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GREE号、後悔のない航海を!!!・・・「ゲームウォーズ 海外VS日本」第26回

先月、東京ゲームショーの会場で、グリーのブースを取り囲む美しいコンパニオン達に目をやりながら、ここ数年の日本のゲーム業界について考えていた。

ゲームビジネス 市場
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先月、東京ゲームショーの会場で、グリーのブースを取り囲む美しいコンパニオン達に目をやりながら、ここ数年の日本のゲーム業界について考えていた。そういえば、海外のゲーム記者に「TGSで一番見るべきものはコンパニオンだ」と、冗談で言われたこともあったなと思いつつ、日本のゲームの国際化に人生を捧げる私は、日本のゲーム業界について考える度に、どうしても"今の日本のゲームを海外に持って行けるか"という見地から考えてしまう。

海外でのゲーム展開は、海外旅行に例えることができる。旅行者のタイプも星の数ほどあり、例えば、バックパッカーがいる。彼らは10代~20代が多く、お金は持っていない。ゲーム業界で言うところのバックパッカーたちは、ほとんどお金をかけずにゲームをつくり、できれば1円も使わないで海外展開を狙うのだ。もう少し上のランクになると、旅行好きのOLさんたちになるだろうか。バックパッカーたちと違い、彼女たちはガイドブックを隅から隅まで読んで、友人同士で協力し合いながら企画を十分に練り込み、一分一秒ともムダにしない旅行計画をつくり上げる。これは少人数のゲーム開発スタジオの海外展開に良く似ている。海外展開について非常に慎重に考え、考え抜き、そして限られたバジェットの中でできるだけ多くの見返りが生まれるように努力する。他には、リスクを減らすために共同でゲームを開発する会社のような、さながら仲のいい家族同士で旅行するスタイル、また死ぬまでにできるだけ広い世界を見たい!というような退職後の夫婦のような海外展開もあったりする。そして、もちろん、海外に別荘を持ち、自由に日本と世界を往来できる富豪の海外展開だってある。

いずれのスタイルにせよ、とにかく海外に行く事によって必ず「何か」を得られると私は思う。やはり海外はある意味“異次元”であり、国内では決してできない何かが体験ができる。もちろんゲーム開発企業にとってもそうだ。売上げを一気に引き延ばす「可能性」だってある。残念ながら保証ではなく可能性でしかないが、然るべきステップをとれば、ある程度の見返りを得ることもできるだろう。日本のゲームメーカーは押し並べて優秀であるし、これからも中国をはじめとするアジア圏の未開拓市場に挑み、うんざりするほど儲けていただきたいと思う。

ただ、ここ一年の間に、かつてなかったような旅行者が現れた。それは、「皆が行ってるから、俺も行く」というタイプだ。以前、酒の席で日本人の飲み仲間から、こんな話を聞いたことがある。

ある船で火災が発生した。船長は、乗客をスムーズに海へ飛び込ませるために、世界各国の乗客にこのように呼びかけた。

イギリス人には 「紳士はこういうときに飛び込むものです」
ドイツ人には 「規則では海に飛び込むことになっています」
イタリア人には 「さっき美女が飛び込みました」
アメリカ人には 「海に飛び込んだらヒーローになれますよ」
ロシア人には 「ウオッカのビンが流されてしまいましたよ」
フランス人には 「海に飛び込まないでください」
北朝鮮人には「将軍様が飛び込めと仰っています」

そして、日本人。「みんなもう飛び込みましたよ」

もちろん、これはただの冗談だが、最近、プラットフォームホルダーに誘われただけで、海に鮫がいるかどうかさえ確認する前に飛び込んでしまっている方がいるのではないかと思えてならない。

最終的に飛び込むかどうかは企業それぞれが決定することなので、飛び込む本人に責任がないわけではない。ただし、海には鮫以外にも危険はたくさんあり、そのすべてを認知するのはさすがに難しい。しかし、船を出す方はすべての危険性を知った上で、お客さんを招待しなければならない。自ら航海するなら話は別だが、開発会社を積極的に誘って、海外展開を促しているGREE号には、少なくとも安全な航海を確保する義務がある。

にも関わらず、どう見ても「売れるはずのない」多くのゲームは、誘われて、貴重な費用や時間を費やされて海外に出てしまっているようにも思える。「みんなもう飛び込みましたよ」と呼びかけられて。(それなら、ウオッカのビンを追いかけて飛び込むロシア人の方が、まだロマンがあっていい。)

もちろん、乗り込んだそのタイトルが売れる売れないの法的責任は、GREE号にない。ただ、道徳的責任はあるのではないだろうかと思う。これまで主流だった和製豪華客船のソニーと任天堂は、長年に渡り日本のゲーム企業に沢山の利益をもたらしてきただけではなく、数々の優れた発明を世の中に送り出してきたことでゲーム文化そのものを進化させてきた。客観的に見て、GREEには凄まじいユーザ数がおり、今やソニーや任天堂に劣らぬ超豪華客船であり、ゲーム業界においてその影響力は計り知れないものであり、大きな役割を担わざるを得ない立ち位置にある。

GREEは、プラットフォームとしての価値を高めていくことが必要だろう。ただ海外へ作品を発表できる以上の価値を提供しなくてはならない。そのためには、ソーシャルゲームのショーケースたるGREEから、ソーシャルゲームの中心であるべきプラットフォームへと進化していかなくてはならないだろう。また、友だちが集まってプレイすれば有利になるということ以上の、人と人とがインターネットを介してつながってゲームをプレイすることの喜び、楽しさを、ぜひ見い出していただきたい。当初のSNSを主流としていた頃の経験と実績を生かす時が来ているのかもしれない。

GREE号にすでに乗り込んだ数多くのディベロッパーには、航海が必ず成功するように発想力をもって世界に挑んでほしいと思う。日本のゲーム業界の先駆者達は、乏しい資金力で凄い商品を世界に送り出してきた。世の中をアッと言わせるような、誰も経験した事がないような「何か」を、世界へと発信していってほしい。

ぜひ来年のブースでは、美女ではなく、作品で我々を驚かせていただきたい。
《イバイ・アメストイ》
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