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【GDC2010】神は細部に宿る・・・グラスホッパー山岡氏が語るゲームと音楽

『サイレントヒル』シリーズで知られる作曲家・山岡晃氏がグラスホッパー・マニファクチュアに移籍したというのは今年初めの大きなニュースでした。

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『サイレントヒル』シリーズで知られる作曲家・山岡晃氏がグラスホッパー・マニファクチュアに移籍したというのは今年初めの大きなニュースでした。その山岡氏がGDC3日目に登壇し「As Long as the Audio is Fun, the Game will be too.」(音楽が楽しければゲームも楽しい)と題した講演を行いました。尚、本講演はオーディオトラックのキーノートとして行われ、同時通訳が入りました。

山岡晃氏


山岡氏が最初に始めたのは日本という国の紹介でした。日本からサンフランシスコまでは5131マイル。実に6852個の島で構成される国です。冗談を織り交ぜながら紹介する山岡氏は、諸外国に知られる日本のイメージは、フジヤマ、ゲイシャ、サムライであるが、実はそこに日本人の本質が秘められていると指摘します。3者に共通するのは派手な見栄えと、それに相対するような繊細さを持ち合わせているということです。日本とは細かいディティールに気を使った文化で、それはゲームの音楽作りにも非常に重要な要素になると山岡氏は言います。

日本は島で出来ている伝統的な日本実は海岸線の長さはオーストラリアと同じ


山岡氏は元々作曲家としてゲームのキャリアを始めましたが、後にゲーム全体のプロデュースを行う立場になりました。しかし、最初から作曲家志望であったわけではありません。20年前くらいにコンピューターゲームの楽しさを知り、4000色出るというパソコンを買ってCGの世界を志そうとしていたそうです。しかし、そのパソコンの中に音楽作曲ソフトが入っていたことで運命が変わります。ソフトと言っても、現代のそれと比べると非常に原始的で、16進数を書きこんでいって音を鳴らすような代物だったそうですが、山岡氏は一気に魅力されのめり込んでいったそうです。翻って現代は環境が向上し、誰でもある程度のクリエイティブを実現できるようになってきました。そんな中、プロとはどうあるべきか、講演では語られます。

講演内容を一言で言えば「神は細部に宿る」です。サウンドは人を動かす力がありますが、それは単に優れたメロディラインのみが実現するわけではありません。それは何か、沢山のヒントがありました。講演からは長年の経験から培った自信と、それを裏打ちする理論が感じられました。

(1)感情を刺激するサウンド
人間の機能の中で視覚は客観的な情報を脳に伝えます。色や形、構成、位置関係、これらは脚色される事は余りありません。一方で音はより感情的な情報としてボリューム、方向感、質感を伝えます。

(2)人間の特性を捉える
人間は自身を非常に理論的な存在と捉えますが、特性がもちろんあります。山岡氏が挙げたのは、「左周りに比べて右回りを不安に感じる」「高低差を行き来するのを不安に感じる」「共同作業と言われると個々人は手を抜く」「物を食べながら説得すると受け入れられやすい」「重い物を持たせて喋ると大事な事だと思ってしまう」といったものです。ホラーゲームを作ってきた山岡氏は、単にグロテスクな絵を出すのではなく、人間の特性に注目して表現を行うことを心がけていたようです。これは音楽にも同じ事が言えます。

(3)ミクロな機微
これも人間の特性になりますが、ゲームで足音などを表現する場合は、視覚の表現から3フレーム程度遅らせるとマッチするように人間は感じるそうです。逆に3フレーム早くすると緊張感や不安感を演出できるそうです。こうした僅かな差でも人間は感情を揺さぶられるということです。

(4)耳の特性
印象に残りやすい音の高さもあります。人間の可聴範囲は、低音に弱く、ある程度上げないと聞こえません。高くなっていくと聴きやすくなり、ちょっと高いと思う4000hz付近の音が最も聴きやすく、印象に残るそうです。効果的なポイントで使用すると良さそうです。

(5)対比に印象付けられる
カラーコーディネートでは白と黒のような対比は、色をより鮮明を見せます。音楽でもそれは同じで、雑音の中で鳴るピアノの旋律などは非常に印象的な音になります。また、山岡氏は無音の効果的な使い方を考えると良いとアドバイスしてくれました。例えば、プレイヤーが音楽を欲しがるような場面で敢えて無音を使えば、そこは非常に印象深いシーンになりそうです。

人間のセンスをコントロールする視覚と聴覚の役割の違い人間の特性を活かした音作り
高音が聴きとりやすいコントラストで感じる無音を活かす


最後に山岡氏はギターで生演奏を披露して締めました。

山岡氏は、ハード性能の向上でゲームでは何でも表現できるようになってきたと指摘。そうした中で、ゲイシャやサムライに通じるようなディティールにこだわった作り方で勝負していきたいと語りました。山岡氏が講演の中で示したのは幾つかのTipsに過ぎませんが、経験と理論に裏打ちされた「神は細部に宿る」を実践した音作りは後進の作曲家にとって大きな刺激になったのではないでしょうか。グラスホッパーではまず音楽を手掛けていくとのこと。楽しみですね。
《土本学》
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