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【DiGRA2007】『ゼビウス』遠藤雅伸氏と『ドシン』飯田和敏氏が日本のゲーム業界について大激論

デジタルゲームの国際学術会議「DiGRA2007」の最終日となった28日、「Game Development in Japan」(日本のゲーム開発)と題したシンポジウムが開催された。モデレータはIGDA日本の新清士氏で、パネリストは『ゼビウス』の遠藤雅伸氏と、『巨人のドシン』の飯田和敏氏。本セッションは直前に開催された「日本のゲーム産業史:ハードウェアとソフトウェアの出会い/アーケードゲームと家庭用ゲームの出会い」の直後に開催され、日本のゲーム開発事情や市場の特殊性について、より掘り下げた議論が展開された。

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続いてトピックは携帯ゲーム機やモバイルゲーム開発へと展開。遠藤氏は「大規模チームで力を入れて作るものと、ゲーム作家としてのセンスだけで作るゲームへと、さらなる二極化が進む」とコメントし、開発費が安くなければ冒険ができず、新しいゲームを作るならモバイルゲームが適しているとした。遠藤氏はプログラムも、グラフィックも、3Dモデリングも、音楽制作もすることができ、一人でゲームを作ることも可能だという。子供が産まれてからは、マニア向けのゲーム開発は他の人に任せて、自分は初めてゲームを遊ぶ人が、ゲームを好きになってくれるようなモノを作りたいとした。それには既存ゲーマーが少ない、モバイルゲームが最適というわけだ。

また最近の携帯電話のスペックはPS1を凌駕していると述べ、パーソナルで可搬性が高く、常時携帯という特性は、携帯ゲーム機すら超えるとした。一方でゲーム作りにおいては、短時間でも楽しめることが重要で、渋谷から新宿までの電車内でも、さっと遊べてすぐに保存できなければならいとした。もっとも70%以上のユーザーは自宅で遊ぶ傾向があるが、これには寝ながら遊べるというハード特性が大きいという。そのため「短時間でも楽しく、継続して遊ぶともっと楽しい」内容が求められるというわけだ。コミュニケーションツールとしての側面も強く、「モバゲータウン」などは男子高校生の90%が遊んでいる地域もあるとして、広告メディアとしての可能性も高いと述べた。

これに対して飯田氏も、JavaやFlashの普及、さらには同人向けのアドベンチャーゲームのように、一般の人がテレビゲームを作る上での参加障壁が下がってきているとした。その上で数億円もの開発資金をかけて、大きなゲームを開発するのが個人的にイヤになってきたと述べ、大学生と一緒に新しいスタイルのゲームが作れないか、日々挑戦しているという。大学には「知的な治外法権」というモラトリアムの特権があるとして、かつて演劇や映画で学生が活躍し、新しい流れを生みだしたように、学生パワーを使ってテレビゲームのスタンダードの雛形を作りたいと抱負を述べた。

ただし、現在はウェブで公開して口コミで広がるなど、知る人ぞ知るインディーズゲームという状態に留まっており、何とかしたいところだという。組織化とまではいかずとも、かつて「新宿ロフト」がロックミュージシャンの登竜門になったように、そこに行けば新しい情報が手に入って、次世代のスターが生まれてくるような「場」が必要だと指摘。コンソール向けゲーム開発の経験などもあることから、バーチャルとリアルを繋ぐシステム作りに取り組みたいと述べた。

またゲーム開発と教育という質問に対しては、飯田氏が「最近は生まれて初めて遊んだゲームが「FF」シリーズという学生も多い」と述べ、テレビゲームは自分が作れるモノだという認識に乏しい傾向が見られるとした。この考えを消すことが重要で、テレビゲームは誰でも作れて、発表でき、たとえゲーム会社に入社しなくても、テレビゲームの世界に参加できるという意識を持つ必要があると述べた。ただし実際には、スキルを身につけたり、面接のテクニックを学びたがる学生も多く、この溝を埋める努力をしているところだとした。

一方で遠藤氏は、ゲーム開発の技術的なテクニックの修得はゲーム専門学校が担当し、大学では最先端の技術開発とプロデュース力を身につけるという、両者の棲み分けが必要だとした。その上で自身が注力しているのは、学生にゲームが面白いか否かを見極めるための「目利き」力を修得させることだという。これによってプロデューサーの卵を育成することが重要で、大学教育で最も遅れている点だとした。それには過去の事例などを数多く知っている方が良いとコメント。自身も開発事例の整理を行うことで「人がどういう発想から新しいゲームを作ってきたのか」「人がどういう理由で新しいゲームを好きになるのか」を追求したいと述べた。


《小野憲史》
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