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カジュアルゲームの収益化、ビヨンド『GlassPong』の例・・・第8回iPhoneGames勉強会

株式会社ハッチアップが開催する「TechBuzz」の「第8回iPhoneGames勉強会」が1月10日(木)に行われました。「TechBuzz」は開発者による開発者の為の勉強会。2010年から多くの技術系/開発系イベントを過去160回以上実施し、累計2万人以上の参加者がいるイベントです。

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株式会社ハッチアップが開催する「TechBuzz」の「第8回iPhoneGames勉強会」が1月10日(木)に行われました。「TechBuzz」は開発者による開発者の為の勉強会。2010年から多くの技術系/開発系イベントを過去160回以上実施し、累計2万人以上の参加者がいるイベントです。

開催場所もハッチアップが運営している新宿のイベント会場「TechBuzzSpace」。年明け早々、iOSアプリの開発者やスマートフォンゲームに興味のある参加者が100名近くも集まりました。

株式会社ハッチアップはソーシャルゲームやスマートフォンゲームに特化した転職支援会社です。これまで「iPhoneGames勉強会」と題して、App Storeで売上を伸ばすノウハウなどを様々な方々を招いて紹介してきました。今回はビヨンド株式会社の福島智晴氏と株式会社カヤックの嶋田俊宏氏を招き、成功するカジュアルゲームについて興味深い報告がなされました。

最初にビヨンドの福島氏が「カジュアルゲームのLTV考察(700万DLのGlassPong リリース1年から考える)」と題された報告を行いました。ビヨンドは主にスマートフォンアプリを提供する会社です。Android、iOS、ウェブなどのプラットフォーム向けにゲームだけではなく、占いや絵文字や顔文字などのコミュニケーション・ツールなどを提供しています。それらのアプリはほとんど無料で提供し、大部分を広告でマネタイズしているといいます。

福島氏はネット広告代理店に勤務した後、昨年4月からビヨンドにてマーケティング担当し、広告運用の統括を行なっております。その経歴を活かし、今回は700万DLされたビヨンドの『GlassPong』というゲームの事例にして、カジュアルゲームのLTV(顧客生涯価値)を高めるマーケティングとマネタイズについて報告を行いました。

ビヨンドではカジュアルゲーム以外のアプリを提供していますが、その中でも福島氏は「カジュアルゲームは瞬間風速的」な印象があると言います。つまり、アプリの寿命が非常に短く、App Storeのランキングが下がると売上もすぐに下がるという印象です。累計としてのダウンロード数自体は上がっていきますが、基本的にアプリのリピーターが少なく、すぐに飽きられます。

それに対して、絵文字などのアプリはダウンロード数と売り上げが安定しています。というのも、それらはコミュニケーション・ツールであるため、検索によって自然にアプリにユーザーが流入したり、コンテンツの内容が変化することでダウンロード数が再び上昇したりするからです。

とはいえ、スマートフォンのカジュアルゲームで成功しているデベロッパーも存在します。彼らの多くは少数精鋭のチームで数多くのアプリを量産することで成立しているため、ビヨンドのような会社ではその立ち回りは真似できません。そのため、出来るだけターゲット層を広く、飽きられないように難易度は若干高く、ステージを追加やシリーズ化を視野に入れたカジュアルゲームを開発しようということで作られたのが『GlassPong』です。

『GlassPong』はピンポン玉を飛ばしてコップに入れるシンプルなゲームです。開発に際してこだわったポイントは、誰でも遊べるようになるべく現実にも存在するゲームを題材にすること、既に人気があった『Paper Toss』などのカジュアルゲームにプラスアルファの要素をいれること、言語を問わないことだったそうです。またゲームの基本部分はシンプルながらも、デザインやサウンドのクオリティを向上させたと言います。

このように開発された『GlassPong』は世界29ヵ国のApp Store無料総合ランキングで1位を獲得。累計700万ダウンロードを達成するなど大ヒットしました。ダウンロードと売上の推移を分析すると、それぞれ2回のピークがあったと言います。ひとつは日本のランキングで1位になったとき、もうひとつはアメリカで1位になったときです。日本だけではなく、世界のApp Storeのランキング1位を獲得することで、結果として、カジュアルゲームでも売上の低下スピードが遅かったと、福島氏は分析します。

次にシリーズ作品として開発した『GlassPong2』の実績が分析されました。前作に比べて『GlassPong2』は苦戦が強いられ、結果として日本のApp Store無料総合ランキングでは最高9位までにしか到達できなかったといいます。累計ダウンロード数も70万強と前作に比べると見劣りします。

