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【DEVELOPER’S TALK】Unity×ミドルウェアでスマホアプリの表現の限界に挑戦!『デーモントライヴ』のサウンド・ムービー演出面のこだわり

ソーシャルゲームのスマートフォン対応が進む中で、コンソールゲームの開発者が手がけるタイトルが増加してきました。セガからiOS向けにリリースされた『デーモントライヴ』もその一つ。

ゲームビジネス 開発
【DEVELOPER’S TALK】Unity×ミドルウェアでスマホアプリの表現の限界に挑戦!『デーモントライヴ』のサウンド・ムービー演出面のこだわり
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ソーシャルゲームのスマートフォン対応が進む中で、コンソールゲームの開発者が手がけるタイトルが増加してきました。セガからiOS向けにリリースされた『デーモントライヴ』もその一つ。 エッジの効いたグラフィックや奥深いシステムもさることながら、ムービーやサウンドといった演出面でのこだわりが、その魅力を一層際立たせています。

ゲームエンジンのUnity上で開発された本作ですが、その凝りに凝った演出を実現するには、Unityとミドルウェアを上手く連携させる必要がありました。そこで強力な援軍となったのがCRI・ミドルウェアのミドルウェア製品群CRIWAREの数々です。開発チームが直面した課題を、どのようにミドルウェアで乗り越えたのか、たっぷりと伺いました。



■参加者

山田理一郎 セガネットワークス『デーモントライヴ』ディレクター。『サカつく』シリーズのプロデューサー・ディレクター、『サムライ&ドラゴンズ』ディレクターなどを経て、 セガネットワークス設立にあわせて移籍。本作の制作に携わる。

秋葉晴樹 セガネットワークス『デーモントライヴ』メインプログラマー。『サクラ大戦』『ライズオブナイトメア』などの開発を経て、セガネットワークス設立にあわせて移籍。本作の制作に携わる。

杉山圭一 スタジオカリーブ『デーモントライヴ』サウンド制作。セガで『Rez』『ソニックヒーローズ』などのサウンド制作を経て独立。2012年に同社を起業し、本作の制作に参加。

森田朋子 スタジオカリーブ『デーモントライヴ』サウンド制作。ネバーランドカンパニーで『ルーンファクトリー』などのサウンド制作を経て独立。スタジオカリーブに合流し、本作の制作に携わる。

■聞き手

土本学 インサイド編集長
CRI・ミドルウェア

■新生セガネットワークス渾身のタイトル

―――本作の概要について教えてください。

山田: iPhoneやiPod touchといった、iOSデバイスで最大6人までリアルタイムで協力・対戦プレイが楽しめるRPGです。ダークファンタジーな世界観が特徴で、プレイヤーは秘密結社の総督となり、デーモン化する能力を持ったエージェントたちを操って、敵のデーモン軍団と戦っていきます。基本プレイ無料のアイテム課金ベースのゲームで、育成パートとバトルパートを繰り返しながら進めていきます。



―――開発コンセプトはどういったところから?

山田: 元々セガではスマホ向けに『Kingdom Conquest』というゲームをリリースしていました。それが今回、セガネットワークスという会社が発足する上で、新たにヘビーユーザー向けのリッチなコンテンツを作ろうということになりました。スマートフォン向けで、何か新しいチャレンジができて、世界を狙っていけるもの。そこで企画されたのが本作です。

元々弊社はセガから分社したため、開発陣もコンシューマ出身が中心で、いわゆるカードゲーム型のソーシャルゲームのノウハウがあまりありませんでした。それよりも我々が持っている技術をウリにしていこうと。紆余曲折を経て最終的に本作に落ち着きました。『Kingdom Conquest』はシミュレーション+アクションRPGという内容でしたが、本作それとは異なり、「対戦モノ」というイメージです。

スマートフォンの本格シミュレーションゲームとして人気を集めた 『Kingdom Conquest』(画面写真は『2』のもの)


―――グラフィックもさることながら、システムもかなり本格派ですね。

山田:せっかくだからゲームの遊ばれ方もヘビーなものを狙おうと。もっとも隙間時間に遊べる手軽さは残したいよねと。育成と対戦の組み合わせという点で、過去に例のない内容になりましたが、いろいろと仕様を試行錯誤しながら、今の形に落ち着きました。


―――制作チームはどういう人が多かったのですか?

