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【ゲームラボ・カンファレンス東京】日米を股にかけ活躍してきた、マーク・サーニーが語る海外で成功するゲームとは

スペイン大使館で3月27日、「ゲームラボ・カンファレンス東京」(主催:ゲームラボ)があり、『KNACK(ナック)』の総監督やPS4のリード・アーキテクトなどで知られるマーク・サーニー氏が登壇。

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スペイン大使館で3月27日、「ゲームラボ・カンファレンス東京」(主催:ゲームラボ)があり、『KNACK(ナック)』の総監督やPS4のリード・アーキテクトなどで知られるマーク・サーニー氏が登壇。特別セッション「日本ゲーム業界から得た教訓」が行われました。セッションはカンファレンス・ディレクターのIvan Fernandez Lobo氏との対談形式で行われ、さまざまな提言が飛び出しました。

1964年生まれのサーニー氏がはじめてゲームに触れたのは7歳の時。当初はあまりおもしろいと思いませんでしたが、『スペース・インベーダー』で夢中になりました。「ゲームにキャラクター性が持ち込まれたのが新鮮だったんです」。その後プログラミングとアーケードゲームに夢中になり、リアルタイムストーリーベースのRPG開発にパンチカードによるプログラミングで突撃し、玉砕。「1978年当時に『FF7』のようなゲームが作りたかったんです。無謀でしたね」。

その後、二つの趣味を仕事にするべく、1982年にアタリに入社。1,2作目はパッとせず、3作目の『マーブルマッドネス』でスマッシュヒットを記録しました。しかし、社内はいわゆる「アタリショック」の影響でレイオフの嵐。「アーケードも不況で、たまたま上手くいっただけ」といいます。コンソールでいえば15万本くらいのヒットで、それで自分のキャリアに変化があった、ということはありませんでした。ちなみに本作、海外では大変有名なものの、日本では数百台程度しか輸入販売されなかったそうです。

1985年に来日し、セガに入社して「セガ・マーク3」の開発チームに参加。当時マーク3の開発部署は、合計40人くらいの規模でした。プロジェクトもプログラマー1人、アーティスト1人で、数ヶ月で1タイトル制作するといったペース。自身もゲームデザイナーとプログラマーを兼務しました。

1990年に帰国し、サンフランシスコでSega Technology Instituteを設立。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』などの制作に係わります。その後ユニバーサルインタラクティブスタジオ設立などを経て、サーニーゲームズを設立。手がけたゲームは『クラッシュ・バンディクー』『スパイロ・ザ・ドラゴン』等々。冒頭のとおり、PS4のローンチにも深く関わりました。「なんだかんだいって、20年くらい日本企業と仕事をしていますね」

「80年代の日本はゲーム王国で、ゲームデザインを学ぶなら日本しかなかった」というサーニー氏。実際ゲームデザイナーという役職がアメリカで定着したのは、90年代後半以降のことで、日本は先進的だったといいます。そこで学んだのは徹底したユーザー目線でした。一例として上げたのが『クラッシュバンディクー』で、日本で難易度調整などにユーザーテストが実施され、驚いたと言います。

続く『2』では「やさしさ」がキーワードとなりました。「日本では『簡単』『親切』という2つの意味がありますよね」。このように、西洋のコンセプトに日本の顧客視線を導入した結果、大ヒットにつながりました。「正直、80年代の仕事で今も影響していることは特にありません。当時のアーケードゲームは『ユーザーへの挑戦状』だったし、80-90年代のアメリカのゲーム開発者は、作りたいモノを作っていただけで、正直ユーザーのことをあまり考えていなかった」というほどです。

もっとも90年代以降はコンソールゲームの中心が日本から欧米に移行しました。「FPSに代表されるように、日本だけユーザーが好むジャンルが違うんです」。その結果、今では欧米のクリエイターはあまり日本市場を考慮しなくなったといいます。逆に日本では市場の中心がコンソールゲームからスマホアプリに移行しました。その結果、日本のコンソールゲーム開発者は海外市場を重視せざるを得なくなっています。

「もっとも、欧米のヒットジャンルの真似をする必要はありません」。日本の強みはアートディレクションで、例として上げたのが『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』『ワンダと巨像』『大神』など。匠の技ともいえるアート性と、新ジャンルの創造の組み合わせが、海外市場を狙うキーワードだと分析しました。

「茶道や陶芸の家元の家系からゲームクリエイターが排出されて、彼らが自分たちの伝統技術をゲーム作りに活かそうとしているのを知り、衝撃的でした。こういった体験が、日本企業と仕事をする醍醐味ですね」

対談を通して「自分はコンソールゲームの開発者なので、その視点でコメントしたい」と言い続けたサーニー氏。「コンソールでもインディーズゲーム革命が起きている」と語り、個人で何が出来るかが重要な時代になったと話しました。自身もこうしたゲームをいかにコンソールに引き込むことに関心があると言います。

最近のお気に入りはPCゲームで人気を集め、PS4でも配信が予定されているアクションゲーム『Don't Starve』。キーワードは「驚き」で、規模が小さくても「あっと言わせる何か」を提供することが重要だと言います。

また日本の開発者のスキルセットを考えた場合、まだまだ閉鎖的な雰囲気があることが問題ではないかと指摘。GDCなどのカンファレンスにゲーム開発者がどんどん出席して、自由な雰囲気でディスカッションする雰囲気が必要だとしました。こうした開発者同士の横の繋がりがないため、社内での技術開発が中心となり、欧米企業の後塵を拝する結果になっているといいます。

また日米の文化の違いが及ぼす影響について「アメリカでは子育てで創造性が重視されます。子どもが創造的で、両親がそれを気に入るなら、少しくらい勉強が出来なくてもいいのです」。一方で日本では万事につけて「正しいやり方と、間違ったやり方がある」ことを、子どものうちから教えられるのではないかと指摘。結果として日本ではディティールにこだわり、アメリカでは創造性を尊ぶ文化につながっているのではないか、と分析しました。

他に国際チームのコラボについて、経験則として「外国人が日本語を喋るチームだと、うまくいく」と語りました。仕事が終わって飲みに行って、みんなが日本語を喋っているのが、良いチームだといいます。「もっとも、日本人が少数派なら、がんばって英語で話し始めるといった光景もみられますが・・・」。逆に日本人が海外スタジオで働く際に英語でのコミュニケーションが求められるのも事実でしょう。郷に入っては郷に従え、ということでしょうか。

最後に、最近注目している技術についての質問もありました。サーニー氏は「ネットワークとSNS」だと即答し、アクションゲームだった『KNACK(ナック)』が、これでソーシャルゲームになったとコメント。またVRについても「ゲームをこえて、人の生き方を変えていく可能性がある」と語り、Facebookもそこに魅力を感じたのだろうと話しました。「部屋にいながらにしてバケーションを楽しんだり、数千キロの彼方から遠隔医療を受けたり、わくわくしますね」。レジェンドの一言ひとことに、多くの来場者が引き込まれていました。
《小野憲史》
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