人生にゲームをプラスするメディア

『鉄道ゼミナール -大手私鉄編-』発売記念!向谷実×津田洋介プロデューサー、スペシャル対談

『鉄道ゼミナール -大手私鉄編-』発売を記念して、タイトーの津田プロデューサーと制作に当たった音楽館の向谷実氏によるインタビューをお届けします。二人の意外なつながり、向谷氏の鉄道ファン歴から、肝心のゲームの魅力、そして、早くの次回作への野望など、とことん語っていただきました。

任天堂 DS
鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-
  • 鉄道ゼミナール -大手私鉄編-

■鉄道ファンの環境が変わった

向谷: 以前はカシオペアのほうが有名だったから、カシオペアなのに鉄道(の副業)やってるんですかって質問されたけど、今は向谷実の名前のほうが強いからあまり聞かれない。(向谷イコール鉄道というイメージ)これが時代の変化だと思う。昔は鉄道ファンは根暗だとか社交性がないとか言われてね……。

インサイド: 特にカシオペア全盛期はそうでしたね。

向谷: それが今では180度変わっちゃって、鉄道がどうして流行ってるんですか、どこが面白いんですかって質問される。説明すると、それなら鉄道も面白いよね、いいよねって納得してくれる。メディアがすべてポジティブ(笑)。でも、僕は昔と変わらなくて、昔の鉄道趣味組織にもいなかったし、今の流行とは関係なく、こつこつとコンテンツを作ってきたから、鉄道ブームですがどう思われますかって聞かれてもピンとこない(笑)。すこしマーケットが拡がっていて、取材が増えたのは驚きだけど……で、解ったのは、嫌いだろうと好きだろうと、鉄道に興味を持っている人が増えているんだなと。鉄道と聞いて、嫌いという人が減って、好きって人が増えてきた。

インサイド: 一般紙やテレビ番組でも鉄道がよく採り上げられます。

向谷: ブルートレインが無くなるとか、ローカル線の旅がいいとかってマスコミの話題になるかというと、たぶん、世の中が、速いものとか、スペックを重視しすぎたんだと思う。電車だって高速化されるし、株の値段は上がったほうがいい、土地の値段もあがったほうがいい、仕事をばりばりやってカネ稼いで……。そういった、高速化、高度化する時代が続いて、はっと気づくんですよ。人間って、もって生まれたスピードがあるんじゃないかって。音楽家だから解るんですけど、テンポ120の曲を5曲連続で演奏できるかっていうと、自信がない(笑)。世の中も同じで、いままで速いほうばかり注目していたからバランスが崩れてしまった。

だからスローライフとかエコとか、そして鉄道が見直されてきたと思う。鉄道って錦の御旗がいっぱいありますよね。地球温暖化にいいとか、交通渋滞がないとか、寝台列車なら時間を有意義に使える。地方のローカル線の旅はいい。そんなふうに一般紙が鉄道を採り上げるようになりましたから。ある男性向けトレンド雑誌にも、僕は何回も出させていただいて(笑)。そういう雑誌を見ると、いままでは賑やかなトレンディスポットのカフェがおしゃれ、といっていたページで、いまはローカル線で温泉に行こうなんて論調になってる。でも、それは世界的に共通した風潮だと思う。

そんななかで、津田さんとお仕事させていただいた理由は、みんなが興味を持っている鉄道について、もっと楽しめるソフトを作りたかったから。鉄道ゼミナール大手私鉄編で得る知識が生活に役に立たないかというとそうじゃないとおもう。だから、鉄道ゼミナールは、鉄道に興味を持とうかなあ、という人々が手に取ってくれるコンテンツとして育てていきたいと思います。

