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【今どきゲーム事情】杉山淳一:専修大学の「Eスポーツ講座」に潜入!

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【今どきゲーム事情】杉山淳一:専修大学の「Eスポーツ講座」に潜入!
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オンライン対戦ゲームの世界大会、ワールドサイバーゲームズ(WCG)の日本予選会場を、専修大学の学生さんが取材していました。話を聞くと、大学の授業でEスポーツをテーマとしているとのこと。そういえばWCG2006の日本代表だった餅A選手から「大学でEスポーツの授業があるそうですよ」という話を聞いていました。どんな授業が行われているか興味深いです。その授業は専修大学の江原淳教授が担当しているそうです。さっそくインターネットで江原先生を検索し、取材依頼のメールを送信。快く応じてくださいました。授業は月曜日とのことで、12月1日に神奈川県川崎市多摩区の専修大学生田キャンパスを訪ねました。

江原淳教授。マーケティングの研究者。日本マーケティングサイエンス学会理事、日本消費者行動研究学会副会長、日本商業学会理事。他に情報処理学会、人工知能学会、日本広告学会などに所属していらっしゃいます


■正しくは「ネットワーク情報学部・コンテンツデザインコース」の1科目だった。

大学のEスポーツの授業というからには、「Eスポーツ学」、「Eスポーツ概論」、「Eスポーツ理論」というような講座名かと思いました。ゲーム好きな学生が集まって、オンラインゲームで遊びつつ、現在のEスポーツを分析し、海外の事例や歴史をまとめ、これからのEスポーツやEスポーツタイトルのあり方を研究する…というような。しかし、おじゃましてみたところ、私が想像していた授業とは違いました。講座名は「ネットワーク情報学部・コンテンツデザインコース」でした。

その講座の中で、月曜日の14:45〜18:05の2コマ連続で行っている「コンテンツデザイン総合演習」という科目がEスポーツをテーマとしているそうです。なるほど、Eスポーツの授業とはそういうことでしたか。うーん、ちょっとがっかり(失礼)。いや確かに、日本のEスポーツの現状を考えてもそれは無理というもの。世界的に見てもEスポーツは発展の最中で、学問として確立させるには、テーマとして熟していないのかもしれません。

専修大学生田キャンパスコンテンツデザイン総合演習の授業風景


むしろ、授業の一部とはいえ、大学でEスポーツを扱ってもらえたことは喜ぶべきでしょう。いったいなぜ、Eスポーツをテーマとしたのでしょうか。まずは、「ネットワーク情報学部・コンテンツデザインコース」について知っておきたいところです。

専修大学ネットワーク情報学部は、「ネットワークや情報技術の進展を正確に理解し、その知識を活用して人間社会に貢献する」人材を育成するために創設されました。2001年に、従来の経営学部情報管理学科を独立させてネットワーク情報学部となったそうです。コンピュータ関連の学部といえば理系です。しかし、専修大学のネットワーク情報学部は文系の学部が母体となったという特殊な経緯があります。したがって、入学試験は文系、理系の両方の科目から受験可能とのこと。入学後は学生の志望に合わせて「ネットワークシステムコース」「コンテンツデザインコース」「情報戦略コース」「情報技術創造コース」の4つを選択できるそうです。

情報技術創造コースは理系の情報工学にあたり、IT技術の研究に特化されています。このコースのみ入試時に選択します。ネットワークシステムコースはコンピュータとネットワークを活用した情報システムを構築できる人材を育てます。卒業後はプログラマやSE、企業のIT担当者を志望する学生が多いとのこと。情報を活用する技術や分析方法を学び、企業で意志決定をする人材を育成します。さて、Eスポーツをテーマとするコンテンツデザインコースは、情報を伝えるためのメディアや表現方法、システムを研究し、実践するそうです。人間の認知の仕組みや社会・ビジネスの状況をふまえて、Webの活用方法、IT技術を用いた商品企画などを実習スタイルで学んでいきます。

「コンテンツデザイン総合演習」はさらに3種類の実習グループがあります。Eスポーツをテーマとしてるグループは、Web制作の実習です。ふたつめのグループはICタグを使った商品開発の実習です。内田洋行のシステムを使っているそうです。3つめのグループは映像制作の実習です。こちらはJR東日本と提携しており、優秀作品はJR川崎駅の案内システムで放送されるとのことでした。

Web制作実習(Eスポーツがテーマ)商品開発実習(文庫本とICタグを組み合わせる)映像制作実習(中間発表会でした)


こうしてみると、従来の大学で行われてきた「学術主体の原論、理論、応用論」というイメージよりも、「実践的な、社会ですぐに役立つ技術」を学ぶという印象です。産学協同研究が活発になり、大学教育も新しい段階に入った、ということでしょうか。

■役に立つEスポーツWebサイトを作る実習

Web制作実習の教室にお邪魔しました。各座席に1台ずつのPCがあり、ズラリと並ぶ姿はまさにWeb制作会社のようです。会社との違いは、各座席の間にもモニタが設置されていること。このモニタは講師が使用しているPCのモニタが映し出されます。講師が操作している状況を、講師の後ろに行かなくても見られる仕組みです。

