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盛り上がりみせる自主制作ゲーム・・・関係者による合同座談会で今後の展望について聞いた

今年のTGSでは、インディーゲームコーナーが設置され、自主制作ゲームに関わる状況がますます盛り上がっています。そして、そうしたシーンを支えるイベントも多数登場。今回はイベントの主催者が集まり、自主制作ゲームの将来について語りました。

ゲームビジネス その他
合同座談会の模様
  • 合同座談会の模様
  • ウェブテクノロジ 浅井維新氏
  • 七邊信重氏
  • ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 大前広樹氏
  • D.N.A.Softwares 江崎望氏
  • 東京ロケテゲームショウ 大澤範之氏
  • ドワンゴ 伊豫田旭彦氏
  • IGDA日本 小野憲史氏
今年の東京ゲームショウ(以下TGS)では、インディーゲームコーナーが新たに設置されて、同人ゲームやインディーゲームなどの自主制作ゲームに関わる状況がますます盛り上がっています。そこで今回、IGDA日本理事の小野憲史氏の呼びかけで、今秋に開催される代表的な自主制作ゲームのイベント主催者による座談会が開かれました。それぞれのイベントの趣旨や特徴、自主制作ゲームの今後について存分に語っていただきました。

参加者はTGSインディーゲームコーナーの企画協力をされた七邊信重氏、東京ロケテゲームショウ主催者の大澤範之氏、同人サークルD.N.A.Softwaresの代表でデジゲー博を主催する江崎望氏、株式会社ドワンゴでニコニコ自作ゲームフェスを主催する伊豫田旭彦氏、TGSでインディーズゲームフェスを主催したユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏、東京ロケテゲームショウの協賛を行っている株式会社ウェブテクノロジの浅井維新氏の6名です。また小野氏の司会のもと、筆者である今井も発言させていただきました。

小野:まず日本にはインディーゲーム以前に、同人ゲーム、フリーゲーム、フラッシュゲーム、アダルトゲームなどの自主制作ゲームが独自に発展してきたという歴史があります。今回集まってもらった方が開催しているイベントも目指している方向性はそれぞれだと思います。なので、まず自己紹介を兼ねてイベントの紹介をしてもらえますか。

江崎:デジゲー博を主催している江崎です。 D.N.A.Softwaresという同人サークルの代表も務めています。デジゲー博は、昔からある同人ソフトの延長線上にあるイベントです。同人ゲームもインディーゲームも含めたデジタルゲームのオンリーイベントです。ゲームだけではなく、ゲーム制作をサポートするツールやウェブサービス、同人誌なども参加可能です。また特徴として企業の方も参加できます。現在、お陰様で97サークルが集まりました。シューティングやノベルゲーム、アクションゲーム、RPGなどのジャンルが集まって、ほぼ現在の同人ゲームが概観できるようなサークルが参加しています。

大澤:ガンホーに勤めている大澤ですが、IGDA日本では、マニアックハウスという個人サークルとして関わっています。今回、東京ロケテゲームショウ(以下ロケテショウ)を開催します。ロケテショウは「ロケテスト」という名前の通り、販売は行わず、ゲームを展示してプレイしてもらうイベントです。こちらも個人でも企業でも参加できます。様々なゲームをプレイして、来場者に意見を出してもらい、今後のゲーム開発に活かすという流れになっています。

伊豫田:ドワンゴでゲームを担当している伊豫田です。開催しているニコニコ自作ゲームフェスは、「ゲームを作るひと、遊ぶひと、二次創作をするひとをつなぎ、個人で作ったゲームがもっと多くのひとにプレイされるようになることを目指すお祭り」というコンセプトでやっています。これまでのコンテストと一番異なっている点は、プレイヤー目線のイベントということです。そのため、より多くのプレイヤーに自主制作のゲームで遊んでもらうことを主眼としています。開催に至った経緯としては、ニコニコ動画では、『青鬼』や『ゆめにっき』などのフリーゲーム、『マインクラフト』などインディーゲームが実況動画をきっかけに人気が出て、多くのプレイヤーの方に届いた実績があるためです。そういった「ゲームを遊ぶ実況プレイ」というカルチャーと、クリエイターをつなげていけたらと思っています。

