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コンソール業界出身エンジニアが語るハイブリッドアプリ開発の舞台裏!DeNAのゲームエンジン開発

ゲームビジネス その他

多久島信隆氏
  • 多久島信隆氏
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  • D.O.T. Defender of Texel
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かたやF2P(フリートゥプレイ)やソーシャル機能の導入。かたやタブレットなどリッチ化するコンテンツ。コンソールゲームとソーシャルゲームがどんどん融合しつつあります。人材面でもコンソールからソーシャルへの移動は、ごく当たり前の光景となってきました。DeNAで『D.O.T. Defender of Texel』(以下、D.O.T.)の開発にエンジニアとしてたずさわり、現在はハイブリッドアプリ向けゲームエンジン「Kickmotor(キックモーター)」の社内活用にいそしむ多久島信隆氏も、そうした転職組の一人。「Kickmotor」の開発背景や同社での働きぶりなどについて伺いました。

―――今日はよろしくお願いします。まずは簡単な経歴をお聞かせください。

多久島: 自分が熱中したゲームを作る側に回れたら最高だなと思っていて、上京して大学生になり、大手ゲーム会社のインターンなどに参加しました。学生のうちからCEDECに参加したり、IGDA日本主催のセミナーでボランティアスタッフなども行いましたよ。そんな中で、ある開発会社でアルバイトをするようになり、そのまま社員になりました。その頃は、技術力をつけたくて、クライアントだけでなく、ツールにサーバ開発、インスタレーションや電子書籍っぽいこともやりましたね。社内に「心の師匠」的な先輩がいまして、その人に少しでも近づきたくて、仕事をしていました。

それから7年たって、気がついたら、師匠との差も圧倒的なものではないように思えてきて、これ以上同じ会社にいても学べることがないなあと、ちょっと悶々としていたんです。そこで転職を考えていたところ、とあるご縁でDeNAのエンジニアと話をする機会があって。ああ、こんな切れ者の傍らで働けたら成長出来そうだなと感じました。3年くらい前のことですね。当時は自分のようなゲーム畑の人はまだ少なくて、ITやウェブ業界の人が多かったのも刺激的でした。それで、そのままお世話になることにしたんです。

―――エンジニアとして研鑽を積みたかったのですか?

そうですね。前の職場でもブラウザゲームを作っていたのですが、お客様をタイトルごとにゼロから集客する必要があって、実績を作るには限界があると感じていました。自分が設計したシステムが、きちんとスケールして数百万人ものユーザー負荷に耐えられるか。教科書通りに作れても究極的にはそこまでたどり着いてみないと白黒付かない。それならいっそのこと、ユーザーベースを抱えている会社に入って、経験積んだほうが早いんじゃないか。そう思ったんです。また、ちょうど北米ビジネスに力を注ぎ始めたところで、会社も外に向かって成長していく時期だったことも、理由の一つとなりました。

―――当時はまだフィーチャーフォンが主流でしたし、ギャップはありませんでしたか?

ゲームの作り方やマネタイズ云々よりも、周りの人の経歴が多様であったり、得意分野の違いを実感し、自分にとっては全てが新鮮でした。そういった新しいことをやっているときは、とくかく楽しいですよね。技術的にもインフラチームのクオリティなどは桁違いにすごいなと思いました。なにしろ、あれだけのユーザーを抱えていながら、サービスを止めずに運用することは当然として、監視体制、トラブル発生時の異常に早い対応と的確さ…等々本当に鍛えられているなと思いました。

―――いろんな経歴の人が集まることで、どんなメリットがありますか?

