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【GDC08】ラフ・コスター氏による「理想のMMO論」

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【GDC08】ラフ・コスター氏による「理想のMMO論」
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GDC2008は、ある意味でラフ・コスター氏によって始まり、ラフ・コスター氏によって終了しました。というのもMMORPGや仮想世界ビジネスについて議論するため、初日に新設されたサミット「World in Motion」がラフ・コスター氏の基調講演によって幕を開けたからです。そしてコスター氏は通常日の最終セッションで再び登壇し、「『Metaplace』の事後分析:MMOの再構築」という講演で締めくくりました。

World in Motion Summitの基調講演の様子


コスター氏は『ウルティマ・オンライン』のゲームデザインや『スターウォーズ・ギャラクシー』のプロデューサーなど、一貫してMMORPGの開発に携わってきたゲームデザイナーで、2006年に独立してエアリア社を立ち上げ、ユーザー参加型のオンラインゲーム開発プラットフォーム「Metaplace」を開発してきました。昨年開催された「コ・フェスタ/ゲーム開発者セミナー」で来日し、全世界に先駆けて「Metaplace」の概要を発表したのも記憶に新しいところです。

そのコスター氏の基調講演は「高い窓」と題したもので、オンラインゲーム開発者の姿勢を改めて問いただすものでした。コスター氏は『セカンドライフ』や『ワールド・オブ・ウォークラフト』といった、現在主流のオンラインゲームは、テキスト型オンラインゲーム「MUD I」の時代から本質的に進化しておらず、ユーザーが見たい世界だけを見せる、または開発者がユーザーに提供したい自分たちの世界だけを見せるという点に終始しており、ディズニーランドのようなテーマパークと変わりがないと言います。つまり、これらはすべて「低い窓」というわけです。

「高い窓」について講演したラフ・コスター氏


その上で、コスター氏は「私たちにとっての『空飛ぶ車』=理想のMMOとは何でしょうか?」と問いかけ「現実の拡大なのでしょうか? ネット上でのプレイヤーの行動を監視することなのでしょうか? それとも人々の生活を変えていくことなのでしょうか?」と続けました。そしてコスター氏は「それは『セカンドライフ』をプレイしてリアルマネーを稼ぐことではありません。新しいコンテクストに現実の世界を置き換えることも進歩ではありません。ボイスチャットは見知らぬ人との出逢いを、逆に制限してしまうでしょう」と語り、商業ビジネスに囚われない「果てしない理想」を追求することが重要だと指摘しました。

コスター氏の語る「理想論」は、オンラインゲームがビジネス面に留まらず、ユーザークリエイテッドコンテンツの拡大やリアルマネーとの結びつきをはじめ、さらなる業態としての進化が予想される中(だからこそGDCで「World in Motion Summit」が新設されたわけですが)、会場を埋め尽くした開発者に、いささか冷や水を浴びせたようにも思われました。しかし、だからこそ新設サミットの基調講演にふさわしいものになった、とも言えるでしょう。基調講演が終了すると、会場は多くの拍手に包まれました。

既存のMMOサービスに厳しい指摘を投げかけたコスター氏


さて、このコスター氏の理想を体現するものの一つが、現在α版の開発が進んでいる「Metaplace」ということになります。最終日の22日(現地時間)、コスター氏は会場に現れ、「Metaplace」のビジョンとα版の開発における技術的解説について、メインプログラマーのシーン・リレイ氏と共に、デモを交えながら軽妙に語りました。「この講義は『事後検証』となっていますが、まだα版ですので『事後検証』はできませんからね。それにデモがクラッシュしても許してください」(コスター氏)。

最終セッションで再び登壇したラフ・コスター氏


はじめにコスター氏はMMOを再構築する必要性について、現在のMMOが開発規模が非常に大きく、リスクが高くなっている点を説明しました。その理由の一つに、ゲームプログラムやデータ、チャット、認証、課金といったサーバ群、あらゆるデータベースなど、ゲームサービスの運営に必要なすべてのリソースを、巨大なサーバに納める必要があるからだと指摘しました。今やこれらのリソースによって、パブリッシャーは窒息しそうになっている、というわけです。

今日のMMOサービスでは巨大なサーバーが必要で窒息寸前


この問題を解決するには、ローコストで開発でき、分散構造を持ち、拡張性の高いサービス形態に変えていくことが不可欠だとしました。コスター氏はこれはワールド・ワイド・ウェブの構造と同じだと指摘します。今日のウェブは言語(HTML)、リファレンスブラウザ(Mozilla)、フリーのサーバ(Apatch)、スクリプトで規定された行動様式(CGI)、テンプレートによるコンテンツ(CSS)、情報の流通経路の規定(DNS)、メタデータの活用(Google)で記述されています。こうしたウェブの技術やアナロジーをMMOサービスに活用していき、巨大なサーバの中に中央集権的な仮想世界を構築して、リッチなクライアントソフト(=ゲームソフト)でアクセスするのではなく、分散された多数のサーバに対して、ウェブブラウザでアクセスするという構想を説明しました。

