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偶然の出会いが唯一無二のコンテンツを生んだ『El Shadai~エルシャダイ~』ディレクター竹安佐和記Xルシフェル役 竹内良太・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第22回

ゲームビジネス 人材

 
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人の心に残るコンテンツというのは実に多くのプロフェッショナル同士の巡り合いの中で生まれています。特にゲームのようにグラフィックデザイン、アニメーション、プログラミング、音楽など様々なコンテンツが組み合わされて生まれてくるような総合エンターテインメントならなおさらでしょう。

今回は、発売前にニコニコ動画でPVが流れるやいなや200万PVを突破し、現在その数450万PVを突破。販売数も、新興企業による現行コンソール機向け新規IPという厳しい条件ながら異例の初週約7万本を実現した『El Shaddai-エルシャダイ-』(以下、『エルシャダイ』)を取り扱いたいと思います。

同作品の中でやはり最もキャラクターが際立っているのはルシフェル。饒舌ながらも冷静、シニカルでありつつユーモラスという不思議なその性格は多くの人を魅了。ただこれも、竹内良太氏の深みのある独特の声無しにはあそこまでの魅力を感じることが出来なかったのではないでしょうか?

そこで、「太秦戦国祭り Hero & Legend」でのイベントのため、京都に来ていたディレクター竹安佐和記氏と声優、竹内良太氏の巡り合いとこれからの展望について伺いました。会期中に出展されていたCrimによる「神話構想と『El Shaddai』の世界」での出展内容と合わせてお楽しみください!

■厳しい家庭環境の中でいつかエンドクレジットに俺の名前を刻んでやりたいと誓う

竹内良太氏(以下、竹内)実は、僕は物心がついたときから母子家庭で育ってきたので、小さいときから親父を見返したいと思ってきました。そして、「どうやったら見返せるんだろう」と高校生ながら思っていたとき、テレビのスタッフロールに「竹内良太」と出ればそれが出来るのではと思ったんです。そんな中、高校の文化祭で友達に誘われて劇に出演したんですが演じることの面白さをそこで感じました。

■『バイオハザード2』をプレイしてゲーム業界を志す

竹安佐和記氏(以下、竹安)僕の場合はもともとカプコン入社からはじまるわけですが、大学を出たときから作家活動をしたいと思っていたんです。学生時代もアニメをつくっていたので、その延長線上で何かやりたいなと思ってました。ただ僕は最新のモノが好きなので、お金がかかってしまうんですよ。コンピュータ買ったりしなければいけないですし。だからクリエイティブなところだけで特化するのであれば、やはり大手の企業に属さないと環境が整わない、と自主制作をしている時に痛いほど味わってきたんです。

そんな時、友達が僕に見せてくれた『バイオハザード 2』をプレイしてあっという間にカプコンのファンになってしまい、すぐに入社試験を受けに行ったんです。で、『バイオハザード』やって、数ヵ月後には入社試験受かってました。あと小島プロダクションも受けてそれも最終面接にいったのですがカプコンのことがあったんで、断ったんです。ですが「もう一回来てほしい」と言う依頼を受けていくと、面接官が小島さんだったんです。そのとき正直に「カプコンに受かったんで、カプコンに行きたいんです」と言ったら...「あそこはいい会社だよ!」って言ってもらって、「またどっかで会えたらいいね」と最後に言っていただいたのですが、今年それがかなって2、3カ月前、小島ラジオに呼んでいただきました。小島さんはもう覚えていなかったんですが、この件を話してすごく盛り上がりました。ある意味ゲーム業界の神さまですからね。あの方は。とにかくそのようにして夢のような世界がすぐに手に入ってしまったんです。

■カプコンで受けた英才教育に作り手としての心意気を学びながらも周りのレベルの高さに絶望

竹安:ゲーム業界では本当に英才教育を受けれたなと思いました。三上真司ディレクターや神谷英樹ディレクターとお仕事を一緒に出来たんです。なんか、僕のまわりに関わったゲーム業界のひとって有名なひとしかいないんです。小林裕幸プロデューサも先輩でしたし。

ただ、入社当時は環境が良いので嬉しかったんですが、仕事をはじめてみてスタッフのレベルの高さに絶望しましたね。いまでも覚えているんですが、一度、三上さんに呼び出されて怒られたことがあったんです。その時にはっきり、「僕はそのキャパについていけるだけの能力はない」と言ったんです。ものすごいダメ人間的な発言でしたね(笑)。でもそんな僕に「じゃあ待っといてやるからはやく頑張れ」と言ってくれました。待てる会社ですからね。ただ「お前は新人で入って来たからいいけれど、中途採用だったら首だったぞ」と釘を刺されました(笑)。

当時の第四開発部は誰もが最先端の事をやっていたので、目の前に世界のトップクラスがあって、その壁の分厚さに絶望しました。周りの人たちが毎日、テレビや雑誌で見るようなクオリティのものを出すわけです。でもノウハウは教えてくれません。なぜなら、皆すぐ出来てしまからです。エリートってダメな人の気持ちって分からないじゃないですか。「何でこんなことが出来ないの?」って聞かれる位です。それがつらかったのでずっと会社に住んでいました。能力がないから時間を費やすしかないと思ったんです。

