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『Dishonored』が見せたFPSの進化形・・・「Unreal Japan News」第58回

Arkane Studiosはアンリアル・エンジン 3を活用して、過去に例をみない想像を絶するゲームの世界観を創り上げました。新作となる『Dishonored』はFPSアクションアドベンチャーゲームで、「ダンウォール」という捕鯨産業で栄える街を舞台に繰り広げられるストーリーです。

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『Dishonored』が見せたFPSの進化形・・・「Unreal Japan News」第58回
  • 『Dishonored』が見せたFPSの進化形・・・「Unreal Japan News」第58回
Arkane Studiosはアンリアル・エンジン 3を活用して、過去に例をみない想像を絶するゲームの世界観を創り上げました。新作となる『Dishonored』はFPSアクションアドベンチャーゲームで、「ダンウォール」という捕鯨産業で栄える街を舞台に繰り広げられるストーリーです。19世紀のロンドンをモデルにした絵画調の世界をベースに、ファンタジーやSF、スチームパンクの要素が加えられています。テキサス州オースティン市とフランス・リヨン市に開発チームを置き、UE3を使用したインタラクティブ表現の限界に挑んでいます。 

「我々はRPGやアドベンチャーゲームの要素を織り込んだファーストパーソンアクションゲームが大好きなんです」と、『Dishonored 』開発の際にco-creative directorを担当したArkane StudiosのRaphael Colantonioは語ります。「我々が常に目指しているゲーム制作は、様々なジャンルが融合したある特定のゲームタイプです。具体的には、リソースの経済観念がある没入型のFPSゲーム;まとまりと説得力のある舞台設定;時にシミュレーションも利用しつつ、様々なアプローチ方法とその結果を一貫性を持って提示することで、プレイヤーに戦略を練る余地を与えられるような、そんなゲームです。」

『Dishonored』は戦闘、ステルス、RPGの要素を兼ね揃えています。ユーザーはレトロ感あふれる世界で超常能力を持つ暗殺者を操ります。開発チームは、ゲーマーが自分なりのやり方でゲームをプレイするよう誘導すべく、想像力を発揮できるゲームメカニズムを用意しました。

Arkane Studiosで『Dishonored』のco-creative directorを担当したHarvey Smith氏は、Arkaneが過去に手掛けたゲーム『Arx Fatalis』、『Dark Messiah of Might & Magic 』、『Deus Ex: Invisible War』のゲームタイプの捉え方に混乱が生じていると語ります。

「我々は過去にオープンワールドのゲームの開発をしていません。しかしながら、我々が制作したゲームはミッション方式であるにも関わらず、直線的なストーリーではなく特定の部分でオープンエンドな構造になっているため、混乱が生じているようです。マップ上に複数のルートがあるとします。それらが屋上や窓といった現実的なルートである場合もあるでしょう。一方で、時としてプレイヤーの選択やプレイスタイル、モラルによって新たなルートが展開される場合もあります。プレイヤーに多くの選択肢を提供して、独自のプレイ体験をしていただくことが我々の目標とするところです。」

Arkaneが持つビジョンを具体化するに当たって、ベースとなる技術の選択肢がいくつかありました。開発チームが独自に追加したステルスやAIコードを除けば、UE3はアーティストやレベルデザイナーがレイアウトとミッションコンセプトのプロトタイピングに直ちに取り掛れる技術を提供したとColantonio氏は語っています。

「我々のゲームは一人称視点での格闘、ステルスアクション、物理的な動きが融合した特殊なゲームです。技術ディレクターのHugues Tardifとリードゲームプレイ技術者のStevan Hirdは、様々な機能の制作とコード拡張を行いました」

「開発にはアンリアル・キズメット、アンリアル・ライトマス、新規のナビゲーションメッシュシステムと標準ツールのほとんどを使用しました。また独自のオーディオ伝搬やダイアログ・エディタ等の機能も追加しました。NPCがAIとスクリプト化されたシーン間を頻繁に切り替える必要があったため、「マチネ」の代わりに「Soiree」を使用しました。パフォーマンスの面でも非常に満足しています」ともSmith氏は言及しています。 

UE3により、優れた光源処理や物理演算が可能となり、画面上により多くのポリゴン数を持つキャラクターをたくさん表示することができました。Arkane Studiosでは、目標とするグラフィックス忠実度のレベルがあります。Smith氏やColantonio氏は抽象的なゲームメカニックを好みますが、リッチで人々の関心を引くマップの作成にも意欲を見せています。 

Smith氏:「アナログなAIシステムに加え、多くの進化した技術も同時に使用しています。ユーザーがサークル内に位置する際、その場所を特定する魔法のサークルがAIではありません。AIは円錐状の視野を持っており、暗闇や遠距離のように認識力が低下するシチュエーションでは、視野に基づいた判断が行われます。ユーザーを視認出来たか否か判断がつかない場合、AIは“あいまい”モードに移行し、見つけられない場合には視認を諦めます。我々のAIは、視認を基盤とする血の通ったAIなのです」

様々なゲームプレイの選択肢により、リプレイをより追求したくなる一本道ではないアドベンチャーゲームに仕上がりました。ネズミが振りまく疫病により荒廃し、ユニークなキャラクターがたくさん登場するリッチなバーチャルの世界は、UE3技術が持つ多様性の新たな一面を見せてくれました。UE3で制作されたBioShock や Mass Effect と同様、革新的な新インタラクティブアドベンチャーゲームである『Dishonored』もまた注目を集めているゲームです。
《編集部》
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