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【今どきゲーム事情】中村彰憲:『デビル メイ クライ4』『戦国BASARA』シリーズ誕生の裏側とは〜カプコン小林裕幸プロデューサー、立命館大学で特別講演〜

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【今どきゲーム事情】中村彰憲:『デビル メイ クライ4』『戦国BASARA』シリーズ誕生の裏側とは〜カプコン小林裕幸プロデューサー、立命館大学で特別講演〜
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今回の今どきゲーム事情は、前回<http://www.inside-games.jp/news/340/34050.html>にひきつづき関西でのゲームクリエイターによる講演を徹底リポート。ここでは4月22日に、立命館大学 京都衣笠キャンパスで行われた、カプコン 小林裕幸プロデューサーによる講演の模様をお伝えします。小林氏が招かれたのは立命館大学映像学部で開催されている“クリエイティブリーダーシップセミナー”という特別授業。同学部の1年生や他学部生も含めおよそ200人の学生が受講しています。『デビル メイ クライ4』や『戦国BASARA』シリーズをプレイしたことがある人数を確認した際、何人もの学生が手をあげていたこともあり、小林氏も大満足の様子。こんな感じで、講演は非常に和やかな雰囲気のなか、進められました。

講演中の小林プロデューサー。講演会場の雰囲気はとても和やか。


■『デビル メイ クライ4』に見る新キャラクターの盛り上げ方

小林氏は最初に、『デビル メイ クライ4』(DMC)の開発プロセスを披露。最終的には全世界で240万本を達成した同作も、プレイステーション3用ソフトのカプコン第1弾としてリリースすることが最初に決定していました。開発チームも、『デビル メイ クライ3スペシャルエディション』(DMC3SE)のスタッフがほぼそのまま開発を引き継いでいくことになりました。

チームの最初のチャレンジは、いかにモチベーションを高めていくかということ。新ハードということで、開発の難易度は高いながらも人気シリーズの続編としてヒットを必ず狙わなければならず、おのずとプレッシャーがのしかかってきたこと、『デビル メイ クライ』シリーズとしては、『DMC3SE』まででアクションゲームとしてやりたかったことはすべてやり尽くした感があったことなどが、スタッフの士気を下げる要因となっていたのです。そこで最初にシナリオブレインやキャラクターデザイナーを、既存のチーム外から招き入れることになりました。『エウレカセブン』『攻殻機動隊:STAND Alonecomplex』などで脚本を務めた菅正太郎氏や、これまで『ブレスオブファイア』や『ロックマンX』などのデフォルメされたキャラクターデザインが必要とされるプロジェクトに参加してきたものの、もともとリアルなキャラクターデザインも得意だった吉川達哉氏にプロジェクトへ参加してもらうことで、リアルかつ斬新なキャラクターをデザインしてもらったとのことです。

また、内外あわせて100人以上のプロジェクトメンバーが共有できる開発コンセプトとして、「次世代機感」を打ち出しました。これは、プレイしてから実感するだけでなく、購入前から感じさせる必要があることを念頭にゲームデザインからプロモーションまで進めていくことを示唆しています。

ここで、小林氏は、開発初期の会議内容を披露。企画プランナーとともにさまざまなアイデアを次々に出していく模様を、当時の議事録を示しつつ語りました。その際、最終的に行きついたのが、ダンテでできる新しいアクションのネタがない、『DMC3SE』にプラスしていく方法では、ユーザーが付いてこれないという点でした。同時に『DMC4』は、従来のファンをPS3へと牽引すると同時に、PS3ローンチ当初にゲーム機を購入したアクションゲーム好きのコアユーザーも巻き込んでいかなければならないということから、新しいユーザーにとっても敷居を低くすることを想定しながら、新キャラクターを主人公として据えていく決断を下したとのことです。

また、従来のファン層の心を掴むためにも、「ダンテ」を作中に登場させることも決定しました。ただし、情報発信の仕方を工夫しました。つまり、最初は、「ダンテは敵として登場する」と発表し、後に途中からプレイアブルになるという情報をリリースしたのです。この意図には、新キャラクターに注目してほしかったということがあり、いかに戦略的に情報を発信するのが重要なのかを示した内容でした。

■“5年の壁”を突き破るキャラクターとして育てるために

新キャラクター「ネロ」を考案するうえで、前述の菅正太郎氏と前作からプロジェクトに参加しているアクション監督 下村勇二氏、CG会社のリンクスデジワークス、映画制作プロダクションであるJUSTCASEなどとともに月2回ペースでブレインストーミングを6か月間も行いシナリオをじっくり練っていったとのことです。