でも入社して2年目の頃、『Devil May Cry』のためにブレイドという敵キャラクターをデザインしたとき、同作品に出現するモンスターの基準値をつくることが出来たんです。その時にやっと自分に自信が持てるようになりました。ただ、1、2年後、また新たな壁にぶちあたりました。『鉄騎』です。これまでずっと世界のフラッグシップ的作品を作って来たのに、ここでいきなり「オンリーワン」を目指せと言われたんです。僕はNo.1を目指したい人間だったんで、たしかにオンリーワンはすごいけど、利益は出ないというラインに入れられて(笑)。でもその後は、数奇な運命でオンリーワンを狙うような作品にしか選ばれなくなりました。誰も僕に「既存にあるものをやれ」って言わないんですよね。新しいことしかやらせてもらえないようになったんです。
 
■洋画吹き替えの声優を目指し奮闘も報われなかった10年間

竹内:プロを目指すことを起点にすると10年はたっていたのですが、実際に声優養成所に入ってから下積みをして・・・。新人期間中に色々仕事をさせて頂きながらプロになりました。プロになっても気が抜けません。一つ一つの仕事を大切にこなしていきました。

一生懸命やってはいたんですが、『エルシャダイ』の話が来る少し前まではこの2カ月ぐらいで仕事が少なければ、もう声優をやめようかという話を自分の妻とも相談していました。それぐらい厳しい世界なんです。人間関係や運もあると思いますが声優を目指そうとしたときに、洋画の吹き替えをメインにやりたいなと思ったんです。アニメーションやゲームではなく。ですので、ゲームやアニメをきっかけにここまで皆さんに知られるようになるとは思ってもいませんでした。

これからも日々精進し、様々な作品でファンの皆様に出会えていけたら良いなと思います。

■『エルシャダイ』開発で迎えた人生最大の危機

竹安:『エルシャダイ』をディレクターとしてはじめたとき、まず大変だったのが、新しい組織だったということです。全てが??でした。ただ、旧第四開発部時代のフラッグシップのモノづくりをずっと見ていたので、あそこ(第四開発部)を目標にするという明確なゴールはありました。大変でしたが、お陰で随分タフになりました。正直、凄く病んで何度も体を壊しました。東京ゲームショウ2010の前も大変でした。前日まで3日間も寝込んでいた位です。フューチャー賞を取れなかったら開発はどうなっていたか・・・。国内初の露出で、初めて試遊台も出しましたしね。
 
■「話をしよう....」からはじまった、ルシフェル伝説

竹安:ルシフェル役の選定の際も、もし見つからなかったらどうしよう、という位に追い詰められていました。しまいには、有名人を使えと言われていた位です。でもそれは瞬間的に売れるというだけでユーザーの心には残らないんです。だからルシフェルにあった声をじっくりと探し続けました。まだタイトルが『Angelic』だった当初は声優も違っていたんです。07年に大阪でたまたま見つけた人を採用しました。ただ、最初のトレイラーが必要になってアフレコをしたのは09年でした。当時はぶっつけ本番で・・・。

竹内:そうです。ぶっつけ本番でした。トレイラーも収録日に見せてもらって、「じゃあ、これにアテればいいんですね。じゃあ、アテます。」という形ではじまったんです。

竹安:一発でいいアタりでしたよね!

竹内:最初の一言目は「話をしよう」からです(笑)。あのトレイラーの。

竹安:その瞬間、爆笑しましたよ!「おった!」って思いました。合うとか合わないとかじゃなくて、「ルシフェルがこの世にいたぞっ」て。

竹内:当時は映画の吹き替えだけでは食べて行けませんでした。だから、このお話をいただいた時も、どんな仕事でもなんでもやるぞ、という気持ちで臨んでました。そして『エルシャダイ』の台本が送られてきたとき、「大作っぽいな」と思いました。「じゃあ、めっちゃがんばらなあかんわ」と。変な気負いだったけど・・・。

竹安: 髭そって来ましたもんね!髭があったらもしかしたら撮れないかもと言ったら、そうしてくれたんです。だから最初、竹内さんだと気づきませんでした。

竹内:気合い入れてました(笑)! マネージャは、「ファイシャルも撮るので。髭それる?」と聞いてきたんです。だから、「ぜんぜんそれますよ!」と。最初はルシフェルやるとは思ってなかったんですね。私の骨格がルシフェルというキャラの骨格に似てるから呼ばれたと本当に思ってたんです。

竹安:実はあのときも3人候補がいたんです。竹内さんにしゃべっていただいたのは3番目でした。その他の2人もうまいなとは思ったんですが、ルシフェルではなかったんです。後で知ったんですが竹内さん、一時期ヤンキーだった時代もあるんですよね。その香りが残っていたんですよ。ワルの匂いが。他の人の声って低くておじさんぽかったりとか、ヒーローっぽいとか。でも、竹内さんの声ってワルなんですよ。元ワルい人ってむちゃくちゃいい人、多いじゃないですか。ルシフェルってめちゃくちゃ年寄りですからね。ルーツはそこだと思います。

