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「もう理屈じゃない」たまらない壮快感は60フレームが鍵・・・『METAL GEAR RISING』開発陣インタビュー(2)

2月21日に発売となったPS3用ソフト『METAL GEAR RISING』の開発陣インタビュー第2弾となる本記事では、シナリオ・システムについて開発陣のこだわりを細かくお伝えしていきます。プラチナゲームズのこだわりは「60フレーム」に有り!?

ソニー PS3
『METAL GEAR RISING』開発者インタビュー
  • 『METAL GEAR RISING』開発者インタビュー
  • 小島プロダクション 是角有二氏(プロデューサー)
  • 小島プロダクション 玉利越氏(シナリオライター)
  • プラチナゲームズ 稲葉敦志氏(プロデューサー)
  • プラチナゲームズ 齋藤健治氏(ディレクター)
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2月21日に発売となったPS3用ソフト『METAL GEAR RISING』の開発陣インタビュー第2弾となる本記事では、シナリオ・システムについて開発陣のこだわりを細かくお伝えしていきます。プラチナゲームズのこだわりは「60フレーム」に有り!?

前記事でもお伝えしたように、プラチナゲームズが開発を担当するようになり、シナリオもほぼ1から作り直すことになった本作。今までにない、ゲームシステムに合わせる工夫や、プラチナゲームズのアクションゲームに対する並々ならぬこだわりも明らかになりました。

■ゲーム性とシナリオがシンクロしないというのは1番あってはならない

―――では、ここからシナリオ面についてお聞きします。元々作られたシナリオはどの程度変更になったのでしょうか

玉利:もう、全部ですね(一同笑)。

―――元々あったものは全て無くなったんですか

玉利:そうですね。時代設定から違いますから。最初はゲーム性にあわない部分を修正していく形だったんですが、(プラチナゲームズからの修正要望が)わりと話の根幹に関わる部分で、そこを中途半端にいじくってしまうと、絶対に物語として破綻してしまうのが目に見えていました。とはいえ、ゲーム性とシナリオがシンクロしないというのは1番あってはならないことですから、齋藤さんとガッツリ話し合いをしました。
その結果、ゲームとして明確にやりたいことがあるなら「それを生かすようなストーリーにしましょう」ということで、全て書き直すことになりました。もちろん、スケジュール的にも厳しかったし、書き上げたものを捨ててしまうのはもったいなかったですけどね。

齋藤:やっぱり、元のストーリーは、「前へ前へ」というゲームシステムとそぐわないものだったんですよね。なので、僕の方から「どうしてもこのストーリーじゃ難しい」ということで色々とお願いをしていました。そこで、時代設定もキャラクターも違うモノにという提案を受けて、「そちらでお願いします」となりました。

―――システムも従来作品からは大きく異なったものになっている印象を受けました。シリーズファンに対してはどのような配慮をされたのでしょうか

齋藤:徘徊している敵や、敵のリアクションにも色々と細かな設定があるので、そこは絶対に外さないようにしようというのが1番でしたね。『メタルギア』の世界観にどうアクション性を持たせていくかというのも大事にしつつ、でもその『メタルギア』をどう壊してアクションにしていくか、というところが肝でした。
従来シリーズでは派手な動きは少なかったんですが、新たに作るアクションでは雷電が本当に飛んだり跳ねたりして、色んなところに行って、色んな物を壊せますから、そこをどうやって気持ちよさにつなげるかをかなり考えて作りました。

―――従来のファンからも支持してもらえる自信は

齋藤:わりとゲームが違うので、なかなか単純比較は難しいところですね(笑)。ただ、難易度としては「EASY」でも「NORMAL」でも、そこまで高くは設定していないので、簡単に気軽に遊んで頂けると思います。世界観に関しては監修してもらっていますから、そこは絶対に外れることはありません。

玉利:「ステルスゲーム以外絶対にやらん!」と決めている人には厳しいかもしれないですが、そういう枠を取っ払って、「面白いゲームをやりたい!」と思う人には、絶対に受け入れてもらえるゲームになっています。

是角:確かに、本作は小島ではなく新しいスタッフが中心となって制作しているため、小島のテイストとはちょっと違います。ただ、元々小島プロダクションで開発する際も、「新しい主人公」、「新しいゲーム性」で「新しいメタルギア」を作ろうというところからスタートさせていますし、従来のファンの方が何を求めていらっしゃるのかは、それぞれ違うと思います。ただ1つ言えるのは、これまでシリーズを遊んでくれていた人に、必ず「これはこれで新しい『メタルギア』だね」と思って頂ける作品だということです。それくらいのテイストを残しつつも、新しいゲームが完成したかなと思います。