山田: やはりコンシューマの経験者が多いと思います。たとえばアートディレクターの植田隆太は『ライズオブナイトメア』のディレクターをつとめたクリエイターで、非常にエッジが立っていて、往年のセガらしさを多分に持った人物です。このゲームを作る上でアートは植田しかいないと思って、来てもらいました。

秋葉: 他にもバトル周りのメインプログラムは、『サクラ大戦』『戦場のヴァルキュリア』などを手がけた丸山晴が担当しています。

―――開発チームは何人くらいでしたか?

山田: 最初は少人数のメンバーではじめて、最大で20人弱になったでしょうか? 中でもプログラマーが多かったですね。クライアント側で7人、サーバ側で4人です。リリース後はチームも半減しましたが、それでも企画やプログラムが残っていて、ゲームシステムの更新やアップデートなどを続けています。

―――ゲームエンジンにUnityを使われた理由はなんですか?

山田: ちょうど企画した頃、Unityが日本でも盛り上がりを見せていたんです。当初、Unityはチーム開発に向いていないと言われていましたが、ノウハウの蓄積や共有が進んで、そうした懸念も払拭されつつありました。また当初から世界を視野に入れた開発を行う上で、マルチプラットフォーム化も課題の一つでした。最終的に決め手となったのは、バトルシーンのプロトタイプが非常に手軽にできたことです。

秋葉: 僕が開発チームに合流したのが一昨年の12月くらいで、その頃にはすでに原案となるような企画書がありました。そこからUnity上でバトルシーンを先行して作り始めて、昨年の3月には軽くAIと戦えるようなものができました。こんなにサクッと作れるのなら、Unityを使わない手はないだろうという雰囲気になりましたね。

―――そこからリリースまで約1年がかかっていますが。

山田: 最初から、しっかりした土台を持つゲームを作るつもりではありました。大作ゲームの例として、よく『シェンムー』が話題になりますが、セガの歴史を振り返った時に、あのゲームが残した功績は大きいんです。初めて社内にモーションキャプチャスタジオができたり、後々まで『シェンムー』プラグインが使われたり。そんな風に本作も何か会社の資産になるようなモノを残せれば・・・という思いもありました。

―――初めてiPhoneでゲームを作られて、いろいろ大変だったところがあったと思います。

山田: オリジナルタイトルでしたし、いつも苦労だらけですよ(笑)。ただ、今作ではリリース後にどんどん追加して、修正していけるのが良いですね。とりあえず「対戦プレイ」という幹の部分を先行して作り込んだので、今後は一人プレイの要素をもっと拡充していく予定です。一人プレイなんだけど、気がついたら対戦プレイになっていた的な、今風な感じにしていければなあと。また、ゲーム内バランスについても、きちんと調整していきたいですね。他にもマッチングの部分とか、欲を言い出したらきりがないですね。

―――バトル部分はどうですか?

山田: そこは、これ以上複雑にするつもりはないんですよ。元々スマホ向けのゲームですし、空き時間にプレイしてもらいたいですからね。あまり「手さばき」が必要なゲームにはしたくなかったんです。

―――要素も多く、UI設計も大変だったのではないですか?

秋葉: ホントに画面数が多かったので、ちゃんとメモリ内におさまるか、最後まで胃が痛かったです(笑)。本作ではiPod touchの第4世代を動作環境の下限にする予定でしたので、いろいろ詰め詰めでした。

山田: 言ってしまえば本作はシミュレーションゲームみたいなものなので、画面数が死ぬほど多いんですよ。いかに画面を使い回すか、みたいなことは最初から課題でした。でも、だんだん作っているうちに欲が出てくるんですよね。触り心地の良い絵にしたいと思うじゃないですか。こういった「コストを下げてバリエーション豊かな絵を作る」という点は、コンシューマでも同じ悩みですね。

また、やってみてわかりましたが、Unity上で確認しすぎたというのがありました。開発中の絵がすぐに見られるので、ついUnity上でいろいろやりたくなるんですよ。でも、そうして作ったこだわりのビルドでも、いざiPhoneで確認すると、操作感が違うなんてことが多々ありました。また右手持ちと左手持ちの違いで悩んだりもしました。

秋葉: 実はバトルシーンでは、右手持ちと左手持ちでレイアウトを切り替える構想もあったんです。こういったところはスマホならではの悩みでしょうか。

■ド派手なムービーをiPhone上で再生したい!

