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学生時代からプロツールで実践的に学べば大きな武器に・・・バンタンゲームアカデミー訪問(後編)

ゲームビジネス 人材

インタビュー風景
  • インタビュー風景
  • 講師を務めるファラッド代表の内田哉氏
  • バンタンゲームアカデミーでスクール運営の責任者を務める吉岡忠樹氏
  • CRI・ミドルウェアで営業を担当する及川直昭氏
  • CRI・ミドルウェアで開発を担当する櫻井敦史氏
バンタンゲームアカデミーは、サウンドクリエイター向けの専攻にて、今年7月からCRI・ミドルウェアが提供する統合サウンドオーサリングツールの「CRI ADX2」を導入した授業を始めています。訪問レポートの後編では関係者に直撃しました。

インタビューに参加したのは講師を務めるファラッドの内田哉氏、バンタンゲームアカデミーでスクール運営の責任者を務める吉岡忠樹氏。また、「ADX2」を提供したCRI・ミドルウェアで開発を担当する櫻井氏、営業を担当する及川氏の2人にも加わっていただきました。

―――まず自己紹介をお願いできますか?

内田: 講師を務めている内田と申します。ゲーム業界では25年間のキャリアがありまして、古くはファミコンやメガドライブの時代からゲーム開発に携わってきました。最後に在籍していたタイトーでは約17年間、サウンド専属としてゲームを中心にカラオケや着メロなどタイトーの事業全般のサウンドに関わってきました。基本的にはサウンドプログラマとして、サウンド制作の基盤作りを行なってきました。最後はサウンドのマネージャーとして、開発環境の支援から音楽レーベルの運営まで幅広く業務を行なってきました。昨年退社しまして、ファラッドという会社を立ち上げ、ネット中継や音楽CDの制作などの業務を行なっています。

吉岡: バンタンゲームアカデミーでスクール運営の責任者をしている吉岡と申します。バンタンは授業の全てを現場で活躍しているプロの方にお任せしているという特徴があります。私自身はそういった授業全般の運営・統括を担当しています。

―――では最初にバンタンゲームアカデミーについて教えていただけますでしょうか?

吉岡: バンタンゲームアカデミーはその名の通り、ゲームクリエイターの育成スクールです。ゲームを広くデジタルエンタテインメントと捉え、専攻はゲームプログラマー、ゲームグラフィッカー、ゲームプランナー、サウンドクリエイター、ゲームライターから、アニメ、マンガ、ノベル分野まで多岐にわたっています。バンタンの特徴は、デザインを切り口に実践教育を行うという点です。デザインの定義は色々ありますが、単に技術教育だけでなく、どういうアウトプットができるかという点まで踏み込んだ教育を行なっています。実践教育という意味では講師は全て外部の現場で活躍するプロの方にお願いしています。講師の方には現場での経験をそのまま伝えていただくようにお願いしています。授業では「理論と実践」という意味では実戦に重きを置き、現場をどこまで体験できるかを重視しています。プロ用のツールやゲーム開発機材を導入するのもそのためです。

―――これまでも様々な取り組みをされていますね

吉岡: 最近では様々な開発環境の導入を行なっています。また、ゲームエンジンとしてはUnityを導入し、Unreal Engineの導入も検討しているところです。Unityに関しては、Unity Technologies社が行った世界の教育機関に向けたコンペにも参加し、Unity教育の認定校としても活動しています。

―――実践的なツールを導入することで学生の反応も変わってくるものでしょうか?

吉岡: 現場で使われているようなツールを導入することには懸念もあります。余りに高度と思われてしまう可能性もあります。しかし現場に近いものを使うというのは学生にとって大きなモチベーションになるようです。教育にとってモチベーションは決定的に重要で、仮にハードルが高かったとしても学生のモチベーションを喚起できれば乗り越えられます。技術的な成長も当然ですが、現場に向かいたいというモチベーションを高めるのも学校の役割だと考えています。

―――なるほど。では今回「ADX2」を導入した経緯についても教えていただけますでしょうか?

内田: 「ADX2」はサウンドのミドルウェアとして、ゲームメーカーで知らない人はほぼいないと思います。私自身もこれまで使わせていただいていて、周りの評価も非常に高いものがありました。バンタンで講師をやらせていただくに当たって、実践的なカリキュラムを組むという意味では現場で頻繁に使われるミドルウェアを導入すれば有意義なものになるのではないかと考えました。それで以前から存じ上げていたCRIの方に連絡したというのがきっかけです。

及川: CRIとしては授業への導入は以前からやりたいと思っていた事の一つでした。将来ゲーム会社に入社するような学生さんにとって、学生の頃からADX2のようなミドルウェアを利用していたというのが強みになればと思っていましたし、ADX2を知る方が業界に増えるというのはCRIにとっては大きなメリットです。しかし、ゲームの開発環境はオープンにできない部分もあって、なかなか具体的に実現できずにいたので、内田様からのお話はとても嬉しかったですね。

吉岡: 学校としても実践教育を謳っているわけですが、内田様から提案いただいた際にはすぐに「やりましょう」と。ただ、こうした現場で使われているものを教育でも利用する際には機密保持や金額などハードルも少なくありません。その点、CRIさんには教育で活用するにはどうしたら良いか一緒に考えていただけたので、その点も非常に良かったと思います。

―――それでは学校向けには何かしらのカスタマイズが施されているのでしょうか?

