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【CEDEC 2014】開発支援から成功支援へ、ゲームエンジンの外にも広がるUnityの輪

スタンダードなゲームエンジンとしての地位を確立した感のあるUnity。大幅にバージョンアップした「Unity5」が現在予約受付中ですが、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン日本担当ディレクターの大前広樹氏が「Unity5からその先の話」と題した講演を行いました。

ゲームビジネス 開発
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スタンダードなゲームエンジンとしての地位を確立した感のあるUnity。大幅にバージョンアップした「Unity5」が現在予約受付中ですが、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン日本担当ディレクターの大前広樹氏が「Unity5からその先の話」と題した講演を行いました。

現在のユニティ・ジャパン日本のUnityコミュニティ


約3年前に設立されたユニティの日本法人。現在は20名体制で、日本向けのライセンスビジネスだけでなく、Unity本体の開発にも携わり、ゲームのパブリッシング事業にも拡大しています。国内のユーザー数は中国、アメリカに次いで3位の26万人。アクティブなユーザーも10万人以上いるとのこと。近年ではゲームだけでなく、ノンゲームにも利用が広がっています。アセットを販売するAsset Storeも日本語化が進められていて、販売されているコンテンツもトップ100から順次翻訳が行われているそうです。日本からの販売も増加していて、先日ゼンリンが秋葉原のモデルデータを公開するというニュースもありました。

Unity Asset Storeでは日本のアセットが続々登場


■Unity5で提供される数多くのアップデート

まずは「Unity5」で提供されるアップデートについて駆け足で紹介がありました。

最初は物理ベースシェーダーとダイナミックGI(グローバルイルミネーション)。これらはアーティストがパラメーターで個別に設定を行わずとも、物理的に正しいライティングを行おうという試みです。表面の素材が異なれば、光の反射の具合やその際の視覚される色が異なってきます。光源が変わった時も同様です。Unity5に搭載されている物理ベースシェーダーはこの処理をアーティストが手を加える事なく実現します。GIについても、StaticなものであってもUnity側で自動的にベイキングしてくれるため、操作の手間が軽減されます。シェーダーは独自でカスタマイズすることも可能で、クルマや人間の皮膚にカスタマイズしたものが例示されました。

物理的に正しい表現を容易に実現可能に


新しいオーディオシステムは、ゼロから設計されたもので、これまでと鳴らし方が異なります。ミキサーのトラックレベルでエフェクトをかけられるようになり、パフォーマンスが向上したほか、細かいコントロールも容易になります。他にもサウンドデザイナーにとって有益な機能が多数搭載されているそう。

ウェブブラウザでOpenGLを実現するWebGLはプラグイン無しで利用できるようになります。本格的な3DゲームがFireFox上で動く様子がデモされました。こちらは無料での提供が決定したのとこと。

このクラスの3Dゲームがヌルヌル動いていた


UnityではC#やUnityScriptで記述したものをバーチャルマシン(Mono Runtime)で動作させることでマルチプラットフォームを実現してきましたが、今後はIL2CPPという基盤で、C++に変換し、コンパイルして動作させる方式に変更。WebGLの場合はC++を更にJavaScriptに変換することで高パフォーマンスを実現しています。「C#は楽で安全、でも犠牲にしていた速度を、IL2CPPでは良い所を活かしながらC++の速度を手に入れる事が出来る」(大前氏)とのこと。

IL2CPPの概念パフォーマンスの比較


Mono Runtimeという外部のランタイムを用いてきたことで、Unityとしては様々な制約があったそうですが、独自のランタイムに入れ替えることで、プラットフォーム対応の速度やメンテナンスの難易度が低下。今後はC#や.NETの新バージョンへの対応も出来るのではないか、とのことでした。

開発を容易にする仕組みとしては「フレームデバッカー」と呼ばれる、ドローコールを追いながら、具体的に何が行われ、何が起こり、どのくらいのコストがかかっているのをビジュアル化するツールが登場。さらに、「マルチスレッドプロファイラー」ではフレーム毎のスレッドの利用状況を追えるようになりました。いずれもパフォーマンスを引き出していく際には有益なツールとなりそうです。