ウェブ技術やアナロジーを活用してMMOを再構築する


またコスター氏によると、これは昨今よく引用されるようになったSF小説「スノウ・クラッシュ」(ニール・スティーヴンスン著)とは、根本的に考え方が異なると指摘しました。「仮想世界の中にウェブを作るのではなく、ウェブの上に仮想世界を設置するんです」(コスター氏)。

「『スノウ・クラッシュ』は嘘で、そんな時代は来ない」と断言


続いてコスター氏はα版の「Metaplace」のデモに移りました。「Metaplace」はブラウザ上で起動するMMOプラットフォームで、現在はグラフィックが2Dとなっています。IDパスワードでログインし、自分だけのバーチャル・ワールドが数十秒で構築でき、部屋の中にアイテムなどを置いたり、広場でチャットなどができます。YouTubeなどの動画を画面上に再生することも可能です。このあたりがクライアントがウェブブラウザであることの利点でしょう(Metaplaceサーバーはウェブサーバで、あらゆる物がURLを持ちます)。またパズルゲームやシューティングゲームなど、カジュアルなゲームを自作して公開したり、互いに評価したり、レコメンドなどを書くこともできます。SNSの中にオンラインゲームの開発プラットフォームを取り込んだイメージでしょうか。

これは既存のMMORPGがディズニーランドだとしたら、ユーザーに自由にコンテンツを作って、コミュニティを広げてもらう「砂場」のイメージだと言えるかもしれません。これがコスター氏の言う「高い窓」なのでしょう。実際には商業制作である以上、完全に「高い窓」を実現することは不可能であることは、コスター氏も重々承知しているように見受けられましたが、それでも開発者として、その理想を追求することを忘れてはいけない、といいたいようです。

Metaplaceのデモ(α版)


その後、コスター氏は「Metaplace」の開発経過を、ウェブを構成する主なテクノロジーやサービスになぞらえて説明しました。ここでコスター氏は「小さく作って、大きく育てる」という開発手法を強調しました。すでに存在する技術があれば積極的に利用することや、無理に最適化しようとしない、最初は本当にシンプルな所からはじめる、などです。コスター氏によると、開発の最初はタグをテキストファイルで直接入力し、手作業でコーディングしていったそうです。

また最初のクライアントソフトはBASICで書かれ、第2弾でFlash、第3弾でC++、第4弾で再びFlashとなり、現在はXML Schemaで開発が始まったところだとのことでした。このほかサーバなどの開発経緯について解説され、すべて段階的に構造化・複雑化されていったことが示されました。

1開発体制についても、2007年の1月に開発がスタートした時は、文字通りプログラマーが1人で開発しており、それから毎月1人程度のペースでゆっくりと増やしていって、年末には11人まで増えたとのことでした。ウェブとゲーム業界の双方の人材が半々ずつの割合で、現在は16人の社員に、アルバイトのデバッグスタッフが加わっているそうです。

α版の技術面における事後検証


「Metaplace」の目標は、繰り返しになりますが「カジュアルユーザーが自分のウェブサイトに、自分だけの小さな仮想世界を作れること」です。そのためできるだけ使いやすくすることが肝心ですが、構造面での最適化を追い求めたり、リッチなクライアントを作ることはしないそうです。「私たちは『ポン』の時代から現在まで、徐々にグラフィックの進化に慣らされてきました。しかし今の子供達は最初からリッチな映像に囲まれています。彼らは『ポン』と最新のゲームを同じだと捉えています」(コスター氏)。セキュリティ面についても、「ウェブの暗号化技術には素晴らしいものがあり、我々はすでにウェブ上で銀行口座などを管理している」として、独自開発に力を注ぐよりは、他にするべきことがある、という考えを示しました。

「Metaplace」はまだα段階で、スケジュールの見通しなども示されていません。しかし新しいスタイルのMMOコミュニティサービスとして、多くの注目を集めているのは間違いないでしょう。コスター氏は「2006年の夏に初めてこのビジョンについて説明したところ、みんなからクレイジーだと言われました。しかし、自分で自分が作ってきたゲームの再生産をするつもりはありません。新しい世界に挑戦していきたい」として、講演を締めくくりました。

α版開発での良かった点・悪かった点
《小野憲史》

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