実習は学生を3つの班に分けています。各班が同じテーマのWebサイトを作り、「どのサイトが訪問者にとって役に立つか」を競います。今年のテーマはEスポーツです。Eスポーツファンを増やすというテーマで、3つのEスポーツWebサイトを製作中です。各班では、トップページの動画を作る人、取材して記事を書く人、Webの全体的なデザインを作る人、そのデザインをもとに、素材を組み合わせてWebを構築する人などの役割分担があります。

Web制作実習は22名が参加。外部で作業している学生もいるため人数は少ないとのことです。あとから顔を出す学生も何人かいました


この実習は、9月から制作を開始して1月に結果を出すスケジュールです。Webを企画してプレゼンを実施し、教授の承認を得なければ制作作業に着手できません。実際にWeb制作会社からクライアントとやりとりするように進行します。しかし、作業は遅れているようで、ホワイトボードには「本日締め切り」の文字がありました。指導を担当する鈴木謙介先生は、自らPCを操作してWebサイトのひな形を作って見せました。「1時間でここまでできるんだぞ、君たちはいったい何をしていたんだ?」と、厳しい声が響きます。

鈴木先生の声が響きます


私も各グループを巡回してみました。なるほど。まだ完成には遠いかも…と思いつつ、楽しそうにPCを操作している学生さんを羨ましいとも思いました。この教室では、アドビやマイクロソフトのツールがほぼすべて揃っています。高価なソフトを好きなだけ使えます。同じことを専門学校でやろうとすると、かなりお金も時間もかかりそうです。

今後の予定としては、完成したWebサイトを大学内で公開し、他学部の学生にも声をかけてサイトを訪問してもらいます。そして、どのページがよく閲覧されたか、興味を持った人が、さらに深い知識を得るために行動を起こしたかなど、閲覧者の行動をGoogle Analyticsを用いて分析します。各班でコンバージョンの獲得競争をするそうです。Eスポーツを知らない学生たちが、実習で制作したWebサイトを訪問し、どれだけ興味を持って行動を起こすか。それはEスポーツに関わるすべての人々にとって気になるところです。

取材記事ができていました


江原教授によると、学内の実験が終わったらサイトを学外に移して、さらに研究を進めたいとのことでした。ただし、実際の進行が遅れていること、受講生は2年生22名で、進級によってこの制作は終わってしまうため、難しそうだとのことです。「Webというメディアは作ったところが終わりではなく、完成したところが始まり。Web 2.0の考え方で、ユーザと対話しながら生きていく。だからメンテナンスすることも重要なんです。各班から、1人でも継続運営してくれる学生が立候補してくれるといいんですが」と江原教授。

■Eスポーツをテーマとした理由

特定のテーマでWebサイトを作る演習。そのテーマにEスポーツが選ばれた理由はなんでしょうか。江原先生がEスポーツのファンだから、というわけではないそうです。江原先生は英語圏向けに「フリフオンライン」を運営している株式会社ガーラの監査役を務めており、ゲーム業界に理解がありました。また、デジタルハリウッドから専修大学にいらした福冨忠和先生からEスポーツの存在を知ったそうです。デジタルハリウッドと言えば、WCG2004の日本予選会場になった大学です。なるほど。これで専修大学とEスポーツがつながりました。

「Eスポーツをテーマとした理由は、国内にメジャーなサイトがなかったから」と江原教授はおっしゃいました。うむむ。悔しいですがその通り。ハッキリ言われてしまいました。日本にもEスポーツ情報に詳しいサイトはいくつかありますが、一般社会に認知されたサイトはまだありません。では、まさか、この授業でEスポーツのメジャーサイトを作ってしまおうというのでしょうか。「そうなるといいけれど(笑)」

江原淳教授


「negitakuなどの専門サイトは情報量が多いけれど、内に向いています。それはユーザのレベルを上げていく。山を高くする機能があります。しかし、いまのEスポーツの問題は裾野を広げることではないでしょうか。日本の場合はギャラリーをどう獲得するか。ゲームについて、いつまでも、シリアスゲームやカジュアルゲームだと言われているうちはダメなんです。ゲーマーでない人を巻き込んでいかないと。だから、今回のEスポーツサイト制作の実習では、コンバージョンを獲得せよ、という課題を与えました」

情報更新頻度の高いサイトを作るなら、RSSを拾ってくるだけでもいい。しかし学生には、制作に当たっては取材もきちんとしなさい、と指示しているという。WCG日本予選にこの講座の学生が来た理由はそれだ。