ネロを主人公として据えるうえで、まず考えたのが、5年もの間で築きあげられたダンテの壁をいかに突き破るかということです。そこでプロジェクトチームは、他の作品から始まり、「中二病」や「紅茶貴族」といったキーワードの検証や、「子供の落書きでもわかる必要性」などのデザイン的要素を細かく検証していきました。また、ネーミングについても意味合いや語感といったさまざまな要素について吟味をしながらダンテの「赤」に対する「黒」、また、『DMC』シリーズのキーキャラクターであるネロアンジェロにも関連づけられるネロに決定していきました。このように、デザイン的にもダンテに近く、一見シンプルに感じられるネロというネーミングも、さまざまな試行錯誤のうえ、誕生しているのだというのが小林氏の講演からあきらかになりました。

■ネロとダンテとの差を決定づけた「デビルブリンガー」

さらにネロとダンテの違いを決定づけたのが、必殺技であるデビルブリンガー。『DMC4』にとっても欠かせないこのアクションも、二丁拳銃と大剣というこれまでのアクションに加えるあらたな要素として考えられました。いままでは攻撃のなかで敵を操ることができなかったのですが、「悪魔の右腕(デビルブリンガー)」によって、敵を引きよせ投げつけるなどといった、敵を自由自在に操れることの爽快感をユーザーに体感させることができるようになりました。ただ、既存にはないゲームデザインを開発スタッフと共有するのは容易ではなく、結局、「悪魔の右腕」合宿を敢行。そのなかで小林氏は、伊津野英昭ディレクターがみずからGIFアニメを作成し、そのアクションデザインを説明したことに触れ、ゲームデザインにおいては言葉で説明するよりも、目で見て確かめられるものを示すことの重要性を説きました。開発には、モーションを作るアニメーターやキャラクターを作るモデラー、デモ制作者など多くの人が関わるため、共通認識を確立し、皆が一丸となって『DMC4』を作ろうという意思疎通を図る必要があるというわけです。

■「次世代機感」を示すうえで

「次世代機感」を実現するうえで、そのスタンダードとなる技術的グラフィック要素を積極的に導入していくこととなった『DMC4』。それは数百人の群衆にかこまれてのオペラシーンから始まるオープニングや、ジャングルや雪山、洞窟など多彩な舞台など、ゲームの随所にあらわれています。また、巨大なボス、「神」という高層ビルなみの大きさの敵を登場させるのも「次世代機感」を示す重要な要素となりました。

ただ、これらの要素をミッション性というゲームシステムのなかでいかに探索させていくか、ストーリーとゲーム性をいかに組み合わせるのかを考えながら開発していく必要性があったとのこと。このように、困難がともなう制作工程を説明しながらも、小林氏は、ゲーム開発の醍醐味としてプロモーションで各国を訪れ、ファンを目の当たりにすることで、世界中の人たちにハリウッド大作クラスのアクションゲームを作っているんだと実感できたことをあげています。

■「戦国BASARA」で新規ユーザーをカプコンへと誘導する

「次世代機感」をコンセプトに3年の年月をかけて開発が進められた『DMC4』に対し、「誰でも遊べる爽快アクション」をコンセプトに開発が進められたのが『戦国BASARA』シリーズ。05年7月に第1作目がリリースされてから、たった4年の間に新作を5作品も作られたところが、『DMC4』と比較していかに開発コンセプトが違うのかを印象づけます。自ら「少年漫画」のノリと形容した同シリーズは突っ込みどころ満載。ですが、この講演でこれらの突っ込みどころも意図的に組み込まれて来ていたことが改めてあきらかになりました。

小林氏はこれをきっかけにいっしょに仕事をするようになった戦国専門家からも高く評価してもらっていることに触れつつ、作品のトーンとは裏腹に時代考証をしっかりとしたうえで自らやりたい方向性を見定めることの重要性を説きました。

そのうえで、小林氏は『DMC4』と比較し、『戦国BASARA』のコンセプトが真逆であることを言及。同じアクションゲームながら、『DMC4』はゲーマー向けのやりごたえのあるアクションを重視したのに対し、『戦国BASARA』は「誰でも」というコンセプトを最重要視したとのこと。ゲームをやったことがない人でも豪快なアクションができるということを意識した結果、ワンボタンでさまざまなアクションができるようになったとのことです。

もともとアクションゲームでは一定の評価があるカプコン。それだけについついボス戦などで複数のボタンを使用しないと倒せない仕様にしてしまったりということもあったそうです。ですが、なだらなか坂道を上るという表現のもと、決して難しくはないものの、単調なまま終わらないような調整をしたと小林プロデューサーは当時を振り返ります。

また、「アクションゲームの肝はレスポンス」としながら、「敵の倒され方、エフェクト、サウンド、そしてボイスなど、すべてがユーザーのボタンアクションにあわせて心地よく反応しなければならない」とし、これらすべては、プランナー、モーションデザイナー(アニメーター)、プログラマーなどが調整に調整を重ねて作り込んでいった結果、生まれるものであると説明しました。