―――今までの世界観を受け継ぎつつも、新たなゲームを作り上げたということですね

是角:『メタルギア』が進化した、というよりも「こんな形のメタルギアがあるんだ!」という証明になっていると思います。

―――システムが大きな変化をしましたが、シナリオとしてはどのような点に気を使ったのでしょう

玉利:アクションを生かすために、カットシーンは短めにして、どんどん進んでいけるような内容にしました。長い間悩んだり、会話がやたらと長くなったりしないという部分もそうですし、特にボス戦なんかでは「コイツを倒したい」と感じて頂けるように、アクション的な激しさだけでなく、気持ち的な激しさ、「信念と信念のぶつかり合い」みたいなものを表現できるように、というのは齋藤さんからもお話があって、そこは特に気をつけて表現しています。

齋藤:特に『メタルギア』はキャラクターの個性が強く、僕としてもそれを残したい部分がありました。キャラクターを作るにあたって「何を思ってこのキャラはこうしているのか」という部分がないと、そのキャラの行動に矛盾が生まれてくるので、そこの話し合いはかなりさせてもらいましたね。

玉利:行動原理がみんなはっきりしていますよね。

齋藤:はい。

―――配信中の体験版の反響はどうでしたか

齋藤:とても楽しんで頂けているというご意見はよく聞きます。ただ、一部からは難しいという意見がでていまして・・・。なので、製品版ではそのあたりの調整をいれています。

―――それ以外に、体験版と製品版との違いは

齋藤:大きな違いは、触り心地の最終的な詰めを行っているので、より壮快に楽しんで頂ける仕上がりになっている点ですね。

■プラチナゲームズのアクションゲームへのこだわりは「60フレーム」に有り

―――それでは、システム面についても詳しくお聞きしたいと思います。本作には特徴的な「シノギ」というシステムが導入されていますが、プレイヤーに体感して欲しい点やこだわったポイントを教えて下さい

齋藤:これは僕がゲームを作る時に気をつけている部分でもあるんですが、プレイヤーには「ずっと攻撃をしてほしい」と思っています。本作でもそれは同じで、例えば「ニンジャラン」であっても前に進むためのシステムですし、「シノギ」に関してもより積極的なシステムとして取り入れています。
プレイヤーには後ろに下がるという動作をしてほしくはないので、敵の方へ向かって攻撃し続け、受け身にならないという、より積極的なプレイへと導くために「シノギ」の操作は攻撃ボタンとスティックに割り当てています。だから僕の中では「シノギ」は単なる防御のシステムではないんです。

玉利:「シノギ」というシステムのおかげで、実際にプレイしていても逃げ回ることは少ないんですよね。常に敵に向かうようになっているなと思いました。

齋藤:今までの『メタルギア』シリーズでは「相手からより離れる」ということが重要だったと思うんですが、今回は刀を持っているので、近づかないとゲームにならないんですよね。プレイヤーを敵に対して近づけさせるためにも、このシステムを導入しました。あとは、従来シリーズとの差別化という意味も込めています。

―――プレイヤーからは「シノギ」を利用した、防御の側面を重視したゲームだという声もあります

齋藤:「シノギ」はキーになるアクションであるのは間違いありません。ただ、その他にも、購入スキルで敵の攻撃を避けながら戦ったり、サブウェポンを使用したり、刀だけの戦闘とは違う楽しみ方ができるようにプレイに幅を持たせています。

―――では、「シノギ」で防ぐだけでなく、プレイの幅が広がるようなシステムも用意されているんですね

稲葉:用意されているけど、「シノギ」は大切。そこは変わりません(笑)。

齋藤:やはり、キーになるアクションですからね。

稲葉:齋藤が言っているように「前に出るためのアクション」なので、上手くなればなるほど、そこから派生する攻撃のバリエーションが増えていきます。なので、そこを駆使できるかできないかで、アクションの楽しみ方もだいぶ違ってくるのではないかなと思います。やらなくても楽しいですが、やると全然別種の面白さがあります。ぜひ、そこには立ち向かって欲しいですね(笑)。

玉利:「防御のための防御」ではないんですよね。引いていく感じではなく、「前に進む」というプレイスタイルに自然となっていきます。

齋藤:結局、ガードボタンを用意してしまうと「待ち」のスタイルになってしまうんですよね。それを避けたくて、攻撃をしながらより積極的にプレイすればチャンスが生まれるようにしています。その中で、敵がピヨると「チャンスアタック」というQTEも発動しますので、それを狙って前進してほしいですね。

玉利:そういえば、「かち上げ」のコマンドともかぶりますよね。あれは意図的なものなんですか?

