人生にゲームをプラスするメディア

【BitSummit】ビット・サミット初開催を振り返って-ひたむきさと積極性、そして課題と将来

弊誌から2名の記者で取材にあたったビットサミット。「海外の人がたくさん来そうだ」程度のイメージしか描けていなかったため、実地の熱気には終始圧倒され続けました。参画していたのは基調講演に登場した企業やインタビューしたデベロッパーも含め50社以上に上ります。

ゲームビジネス その他
【BitSummit】ビット・サミット初開催を振り返って-ひたむきさと積極性、そして課題と将来
  • 【BitSummit】ビット・サミット初開催を振り返って-ひたむきさと積極性、そして課題と将来
  • 【BitSummit】ビット・サミット初開催を振り返って-ひたむきさと積極性、そして課題と将来
弊誌から2名の記者で取材にあたったビット・サミット。「海外の人がたくさん来そうだ」程度のイメージしか描けていなかったため、実地の熱気には終始圧倒され続けました。参画していたのは基調講演に登場した企業やインタビューしたデベロッパーも含め50社以上に上ります。

主催者James Mielke氏へのインタビューにもありましたが、このイベントが開催された動機を一言で表現するなら国内外で散見される「"日本のゲームは終わった"説への反論」です。その主張を既存の大規模な展示会を通じて発信するのは、やはり無理があるでしょう。自説を構築するにあたり自ら新しいカタチのものを企画し、人を集め、そして成功させたMielke氏の積極性から学ぶべきところは実に多いといえます。

日本のゲーム業界の構造的問題についてもしばしば言及されました。一側面から判断して糾弾するのは適切ではありません。しかし、そうした問題意識が共有されているという事実は変わりなく、特にパブリッシャーとデベロッパーの関係がどうあるべきかについてはいくつかヒントがもたらされたのではないでしょうか。

イベントは大盛況のうちに終わり、第2回の開催が期待できる成功ぶりでしたが、いくつか課題も見受けられました。まずMielke氏インタビューでも言及されていたとおり、会場があきらかに手狭だったこと。早期締め切りしてこの賑わいだったのですから、誇張抜きで次回以降は数倍以上の会場が必要かもしれません。同じ理由から、各デベロッパーのブースが小さく、コンタクトを取りづらかったのも改善点でしょう。

また、これは仕方のないことだったのかもしれませんが、プレス向けの場所が整っておらず、特に無線ネットワーク環境が地下会場だったこともあってか全滅気味だったのも気になりました(会場のWiFiスポットも使用不能でした)。さらに、現場の熱気を伝える手段が少ないのももったいないところ。関係者向けイベントであることを踏まえても、状況の一部をストリーミング配信しても良かったかもしれません。

日本のインディーゲーム界は特殊で、いわゆる「同人ゲーム」と区別して認識される傾向にあります。その正誤や良し悪しは語れません。ただ、両者間にあえて境界線を引く前向きな理由もまた、特に思い当たりません。日本のカルチャーはすでに世界に認知されています。グラフィックの傾向やゲームジャンルを理由にインディーシーンへの挑戦を避けるのは、宝の持ち腐れです。日本が誇る同人シューティングや同人格ゲーはSteam Greenlightで成功し得ないと論理的に説明できる人が果たして存在するでしょうか? すでに不動の地位を築いた組織にとっては喫緊ではないでしょうが、そうでない場合に新航路としてインディー路線を目指すことが間違いとは思えません。

また、日本のゲーマー側にもほんの僅かでもストライクゾーンを広げることが望まれます。どのゲームが良いだとか悪いだとか、このジャンルだからダメだとか、自ら狭量になることなく、あらゆる作品の「面白さ」「楽しさ」を受け入れられる感受性を磨く必要があるでしょう。ゲーマー全員が文化の発信者なのです。

今回は関係者限定のイベントでしたが、国内での認知度は高まったであろうビット・サミット。日本のインディーシーンとゲーム業界にとって、魁にして旗印となるのかもしれません。今後の展開に注目です。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

【BitSummit 2013 関連記事一覧】

・インディー系開発者向けイベント『ビット・サミット』開催。日本のインディーズシーンを後押し
・Q-Games吉田謙太郎氏基調講演「Q-Gamesの歴史」抜粋
・SWERY氏基調講演「海外デベロッパーに学ぶ成功のためのプロセス」
・Epic Games Japan河崎社長基調講演「ゲームエンジンを導入するメリット」
・ミドルウェアUnity大前広樹氏基調講演、「"当方ボーカル他募集"も応援したい」
・『洞窟物語』の開発室Pixelが新作アクション『Gero Blaster』を正式発表
・ベン・ジャッド氏基調講演「日本のゲーム業界が終っているという声には納得していない」
・ValveによるSteam基調講演、Steamと開発者の利益配分などリアルな質問も
・イベント主催者James Mielke氏インタビュー「日本にはまだまだ凄いインディー開発者がいる」
・開発者インタビュー iOS『コトモン』のMonstars
・開発者インタビュー STG『RefRain』のサークルRebRank
・開発者インタビュー『トーキョージャングル』のクリスピーズ
・開発者インタビュー『LA-MULANA』のNIGORO
・ミドルウェア『BISHAMON』のマッチロックへインタビュー
・他にも色々あった!ビット・サミットで見かけたあれこれ-人混み、レッドブル、サカモト教授など

《Gokubuto.S》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. 【CEDEC 2016】技術から語る『龍が如く』の10年──特殊エフェクトや物理エンジンの取り組み

    【CEDEC 2016】技術から語る『龍が如く』の10年──特殊エフェクトや物理エンジンの取り組み

  2. なぜ「アイカツ」のライブ映像は、ユーザーを魅了するのか…製作の裏側をサムライピクチャーズ谷口氏が語る

    なぜ「アイカツ」のライブ映像は、ユーザーを魅了するのか…製作の裏側をサムライピクチャーズ谷口氏が語る

  3. 任天堂ミュージアムに行ってきました!

    任天堂ミュージアムに行ってきました!

  4. 【CEDEC 2011】心に響くSEはこうして生まれる・・・SEマンのこだわりとは

  5. イケメンはこうして作られる!「「その口…塞いでやろうか…?」250人のイケメンをLive2D化してわかった、成人男性キャラの魅力的な見せ方」セッションレポート【alive2019】

  6. 「日本と海外におけるゲーマーにとってのリージョン制限」・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第22回

  7. 【ゲーム×法律】子どもがゲームに高額課金、親は取り戻せるのか?

  8. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が米国任天堂らを提訴

  9. それは“絶望の一週間”―『シノアリス』のエンジニアがサービスイン時の混乱を語る【CEDEC 2018】

  10. 令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

アクセスランキングをもっと見る