今は何か新しいアプリなりサービスなりを立ち上げる時って、純粋なゲームのクライアント部分だけでは足りなくて、インフラに、分析に、集客にと、色々なスキルを持った人材が必要になります。だから、総合力のあるチームを作ることが出来るんです。ゲーム作りのコアな局面においては、自分のようなコンソール出身者が活きるところです。自分自身も最初のうちは新しい技術を覚えることで精一杯でしたが、気がつけばこれまで培ってきた経験やノウハウを周囲に提供できていたんです。インプットとアウトプットの良い循環ができたと実感しています。

―――そうした中で『D.O.T. Defender of Texel』を支える「Kickmotor」の開発に繋がっていったわけですね。

はい、転職した直後はアプリ寄りのツールやライブラリの開発を担当していました。次にタイトルのイベント開発を経て、リードエンジニアとして参加することになったのが『D.O.T.』です。その開発の過程で共通フレームワークの「Kickmotor」が生まれてきました。リリースが落ち着いてからは、タイトルから離れて、「Kickmotor」を社内の他のラインでも使えるようにするため、今は開発支援に携わっています。

―――「Kickmotor」の開発について詳しく教えてください。

『D.O.T.』はアニメーションがネイティブで、他のコンテンツ部分はWebViewで実装されている、いわゆるハイブリッド型アプリです。この『D.O.T.』を支えるフレームワークとなっているのが「Kickmotor」です。もっとも、最初からそんな構想があったわけではありません。我々が得意としている定期的にイベントを行ってゲームを盛り上げていくような、イベントドリブンスタイルのゲームをスマートフォンでも作りやすくするための仕掛けを考えて欲しいというオーダーから、プロジェクトがスタートしたんです。

―――なぜそんな仕掛けが必要になったんですか?

Webのゲームとスマートフォンのゲームにおいて、アップデート時の大きく異なる点は、アプリの審査期間が必要になることです。これを見越してイベントを打っていくのは、制作進行が非常に困難になります。一方でお客様は「スマホなんだから」とネイティブアプリなみのゲーム体験を期待されます。この矛盾をどうやって解決するか。社内でヒアリングをしたときも、みんな悩んでいました。結局、出来る限り何でも更新出来るように設計することにしました。結果として、イベント開発が格段に楽になりました。

―――何か参考になるものはありましたか?

実際、すでにDeNA West(米サンフランシスコ)で運用していたタイトルに『Chains of Durandal-Card Battle』があり、ハイブリッド型アプリとしてネイティブを活かしていました。一方で『Blood Brothers』のようなネイティブアプリに寄ったタイトルも出来る限り更新可能にするために、WebViewをうまく使おうとしていました。さらにディスカッションした結果、もうちょっと操作部分でネイティブアプリ的な演出が欲しいよね、となったんです。画面の遷移がシュッと変わったり、ボタンを指で触ったときに、パーティクルが飛ぶような演出があったりするだけでも、遊んだときの感覚は大きく違います。こういったウェブアプリではまだ苦手な部分を補っていくことがいいのではないか、と話したことがネイティブを活かす発想の出発点ですね。

―――まさに日本ならではの、おもしろい発想ですね。

正直、弊社でなければ別のアプローチを考えていたと思います。自社のリソースや、周りにいるスタッフの力をうまく引き出すことが大事でした。たとえばDeNA Westではネイティブアプリの技術力が高いので、こうした発想は出てこなかったでしょう。 また一口にハイブリッド型アプリといっても、いろんな技術的アプローチがあります。『D.O.T.』を作る上でも、いくつか選択肢がありました。たとえば弊社にはスマートフォン向けゲームエンジン「ngCore」があり、これを利用する案も出しました。いろいろ検討した上で、開発工数が抑えられる今の形に落ち着きました。なにしろアプリの開発期間が4ヶ月しかなかったので。


―――それは短いですね!

そうですね。4ヶ月でアプリ部分と、後に「Kickmotor」につながるフレームワーク部分を平行で作って、iOSとAndroidを同時でリリースしたというのは、自分にとっても初めての経験でした。できるだけ不安要素を減らすために、あれこれ知恵を絞りました。複雑さを抑えるために、Webとネイティブで重複した機能を作らない、チューニングしている時間はないので、速度で不安のあったHTML/CSSアニメーションは使わず、全てネイティブに振るなど。結果として、短期間でそれなりに使えるものが作れたので、フレームワーク制作としてのコストパフォーマンスは良かったと思います。

―――コンソールでは1年、2年とかかるモノも多い中で、どのような違いを感じられましたか?