竹内:確かに昔はワルい事もやったこともあります(笑)。でもそれが活きるとは思っていませんでしたね。

竹安:完全にルシフェルの魅力ってそこだと思いますよ。

竹内:それを感じてくれたからこそ、声をアテているとき「竹内さんの素の声でいい」って言ってくれたんですよね。最初は戸惑いました。「自分の素の声でいいってことはどういうことだ?」と考えてみたんですが。結局、竹安さんがくみ取ってくれたからうまくいったんでしょうね。

竹安:たしかに、ルシフェルはこれまで存在したことがない悪魔ですよね。

■これからもルシフェルという役を育てていきたい

竹内:しかし、ルシフェル役がこんなに注目されるとは思っていましせんでした。
 
竹安:タイムラグもありましたからね。

竹内:本当は、発売直前に名前が明かされるという予定だったのですが、発売前の盛り上がりから途中で発表しました。名前も知られていない状態だったので自分も戸惑いながらも反応は素直にうれしかったです。作品の内容やルシフェルに対し、応援のメッセージを頂き励みになりました。自分が売れるというよりもその作品やキャラクターを好きになってくれればという思いがあったのでそれが嬉しかったです。自分の演じたキャラクターがファンの皆様の心に残るのは声優冥利に尽きます。
 
竹安:ただ、ルシフェル版のPVは絶対に受けると確信をもっていました。僕、人生の間でこのような事が出来るのって3回位だと思っているんです。今回のルシフェルや『エルシャダイ』はその1発を使っちゃったと思います。そういう意味で、今後どう展開したらいいんだろうというのは難しいので複雑な気分ではありますね。

竹内さんとの出会いもよかったなと思います。苦労してきた人が売れてくれるのは楽しいですね。竹内さんの仕事が増えているのは本当に嬉しいです。暇だからという理由で連絡をもらうよりはずっと。

竹内:これを境に様々な仕事をさせて頂きました。

竹安:ルシフェルの役を共につくれたのは、ある意味交差点でのすれ違いの様なものであるとは思いますが、いい歴史を刻めたなとは思えます。竹内さん自身は、仕事が広がっているようですから、今後どうなるかはまた何とも言えないのですが、今後も神話構造は続きますので、ご縁があれば是非お願いしたいと思っています。

竹内:ルシフェル役を演じられたのは感謝しかないですね。ルシフェルをやることが出来たから今があるのだし、いろんな現場におじゃまさせていただくことも増えたわけですし。ですが甘えてはいけません、自身を戒めつつずっとやっていきたいと思います。交差点のタイミングでこの作品に出会えた事は嬉しいです。ここまでの道のりに感謝です。

■新生ルシフェルをどう演じる?

竹内:今回、太秦戦国祭りのシンポジウムで初めて披露されたルシフェル役ですが、だいぶ躍動感があったので驚きました。ルシフェルというのは機敏に動くというよりは、ゆっくり、焦ることなく、流れにまかせるタイプのキャラクターだったのですが、今回公開されたデザインには躍動感があるのでその様な表現を取り入れることが出来ればなと思います。あと、このシーン、ルシフェルがちょっと楽しんでいる感もありますね。この役を作りこむと言う点では、いま、ルシフェルについてファンの間で、いろんな妄想が生まれていると思うんですが、それらの妄想すらも払しょくできる新しいルシフェルというのを演じたいですね。ただ、素でいいと言われているのでベースを崩さずに、新たな側面のルシフェルに応えられるように、これからより感受性豊かに生きることが出来ればと思います。

竹安:あれは、ドヤ顔です(笑)。今までと違うことがあると言えば、ルシフェルって、ため息が多いじゃないですか。でもこのシーンでは、ため息無くなってますよ。楽しんでます。だから、よく笑ってるかもしれないですよ。

竹内:凄い違いだと思います。

竹安:上手くいけば、竹内さん演じやすいと思います。誤解が無いように言えば、『エルシャダイ』を演じていたときは、本当に大変でため息も多い演技が上手かったかもしれないですが、この時は非常に売れているときに収録が来るだろうから…

竹内:声優は裏方、職人肌の仕事だと思っているので、竹安さんの構想の支えになることが出来ればと思っています。だから、竹安さんの作品がお客さんに分かりやすく伝えられるように手助けが出来ればと思います。



先日開催された太秦戦国祭りで、アーチのような武器を持ったルシフェルのイラストが初めて公開され、より深い世界観とドラマの存在が明らかとなった『エルシャダイ』。その真髄を最初に確認出来るのは2012年4月の発売される小説からとのことですが、今回のインタビューから感じられたのは互いの能力を認め合い且つ信頼しあっているお二人の姿でした。竹安氏は妄想力が重要とのことでしたが、今回の竹内氏の反応や、新生ルシフェルに対する意気込みを感じると、それが実現出来るか否かに関わらず、竹安氏の生み出すユニークな物語展開と竹内氏のつくりあげる声との絶妙なコンビネーションを想像してしまいます。今後のお二人の更なる活躍に期待ですね。
《中村彰憲》

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