■他のエンターテインメントもどん欲に取り入れて作ったキャラクター

各戦国武将は、主人公なみの作り込みの末に完成した


キャラクターについては、各武将とも主人公なみに作り込んできたという『戦国BASARA』シリーズ。小林プロデューサーは、それぞれのキャラクターをいかに作り込んでいったのか、実例とともに説明していきました。 

まずは自ら第六天魔王と名乗っていた織田信長を「魔王」とし、他の武将が協力して魔王を倒すという第1作目の構図は、少年漫画の正義と悪のようなわかりやすいストーリーを参考にしたとのことです。『戦国BASARA2』以降は大猿をモチーフに、覇王として素手で戦う豊臣秀吉が加えられますが、本来は織田信長に仕えていた秀吉をあえて単独の武将として扱い、2大巨悪と戦う他の戦国武将、としたのも、少年漫画的なわかりやすさを追求してのことだったのです。

これらは『戦国BASARA』のオープニングムービーで、織田信長が城を破壊するほどの強大な敵役として登場させていること、『戦国BASARAバトルヒーローズ』のオープニングで巨大化している信長と秀吉が並んで世界を破壊していく様などにも反映されています。誇張表現は、各武将の必殺技でも表現されており、兵士が折り重なって戦いを繰り広げるなかでも目立つよう工夫がなされたとのこと。

また、シリーズの2大ヒーローである伊達政宗と真田幸村はそれぞれ青と赤が基調カラー。2作目から登場する前田慶次は黄色、毛利元就は緑と、長曾我部元親は紫と、各武将のモチーフもできる限りシンプルにしています。

この他、「いつき」は東北の農民で一揆衆であったり、上杉勢のくノ一である「かすが」は、上杉軍の居城があった春日山から名前をとるなど、オリジナルキャラクターのネーミングもその起源がわかりやすいシンプルなものになっています。また小林氏はシルエットの重要性も指摘。各武将ごとシルエットで表現してもその武将がハッキリわかるよう、デザインの差別化を行ったとのことです。プロフィールも重要です。

各武将の特徴をふまえつつ、見立てと性格の延長線にライバル関係や、師弟関係などの人物相関図を形成し、各武将の特徴の延長にセリフも考えたとのこと。また、声優の配役については、他の作品での演技などを参照しつつ実際に適切だと思われる役に対してオファーをかけていくことも大切だとのことです。

浅井長政は全体的にヒーロー的なモチーフなのですが、コンセプトは「赤い信号を渡ったものすら許さないというタイプ」と小林氏。また、銀の甲冑は、信長の妹であるお市が、浅井に嫁いでおり、織田とつながりがあるということから、信長がシルバーの甲冑をつけるのであれば、浅井も同種類の甲冑を着るだろうということで設定が決まっていったとのことです。


一方、片倉小十郎登場の背景には、2作目でのストーリーモードの追加をであるとしました。1作目はストーリーモードがなかったため、伊達政宗1人が筆頭として暴れ回るヤンキー集団的な描き方がされていたのですが、ストーリーモードでドラマをつくりあげていくときに、1人でいくら活躍しても物語が作りにくいところから、相棒の必要性を痛感。史実でも政宗の右腕として活躍していた片倉小十郎を登場させれば、ストーリーの展開もよりスムーズになるであろうということから追加が決定したとのことです。

結果的に片倉小十郎は大人気キャラとなり、あたかも最初の作品から登場しているかのように、多くのファンを勘違いさせるほど存在感を高めることにつながったとのことです。

このように、『戦国BASARA』シリーズを開発するうえで重要なのは、戦国時代をしっかり勉強するだけでなく、アクションやドラマなど、いろいろなものを吸収し、いいところは取り入れていくという姿勢や、常に向上心をもって、クオリティ面で妥協せず、満足がいかなければ作り直す勢いでチャレンジすることだと述べました。

また、ファンにとっては1年は長いですが、作り手にとっては1年で新作を作るというのは大変。ですがときにはプライベートの時間を犠牲にしても魂を込めてモノ作りをしていると述べました。


■同時進行で作品に携わるプロデューサー

この後、学生たちとの質疑応答も盛況のうちに特別講演は終了しましたが、前半の『DMC4』と後半の『戦国BASARA』シリーズの開発が同時進行で進んでいた時期もあることを考えると、プロデューサーという仕事の幅に改めて驚かされます。アクションゲームという点では共通ですが、ここまでコンセプトが違う作品をいかにとりまとめ、それぞれの売り出し方を考えていったのかを改めて考えさせられる講演でした。
《中村彰憲》

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