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【CEDEC 2014】注目される子供のプログラミング学習、その現状と課題とは?

CEDEC 2014の初日、NPO法人CANVAS理事長で、デジタルえほん作家の石戸奈々子氏は「子どもたちのプログラミング学習の現状」と題したセッションを行いました。

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CEDEC 2014の初日、NPO法人CANVAS理事長で、デジタルえほん作家の石戸奈々子氏は「子どもたちのプログラミング学習の現状」と題したセッションを行いました。

2002年頃から国内外問わず、子どものプログラミング学習が盛んになっています。当時から子どもたちのプログラミングプログラミング学習の推進や、教育の情報化に取り組んできた石戸氏は、特にプログラミング分野への注目度の高まりに驚いているといいます。

昨年10月にグーグルのエリック・シュミット会長が来日した際、記者会見を行い、一年間で2万5000人の子どもたちにプログラミング学習を説けるということを発表したところ、石戸氏の元にもメディアや学校関係者からの問い合わせが激増したそうです。

プログラミング教育が盛り上がり始めたことには以下のようなことが背景にあります。

1. 子どもたちのタブレットなどのデバイスの日常使いの広がり
2. 学校現場でのデバイスの活用の広がり
3. 中学の技術・家庭の授業でのプログラミングの必修化
4. 成長戦略や世界最先端IT国家創造宣言へのIT教育の推進やIT人材を育成していく環境の整備・提供に取り組むことの明記

イギリスやエストニア、ニュージーランド、韓国、イスラエルなど、初等教育からプログラミングを必修とする国が続々と増えています。フィンランドも2016年にはプログラミングを初等教育の必修にすると宣言しています。

また、学校教育だけではなく、社会教育の場でもプログラミング学習は確実に広まっています。アイルランドで始まった子どもたちにプログラミングを教えるムーブメント「CoderDojo」は現在世界41カ国に広まっており、日本でもいくつかの事例があります。

アメリカの非営利団体Code.orgもプログラミング推進をしており、活動にはビル・ゲイツも賛同の声を送っています。2013年に開催されたComputer Science Education Weekでのオバマ大統領の「ゲームを買ったりアプリをダウンロードするだけでなく、自分でつくって遊んでほしい」という演説も話題になりました。

ニューヨークやシカゴなどいくつかの都市も初等教育でのプログラミングの必修化に向けて進んでいるところです。日本にもその流れはきていますが、ICTを教育に取り込むことは、日本ではなかなか進みづらいようです。

■子どもたちが自ら新しいものを作り発信する力を育てる、NPO「CANVAS」の取り組み

石戸氏が設立したNPO法人「CANVAS」は子どもたちが映画やアニメなどのデジタルコンテンツを自らつくる学びの環境をつくっていくことを目的としています。これまでに2000回のワークショップを開催し、30万人の子どもたちが参加しています。

CANVASの取り組み


これからの情報化社会を生きていく子どもたちに必要な力は、自ら新しいものを作り出す力であり、そしてそれを表現し発信する力であると石戸氏は語ります。

東京大学で行った、アニメや映画などのデジタルコンテンツを子どもたちだけでつくるサマーキャンプでは、すべての制作工程を子どもたちだけで行ってひとつのコンテンツを完成させました。

NTTドコモと協力して開催したワークショップでは、東京とパリの子どもたちを携帯電話でつないで写真を送りあい、交換した写真と文章から新しい物語をつくるというインタラクティブに国際交流ができる取り組みを行いました。

ドコモと協力したワークショップ


例えば、日本の子どもが起承転結をつけた4枚の写真をパリの子どもたちに送信し、その写真にパリの子どもたちが別のストーリーをつけて返信するというものです。

感覚的にストーリーをつくるパリの子どもに対して、日本の子どもは4コマでオチをつけようとするなど、国によって考え方の違いがあって面白いワークショップとなりました。

子どもたちの新しい学びの場として開催してきたワークショップ。はじめは学校や行政との関わりが多かったですが、最近は企業と協力してのワークショップの開催も増え、ビジネスとなりつつあります。