■大手私鉄16社の許諾は「偉業」

津田: 今回の『大手私鉄編』はタイトーと音楽館さんが手がけた鉄道ゼミナールの2作目ですが、スタンスが前回と違うんです。『JR編』はウチから音楽館さんへの持ち込み企画だったんですね。DSを使った教養ものという市場が大きくなってきた時に、タイトーだったらなにをやるか。鉄道ゲームのブランドイメージがある。そこで鉄道テーマの教養物をやろう、それなら向谷さんとやろう、そんないきさつでJR編ができました。

向谷: 「ニンテンドーDSでクイズゲームを作る」というお話しをいただいた時に、「同じジャンルで全部まとめたい」と思いました。JRだったら全7社、大手私鉄だったら全16社。そして前回、JRは実現しました。だから次は大手私鉄16社で、と思ったんです。でも実際は何度も挫折しかけた(笑)。ひとつは、16社もの許諾をとるというのは非常に難しい。こちらの許諾が取れそうだ、と安心していたら、別の会社と話を進めている途中で、やっぱりやめようかな、なんて話が聞こえてきたりして、ずっと16社のご様子を伺いながら……という作業が最後まで続きました。ただし、もともと音楽館ではトレインシミュレータやRailfanなどで鉄道会社さんとお付き合いがあって、許諾をいただいた実績は多かった。発車メロディなどでのお仕事もありますし。オフィシャルの付き合いは多かったので、いきなり企画書を持って行って「どうでしょう」というスタイルではなかったんですね。そこが強みでした。おかげさまで私もよくテレビに出ていますし(笑)。ご担当者の中にはカシオペアのファンだというかたもいらっしゃいましたし(笑)。

津田: 向谷さんの音楽館さんとソフトを作ろうと思ったもうひとつの理由は、向谷さんと鉄道会社さんとのつながりでした。JR編では貨物を含めたJR7社の許諾を得るというのはほんとうに難しいことだと思っていました。今回も、最初は数社ごとにまとめて作ろうという話もあったんですよ。関東編、関西編というまとめ方もあっただろうし。それを検討もしたんですが、やっぱり全国でいきたいな、と。大手16社の許諾がとれたらすごいなと。できるのかな、と。でもホントに取れました。

向谷: 実は軽く言ってますが、一時期はくじけそうになったんですよ。鉄道会社さん同士のつながりがあって、ある会社さんが難色を示すと、仲良しの会社も難色を示すという……。

もうひとつは、DSというメディアの容量の問題があった。いいコンテンツをてんこ盛りにして、音楽も入れて写真も、いろいろ面白いものも入れて、それで16社ぶん3000問以上問題を入れると、大丈夫かなって。16社も入れたら、広く浅い内容になるかも知れないとも心配しました。JR7社であれだけ深い内容にしたのに、同じROM容量で16社ですから。誰でも知ってるようなことしか入らないかも、というね。だから「8社ずつに分けましょうよ」ってとか。Vol.1、Vol.2とか。

津田: そういうふうに向谷さんが時々くじけそうになるんですけど(笑)、いや、だめですって。

向谷: ほんとうにたいへんだったんだもの(笑)。結果としては津田さんの言うとおりで、全社でまとまって良かったけど。でも奇跡的なことだと思います。

インサイド: お二人がいなかったらできなかったとよくわかりました(笑)。

向谷: 全社の許諾が取れて動き出したら、各社の担当者が愛社精神の旺盛な人ばかりでね。やるんならちゃんとしたものを作ってください、と。徹底的にチェックしますよと。次第に担当者の本気モードが見えてきて嬉しかった。そして厳しかった(笑)。そこまでチェックするの! という(笑)。でも、そのおかげでクォリティを高められましたから。ありがたいと思っています。

津田: 完成に近づいた時に、各社の広報さんから喜ばれましたね。全国の大手私鉄の会合で集まった時に、相手の会社の事情がよくわかる。会話のきっかけにもなるし、理解が深まるって。

