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【ゲームラボ・カンファレンス東京】インディゲームって実際どうなのよ!? 日米欧のインディゲーム開発者が本音でトーク

『マインクラフト』を筆頭に、海外で大ブレイク中のインディゲーム。国内でもようやく市民権を得てきました。しかし、その実態はまだまだ一般に知られていません。

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『マインクラフト』を筆頭に、海外で大ブレイク中のインディゲーム。国内でもようやく市民権を得てきました。しかし、その実態はまだまだ一般に知られていません。ゲームラボ・カンファレンス東京で3月28日、「インディゲーム開発者が抱える主な課題とは」と題して、パネルディスカッションが開催されました。

出席者は日本から『ラ・ムラーナ』の楢村匠(NIGORO)氏、『僕は森世界の神になる』の北山功氏(神奈川電子技術研究所)。アメリカから『Papers, Please』のルーカス・ポープ氏。イギリスから『Age of Aces』のアンドレス・タロス氏(Mintsprint)です。モデレータはゲームジャーナリストの新清士氏が務めました。

『ラ・ムラーナ』は映画『インディ・ジョーンズ』などをモチーフとした、MSXテイストあふれる横スクロールアクションで、Wiiウェアなどで配信されました。現在は『2』を開発中で、キックスターターで26万ドルを調達したニュースも記憶に新しいところです。『僕は森世界の神になる』は食物連鎖をテーマとしたPCのゴッドシムで、ピグミースタジオからPSモバイルに移植され、海外展開されました。

一方、『Papers, Please』は今年のIGFをはじめ、数々のインディゲームコンテストを総なめにした話題作。架空の国家の入国審査官となり、観光客からテロリストやスパイなどを排除していくアドベンチャーです。『Age of Aces』は第一次世界大戦をテーマとした、横スクロールのMMOフライトシューティング。4作の中では唯一、モバイル向けにF2Pゲームとしてリリースされています。

ディスカッションは開発期間から始まりました。『Papers, Please』の制作者であるポープ氏は、もともとノーティドッグで『アンチャーテッド』シリーズの開発を行っていたプログラマー。妻のケイコさんも別のスタジオで働くプログラマーで、結婚して子どもが生まれたこともあり、心機一転。妻の実家である日本に移住して、インディゲーム開発者として新たなステージに進むことになりました。

『Papers, Please』も昨年11月に開発がスタートし、約9ヶ月かけて、一人ですべて作り上げたそうです。「当初は半年でフィニッシュさせる予定が、仕様が膨らんで3ヶ月のびてしまった」と語りました。

『ラ・ムラーナ』はもともと同人ゲームがベースで、そこからWiiウェア版、PCゲーム版と展開。同人版は趣味で作っていたため、ネットで出会ったメンバー3人でチームを組み、開発に5年間かけたそうです。Wiiウェア版も自己資金ゼロではじめたため、副業の合間に作らざるを得ず、半年の予定が2年かかりました。

もともとエディトリアルデザイナー出身の楢村氏。「ゲーム作りの方が能力が活かせる」と思い、インディゲーム開発者に転身。インターネットの普及やWiiウェアのスタートなどを見て、1年間かけてチームのメンバーを口説いたそうです。もっとも開発資金の必要性を痛感したため、『2』ではキックスターターでの資金調達に挑戦。1年半は開発に専念できるといます。「ただし、販促費用などで本当はこの倍は必要なんですけどね」

MintsprintのCEOをつとめるタロス氏はコンサルタント出身で、グリー東京・グリーUKを経て1年前に企業しました。パートナーのCTOが開発担当、タロス氏がマーケティング担当と、二人三脚でモバイル市場に挑戦。自己資金で開発費用を調達し、『Age of Aces』をリリースしました。クラウドファンディングなども重要だが、まずは自己資金でゲームを成功させることで、結果として調達手段の選択肢が増えていくと言います。

また、すでにレッドオーシャンのモバイル市場ですが、成功したのは「運が良かったし、日本での経験も生きた」とのこと。開発と宣伝と収益化のサイクルを上手く回すことが大切だと語りました。「F2Pに関しては欧米より日本の方が先行しています。ようやく西洋のゲーマーもF2Pになれてきました」

コミケにあわせて年2回、10年以上も新作ゲームを作り続けてきた北山氏。手がけたタイトルは20本以上で、開発期間は3ヶ月を目安にしています。開発チームは4名で、自分の興味とユーザーへのアピールを鑑みつつ、ゲームにセルオートマトンや食物連鎖などの尖った要素を入れているとのこと。もっともインディゲームだけで生計を立てるのは少々厳しく、アプリ開発などの副業も行っていると語りました。

■宣伝や販売に関するインディならではの取り組み

もっとも、インディではゲームを開発しただけでは終わりません。収益化のためには、宣伝やマーケティングが必要です。特に最近重視されているのが、ユーザーコミュニティの形成です。

