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UDKショウケース:竹中工務店・・・「Unreal Japan News」第28回

慶長15年の創業以来、400年以上の歴史を持つ日本有数の大手ゼネコン、竹中工務店。寺社仏閣の造営を担当する宮大工の伝統を現代に伝える同社は、一方で明治維新の後いち早く洋風建築を手がけたように進取の気質に富んだ企業でもあります。

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慶長15年の創業以来、400年以上の歴史を持つ日本有数の大手ゼネコン、竹中工務店。寺社仏閣の造営を担当する宮大工の伝統を現代に伝える同社は、一方で明治維新の後いち早く洋風建築を手がけたように進取の気質に富んだ企業でもあります。そんな竹中工務店とUDKの出会いが、建築設計プレゼンテーションの現場に革命を起こそうとしています。

複合施設や病院、学校といった大規模な建築物の設計が行われる際、設計者から建築主に対して竣工後のイメージを伝えるためのプレゼンテーションが実施されます。従来、こういったプレゼンテーションは図面や立体模型、「パース」と呼ばれるCG画像で行われるのが一般的でした。近年、PCの性能アップに伴い、3Dの仮想空間に建築物を構築し、実際の人間の視点で内部を歩いて回れるようなVRプレゼンも登場してきましたが、表現力の乏しさゆえに現実の建築物との乖離が大きく、見栄えの面では「パース」に大きく劣るものでした。

竹中工務店 設計本部 課長の片桐岳氏は、入社以来30年近くに渡って設計施工のプレゼンテーションに携わって来ましたが、VRプレゼンの可能性に大きな期待を寄せつつも、表現力の点でまだまだ足りないものが多いと感じていました。図面上の建築物を仮想空間上に構築し、自由に歩けるようにしつつ、実物と見紛うくらいのグラフィック・クオリティを実現できないか・・・ 新たな手法を模索する中で、片桐氏がたどり着いたのはビデオゲームのテクノロジーでした。

片桐氏:「Xbox360やPlaystation 3で発売されているゲームのグラフィック・クオリティは、これまでのVRプレゼンとは比較にならない程高水準なものです。色々調べた結果、ゲーム・エンジンと呼ばれているものを使えば、我々でも最先端のグラフィック・クオリティが実現できるかも知れないと分かりました。様々なゲーム・エンジンがある中で、実績や知名度、クオリティの点から考えて、アンリアル・エンジンを選択しました。ほとんどゼロからのスタートだったので、UDKを無料でダウンロードして試してみられるのも大きかったですね」

片桐氏は特別チームを編成し、ちょうどプレゼンテーションを控えていたある病院プロジェクトのためにUDKを利用したVRプレゼンを制作しました。このプロジェクトでは、現存する旧病棟の隣に新病棟を建設するため、入院患者や外来患者の動線と工事関係車両の動線を危険のないように処理すること、工事中も病室の入院患者に圧迫感を与えないこと、また病院内の並木を保全・移植することが大きなポイントでした。UDKを利用したVRプレゼンにより、リアルな植栽に囲まれた旧病棟を描画しつつ、工事車両が通行する様子や工事の進捗にあわせて景観が変化していく様をリアルタイムで表現することが可能となりました。ゲームコンソール並のグラフィック・クオリティを発揮しつつ、リアルタイムで好きな視点に移動できる機能も盛り込んだおかげで、任意の病室の窓からの眺めを自由に時系列を選択して確認することが出来るようになりました。

この病院プロジェクトと並行して、片桐氏は竹中工務店 東京本店のVR化にも着手しました。社内にUDKによるVRプレゼンの威力を宣伝し、今後の重要なプレゼンテーション・ツールの一つとして認知してもらうために、同社社員なら誰でも知っている東京本店をVR化することが一番説得力のある方法だと考えたからです。

片桐氏:「東京本店のエントランス空間のデザインには当社関係者のこだわりが詰まっています。この正面玄関をVR化しその表現力が実証出来れば、社内の誰もが納得するだろうと考えました」

参考:竹中工務店 東京本店
http://www.takenaka.co.jp/majorworks/topics/2005/sp/01.html

実際の制作には、2人のスタッフが約一週間作業を行ったそうです。片桐氏自らマイクを持って社屋内を歩き、自動ドアやエレベーター、受付近辺の環境音を録音し、VR中に埋め込みました。

片桐氏:「実際に制作を行ってみると、ライトマスの機能が非常にありがたかったです。従来はMax等でモデルに焼付けなければならず、光源の調整が大変でしたが、UDKならエディタ上で効果を見ながらリアルタイムで調整できます。また、建築物には反射面や半透過面、ざらついた壁や凹凸のある壁等、色々な素材が使用されていて、それをCG上でリアルに表現するには大変な労力が必要でした。UDKの場合、マテリアルエディタを使って視覚的にマテリアルを組むことが出来るので、とても助かっています。SSAO(スクリーンスペースドアンビエントオクルージョン)も、専任のデザイナーがいない制作環境であるにも関わらず、モデルを置くだけで立体感を表現してくれるので、少人数でリアルな絵作りをする上で非常に役立ちます」

ビデオゲームというファンタジー世界でリアルな質感を生み出すために磨かれてきたアンリアル・エンジンの技術が、現実世界をCGで再現する建築プレゼンの現場で活用されているという事実は、現(うつつ)と幻が交錯したような一種不思議な印象を誘います。
虚構の世界で生まれたゲーム・エンジンが、究極の現実である建設業のトッププロに認められ、利用いただいているこの事例は、さらに多分野でのアンリアル・エンジン活用を予感させます。

片桐氏:「実際にUDKを使って制作を行ってみると、事前に懸念していたほど難しくはなく、すぐに動くものを組み上げることが出来ました。ただ、あまりにも機能が豊富なので、すべてを使いこなすのは相当難易度が高いと感じています。UDKを活用することで、短い制作期間でもクオリティの高いVRを制作することが可能になります。今後はビル情報マネジメントシステムや設計データとの連動、AR的な要素の導入といったことも視野に入れつつ、更に有効な使い方を検証していきたいと思っています」
《土本学》
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