―――他に何かスマートフォンならではの課題点はありましたか?

秋葉: スマホというよりは、わりとUnityの話になりますね。Unityはすごくよくできたプラットフォームなんですが、それゆえにUnityでできないことを実現しようとすると、思いのほか作業時間が取られました。その一つが今回、CRIさんにご協力いただいた、ムービー面とサウンド面ではないかと思います。

CRI:たしか、最初はムービー面の「CRI Sofdec2」(以下「Sofdec2」)でお問い合わせをいただきましたね。弊社でUnity向けのプラグインを出すと発表した直後で、たしか去年の8月頃でした。

山田: 元々リッチなゲームにしたくて、バトル中でムービーをオーバーラップ再生したい、などの構想がありました。ただ、実際にプログラムするのは大変じゃないですか。そんな時にCRIさんのスマートフォン向けミドルウェアの発表があったので、これはいろいろできるんじゃないかと。

秋葉: 問い合わせをすると、すぐに「Sofdec2」の試用版を送っていただけたので、テスト用のムービーを作って実験を繰り返しました。本作ではUIをデザインするのに、Unityのライブラリとして用意されているNGUIを使いました。そうして作られたUIにはめ込む形でムービーを流したくて、NGUIと「Sofdec2」を上手く融合させられないか、などの質問をさせていただきました。

CRI:元々「Sofdec2」を使えばポリゴンのメッシュにムービーを貼ることができるので、NGUIでもなんとかなるだろうと思っていたところがありました。そこで慌てて検証して、「Sofdec2」のUnity向け機能を増やしたという経緯がありましたね。

秋葉: またαプラスムービーについても実験しました。エフェクトが予想以上に綺麗に表示できて、驚きました。こんなに綺麗にできるんだったら、導入しない手はないと(笑)。

CRI:α値でキャラクタを抜きながら、エフェクトなどを加算で合成するムービーのことですね。光モノのエフェクトを綺麗に表現できます。Unity版「Sofdec2」で、新しくムービーに入れられるようになりました。

山田: ムービーはデーモンの召喚時をはじめ、バトル中でいろいろと使っています。そういえばバトルの出撃シーンで、おもむろに秘密基地から飛び出していって、キラーンって月明かりに消えていく、なんてムービーがあるんですが、これが僕が全く知らないところで作られていて、ビックリしたことがあるんですよ。70年代風の特撮やアニメっぽい演出で、面白いから、まあいいかみたいな(笑)。

■ボイスファイルがゼロから499個に増加!

CRI:続いてサウンドについてもご相談がありました。

秋葉: BGMやSE、ボイスなどが盛りだくさんで、機種によってはメモリからあふれそうになっていたんです。ご存じの通り、Unityで扱える標準サウンドファイル形式はADPCMとMP3しかなくて、圧縮率や再生負荷の調整が難しかったんですよね。一方で本作では音にこだわりたいという要望がアートディレクターの植田からありまして。SEだけで200ファイルくらいありました。

杉山: BGMだけでも最初は10曲くらいあったんです。それでも多いなと思いましたが、最終的に18曲になりましたからね。そもそもバトルシーンが最大で10分くらい続くと伺った時から、これは同じ曲のループだけではすまないぞと。最低でも3分の尺で3曲くらい必要になりますねと言ったら、じゃあお願いしますと言われたんですが・・・

秋葉: 案の定メモリが不足して、一時は圧縮しすぎてAMラジオ以下の音質の、まるで戦場無線みたいな楽曲になっていました。その上ボイスまで加わることになったんです。最初はボイスファイル、ゼロだったんですよ。ところが「キャラごとに声優を変える」「攻撃時の掛け声でバリエーションを増やす」「召喚時のボイスも全部変える」とか、いろいろ出てきて。ほんとに、どうしようかなと。

杉山: 最終的にボイスファイルが499個になりましたよね。

―――ボイスファイルはゼロの予定だったんですか?