もっとも北山氏は「これまではユーザーコミュニティなど考えたこともなかった。コミケに出展することで完結していた」と語ります。コミケでゲームを出すとゲーム好きや小売店が集まってくるからです。しかし、昨今ではスマホアプリの増加や単価の下落傾向が続いており、STEAMやコンソールでの配信などに興味を示す同人サークルも増えているとのこと。自身も宣伝や海外へのリーチに関心があるとしました。

IGFで大賞を取り、一躍インディ界で時の人となったポープ氏も、「IGFは結果論」と語ります。一方で注力したのが開発初期からネットを通して開発状況を公開したことで、これによりゲーム好きからフィードバックなどを得ていました。その後、STEAMのグリーンライトに応募すると共に、β版を有力ゲームプレイヤーに遊んでもらって、実況動画をYoutubeなどに公開。バズを高めてグリーンライトを通過させました。「ユーザーコミュニティを管理しようとしたわけではなく、結果的にうまく話題性に繋がった」と言います。

開発段階の情報を早くからネットで公開したのは楢村氏も同様で「大手と同じことをしていてはダメだ」という意識があったと語りました。もともと大学で広告デザインを学んでいたため、宣伝にも興味があったと良い、開発情報自体をコンテンツ化することに挑戦。攻略サイトでのゲーム画面使用や、Wiiウェア版のプレイ動画投稿を許諾するなどして、ネット上でバズを広めることに注力しました。今では熱心なファンに運営サポートなどもお願いしているそうです。

これに対してタロス氏はF2Pゲームだけに、まずはユーザーのプレイログを分析して、KPIをチューニングしていると語りました。もっとも、ユーザーコミュニティやメディア対応などは、今後の課題だといいます。北山氏も「コミュニティ構築の方法など、何も分かってないので勉強中」としつつも、まずはメールでの問い合わせに丁寧に対応することが大事だとしました。

他にユーザーとの距離が近いことがインディの強みで、ゲームイベントで達人プレイヤーにゲームを遊んでもらい、その様子を公開するなどしたとのこと。これについてはポープ氏、楢村氏も同様で、GDCやPAXなどのイベントに出展し、ユーザーと直接交流をすることの重要性について指摘。それができるのがインディの楽しさだと語りました。

楢村氏は「2万人のフォロワーがいればインディは食べていける」と言いますが、日本だけでは届かないため、海外を重視しているとのこと。STEAMのグリーンライトに日本人インディとして初めて通過したのも、海外コミュニティの支援あってのことでした。もっとも肌感覚でわからないので、海外のイベントなども積極的に参加したいと言います。

北山氏も「うちは海外版の売り上げが国内の半分以下で、ネットの書き込みなどを見ても、どの辺をおもしろがってもらえているのか、ちゃんと刺さっているのか、良くわからない。もっと分析したい」と語りました。

■作りたいゲームを作るのがインディゲーム

会場からは海外展開に伴うローカライズについて質問がありました。楢村氏は「そこがインディの弱み」として、『ラ・ムラーナ』のPC版ではローカライズ会社に発注したといいます。北山氏も「開発段階から海外展開を意識して、パブリッシャーからお声がかかるのを待っている。時々問い合わせがある」とコメント。具体的には「マウス操作に特化」「シンプルなUI」「テキストを出来るだけ減らす」ことに気をつけていると語りました。

タロス氏も「インディゲーム開発者にとって、ユーザーのメール対応だけでも結構大変。これが海外対応ならなおさら」と語り、まずは、自分たちのお膝元で良いパートナーを見つけることが大事だとしました。その上で市場特性を見つつ、各国別のパートナーを見極める必要があるといいます。「『Age of Aces』はタブレット向けのゲームですが、日本ではスマホに比べてタブレットの普及率が低く、その点でも慎重になっています」

「開発と途中でモチベーションを維持するには?」という質問もありました。ポープ氏は「ノーティドックでゲームを完成させることの重要性を学んだ」と語り、インディゲームでは「いつまでも作り続けられる」ため、自分で完成ポイントを決めておくことが大事だと指摘。モチベーションが下がったら、一度全体を俯瞰したり、時には仕様を切り詰めることも大事だとしました。

最後に「売り切り型ではなく、運営型のゲームについてどう思うか」という質問がありました。タロス氏は「まさにそれがやりたいこと」として、「『ファームビレ』は未だに遊ばれ続けている。我々も同じようなゲームを作りたい」と語りました。これに対してポープ氏は「コンソールでDLCなどを作り続けて、それの反動で『Paper, Please』を作った経緯もある」として、今後も「終わりがある」ゲームを作りたいとコメントしました。

北山氏は「今まで運営型のゲームにつて、考えたこともなかった。子どもの頃から、『ラスボスを倒してスッキリ』というゲームばかり遊んできたので、知らないうちに、同じようなゲームばかり作っていた」と語り、新しい視点をもらったとコメント。楢村氏は「作りたいゲームを作るのがインディゲーム。それぞれのゲームで、好きな人が買ってくれれば良い」とまとめました。
《小野憲史》
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