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『龍が如く 見参!』インタビュー 次世代のゲーム作りを聞きました

3月6日にセガから発売されたPLAYSTATION3向け『龍が如く 見参!』(以下、『見参!』)は、プレイステーション2で2作品が発売され高い評価を受けた「龍が如く」シリーズの3作目であり、シリーズとしては初めてプラットフォームをPS3に移した作品です。大幅に性能の上がったPS3というハードで、どのようなゲーム作りがなされたのか、セガNEソフト研究開発部の服部氏と長坂氏にお話を聞きました。

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―――デモに関してはムービー(動画)の部分とリアルタイムデモ(3Dポリゴン)の部分があると思いますが、その割合というのは?

服部: 基本的にはリアルタイムなのですが、例えばオープニングの大軍と大軍がぶつかるシーンのように、PS3で試行錯誤するよりはムービーで作った方が良いという箇所は、最初からムービーで作成しています。ですから、デモ全体の1/5くらいはムービーでやっています。ムービーと言っても一部を除きすべて実機から出力した3D映像を元に、リアルタイムで行うには難しいエフェクトを加えた上でムービー化しています。それをSofdecで再生することでリアルタイムと遜色ないムービーを再生することができました。

―――ムービーの素材はどうやって実機から出力したのでしょうか?

服部: ベタなやり方ですが、フレームバッファを1フレーム1フレーム、BMPで出力して・・・。
モーションブラーなどの処理をするために1フレーム1フレームを更に分解して出力しました。激しいシーンだと1フレームあたり10枚くらいは撮ったという話を担当者から聞きました。いちばん処理が重いシーンだと1シーンの1つのムービーをレンダリングするのに3日かかったと言っていました。

※モーションブラー:画像に意図的にブレを加えることによって、動きを表現する手法。

―――なるほど。実機をレンダリングマシンとして使った感じですね。実機の映像をBMPにしてエフェクトをかけて、それを繋ぎ合わせればリアルタイムのものと画質的に変わらないものができるんですね

■高性能ハードでの音作り

―――『見参!』の音作りでは、どのようなところに注力されましたか?

長坂: 刀がメインになるので、その感覚的な気持ち良さみたいな演出は意識しました。あとは絵がとても綺麗になっているので、音も負けられないという気持ちはずっと持っていました。

服部: 刀の音と斬られる音は、やはり物語の中でキーになる音ですので、かなりこだわって作ってあります。

長坂: 最後の最後まで調整した部分ですね。

服部:あとは時代設定が変わり、舞台が前作の新宿から祇園に変わったという点でも、音作りに変化がありました。新宿は至る所で音が混ざり合って聞こえてくるのですが、京都の街にはそういうものが余り無くて、ちょっと大変でした。もう少し賑やかにしたいけど、音源がないし、そんなにたくさんの人が歩いているわけじゃないのにまわりの環境音を大きくしてもおかしいですからね。

―――音作りで何か参考にした作品などはあるのでしょうか? 時代劇や映画など

長坂: 最近作られた時代劇などは観たりしたのですが、あまり参考にはしませんでしたね。それよりは自分のできる事を最大限追求するというか。作品ごとに求められる音は違うと思いますので。

―――ハードの性能が上がることによってゲームの音作りはどのように変わりましたか?

長坂: そうですね、複雑には鳴らせるようになったと思います。例えば、複数の音をグループ化しランダムに鳴らしつつ、ピッチもランダムに変えてなど、より複雑に、リアルなサウンドが再生できるようになりました。CPUに負担がかかるから躊躇するという事も減りました。

―――今後の作品ではどのようなことに挑戦したいですか?

服部: ゲームシーンとイベントシーンをシームレスにつなげる、ということをやってみたいですね。やはりロード時間をできるだけ少なくしてゲームユーザーをイライラさせないようなゲームづくりをしていきたいです。『見参!』でもHDDへインストールすることでロード時間を短縮していますが、究極的にはローディング画面がないゲームを作りたいと思っています。

長坂: より表現力の豊かな音作りをしていきたいですね。例えばメニュー画面のSEなどを3Dで動きのあるものにするなど。それにはミドルウェア側での設定があれば便利なので、「フレーム数でSEの定位を設定できる機能」を是非 CRI Audioで対応してほしいです。

■最後に

―――開発者の方とゲームをプレイされる方に、それぞれ一言ずつコメントをいただけますか?まずは他の会社の方に

服部: 自分はわりと洋ゲーを遊ぶ方で、昔は洋ゲーと言うと大味なイメージがあったと思うのですが、最近は日本のゲームの"おもてなし"をかなり研究してきていると思います。日本のゲームが良いというのは"おもてなし"が上手いということだったと思うのですが、そこも頑張ってかなり追いつかれています。ですので、日本のメーカーもそれに負けずに、もっと先に行けるように、是非一緒に頑張って行きましょう、ということですかね。

長坂: 日本のゲーム業界の一員として、お互いもっともっと盛り上がるように頑張っていきたいですね。

―――では最後に「龍が如く」ファンの方々に一言お願いします

服部: 短期間で作りましたと言ってはいますが、それは色々な技術的な問題がクリアになったからであって、ゲームを面白くする部分に多くの時間を使っています。内容的には長い時間をかけて作ったタイトルに負けない物量がありますし、クオリティにも自信を持っています。これからPS3を買われる方も、もちろんすでに持っている方にも、何を買おうかな? と迷った時にぜひ選んで欲しい一本です。

長坂: シリーズを通してですが、今回もサウンドのみならず全てが濃い内容になっていると思います。サウンドもこだわって作りましたので、ぜひプレイして楽しんで欲しいと思います。 折角なので5.1chの環境で楽しんでほしいですね。

―――本日はありがとうございました

3月7日 NEソフト研究開発部 「龍」の前にて


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