山田: デーモンについては収録予定でした・・・自分の中では。ただ、バトル中のボイスで声優さんを当てるというのは、かなり後の方の話ですね。しっかりとした声優さんに当ててもらって、クオリティが上がって良かったです。実は、ちょうどその頃、特撮にはまっていまして、 それっぽい変身ボイスが欲しいなと。

―――デーモンの変身は特撮ヒーローがモチーフだったんですか!

山田: 電子音で変身するのも面白いかも、なんて。会議室で変身ベルトの玩具をはめて、音を鳴らしてみたりもしました。まあ、それはやりすぎだろうと、採用はされませんでしたが(笑)。

―――確かにそれはやりすぎかも。

山田: ただ、何かそういった面白い部分を付加価値として加えたいなあと思ったんですよ。そこはゲーム屋ですから、ユーザーにすげえとか、面白いとか感じて欲しいですし、自分たちが作っていて楽しいようなところがないと。そこはF2Pゲームでも同じかなと思います。

CRI:最初にご相談があった時、開発中の生データをお預かりして、こちらでオススメの圧縮設定などをご提案させていただきましたね。実際に自分たちが生データを触る機会はほとんどないので、たいへん貴重な経験となりました。

秋葉: サウンドのCPU負荷が思った以上に軽かったのが、「CRI ADX2」(以下「ADX2」)採用の決め手となりました。3vs3の通信バトルで、エフェクトもモデルも大量に出ていてと、すでにCPUがかつかつだったんです。実際に載せてみるとものすごく軽かったので、これでいこうと決めました。

―――すでに動いていたサウンドシステムを組み替えるというのは、大変だったのではないでしょうか?

秋葉: そうですね。ただ、今回は私がUnity標準のサウンド再生システムを一元管理するスクリプトを作り、音はそこ経由で鳴らすように他のプログラマに指示を出していました。そのため、根幹の部分だけを「ADX2」に乗り換えれば良かったんです。

杉山: それは最初から見越していたんですか?

秋葉: まったくの偶然ですね。ただ、Unityのサウンドシステムをそのまま触るのは、正直怖かったんですよ。自分が全部管理するから、そこを経由して触ってくださいとお願いしました。

―――それは慧眼でしたね。

秋葉: また、元々本作ではデータの追加配信を行う予定がありましたから、サウンドデータをアセットバンドルで管理するように決めていました。それもあって、サウンドのデータを自分の方で一元管理していたんです。実際、サウンドのファイル管理も「ADX2」を導入したから、なんとかなった部分がありました。

―――どういうことですか?

秋葉: Unityでは、はじめにUnityエディタ上にサウンドファイルをすべて登録してから、エディタ上でADPCM変換やMP3変換をする手順をとっています。そこで最初はプログラマーがサウンドファイルをもらって、まとめて変換するという手順で進めていましたが、途中からファイルが増えすぎて、悲鳴が上がり始めたんです。

―――容量はどれくらいになりましたか?

秋葉: アプリサイズが40MBくらいで、その後にダウンロードするデータも含めて、トータルが250MBくらいでしょうか。もっとも、ほとんどがステージやデーモン、UIなどのテクスチャデータです。サウンドファイルは元々450MBくらいあったですのが、「ADX2」の独自コーデックを使用することで20MB以下になりました。ムービーも数十MBくらいだったと思います。

■スマホアプリの常識を越えたこだわりのサウンド

―――サウンドを実際に作られる上で、何か影響はありましたか?

杉山: 途中からどんどんボイスが増えていって、後半から作業量が急増しましたね。これは一人では無理だと思って、森田に加わってもらったんです。それがちょうど昨年の8月頃だったので、同じタイミングで「ADX2」が使えるようになったことが、逆に福音でした。今まで慣れていたコンシューマでのやり方で作業が進められましたからね。

―――たとえば、どういったところですか?