向谷: 関西の運転士さんは後ろを向いて後方確認してますね。関東は完全に分業してます。すべての鉄道が同じように見えて、実は違う所っていっぱいあるんだな。

インサイド: 大手私鉄16社は、民鉄協加盟会社による「大手」という条件ですが、民鉄協は協力してくれなかったんですか。

向谷: 民鉄協さんにお願いしようかな、とも思ったんですが、あの組織は許諾に権限を持っている組織ではないんですよ。結局、各社とも個別に交渉しました。結果的に各社ともフレンドリーに対応してくださいました。何社かは宣伝でも協力していただけることになりましたし。これで良かったと思います。

津田: 中吊りとか駅貼りポスターとか。大きめのタイアップも進行中です。

向谷: 東武博物館のリニューアルイベントで、東武鉄道限定の検定大会をやろうかなと思っています。実は、音楽館では東武鉄道の新しい運転シミュレータも作っているんですよ。これは昨年の南栗橋の東武ファンフェスタで、東武博物館の館長とステージイベントをしまして、作りますよ宣言をしました。もう撮影も終わってます。伊勢崎線と東武東上線をやります。

津田: まだナイショですが、これからいろいろ出てくると思いますよ。

■ROM容量との戦い

インサイド: 許諾関係ですが、向谷さんが各社をご自身でまわられたんですか。

向谷: 基本的には僕がほとんど行きました。私たちのこだわりは、公式のソフトですよ。鉄道会社の許諾済みですよ。ということ。買っていただくかたにも、鉄道会社のかたにも安心して貰えるソフトになった。それが一番大事だった。これは前作から続いていることです。

インサイド: 苦労した部分とは、対応された広報のかたは前向きでも、その上のほうで難色を示されたとかですか。

向谷: 上の方よりも、問題や車両データのチェックの時ですね。車両部に行ったり運転部のほうに行ったり、現場のほうのチェックで手間がかかりました。許諾に関しては、内諾を得るまでは簡単だったんですが、今度はそこから、ほんとに16社ぶんの内容が全部入るの? という、制作側の問題ですね。チェックは終わるの? 発売日に間に合うの?スケジュールと容量の戦いがギリギリまで続きました。

津田: JR編でも容量いっぱいだったんですね。写真も入れて、そのクォリティを落とさないで、というのが大前提だったんです。ただ現場レベルでは、もう写真のクォリティを落とすしかない、って話になってました。

向谷: でも、いくらなんでも見栄えの部分を落としちゃいかんだろうと……。技術のスタッフに頑張ってもらって、クォリティを落とさずに入れられたんですよ。そういう部分では、限られた容量に収めるために、いろいろな実験的な取り組みをしました。

インサイド: 最大容量のROMにも入らないくらい?

津田: 最大ではないんですが。価格との兼ね合いがあって、そこから決めたROMのサイズに入るかはいらないか、というせめぎ合いでした。

向谷: 4800円という値段の中で最大限のコンテンツにしたいなと。

インサイド: そのために特殊なデータ圧縮方法を開発したりとか。

向谷: その意味ではDSの開発チームは頑張ったと思います。データの持ち方とか、最後は音楽でした。16社全部のオリジナル曲を作ったんですが、曲として成立くらいの1分の曲にまとめようとすると、それを16社ぶんは入らない。だから、ある曲ではループを早くしたり、波形の長さで調節したり、という調整は最後まで続きました。

インサイド: 3500問以上の問題は何人くらいで考えたのでしょうか。

向谷: クレジットに並んでいますが、20〜30人くらいは居たと思います。うちの社員、協力者さん、僕の知り合い……。あっ、鉄道アナリストの川島令三さんも入ってます。関西の鉄道の古い写真を持っていらっしゃるんですよ。作るのもたいへんですが、検証していただく作業もたいへんでした。

津田: 面白かったことは、鉄道会社の広報資料を基にして作って問題をチェックしてもらったら、間違いだと言われて、確認してみたら広報資料が間違っていた、ということもありました。かなり入念なチェックをしていただいて解ったことですが。