大前:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前です。今年の東京ゲームショウでインディーズゲームフェス2013を開催しました。開催の経緯は、東京ゲームショウのインディーズゲームのコーナーを盛り上げるために、何かステージイベントをやりたいということで始まりました。インディーの開発者にスポットライトを当て、その魅力を多くの人に知ってもらいたいということで、ニコニコ超会議の時に知ったゲーム実況と組み合わせるといいのではないかと思い、それらを組み合わせたイベントになりました。

浅井:ウェブテクノロジの浅井です。OPTPiXという画像最適化ツールimestaや2DアニメーションツールSpriteStudioを提供しています。最近はインディー向けのライセンスもリリースして、ロケテショウなどのイベントにも協賛しています。

七邊:IGDA日本で同人・インディーゲーム部会(SIG-Indie)の世話人を務めています七邊です。SIG-Indieは2009年の設立以来、10回の制作者向け研究会、2回のワークショップ、2回の東京ロケテゲームショウを開催してきました。今年の東京ゲームショウでは、インディーゲームコーナーの企画協力もさせていただきました。

今井:ライターの今井です。インディーゲームを中心に取材やインタビューなどを行っています。

■東京ゲームショウを振り返って

小野:七邊さん、TGSインディーゲームコーナーの企画協力について、いかがでしたか?

七邊:同コーナーへの出展料金が1日2万1,000円、2日間で3万1,500円、ビジネスデイを含めた4日間で9万9,750円だったため、個人やグループが趣味でゲームを作られている国内の同人ゲーム制作者の方の参加は少ないかなと思っていました。しかし蓋を開けてみると、10か国全43参加団体のうち、20団体が日本国内からの参加でした。東京ゲームショウを通して世界に自分のゲームを発信したいと思っていた人は予想以上に多いのだなと感じました。一方、海外からは台湾(8団体)、カナダ(3団体)、中国(2団体)、イギリス(2団体)、スウェーデン(2団体)、メキシコ(1団体)など、様々な地域から参加者が集まりました。これまで東京ゲームショウでこういったインディーのイベントをやることはなかったので、そういった意味では風向きが変わってきたのかなと思っています。実は東京ゲームショウが1996年に東京ビッグサイトで初開催された当時は、同人誌即売会が併催されていました。その頃はまだ自主制作文化と産業が比較的近い位置にあったのですが、1997年に東京ゲームショウが幕張メッセに移る頃には、集客数が増えたこともあり、同人誌即売会は開かれなくなり、両者の交流は途絶えました。今、また両者の交流が活発になってきたことはとても良いことだと思っています。

小野:では東京ゲームショウのインディーコーナーを取材した今井さんはどうですか?

今井:当初、思っていた以上に盛り上がったなと感じています。また東京ゲームショウにインディーゲームの開発者が集まるということで、他にもいろんなイベントが行われ、海外の開発者が日本で交流するきっかけになったと思います。

伊豫田:『マインクラフト』の開発者の方々も来日されて、東京でオフ会を開いていましたよ。

小野:インディーコーナーが開催されることで波及効果が生まれたということですね。今回、僕のところにもインディーゲームについて取材できる人を紹介してほしいというテレビ局の依頼が2件ありました。残念ながら直前に台風が来て流れてしまったんですが、それでも新聞の報道などでもインディーコーナーはかなり取り上げられ、今回の東京ゲームショウの影の主役だったのかなと思っています。その中でもユニティさんが開催されたインディーゲームフェスの注目度が高かったと思います。

七邊:私はニコニコ生放送を通して見させて頂きました。実況プレイヤーのファンの方に女性が多いことが大変印象的でした。というのも、SIG-Indieなどで制作者向け勉強会を開催しても、参加される方の9割以上が男性なんです。ゲーム実況コミュニティの界隈に女性ファンの方が多いということはまったく知らなかったので勉強になりました。