杉山: Unityの標準的なサウンドの機能だと、曲をループ再生する時に、先頭からしかループできないんですが、これが「ADX2」を使うことで、曲の途中にループポイントを設定しておき、そこから繰り返せるようになりました。こういった基本的な部分で悩まずにすんだのは大きかったです。圧縮設定などもCRIさんにお任せになりましたが、逆にBGMやSE作りに集中できました。

森田: 元々CRIさんのツールは別の作品でも使っていたので、慣れていました。

―――サウンドのコンセプトについて教えてください。

杉山: 自分が係わった頃から、バトルシーンのプロトタイプができていました。グラフィックのテイストや世界観もできあがっていたため、すんなりと入っていけましたね。最初から映画のサウンドトラック的な壮大さと、エッジの効いた、いわゆる「セガっぽいサウンド」の両方を要求される感じがしたんです。はたしてiPhoneでどれだけできるのか、悩んだところもありましたが、やるしかないと。それでスマホということは考えずに、がつんと作っていくことに決めました。

―――サウンド作りで何か工夫はありましたか?

杉山: 世界観がかたよるとよくないと思って、楽曲はすべて森田と二人で合作しました。ダンスミュージック風のパートは全部自分が作って、シンフォニーの部分とバトルの部分は森田が作りました。僕のエッジが効いたサウンドと、森田のシンフォニックなサウンドという、それぞれの持ち味を上手く融合できたのではないかと思います。また育成パートの曲はかなり長く聞くものなので、ずっと聞いてみても疲れないように考えました。 

森田: 実際、育成パートの曲はかなり前から作っていましたね。その後、最後の方で組み込みをやった時にバランスをとりました。

―――スマートフォンならではの苦労はありましたか?

杉山: 音の「さわりごこち」にこだわりました。音が画面を押した時に鳴るのか、離した時に鳴るのか、スライドして離す時になる音なのか、全部操作感が違うんですよ。実際、スマホアプリの中には操作に対して、ワンテンポ遅れて音が鳴るように聞こえるものもあるので、タッチやスワイプなどに合わせた効果音の鳴り方には神経を使いました。家庭用ゲーム機のような感覚で音を付けると、アウトだったりするんです。どこか違和感があると言われたら、その場所を教えてもらって「ADX2」でタイミング調整をしました。

―――他にもデータの追加ダウンロードなどを行う時に使用する、インストーラー部分にも「ADX2」を使用していたとのことですが。

秋葉: ネットワークは苦戦するところで、3G回線やLANの状態でトラブルが起きがちですが、CRIさんには丁寧にサポートしていただいて、とても助かりました。英語でバグレポートや修正要請を書かなくても、すぐに直してもらえたのは助かりましたね。

―――ゲーム中でも通信がたくさんありますが、いずれも短時間で終わる印象です。

秋葉: いろいろ細かい工夫を積み重ねています。サーバ側のエンジニアががんばりました。本作のようなコンクエスト系のゲームでは多くの場合、1ワールドで数千人くらいが同時に繋る感じですが、本作では1サーバで数万人から数十万人がぶら下がります。そこがサーバを構築する上で大変だったところです。

山田: 本当に小さなノウハウの積み上げでできています。元々コンソール系の開発者なので、インフラ周りのノウハウが多いわけではないが、『Kingdom Conquest』以降の積み重ねで、ある程度蓄積されてきました。

■UnityとCRIWAREの連携で驚きの品質を!

―――今後の展開について教えてください。

山田: 先ほども言いましたが、まずはユーザー間のレベルバランスを整えていきたいですね。初心者は初心者同士でとか、デーモンのレベル差がないようなマッチングするとか。より対戦に入りやすい環境を整えていきたいですね。

―――なるほど。

山田: 他にもユーザーさんが、デーモンを育てづらいなどの不満を感じられているところもあると思いますし。もっとモチベーションを高めるための工夫であるとか。また遊びの部分では、オンライン対戦という形ではないんだけど、対戦になっているとか。チームクランみたいな、チーム戦での対戦だとか。今後も月に1回くらいは大きなアップデートをしていきます。

―――iOS以外の展開は考えられていますか?

山田: もちろん考えていますが、まだ決まっていません。

―――海外版は?

山田: これも検討中です。時期は決まっていませんが、視野には入れていますし、意識もしています。もっとも、向こうで通用するコンテンツとは何か考えなくてはいけません。良い形で出せるようにしたいですね。

―――今後ゲームで挑戦したい技術や内容はありますか?

