』の投稿コーナー「ジャンプ放送局」というのがありましたよね。あの企画でHP、攻撃力、守備力、素早さを合計100ポイントにして戦う遊びがあったんですが、あれをプログラムにして優勝者に勝てる組み合わせを探していました(笑)。

――その頃はファミコン全盛期でしたよね。ゲーム自体は何をプレイしていましたか?

てつ:
ファミコンは本当に大好きでした。『ドラクエ2』を遊んだのが小学生の頃で、それが最初のRPG。その時は遊び方がわからず、城の周りを回って死んだら兄と交代するという変な遊び方をしていました。『ドラクエ3』で一気にRPGというジャンルがメジャーになりましたが、正直最初はよくわからなかった。『ドラクエ2』のただ歩いていて不安になる感じはRPGの原体験として強く印象に残っています。

――なるほど。その後もゲームを作ったり、プログラムを書いたりしましたか?

てつ:
PC88、98は途中で壊れて買い換えなかったのでブランクがあります。大学生の頃にようやくWindows95のPCを買って、インターネットにつなぎました。PC自体は父のものでしたが、インターネットで最初にやったのは格ゲーのフォーラムをのぞくこと。そこで情報交換したり、オフ会をしたり。それがメインの用途でした。それが何年か続いていたんですが、2001年にたまたまインターネットコンテストパークの存在を知りました。エンターブレインが主催していたアマチュアのゲームコンテストです。ちょうど『盗人講座』というゲームが金賞を取っていて、プレイしました。これはすごい、これを個人で作れちゃうんだと感銘を受けました。

――それがきっかけで制作を始めたのですね。


デビュー作となる『勇者御一行様殺人事件』。

てつ:
そうですね。最初は知り合いが登場するような内輪向けのゲームを作りました。それが好評で、そろそろ超大作を作ろうかなと思ったら、意外と大変で結局は頓挫。全体像を把握しないまま作っていたのです。結果的に創作ではやってはいけないすべての地雷を踏んでいました。

――その失敗から学んでいったわけですか?

てつ:
そうです。その超大作をダラダラ作っていたら完成しないままインターネットコンテストパークが終了してしまった。そこで頭を切り替えて、平行して作っていた小規模な作品を完成させました。それが『勇者御一行様殺人事件』で、後続のコンテストに応募したら銀賞が取れました。反響もそこそこ良かったです。このゲームの感想を書いてくれたことがきっかけで知り合ったきむらさんには、後に『魔王物語物語』で絵を描いてもらっています。だから『勇者御一行様殺人事件』は僕の中では創作活動の大きなきっかけですね。

――その後は定期的に作品を発表していますよね。

てつ:
そうですね。2008年までに1年に1作は出しています。偉いですね(笑)。超大作の方も諦めきれず、確か2004年までダラダラ作っていました。ところが2004年7月にRPGツクールXPが発売されました。ツクールXPは複雑なシステムをプログラムで作れるようになっていたので、今までのデータを思い切って捨てて乗り換えました。そしてまず『オトツカイ』と『タイムアタック!RPG』という短編を作りました。これらは、ツクールXPに慣れるための制作でもありました。


『魔王物語物語』の戦闘システムのもとなった『タイムアタック!RPG』。

――『タイムアタック!RPG』の戦闘システムは『魔王物語物語』に直接影響を与えていますね。フィールドでエンカウントしてそのまま戦闘が始まる。

てつ:
そうです。もともとは、勇者が魔王を倒すまでの過程を超ハイスピードでやらせるゲームにするつもりでした。そのためものすごく速く終る戦闘システムを作りたかった。

――その後は『愛と勇気とかしわもち』や『いりす症候群!』といった短時間で遊べるパズルも作っていますね。

てつ:
『タイムアタック!RPG』、『窓の中の宇宙戦争』、『愛と勇気とかしわもち』の3作は、当時開催されていた「3分ゲーコンテスト」に応募する目的で制作したように思います。『愛と勇気とかしわもち』はRPGツクールXPのRubyスクリプトであるRGSSの経験を活かしてC++で開発しました。RPGツクール以外で制作する初めてのゲームだったので、短くなるように設計したという側面もあります。『いりす症候群!』は長編の『魔王物語物語』の後だったので、コンパクトなゲームを作りたいという欲求があったと思います。

――『魔王物語物語』はカタテマのRPGとしては集大成ですね。

てつ:
RPG大好き人間はRPGツクールに出会うと、衝撃のあまり「ぼくのかんがえた最強の超大作RPGをつくろう!」と意気込んでしまいます。僕もその夢を果たそうと、制作していた当時は多少無理をしていました。当時は仕事も忙しく、23時に帰宅しても24時から「よし、あと2時間くらい作業できるな!」という感じで。毎日、リポビタンDやエスタロンモカを飲んでいました。『魔王物語物語』でRPGを作りたいという夢を果たした後は、健康を害してまでやるようなことではないので、一定のペースで長く走りつづけたいと思っています。

《Game*Spark》
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