最初からピークがどこにあるかの違いでしょうか。リリース後は、モノによっては長期運用が続きますが、リリースまでは短期開発となると何かあったときに挽回する余裕がありません。そのためピークを意図的に前半にもっていき、2ヶ月目くらいで一番忙しくなるような工程を組みました。これもバックグラウンドの多彩さにつながるのですが、当時のプロデューサーが元々携帯電話自体の開発プロジェクトを率いていた方で、プロジェクトマネジメントに長けていたのです。アジャイル的な要素も入れつつ、しっかりした計画も立てられていましたし。開発はきつかったですが、早い段階で動作するものが出来るので、モチベーションも沸きますしね。

―――そこから現在は「Kickmotor」の社内共有化を進められることになって。

おかげさまで『D.O.T.』の評判が良かったので、他のタイトルでも使われることになりました。更新しづらいネイティブ部分にタイトル固有の実装をしないということを、どうにか守ることが出来たので、「もう一本作れ」と言われたときも、接続先のアドレスを変えればそのまま流用できる状態になっていました。そこまでやれるか、半信半疑の部分もありましたが、それができなければイベントの企画に支障が出そうで嫌でした。時にはゲーム内容ががらっと変わるようなイベントを組むこともありますから。

―――御社に転職して働き方が変わった部分はありますか?

大げさな機材はいらなくなったし、ネットワークさえ繋がっていれば社内のどこでもコードを書けるので、時間を使いやすくなりました。社内の情報共有が非常に進んでいるため、やる気があれば、どんどんインプット出来ます。最初は情報が多すぎて溺れた記憶もありますが…。オープンというだけでなく、声をあげて変えていくことを良しとする社風もあるので、以前よりあれこれ口出しするようになったと思います。

―――最後にコンソールゲームからソーシャルゲームへの転職を逡巡している人も多いと思いますが、何かアドバイスをお願いします。

自分自身は転職してよかったと思います。自分が成果を発揮できるようなペースを意識的に作って働ける人には良いんじゃないでしょうか。一層、限られた時間をどう使うか考える必要はあります。一度転職を経験したことで、将来的なキャリアパスについて視野が広がりましたね。わりと飽きっぽい性格で、いろんなことを短期間でやるのが好きなんです。そういう意味でも、自分の知らない分野に挑戦できて良かったと思っています。

フィーチャーフォンの頃と違って、今はいかにもソーシャルゲームというよりも「ソーシャル要素を活かしたゲーム」という様に、作るモノも市場も変化しています。そのため自分が入った頃よりも、ギャップは少ないと思いますし、自分の色も出しやすいと思います。それに、コンソールゲーム会社でソーシャルゲームを作っている人も、最近では多いのではないでしょうか。だとしたら、グローバルでソーシャルゲームを製作、展開している、弊社のような会社に飛び込んでみるのも、よりチャンスが広がるのではと思います。

―――ありがとうございました。

10月30日には今回インタビューに応えてくれた多久島氏らが登壇する無料セミナーも開催予定。参加は無料で申込は専用ページ(http://www.techno-brain.co.jp/seminar/seminar_dna.html)から可能となっています。

■セミナー概要
・イベント名:コンソール業界の経験を活かしたソーシャルゲーム開発の変革 ~DeNAを支えるゲーム技術開発~
・開催日時:10月30日(水) 19:00~
・開催場所:渋谷・ヒカリエ DeNAセミナールーム
・定員:50名
・参加料:無料
・主催:キャリアラボラトリー(http://careerlaboratory.jp/)
・申し込みはこちら http://www.techno-brain.co.jp/seminar/seminar_dna.html

■講演内容
ソーシャルで活かすコンソール技術 ~ハイブリッドアプリを例にして~:多久島信隆氏
コンソール時代の経験を活かした、今までとこれからの挑戦:沖原正剛氏

■登壇者プロフィール
・多久島信隆:コンソールゲーム主体の開発会社を経て、2011年7月にDeNAに転職。『D.O.T.』ではリードエンジニアとしてタイトルリリースまで担当し、現在はゲームエンジン「Kickmotor」のアーキテクトとして活躍中。

・沖原正剛:2010年6月株式会社ディー・エヌ・エー入社。株式会社ディー・エヌ・エー ソーシャルゲーム統括部 所属。コミュニティエンジン株式会社でネットワークゲームの開発・運営に携わる。
《小野憲史》

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