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スカラーシップでCEDECに参加したことが大きな成果につながりました・・・ネイロ株式会社・今田智子さんインタビュー

ゲームビジネス 人材

ネイロ平井武史氏(左)、今田智子さん(右)
  • ネイロ平井武史氏(左)、今田智子さん(右)
  • ネイロ今田智子さん
  • ネイロ平井武史氏
  • ネイロ平井武史氏(右)、今田智子さん(左)
  • 今田さんが開発に参加中の新作MMORPG「Klee(クレー:開発コードネーム)」
  • MMORPG「Klee(クレー)」ゲーム画面
  • MMORPG「Klee(クレー)」ゲーム画面
  • MMORPG「Klee(クレー)」ゲーム画面
国際ゲーム開発者協会(IGDA)が世界の主要ゲームイベントで開催するスカラーシップ(奨学生制度)。合格者にはイベントの無償パスや会社見学(スタジオツアー)、ゲーム業界で働く先輩とのメンターミーティングといった特典が与えられます。今年は5月20日よりCEDEC&東京ゲームショウ向けに募集が開始されます。詳細はIGDA日本ニュースサイトで告知されます。

日本でIGDAスカラーシップがスタートしたのは2011年。ネイロ株式会社で2013年4月から新人プランナーとして勤務中の今田智子さんは、その第一期生として合格し、CEDEC2011に参加しました。スカラーシップとしての体験が就職活動や現在の仕事に、どのように活かされたのか、インタビューを行いました。


―――自己紹介をお願いします。

今田:京都大学文学部を卒業して、今春ネイロ株式会社のプランナーとして就職した、今田智子と申します。

―――慣れました?

今田:忙しくて、まだ会社と家を往復している感じです。東京は人が多いですね。

―――どんな仕事をされていますか?

今田:先日発表されたスマートフォン向けMMORPG『Klee(仮)』で音場データの設置など、企画周辺業務のサポートをしています。別のタイトルでは、仕様書の作成もしています。あとはテストプレイやバグチェックなどですね。入社したてで、すぐに仕様書の作成をさせていただくことができて、ありがたいなあと思います。

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「Klee」(クレー:開発コードネーム) 
株式会社アエリアとの協業でネイロ株式会社が開発を進めるスマートフォン(iOS/Android)向け新作オンラインRPG。アクションRPGでありながらサウンドにこだわっている点が特徴で、ダークファンタジーな世界観のもと、簡単な操作によるアクションと、こだわり抜いたサウンドで、新感覚なオンラインRPG体験が楽しめる。

(C)Aeria inc All Right Reserved
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―――おおっ、即戦力ですね。

今田:正直なところ、もっと軽い仕事から始めていくのかなと思っていたんですが、いきなり実戦投入という形で、少々戸惑っています。ホントにゲームを作っているなあという実感があって、楽しいですね。

―――就職活動はいかがでしたか?

今田:福岡市主催のインターンシップに参加したり、IGDA日本のCEDEC2011スカラーシップに参加したりしながら、コツコツと進めていました。ただ、弊社の名前を知ったのはずいぶん後でした。先に『orgarhythm(オルガリズム)』(PS Vita/開発ネイロ・販売アクワイア 2012年8月発売)を遊んでファンになって、そこからホームページを見て、弊社の名前を知ったという流れです。これは自分が好きなタイプのゲームだなと。

―――リズムアクションとストラテジーが融合した新感覚のゲームで、世界観も渋めで・・・

今田:そうですね。新しいことに挑戦していて、ちょっと尖っていて、こんなゲームを作っている会社で働けたら良いなあ、と思いました。実は履歴書を送ったのが今年の3月だったんです。ギリギリで決まって良かったですね。

―――ええっ? そうなんですか。履歴書はどれくらい送りましたか?

今田:全部で5-6社くらいです。ちゃんと会社のことを調べて、いいなと思ったところに送ろうと思っていたら、変なこだわりが出て、ずるずる長引いてしまいました。まあ、結果オーライかな。

―――少数精鋭えりすぐりの結果ですね。どういったところが評価されたと思いますか?