この『GlassPong』と『GlassPong2』の実績の差は、主にApp Storeのランキングの仕様変更による影響が大きいと福島氏は分析しています。これまでApp Storeのランキングでは有料アプリを無料化すると、ダウンロード数が跳ね上がるという現象が見られました。しかしながら、ランキングの仕様変更でこのような無料化によるダウンロード数とランキングの上昇が少なくとなったといいます。

さらにこの『GlassPong2』に関してLTVの考察が行われました。LTV(顧客生涯価値)とは、ある製品やサービスに対して消費者がどのくらい利益に貢献したかを測る指標ですが、ここでは1つのゲームが飽きられるまでどのくらいの期間を要したかが分析されました。

まず日本だけで見ると『GlassPong2』は一ヶ月弱でランキング圏外に落とされました。しかし、各国での変動に着目すると、国によっては3ヶ月程度ランキングに居座る場合もあったと福島氏は指摘しています。またアルゼンチン一度圏外に出ても、何度もランキングに復帰するような特殊な変動を見せる国も存在するといいます。

次に、この『GlassPong2』の各国でのランキングの変動が他のゲームと比較されました。ビヨンドの絵文字サービスのマスコットをテーマにした「えもんくんのピコピコハンマー」は、モグラたたき形式のカジュアルゲームです。しかしながら、『GlassPong2』と異なり、日本人向けのゲームとして作られたため。ランキング変動はアジア圏のみに限定される結果となっております。

以上をまとめて、福島氏は各国のランキング推移にはズレがあるため、グローバル市場向けにリリースしたカジュアルゲームは相対的にライフタイムが伸びる傾向にあると分析しました。さらに、最近の『GlassPong2』のランキングの推移から、iPadでのランキングがiPhoneにも影響しているのではないかという仮説も説明されました。

そもそも、iPhoneとiPadのApp Storeのランキングは異なっており、昨今ではiPadのシェアもそれなりの規模があります。『GlassPong2』では、リリースの7ヶ月半頃にiPadのランキングが再び上昇し、つられるようにiPhoneのランキングも上昇しました。そのため、今後はiPadでの人気を考慮したゲームの制作やタブレットでのユーザービリティを意識することで、カジュアルゲームのLTVを長く継続できるのではないかと、福島氏は述べています。

LTVの考察の後、カジュアルゲームのマネタイズ方法について述べられました。『GlassPong』ではアドネットワーク、全面広告、リワード型広告、アプリ内課金という4種類の方法でマネタイズを行なっています。それぞれの収益の比率は、アドネットワークが全体の半分以上を占め、25%くらいが全面広告、残りがリワードとアプリ内課金です。

その中でもアドネットワーク、全面広告、リワード型広告をカジュアルゲームにおける「収益のざぶとん」になる基本の3点セットであると、福島氏は述べました。これらは互いに収益を食い合わないため、追加することでさらなる収益を上げることが可能だといいます。

中でも全面広告は導入してもユーザーからの反感を得ることはなく、大きな効果が得られたといいます。『GlassPong』では、アメリカのサービスである「Chartboost」を採用しました。海外案件が豊富、管理画面が使いやすいなどのメリットがある反面、日本向けのサポートがない、日本案件が少ないなどのデメリットがあったといいます。

そのためビヨンドは日本向けの全面広告型アドネットワーク「BEAD」を開発し、2012年の11月から他の会社にも提供を始めています。この全面広告型のアドネットワークを制作した背景として、同じようなサービスの「Chartboost」の収益率が高かったこと、ビヨンドに広告ビジネス出身者が多かったことなどが挙げられました。

既に株式会社ベーシックのAndroidアプリ『マッチに火をつけろ』のゲーム終了画面などに採用されています。広告主としては国内のソーシャルゲーム系が多く、ゲーム同士の広告のネットワークはユーザーの親和性が高く効果的だといいます。

最後に2013年のカジュアルゲームの課題として、福島氏は2点の指摘を行いました。第一に、iOS6へのアップデートやランキング仕様変更によってApp Storeの無料総合ランキングの上位に食い込むことがより困難になっていることを指摘しました。また、LINEやカカオトークといった他のプラットフォームのゲームアプリが上位を占有している現状を指摘しました。これらの課題をいかに克服するかが今後のカジュアルゲームの課題と述べました。
《今井晋》
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