齋藤:そうですね・・・。確かに連打していると誤爆はあるんですが、上手くなれば狙って発動できますし、仮に誤爆したとしても、敵が空中に浮いて新たなアクションへと派生できるのでそんなに問題ではないのかなと。

―――「壮快感」というのは常々強調されていますが、モーションやエフェクト、サウンドなどでのこだわりは

齋藤:やはり、「斬撃感」を生み出すことに1番こだわりました。開発当初から「自由切断」が1番気持ち良くなくてはいけないというのがあったので、まずは振動とカメラの揺れで手応え感をしっかり出すように試行錯誤しました。あとはサウンドについても、どのタイミングで、どの方向から出すかといった点までこだわっています。エフェクトも切断面からちゃんと出ないと気持ち悪いので、そこはしっかりと指示しています。

―――「自由切断」のシステムは元々小島プロダクションで作られたものを利用されたんですか

齋藤:「メタルギア ソリッド ライジング」の時には、「体験版」と言える位には完成していて、動かせるようにはなっていました。その中で、『MGR』の操作とは全然違うものですが、「斬撃モード」と同じようなシステムはありました。ただ『MGR』ではスピード感が全然違うモノになっていると思います。

玉利:ウチで作っていた時は、「斬撃モード」とそれ以外の部分がばらばらで、噛み合っていない部分がありましたね。

是角:やはり、アクションゲームにおいては、プラチナゲームズさんはウチとは比べものにならないくらいのノウハウがあって、私なりにエフェクトやサウンドの出すタイミングを研究させてもらっています。そうすると「これは理屈じゃない!」というタイミングでエフェクトやサウンドが発生するんですね(笑)。
これまでプラチナゲームズさんが培ってきた経験で、ゲームの流れの中で、プレイヤーが「気持ちいい」と感じられる技術がもの凄く詰まっていて、「これはウチじゃあ、絶対に作れなかっただろうなぁ」というところで、色々と勉強もさせてもらっています。

稲葉:エンジン作るのは結構大変でしたけどね。僕も齋藤も「秒間60フレーム」を捨てるつもりはなく、こだわり続けようと思っていました。「秒間60フレーム」を死守したなかで、「自由切断」を実現して、アレもコレもやるというのは、ハードのスペックをはるかに超えていってしまうので、ここが1番大変でした。

齋藤:「自由切断」をするにあたっては、破片を色々な形で残していかなくてはならなくて、その破片をさらに斬れるようにしなくてはいけませんでした。プログラム的には相当な負荷がかかるので、プログラマーからはいつも冷たい視線を浴びていましたね(笑)。

稲葉:「30フレームにしましょう!」みたいなね(笑)。でも「ダメ!60フレーム!」って(笑)。

齋藤:元々僕もプログラマーだったので、その辺の気持ちはよく分かるんですが、ずっと「NO!」と首を横に振っていましたね(笑)。

稲葉:60フレームを30フレームにすると、あまりに犠牲にするものが大きすぎるんですよ。数字では半分ですが、捨てるものは3倍以上になるという感覚ですね。なので突っ張り続けないと。

玉利:でも、相性はもの凄く悪いはずなんですよね。「自由切断」と60フレームって。

齋藤:そうですね(笑)。

是角:1回斬るだけで、表示するポリゴン数が2倍、4倍、8倍って増えていきますから(笑)。

齋藤:データ量もハンパないことになりますし。

是角:よくあれだけのものを60フレームで仕上げましたよね。ウチは当初から30フレームでやろうとしていたんです。60フレームは無理だろうと。

稲葉:もう理屈じゃないんですよ。僕と齋藤が「60フレーム」って言い続けたからで(笑)。少しでも僕たちが疑問を持ったら、そっちに流れていったと思いますよ。

―――そこだけは譲れないと

稲葉:そうですね。

齋藤:やっぱり、ヌルッと動く、触って気持ちが良いアクションゲームは60フレームじゃないと作れないんですね。そこは、極限的に大事なものとして譲りませんでした。

―――実際にどこまで斬れるかトラックで試してみたんですが、延々と斬り続けられるのでびっくりしました

齋藤:薄く薄くいけますし、その斬ったものをさらに斬れますからね(笑)。

玉利:みじん切りみたいにね(笑)。

第3弾に続く》

(C)Konami Digital Entertainment Developed by PlatinumGames Inc.
《宮崎 紘輔》

タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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