今田:実は「またダメだったかなあ・・・」と思っていたので、連絡をもらってビックリしました。弊社代表の平井に理由を聞いたところ、課題で送付した3本の提案書のうち、1本が気に入っていただけたようでした。磁石をモチーフにしたスマートフォン向けのパズルアクションで、「ロジックの部分がしっかりしてるので、会ってみたい」と言ってもらえました。いろんな人に見てもらいながら、半年くらいかけて練り上げた提案書だったので、嬉しかったですね。

―――今田さんは学生の時にゲームを作っていたわけではないですよね。

今田:そうですね。陶芸が趣味で、ずっと土をこねていました。GlobalGameJamも知っていましたが、忙しくて参加できませんでした。趣味でサンプルのソースコードを組み合わせて、超簡単なシューティングゲームをC言語で作る程度はやりましたが、ホントにそれくらいで。

―――スカラーシップって覚えていますか? そもそも、どうやって知りましたか?

今田:はい、もちろんですよ。当時Twitterでゲーム業界の情報収集を行っていて、そこで目にとまったのがきっかけです。CEDEC自体は行こうと決めていたので、これは良いチャンスと思って応募しました。

―――印象に残ったことはなんですか?

今田:スタジオツアーで実際の開発現場を見学できたのが良かったですね。学生では、なかなかそうした機会が得られませんから。インターンシップでは、一社で長期間働けるのが良いんですが、スタジオツアーでは短時間でいろいろな会社の雰囲気が分かったのが良かったです。ゲーム会社ごとに雰囲気がこんなに違うんだって。

―――CEDECの印象はどうでしたか? 初めてでしたよね?

今田:そうですね。思っていたよりゲーム業界って、しっかりした知識基盤があって、そのうえで面白い物を作ろうと努力しているんだなあとわかって、刺激になりました。それまでは、もっと思いつきや感性の部分が大きいのかなって、漠然とイメージしていましたので。

―――確かにゲーム業界は中身がブラックボックスだから、偉い人がテキトーに思いつきで言ったことが、なんとなーく形になっちゃう、みたいなイメージってありますよね。

今田:学生のうちは情報がほとんど入ってこなくて、雑誌やウェブのインタビュー記事を読んだり、他の人の話を聞いたりするだけだったので、そういったところがありました。それが、もっと理論的に考えている人がいっぱいいて、それらが組み合わさってゲームができているんだなあと、具体的なイメージがCEDECで持てたかなあと思います。

―――印象的なセッションはありましたか?

今田:バンダイナムコゲームス(当時)の鬼頭雅英さんの「プレイヤーを知ればゲームはヒットする」というセッションですね。アーケードゲーム『デッドストームパイレーツ』に関する内容で、ロケーションでプレイヤーの生の姿を観察することが、ヒットするゲームを作る上で一番重要だというものでした。

―――たしかに、コンソールやソーシャルゲームでは、実際にプレーイする姿を見ることが難しいですからね。

今田:インターンシップでも「プレイヤー目線で企画を立てることが大事だよ」と教えられましたが、その時はまだ漠然としていました。それが、実際に反応を間近で見て開発されたという具体的な話が聞けて、「ああ、いいな~」と思いました。

―――そういうゲームを作ってみたいですか?

今田:ああ、いいですよね~。でも、いろいろとやりたいことが多すぎて、絞り切れていないんです。

―――今はそれでいいんじゃないでしょうか。ちなみに、どんなゲームを作ってみたいですか?

今田:超大作ゲームというよりは、小さく作って小さく売って、気に入ってくれた人がすごく大事に思ってもらえるようなゲームが作れたら良いなあ、なんて思っています。一時的に大ヒットして話題になったというより、これは私にとってすごく大事なゲームなんです、という風に言ってもらえるものが作れたら、意義があるかな、なんて。

―――ちなみに今田さんにとっては、そういったゲームって何ですか?

今田:一つあげるとしたら『幻想水滸伝2』ですね。大好きで、すべてのイベントをクリアしました。

―――スカラーシップが就活や今の仕事に役立ったことはありましたか?