様々な形のワークショップが実施されてきた


■スマート教育への転換、2020年には1人1台の情報端末を持たせる策も

子どもたちが休憩時間にiPadを使うようになったり、紙の本を拡大しようとピンチインする動作をしたりと、子どもたちの様子が変わってきたのは2010年あたりからだと言います。

考えてみれば2010年は「電子書籍元年」や「デジタルサイネージ元年」と呼ばれデジタルコンテンツ界が大きく盛り上げっていた年だったと言えます。

親たちも、古くなったデバイスを子ども用の遊び道具に使いまわしたりすることが多くなり、子どもへのデバイスの普及が急速に高まったことが、プログラミング教育が普及した理由のひとつではないでしょうか。今年の東京おもちゃショーでは、子ども向けのタブレットの展示も数多くされており、今後は人生はじめのタブレットをどこがとるのか、という競争が本格化していくことが予想されます。

子供向けのタブレット端末も百花繚乱


0~5才の子どもを持つ親519名に調査したところ、84.6%の親が子育てにインターネットが必要と回答したそうです。

多くの母親が教育にインターネットが必要と考えている


iPadで読み聞かせを行うデジタル絵本や、子守唄をYouTubeを使って聞かせたりなど、子育てにとって、デジタルコンテンツはいまやかかせないものになってきているのです。

現代の親世代は、高校生の頃にiモードを持っていました。デジタルの恩恵を受けつつ育った世代のため、自分の子どもに持たせることにも抵抗がないのでしょう。

150年前の医者に現代で手術をやれと言ってもできないが、150年前の教師に現代で授業をやれと言ったらできてしまう―。そう言われるほどに教育は150年間、変化がない分野でした。そのため、あらゆる面で発展が遅れています。デジタルコンテンツは教育に大きな変化をもたらし、教育問題解決のひとつの糸口になるのではないでしょうか。

2020年までに子どもたちに1人1台の情報端末を持たせようとする策もあります。ウルグアイの子どもたちが2009年に訪れた際には全員100ドルパソコンを持っていました。韓国でも小学校の授業にタブレットを導入したりする施策が始まっています。

日本はまだまだ導入が遅れており、タブレット端末の導入は全国で20校の仮導入にとどまっています。2015年くらいまでに全国導入できないかという話もありますが、道のりは長いです。

■デジタル教育のメリットと身につく力

デジタル教育のメリットは大きく3つ挙げられます。

1. たのしい・創造
紙上では理解できなかったものを映像などでわかりやすく表現することができます。

2. つながる・共有
先生や児童、地域と児童などで教え合うことができます。
授業で手を上げなくても意見を持ってる子の意見を聞くこともできます。

3.便利・効率
それぞれのレベルにあった進度で授業を進めることができます。
採点もデジタル上で自動でできるので、先生の負担を減らすこともできます。

被災地・宮城で行った「プログラミングワークショップみやぎ」では、現地の先生から「こんなに自発的に学んでいる子どもたちを見たことがない」という感想もありました。自発的に学び、問題を解決する力をつけるのに、プログラミングは良質な教育コンテンツと言えるでしょう。

他にもプログラミング教育によって身につく力には以下のような力があります。

1. 自らの知識を構築していく力・・・応用力や総合力
2. 論理的思考力・・・過不足なくコンピュータに支持する能力
3. 新しい表現手法
4. 他者と協働する力

課題としては以下の3つがあげられます。

1. 評価
総合的な力を見るので、明確な評価基準がなく難しいです。

2. 教える人材
学校の先生にプログラミングを教えられる人が少なく、全体的に指導者が不足しています。

3. 環境整備
学校がデジタル化することに好意的でない人もおり、整備が滞ってしまいがちです。

ウェブサイトインターネットとできることでは、日本や海外の子どもたちが踏み出した新しい世界への一歩を紹介しています。日常のあらゆるものがコンピュータに制御されている現代社会で、プログラミングは普遍的な素養として必要なものです。

これからの時代の基礎教養として、プログラミング教育はさらに普及していくことでしょう。
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