「本当は学外のサーバで、インターネットの誰からも見てもらえる形にしたい」と江原教授。野鯖(のさば。一般の人でも入れるパブリックサーバのこと。FPS界隈で使われる造語)で勝負したいそうです。「コンバージョンを獲得する。Webはそうしないと教育できません。コンバージョンするために作っているのであって、世間の目に晒されてなんぼ、ですよ。でも、学問の場ではユーザビリティとかインターフェイスとか、きれい事しか教えられない。だけと、実際の社会ではそんなことはあまり問題にならないんです。ユーザビリティが良かろうと悪かろうと、Webサイトはコンバージョンさせるために作ってるんですから。見た人が、そのテーマについて態度を変えてくれる。見識をあらたにしてくれる。それがコンバージョンするっていうことです。もちろん大学ですからユーザビリティも教えますが、この演習は『Webサイトは何によって評価されるか』を念頭に置いてやっています」

江原教授は「Eスポーツという名前が良くない」とおっしゃいます。「ゲームという言葉が入っていないから、いちいち説明しないと一般の人にはイメージできない。世界的に使われているから、いまさらEスポーツという単語を書き換えたりできませんが、日本ではG1とでもしたほうが伝わりやすいと思います」

なるほど。自動車レースのF1、格闘技、空手のK1、漫才のM1、落語、ピン芸人のR1というように、ゲームでトップを争うならG1というわけですね。G1というと日本では競馬が知られていますが、P1は中央競馬会もパチンコ業界も使っています。分野がかけ離れていれば、G1を使ってもいいかもしれません。「そう。競馬よりも観客を増やさなくちゃだめですよ。 趣味の雑誌は実際にはセミマニアが作っていますね。マニアがいて、セミマニアが一歩引いたところからメディアを作って、それが一般の人々の入り口になります。そういう仕組みを作らないとギャラリーは増えません」

■制作したWebサイトがどれだけ役に立ったかを数字で知る

この講座では国際大学グローバルコミュニケーションセンターの鈴木謙介氏が指導を担当しています。鈴木氏は『カーニヴァル化する社会(講談社現代新書)』などの著書も多く、ラジオのパーソナリティや作曲でも活躍されているとのことです。Web制作の仕事も数多く経験されたとのこと。授業の合間にお話を伺いました。

鈴木謙介先生


「今回、私はWebデザインの基礎を教えていますが、私としては研究者として、学生たちが未知の情報に触れて、それをどのように消化していくかを観察させてもらっています。彼らは余りゲームに詳しくないようですが、私自身はオンラインゲームで遊んでいましたし、研究案件で何度も韓国に行っていて、韓国のEスポーツ事情も多少は解ります。Eスポーツに詳しくはないけれど素人ではないという立場でしょうか」

学生たちのEスポーツの理解度を判断できる先生ですね。

「ゲームハードの売り上げが停滞してきて、日本のゲーム人口がそろそろ頭打ちになろうとしています。そのときに日本のゲーム産業は、女性やこどもへ向かっている。しかし、Eスポーツはそれとは反対の方向なんですね。サイト訪問者に、Eスポーツのどういうところに魅力を見いだしてもらうかを考えてもらいます。学生たちはWebサイトを作っているだけではなくて、調査・取材やアンケートもしています。そのなかで、オンラインゲームの面白さを自ら発見していく。その過程を振り返って、彼らなりのプロモーションの方法を発見できると面白いですね。いまのところはきれいなサイト作りをやっている段階で、まだ独創性は出てきませんが、最終的にはそこまでやっていきたい」

なるほど。Webサイト制作実習を通じて、Eスポーツの認知度を高める方法を模索しているというわけですね。

「Webサイトが完成した時に、作り手は『ここが面白い、これを見て欲しい』と思っても、アクセスログを分析すると、ユーザは見てくれないことが解ります。それはなぜかを考えて作り替えてもらいます。Webサイトは作って終わりではありませんからね。一般的なクリエイティブ系のスクールでは作ることが目標ですが、ここでは作って、反応を分析して、さらに良いモノを作る。が目標です。『できました』『カッコイイですね』では意味がありません。『できました』『役に立ちました』と、それを数字で出せることが大事。そこを理解させたいんです」

Eスポーツの授業、という噂でしたから、どんなふうにEスポーツの文化やプロモーションを教えているのだろうと楽しみにしていました。しかし、実際はそういう授業ではなく、EスポーツをテーマとしたWebの制作実習でした。来年は違うテーマを選ぶ可能性が高いとのことで、この記事を読んでいる高校生がEスポーツを学びたいと思っても、残念ながら来年以降の専修大学にはEスポーツの講座は無さそうです。期待した内容とは異なりますが、この授業の成果は、Eスポーツを普及させたいと考える人々にとって参考になると思いました。学生たちが制作したWebサイトが公開されることを楽しみにしています。そして、もし実習成果発表があるなら、ぜひ拝聴したいと思いました。

■関連サイト
専修大学
http://www.senshu-u.ac.jp/

専修大学・ネットワーク情報学部
http://www.senshu-u.ac.jp/School/network/index.html

専修大学・江原淳教授のプロフィール
http://reach.acc.senshu-u.ac.jp/Nornir/search.do?type=v01&uid=1203656
《杉山淳一》

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