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【DiGRA2007】『ゼビウス』遠藤雅伸氏と『ドシン』飯田和敏氏が日本のゲーム業界について大激論

デジタルゲームの国際学術会議「DiGRA2007」の最終日となった28日、「Game Development in Japan」(日本のゲーム開発)と題したシンポジウムが開催された。モデレータはIGDA日本の新清士氏で、パネリストは『ゼビウス』の遠藤雅伸氏と、『巨人のドシン』の飯田和敏氏。本セッションは直前に開催された「日本のゲーム産業史:ハードウェアとソフトウェアの出会い/アーケードゲームと家庭用ゲームの出会い」の直後に開催され、日本のゲーム開発事情や市場の特殊性について、より掘り下げた議論が展開された。

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まず初めに新氏は日本のゲーム開発事情を簡単に俯瞰した。新氏は2003年のGDCで「テレビゲームはアート&サイエンスだ」という考え方に触れ、非常に触発されたが、日本ではこうした考え方は一般的でないと説明。その背景として任天堂で数々のゲームソフトを開発した故・横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という開発哲学を紹介した。日本のテレビゲーム業界は玩具業界を母体としているが、アメリカでは大学や研究機関に遡れるため、このような考え方の違いが生まれて来るというわけだ。

横井軍平氏と「枯れた技術の水平思考」


またゲーム開発者の呼称についても、日本では「ゲームクリエイター」が一般的だが、欧米では「ゲームディベロッパー」となる。これも玩具業界と学術機関という生まれの違いに由来すると指摘した。日本ではゲームデザインをベースにゲームシステムが設計されるのに対して、欧米ではコンピュータサイエンスの一部としてゲームが設計されるため、このような認識の違いが生まれてくるというわけだ。

日本のゲームメーカーの多くは玩具を母体にしている


加えて新氏は日本のゲーム業界の特性として、仕様書を書かずに開発を進めるスタイルを上げた。この背景として、日本には終身雇用と年功序列という昭和的な価値観が90年代まで色濃く残っており、開発者の流動性が乏しかったため、企業ごとに独特の企業文化が蓄積されたためと指摘した。これは小規模のゲーム開発には適していたが、ゲーム開発が大規模化すると混乱の原因になる。そのため日本では、ニンテンドーDSやモバイル(携帯電話)ゲームなど、小規模チームのゲームに優れたモノが多いという見方を示した。

続いて飯田和敏氏が近況を語りつつ、代表作であるゲームキューブ版の『巨人のドシン』の紹介を行った。飯田氏は現在PS2で発売予定の『シーマン2〜北京原人育成キット〜』の制作を手伝っているが、自身のゲーム開発については休止中で、デジタルハリウッド大学でゲーム制作について教えながら、学生と一緒に同人ベースのゲーム開発を行っている。飯田氏は『巨人のドシン』について、ラブ巨人とヘイト巨人のどちらにもなれると説明し、ゲームシステム的には『ポピュラス』のゲーム性を『スーパーマリオブラザーズ』の操作性で体験するような内容だと述べた。

『巨人のドシン』(ゲームキューブ版)の説明


遠藤氏は『ゼビウス』『ドルアーガの塔』『ウィザードリィ』『ファミリーグランプリ』『ケルナグール』『動物番長』など、自身がゲームデザインしたり、移植や制作に関わった一連のゲームを紹介。最近では「犬夜叉」トレーディングカードゲームや、モバイルゲーム開発、ニンテンドーDSで発売された『スタイルブック』という女児向けPDA風ゲームなど、活動の幅を広げていることを示した。

遠藤氏は『ドルアーガの塔』を例に、ゲームのおもしろさは時代と共に変わると解説


また日本のゲーム市場の特性として、女性ゲーマーの比率が高い点があるとし、ゲーム&ウォッチからニンテンドーDSまでの変遷について、ヒット商品のループで市場が拡大していった経緯について解説した。ターニングポイントとなったのは1996年の『ミニテトリン』と『たまごっち』のブレイクで、女児だけでなく、中高生の女子や母親も巻き込んで、年齢層が一気に拡大した。さらに携帯電話のメール機能や、モバイルゲーム、そしてニンテンドーDSの登場で、世界でも珍しい巨大な女性ユーザー市場が形成されたという。実際、BLゲームや「ラブ&ベリー」などは、欧米では見られない、日本ならではのコンテンツだ。

(左)ゲーム&ウォッチ(1980年)(中)テトリン(1996年)(右)たまごっち(1996年)



《小野憲史》
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