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【CEDEC 2014】『俺屍2』を象徴付ける和風テイストの「木版画3Dグラフィック」

ゲームビジネス 開発

【CEDEC 2014】『俺屍2』を象徴付ける和風テイストの「木版画3Dグラフィック」
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CEDEC2014の初日、「『俺の屍を越えてゆけ2』のスタイライズド・レンダリングを越えてゆけ」という講演が行われました。講演者は株式会社アルファ・システム制作部プログラマの深澤正俊氏、同社制作部制作2課キャラクターモデリング・アーティスト坂本淳氏、制作部制作2課背景アーティス鈴木慎平氏の3名です。

今年の7月17日にリリースされた『俺の屍を越えてゆけ2』では、和風テイストの「木版画3Dグラフィック」が採用されています。本講演ではこの表現を実現するために開発した技術とその開発過程が紹介されました。

現在のビデオゲームでは、フォトリアルグラフィックスと呼ばれるリアル調のビジュアルが主流です。しかしながら、アニメのような表現を目指すスタイライズド・レンダリングと呼ばれる手法も用いられます。

『俺の屍を越えてゆけ2』では大正・昭和期の木版画家である川瀬巴水の作品を参考にした木版画調の表現を目指しました。木版画調のビジュアルスタイルを採用した理由は、長年愛されるタイトルを目指しているため、技術によって陳腐化しないスタイルにしたかったそうです。また木版画はアニメ的な平面的な表現にも通ずるところがあり、ユーザーに受け入れられやすいと考えたからです。

コンセプトを表すイメージボード


以上のコンセプトが固まった段階でまずイメージボードを作成しました。さらに表現上のルールとして、遠景ほどディテールを削る、影の階調は少なめ、輪郭線ははっきり出すといった点を明文化しました。

ここから木版画調3Dグラフィックの技術解説がなされました。今回説明された手法は木版画調フィルタ、カラーマップアウトラインという輪郭線描画法、その他のアートワークの細かな説明の3点です。

技術的な要素


最初に木版画調を決定づけるフィルタについて説明されました。本作の基本的なレンダリング方式はフォワードレンダリングであり、ポストエフェクトとして木版画調のフィルタやグレア処理がなされます。

木版画調フィルタは基本的に水彩画風のポストエフェクトを参考にして独自に構築しました。まず紙に塗られた顔料の発色の近似的な関数であるColor modification関数を求めます。この関数において色の変化の度合いとして、色差エッジとノイズテクスチャという要素を与えました。ノイズテクスチャは紙の質感やにじみを表現するテクスチャであり、レンダリングする対象と同解像度の大きさのものをアーティストが作成しました。色差エッジとは色合いの差によって発生させる輪郭ですが、色の差が激しいほど暗くなります。

ノイズテクスチャ


次に木版画調の輪郭線の表現のために考案されたカラーマップアウトラインという手法が紹介されました。実現したい表現は、キャラクターの位置に関係なく、一定の太さの輪郭線を描画することです。しかしながら、通常のトゥーンレンダリングにおける押出し法では、輪郭線の太さが変わってしまいます。

そこでフィルターベースのエッジ抽出法が考案されました。この手法ではアウトライン用の属性値を専用のレンダリングターゲットに書き出します。1ピクセルあたり最大8個までの属性値を持てるようになっており、この属性値が連続していないピクセルにエッジが検出されるという仕組みです。

体のモデリングの場合、手に1、腕に2、上腕に3、胴体に4という属性値を与えます。さらに、それぞれの境界部分には隣接する属性を2つ持たせます。そうすると腕を曲げたとき、腕と上腕部などにエッジを検出することができます。

三番目に背景やエフェクトにおける工夫が説明されました。背景ではプレイヤーキャラクターの位置によってフィールドにグラデーションがかかります。川や海といった表現では、川瀬巴水の木版画のモチーフをギミックとして取り入れました。また非現実的なファンタジーよりの背景でも、テクスチャやグラデーションのルールはなるべく一貫したものとなるようにしています。

火や水などのエフェクトは浮世絵や歌舞伎などが参考にされました。また半透明処理を極力使わないことで、和風の表現と処理負荷を下げることを両立できたそうです。カラーリングは日本の伝統色を参考にして、グラデーションも伝統色から中間色を取り入れました。



逆にスペキュラや環境マッピングといった処理は行っていません。ハイライト部分もテクスチャに書き込むことで陰影をつけています。ただ「照り返し」などの表現にこれらの手法は応用する余地があったと振り返っています。

最後に開発プロセスについてまとめらました。構想段階でイメージボード作成と技術リサーチを行い、初期プロトタイピングでは絵の正解の方向性を探ります。後期プロトタイピングでは正解となる絵を見つけ、量産する手法を検討していきます。

技術リサーチでは論文を大量に集めて、アーティストに図だけ見て判断してもらったそうです。大量の論文を読む手間を省き、いち早く目指すビジュアルに近づくためです。そこで絞りこまれた論文から実現可能なものをプロトタイピングしていったそうです。

またアウトソースも活用されています。特にバリエーションが多い「神様」の3Dモデルに関してはすべてアウトソースしているそうです。他にもコスト軽減のためにモンスターは2Dを使用、背景のテクスチャの書き込みを少なくするといった工夫がなされています。

以上をまとめ、スタイライズド・レンダリングでは「正解」となるビジュアルを定義することが最重要だと強調されました。「正解」とされるビジュアルが決定された後に、どこまでそのビジュアルを実現するのか、動作速度と両立をするのかといった議論が可能になってきます。他方、フォトリアル・レンダリングから学べる事例が多いことも指摘されました。
《今井晋》

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