櫻井:やはり学校向けには、ゲーム会社向けに出しているものと全く同一というわけにはいきません。かといって余りに機能制限をして実践的に使えないものになってもいけません。そこで、「サウンドデザインに関する機能は一切制限をかけない」というのを基本にして、授業では使わないと思われる機能を削ったりセキュリティを強化したりしています。「ADX2」は、サウンドデザイナーが触るようなオーサリングツール側とプログラマが触るようなランタイム側という風に分かれているのですが、今回はツール側のみの提供となっています。ランタイムと密接に絡むような深い機能も削除しました。とはいえ、いずれはランタイム側も提供して、サウンドデザイナーとプログラマが協力して、実際のゲーム開発現場と同じようなワークフローでサウンドの作成から再生までをやるような授業も実現したらよいかもしれませんね。

―――実際に導入して学生の反応はいかがでしょうか?

内田: 学生のテンションはとても高いですね。実は僕も専門学校の卒業なのですが、自分の経験としても現場に近い授業というのはとても楽しかったのを覚えています。大手メーカーから来た講師の方がいて、当時は何千万もするような汎用機を使った授業がありました。それで特別に高度な事をするわけでもないのですが、学びに対するテンションが違います。「ADX2」の授業もそれと同じで、実際のゲーム開発現場で利用されているツールを使えるというのは学生にとってはとても刺激的な時間になっているようです。

―――プロ用のツールですので、難易度が高いというようなことはないのでしょうか?

内田: それは確かに最初の懸念としてはありました。しかし「ADX2」はサウンド制作効率を高めるためのツールです。UIや使い勝手は非常に良く、学生たちが普段使っているような作曲ツールの方がハードルが高いくらいです。しかもCRIさんには非常に豊富なドキュメントや操作説明の動画を提供いただきましたので、使うのが難しいということは今のところありません。

―――具体的には授業ではどのようなことを教えているのでしょうか?

内田: 「ADX2」のサウンドオーサリングツールを使いながらゲームでの実践的なサウンドデザインを教えています。

例えば、3Dダンジョンにいて、向こうから誰かが近づいてきます。「コツ コツ コツ」という足音は距離が近づくにつれて音が変わっていくはずです。これを描くのがゲームのサウンドデザインです。1つの音を単純に鳴らすだけではゲームのサウンドにはなりません。また、ゲームでは複数の音が同時になります。その場合にどのような重ね方をすれば美しく聴こえるのか、あるいは音楽と効果音のバランスはどの程度が適当か。さらにゲーム機の同時発音数の制限や、サウンドに割り当てられるメモリの上限といった実際的な留意点もあります。「ADX2」はゲームサウンドの制作に特化しているため、こうした課題を考慮したツールとなっています。「ADX2」を導入する前の授業でも言葉で説明はしていたのですが、実際にツールを使いながら耳で体験しながら学ぶというのは理解度に天と地ほどの差があるように思います。

ゲームクリエイター専攻の学生は基本的には音楽理論を学んで、作曲ツールで音楽を作ることを学びます。しかしゲームサウンドはインタラクティブなものです。その部分は市販の作曲ツールではカバーできない分野ですので、「ADX2」という存在は大きいと思います。メーカーに所属していた頃は採用面接を行なっていたこともありますが、作曲をできる人はいても本当にゲームサウンドを理解した人というのは少ないというのが悩みでもありました。そういう意味でも「ADX2」でゲームサウンドを学んだ人を輩出するというのは大きいと思います。

―――なるほど

内田: 僕が面接官だったとして「学校でADX2を使ってました」と言われたら、かなり驚くと思いますね(笑)。非常に有り難いことにゲームサウンドを目指す学生は増えています。良い音楽を作るというのは必須条件なのですが、それにプラスしてモチベーションが高いとか、コミュニケーション能力があるとか、あるいは「ADX2」のようなツールの経験があるというのは大きな差別化になると思いますね。

―――最後に今後目指す方向性などあれば教えてください

内田: 今後も実践的な教育を推進していきたいと思っていて、その最初のステップはサウンドクリエイター専攻へのツールの導入ということでした。次はゲームプログラム専攻向けにランタイム側の提供をいただいて、サウンドデザイナーが作ったサウンドをプログラマが組み込むというところまで授業でできるのが理想だと思いますし、そうしていきたいと思います。

吉岡: バンタンとしても実践教育を進めていくというのが大きな方向性になります。各専攻ではその専門技術を学ぶというのはもちろん大事ですが、実際の現場で物が生まれるまでには色々な技術を持った人が協力することが必要です。サウンドだけではゲームは作れませんし、プログラムだけでも作れません。色々な専攻が共同で作品作りを行うような学内発表の場の拡充を行うと共に、先日参加したマイクロソフトのイマジンカップのような学校外のコンテストやイベントへの参加も積極的に進めていきたいと思っています。そのためにも業界の皆さんと更に協力関係を深めて実践教育を拡充していくつもりです。

―――どうもありがとうございました
《土本学》

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