向谷: 問題数は各社平均して250問くらいですね。多いところは300〜400問くらいあるところもあります。だいたい路線長に比例する感じですね。駅や車両の数が多いところほど問題も多く作れますし。

津田: 近鉄は車両数はものすごく多かったですね。派生車種も多いし。

向谷: 僕にも解らない車両がたくさんありましたよ(笑)。各社から出てくる車両の選択にもスタッフの思い入れたストーリーがあります。同じ形式でも色が違ったらすべて載せたいとか……。その車両の写真を撮るためにスタッフが出張して、一日中カメラを持って張り付くという苦労もありました。できあがって、鉄道会社さんのチェックを受ける時に、「よくぞここまで……」といってくれるほどの評価をいただいています。

インサイド: 向谷さん自身の検定スコアはどのくらいですか。

向谷: わりといい成績でしたよ(笑)。

津田: あ、満点ってスパッと言わないんですか(笑)。

向谷: JRの時は自信があったけど、さすがに今回は解らなかった問題も多かった(笑)。鉄道会社によっては一般利用者並みの成績しか取れませんでした。

津田: 向谷さんとは逆に、JR線で高得点を取れなかった人も、私鉄沿線に住んでいる人は身近な路線で高得点が取れて嬉しいんじゃないかな。

インサイド: 逆に、灯台元暗しってこともありますね。身近な路線だと油断して、新車の車両の形式名が解らなかったりして。あ、意外と変わってるんだなあ、と思います。

津田: 知識を再確認する面白さもありますよね。スーパーベルズの野月さんは「こどもの頃にあったポケット図鑑を見るようだ」っておっしゃいました。

インサイド: こどもの知識欲と吸収力ってすごいですよね。それを満たしてくれる存在です。鉄道好きなこどもに質問されるお父さんやお母さんにとっても、このゲームはありがたいのではないかと(笑)。

向谷: 電車のシミュレータも、こどもの方がうまいよね。

■鉄道ファンだけではなく、ファミリーで楽しめるゲームに

《杉山淳一》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

任天堂 アクセスランキング

  1. 『ポケモン ダイパリメイク』クラッシュ問題ついに解消か―スイッチ2「システムVer. 21.2.0」配信

    『ポケモン ダイパリメイク』クラッシュ問題ついに解消か―スイッチ2「システムVer. 21.2.0」配信

  2. 昔の『どうぶつの森』ではファミコンが遊べたって知ってた? 気になるタイトルをスイッチでプレイして、ファミコンの誕生日を祝おう!

    昔の『どうぶつの森』ではファミコンが遊べたって知ってた? 気になるタイトルをスイッチでプレイして、ファミコンの誕生日を祝おう!

  3. 『あつまれ どうぶつの森』ホラーで有名な「アイカ村」が再び夢で登場……! 恐怖の島を体験せよ

    『あつまれ どうぶつの森』ホラーで有名な「アイカ村」が再び夢で登場……! 恐怖の島を体験せよ

  4. 『星のカービィ スターアライズ』いくつ知ってる?小ネタ10選【ネタバレ注意】

  5. コロコロ10月号に『妖怪ウォッチ2』の限定妖怪「ガブニャン」が付属

  6. 『星のカービィ スターアライズ』ストーンの変身をすべて調べてみた!全18種類をチェック

  7. 裏サクセスが面白すぎる『パワポケ』作品3選!大正ロマンから海賊モノまで…

  8. 『あつまれ どうぶつの森』島の名前アイデア50選!命名に迷っている人は要チェック

  9. 『モンハンライズ』今までのヌシを凌駕する「強化個体ヌシ・アオアシラ」襲来!2つのイベクエが一挙配信

  10. 『あつまれ どうぶつの森』離島で再会する元住人に記憶がないのはなぜ?―4つの仮説を立ててみた

アクセスランキングをもっと見る