大前:男女比は1対1くらいでした。前列には実況プレイヤーのファンの女性の方が多くて、その後ろに僕らがよく知っているようなゲーマーのような男性陣が詰め寄りました(笑)。

伊豫田:僕らは「いつもより男性にご覧いただけてるなあ」とおもっていました(笑)

大前:確かにニコニコ超会議で行った自作ゲームフェスのときは、本当に集まっていたのが全部女性でしたからね。

伊豫田:自作ゲームではなく、実況プレイヤーの出演者に女性ファンが付いているんですよね。

浅井:そこに集まったお客さんというのは、ゲームのユーザーといっていいんですかね?

大前:確かに実況プレイヤーに女性ファンが付いているということもあるんですが、インディーズゲームフェスで実際のゲームのプレゼンテーションをやった後、女の子たちが押し寄せたブースもあったそうです。それにショックを受けた開発者の方も結構いたようで、女性ファンを獲得するヒントになったようでした。

伊豫田:女性も実際に自主制作ゲームで遊んでいますよ。同人ゲームでは『花帰葬』というゲームが話題になり、PlayStation2で商業デビューしました。フリーゲームでは『Ib』というゲームが2012年に女性ユーザーに大流行して、400名規模の同人誌即売会が開催されました。

江崎:インディーズゲームフェスは、僕もこんなに女性が来るもんだなと関心した一方で、ある同人ゲームの開発者の方が「これってボカロPと歌い手の関係じゃない」と言ったのが印象的でした。もちろん、お客さんの規模を増やしてもらえること自体は歓迎しています。あと同人ゲームの開発者の人たちは、これまで実況プレイが何なのかわかっていなかったですが、今回、目の前で見せてもらって体験することができたのが大きいと思っています。

大前:実際に開催してみた側から思ったこととしては、意外と同人やインディーのゲーム開発者は、ユーザーとの距離が遠いのではないかということです。実はコンシューマゲームの開発者以上に、ユーザーとの距離は離れているのかもしれない。乱暴に言うならば、みんなアナグラの中に住んでいて、アナグラの中まで来てくれる方と交流しているんですよね。そういった、開発者の近くに来てくれる、いわばエリートユーザーとの距離は非常に近いのかなという感じはするのですが、一般のゲームユーザーとの距離は遠いのかなというか、実際慣れてない印象を受けました。一方、今回参加した実況プレイヤーやそのファンたちは、本当に普通のお客さんなんですよね。だから、そういったユーザー層とインディーや同人ゲームの開発者を東京ゲームショウという場所でマッチングできたことは良かったと思います。

七邊:やはり現状、PCでゲームをプレイすることはライトユーザーにはハードルが高いですからね。

大前:そもそもどこで売っているかも分からないということも珍しくないんです。実際にイベントを開催するにあたって、僕らも注目のゲームを入手して遊ぶということをしたのですが、僕らでさえ遊ぶためにかなり右往左往しました。なので同人・インディーゲームについてはマーケットを整理するっていうのが急課題だと感じています。

浅井:すごく面白いゲームを作ったけど、売り方まったく知らない、お客さんがどこにいるのかわからないという人は多いですからね。

伊豫田:場合によっては、自分たちのウェブサイトで公開しているだけということもありますからね。ニコニコにはゲームを愛するプレイヤーのかたが多くいらっしゃいます。動画をきっかけに、一般ユーザーとクリエイターをつげたらとおもいます。できれば、流通の方まで整備していきたいとも考えています。

大前:フリーゲームにしろ、同人ゲームにしろ、完成しないことが一番の問題と言われますが、その次の問題として完成しても遊ばれないという問題があるんです。それをどう解決しようかということを、去年の年末くらいから伊豫田さんと話し合ってきました。

■今秋開催される東京ロケテゲームショウとデジゲー博
《今井晋》
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