フレームデバッカーマルチスレッドプロファイラー


またUnity全体の取り組みとしては、バグ修正を高速化するべく動いているそうです。Issue Trackerというバグのデータベースを用意。ユーザーからの投票も受け付けながら対応のプライオリティを決定。さらに、パッチリリースも開始。毎週バグフィックスを実施するということを既に15週間継続していて、今後も続けていくとのこと。

■ゲームエンジン、その先に

大前氏は現状のUnityは「ゲームエンジン、以上!」であり、ゲーム開発者がやらなくてはならない事の一部しかサポートできていないとして、作る以降のプロセスもサポートしていくと話し、現在具体化している幾つかの動きを紹介しました。

Unityの今後


「Cloud Build」はどちらかというと開発側ではありますが、クラウドでUnityのプロジェクトを自動でビルドしてくれるというサービスです。githubのような所らにソースを登録すると自動でビルドが行われ、その結果が開発者に通知されます。プロジェクトが巨大化したり、対応プラットフォームが増えてくると、ビルドには時間や手間がかかるようになりますが「Cloud Build」であれば必要なだけのプラットフォーム向けのビルドを自動化することができます。iOSやAndroidであればインストール用のリンクがメールで送信され、ワンクリックで実機インストールできるという至れり尽くせり具合。現在はオープンβで、有償での提供となりますが、無料のサービスも予定されているとのこと。

チョー便利そうなCloud Build


「Unity Analytics」は特に設定などを必要とせず、プレイヤー数やセッション数
の増減、売上などを管理してくれるアナリティクスサービス。

「Unity Ads」は主にビデオ広告を配信するためのプラットフォーム。無料でクロスプロモーションを行う仕組みも提供。2014年には20億円以上をデベロッパーに還元、来年には100億円規模のサービスにしたい、とのこと。ユニティが買収したApplifierが提供していたサービスです。

お金を還元する初のエンジンメーカー?


「Everyplay」もApplifierが提供していたもので、iOSやAndroidのゲームに組み込むことで、ゲームプレイを録画したり、生中継を行うためのシステムを提供します。ゲーム動画は一大ムーブメントとなっていますが、自身のゲームで容易に対応が可能となります。

「Unity Games Japan」のブランドでは、Unityで開発されたゲームのパブリッシングをサポートします。スマートフォンのみならず、PS4、Xbox One、Wii Uのような家庭用ゲーム機向けのパブリッシングも提供。海外向けにはローカライズ会社のKakehashi Gamesと提携してローカライズまで行います。

パブリッシングも支援


最後にUnityのイメージキャラクターの「Unity-Chan」も活躍中。大前氏は「ファンベースを共有するため」と取り組みを説明。既に人気のあるキャラクターを使ってもらうことで、ゲームの人気に一役買おうという意気込みのようです。

活躍中のUnity-Chan


■開発支援から成功支援へ

最後に2つのサプライズがありました。

1つ目はUnityの弱みでもあった共同作業の改善です。Prefabとシーンの持ち方を改善することで衝突を軽減。テキストベースではないシーンマージツールも提供することで、文脈を理解しながらマージが可能となりました。また、複数のシーンを同時に編集するマルチシーン編集についても初披露。違うシーンを同じ空間に入れることで調整作業が容易になります。こちらは5.xのどこかで導入予定だとのこと。

もう1つは日本語サポートの改善です。きちんとしたIMEのサポートや、Windowsでの日本語ユーザー名やパス名での問題の解消。日本語に対応したMac MoboDevelopの導入など。エディタ自体の日本語化も来年4月までにはやりたいとのことでした。

大前氏は、作る側の支援は当然のこととしてこれまで以上に力を入れながら、作った後もケアしていくと述べ、開発支援ではなく成功支援であると述べ講演を終えました。「Unity5」によって大幅にバージョンアップするエンジン本体のみならず、矢継ぎ早に登場するゲームを広めるための施策たち。引き続き動向が楽しみなメーカーです。

《土本学》
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