今田:実はスタジオツアーで対応をしていただいた企業の方々に、スカラーシップ終了後も時々、SNSで声をかけていただいたり、相談に乗っていただいたりしたんです。応募した企画書にも目を通していただいて、アドバイスをいただくことができました。就活がうまくいかなくて、悩んでいた時期もありましたので、たいへんありがたかったですね。心の支えにもなりました。

―――なんと、就職前から業界に人脈が!ただ、受け入れ企業の中にも、学生の姿勢に刺激を受けていた方々がいらっしゃいましたよ。

今田:CEDECやスカラーシップは、そういったエネルギーが渦巻いている場所だと思うんです。目の前の業務で忙殺されている中でも、そうした場があって、いろんな人が交流することで、何か新しいモノが生まれていきそうな雰囲気って、ありますよね。

―――確かに、普通は忙しいですもんね。普段は何をしていますか?

今田:平日はやっぱり、会社と自宅との往復になってしまいますね。そのぶん週末は何かしら予定を入れるようにしています。先日もスタジオツアーつながりで声をかけていただき、ゲーム開発者が集まるボードゲームのコミュニティに参加させていただきました。いろんな先輩方がいて、恐縮しました。

―――おお、すごいですね。新人のうちから、そうしたネットワークが広がっていくと、いいですね。

今田:夢ばかり広がってしまって・・・。まずは、きっちり仕事ができるようになりたいです。

―――最後に今年のスカラーシップ応募者にコメントなどがあれば、お願いします。

今田:実は応募前に「自分がCEDECに行っても、内容がわからないんじゃないかな」と心配していたんですが、わからないなりに色々と得られるものがあるし、「自分はわからない」ことが得られるだけでも大きいと思います。ゲーム業界の具体的なイメージも固まると思いますので、ぜひ応募してみてください。

―――ちなみに、実際に働き始めて、何かギャップはありましたか?

今田:実は「超激務」なんだろうな、と覚悟していました。それが、そこまででもなかったので、良かったです。ただ、大変なのは事実だと思いますので、ゲーム業界をめざされる学生の方は、ある程度は覚悟しておいた方が良いかもしれません。それでも、少なくとも「ゲームを作っていて楽しい」と感じることができれば、大丈夫だと思います。

―――ありがとうございました。

■ネイロ株式会社 代表取締役社長 平井武史氏コメント

今田の場合、3月中旬に面接をはじめて、最終週に決まったんですよ。弊社では新卒応募の際、プランナー志望者に対してゲームの提案書を3本提出してもらうという課題を出しています。いずれも及第点でしたが、その中の1本が、ロジックがすっと通っていて、良かったんですよ。

「現在の市場動向が分かっているか」はさておき、スマートフォンのフリック入力と企画内容との相性や、パズルゲームとしての体裁がしっかりできていて、遊んでおもしろいだろうな、と想像がつきました。加えてステージもゴールから逆算して作れるので、作りやすそうだったのが良かったですね。それで「会ってみたいな」という印象を持ちました。

実は、実際に会ってみて「なぜ他社で内定が出ていないんだろう」と思ったほどでした。自分で作っておいて、こんなことを言うのもなんですが、『orgarhythm』のファンということで、「ちょっとマニアックなのかな?」なんて印象も感じ持ちつつ、会って話してみたら実直な感じも受けましたし。他の会社で決まってなくて、良かったなあと。

正直3月の最終週でしたから、すでに来年度の採用計画に入っていました。でも、この子をゲーム業界に入れて数年後、どんな風に育っているのか見てみたいな、と思ったのが最終的な決め手でした。弊社で貢献して欲しいのはもちろんですが、ゲーム業界でこんな子がいたら、おもしろいんじゃないか。そんな風になれるように、支援してみたいなと思ったんです。もちろん、今後の彼女のがんばり次第だとは思いますが。

今回の採用の件では、いろいろなご縁を感じます。『orgarhythm』を遊んで、その開発元を調べて、ホームページで採用情報を見て、提案書を送ってきてくれて。その提案書はスカラーシップで彼女が得た知見や人脈が活かされていて。もちろん、それまでに他社さんで採用が決まっていた可能性もあるわけですし。逆に弊社も彼女から「選んで良かった」と言われるように、がんばらないといけませんね。

正直、我々が今田を採用できたのも、もともとは彼女がIGDAスカラーシップを通してCEDECに、しかも個人で参加したのが、きっかけだったと思います。そういう意味では、今後もスカラーシップを継続してもらえればありがたいですし、学生の方もチャンスを上手く活用してほしいですね。実際、何事も行動してみなければ始まらないと思うんです。彼女はその行動力があった。なので、最後の最後で就職が決められたのだと思います。(談)
《小野憲史》

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