山田: スマホで作るなら、やっぱり音声認識じゃないでしょうか。実は『シーマン』がすごく好きなんですよ。わかりやすい凄さって大事じゃないですか。せっかくスマホだし、普通の人が見てビックリしたり、面白がってもらえるようなものができればいいなと。

秋葉:うーん・・・。スマホって家庭用ゲーム機に比べて生活に結びついていますよね。電話ができるとか、ゲームができるとかじゃなくて、生活の一部として端末があるので。そういった中にゲームが入り込めたら良いなあと、漠然と思ったりします。

杉山: 80年代ってコンソールよりもアーケードゲームの方がハイスペックでしたが、一方で「コンソールで、ここまでできる!」なんて言われ方もされましたよね。それと同じ関係が今、コンソールとモバイルであると思います。その上で今後はどんどんモバイルのスペックが上がっていくと思うんです。では次にどんなモノが出てくるか。それを楽しみにしています。僕らの想像しなかったモノが出てくるはずなんです。それにあったものを編み出していきたいなあと。

森田: 私も同じですが、あえて付け加えれば、そういう技術にサウンドの立場から、いつまでも係わっていきたいですね。 

―――それでは最後に、ユーザーと開発者に向けて一言ずつお願いします。

山田: まず開発者の方へ向けてですが、自分としては何かカルチャーになるようなものを作っていきたいと思っています。せっかくスマホで、F2Pのゲームを作るからには、何かもっと面白いモノや、新しいモノ、もっとチャレンジなものを、業界全体でどんどん出していく必要があると思うんです。そうしないと市場が煮詰まってしまいます。僕らも必死こいて作りますから、みんなで市場を盛り上げていきましょう。

ユーザーの方には、『デーモントライヴ』は正直、まだまだこれからのコンテンツだと思っていますので、ぜひこの先を期待して見守っていただけるとありがたいです。

秋葉: 開発者の方へですが、 Unityはプロだけでなくて、アマチュアも気軽にゲームが作れる、開かれた開発プラットフォームだと思います。ただしセガがそこに入って、同じ土俵で戦うからには、セガにしかできないクオリティのゲームを作る必要があります。本作ではその姿を見せられたんじゃないかなあ。コンシューマ出身だからこその、Unityの広がりを見せられたんじゃないかと思うんです。

ユーザーさんには、ぜひバトルを見てほしいですね。同時に6人までリアルタイムで通信バトルをiPhoneの3G回線でやるというのは大きな挑戦でしたが、なんとか世の中に見せられるところまでできました。グラフィックもかなりトップクオリティではないかと思います。そういうところを見てもらえれば、プログラマーとしては嬉しいですね。

杉山: 開発者の方に向けては、セガがゲームを作り始めて数十年が立ちましたが、いつも時代のスペックを越えた、「早すぎた」ゲームをリリースしてきました。また、ユーザーの期待を良い意味で裏切るようなゲームも、たくさん作ってきました。ただ、そうした挑戦もUnityやCRIといった、しっかりした土台がであってこそです。今後もそうしたエンジンメーカーやミドルウェアメーカーの皆様と一緒に、いろいろやらせていただければと思います。ユーザーの皆さんには、今後も驚きと挑戦心のあるゲームをがんがん作っていきますので、楽しみにしてください。

森田: 開発者の方へ対しては、『デーモントライヴ』の仕事がきて、開発中のゲームを見せてもらった時、非常にクオリティが高かったので、スマホアプリであることを意識せずに曲が作れました。純粋に世界観にあったものを、余計なことを考えずに作れたので良かったです。実際F2Pゲームのイメージを『デーモントライヴ』が大きく上げたと思うんです。ユーザーの皆さんには、グラフィックやゲームシステムと同じくらい、サウンドも自信がありますので、ぜひ一緒に楽しんでもらえればと思います。

―――ありがとうございました。



「デーモントライヴ」で使用された「CRI ADX2」のインディーズ版、「CRI ADX2 LE」は下記URLより無償でダウンロードできます。

本インタビューに記載されているADX2独自の高圧縮コーデックも(Unity Pro使用の方のみ)使用でき、法人の方もADX2導入の試用版として無償で使えるようですので、試しにダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
《小野憲史》
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