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Shoot It! - #053 OGC2008を受講して思う。「Eスポーツ漫画、Eスポーツ小説を読みたい!」

3月14日にブロードバンド推進協議会(BBA)がオンラインゲームカンファレンス(OGC2008)を開催しました。OGC2008では、オンラインゲームビジネスに関心を持つ人々を対象とした講演会が20コマほどあり、私が拝聴したのは日本Eスポーツ協会設立準備会の平方彰氏とシグナルトークの栢孝文社長の2講演。Eスポーツ協会はEスポーツに密接な関わりを持ちますが、シグナルトークの栢氏のお話しにもかなり啓発されるところがありました。

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3月14日にブロードバンド推進協議会(BBA)がオンラインゲームカンファレンス(OGC2008)を開催しました。OGC2008では、オンラインゲームビジネスに関心を持つ人々を対象とした講演会が20コマほどあり、私が拝聴したのは日本Eスポーツ協会設立準備会の平方彰氏とシグナルトークの栢孝文社長の2講演。Eスポーツ協会はEスポーツに密接な関わりを持ちますが、シグナルトークの栢氏のお話しにもかなり啓発されるところがありました。

日本Eスポーツ協会設立準備会の平方氏は電通スポーツ事業局での経験から、スポーツがコンテンツとして成功するには「スーパースター」と「ナショナリズム」が必要だと語りました。ここでいうナショナリズムはいわゆる国粋主義ではなく、お国びいきという意味です。サッカーのワールドカップで青いユニフォームを着て応援したり、大リーグで活躍する日本人のニュースに一喜一憂したりする心境ですね。

そのナショナリズムを高揚させるためにはスーパースターが必要です。ゴルフを知らない人でも宮里藍選手は知っていたり、大リーグのイチロー選手の活躍は職場や学校、家庭で誰にでも通じる話題のひとつです。「日本人選手が世界で活躍すると何となく嬉しい」、これもナショナリズムです。

Eスポーツの世界にもスーパースターは存在します。韓国ではイム・ヨハン選手。彼は今、兵役で韓国空軍に入隊しています。しかし、韓国空軍はEスポーツチームを結成し、イム・ヨハン選手はゲームリーグに復活しました。イム・ヨハン選手の入隊によって韓国Eスポーツ界がスターを失い、ゲーム産業が停滞することを懸念した政府のはからいだったと言われています。米国では世界初のプロゲーマーとなったフェイタリティことジョナサン・ウィンデル選手。彼の知名度は世界のFPSゲーマーに浸透しており、彼の出場する大会こそ一流であると認知されています。スポンサー契約も多く、フェイタリティブランドのPC関連製品も発売されています。彼の年収は1億円以上とのことです。

日本のEスポーツ選手にスーパースターはいるでしょうか。個人的にはスターだと思う選手が何人もいます。古くはWCG2002で日本初の金メダルを獲得したHALEN選手、2005年のWCGで金メダルを取った活忍犬選手、現在、スウェーデンにEスポーツ留学しているnoppo選手やサドンアタックの公認インストラクターとなったKENNY選手。最近はENZA選手に注目しています。ENZA選手はKENNY選手やNOPPO選手も所属していたチーム、4dNのメンバーでした。4dNは積極的に海外の大会に参加していましたが活動を停止。その後のメンバーは独自の道を歩んでいます。ENZA選手はその後、RTSの大会にしばしば出場していましたが、台湾のメモリーメーカーGAILと契約し、国際大会『KODE5 2007』の日本代表になりました。最近、彼は国際チーム「Clan Apoc」に加入しています。

彼ら以外にもEスポーツ選手として実力を認められている日本人がいます。しかし、残念ながらEスポーツの社会認知度の低さもあって、スーパースターには届きません。日本のEスポーツ界は残念ながらスーパースター不在という状況です。これでは、日本人のナショナリズムを刺激できません。Eスポーツのビジネスコンテンツ化は難しそうです。

では、どうしたらEスポーツがビジネスコンテンツへと昇華できるでしょうか。そのヒントが、シグナルトークの栢氏の講演にありました。栢氏の講演のテーマはシグナルトーク社が開発した「ストーリーツリー」というゲームから、Web2.0をヒントにしたユーザー参加の創造型コンテンツを紹介するという内容でした。あるドラマの続きについて、参加者が続編の小説を書き続けます。読者はその内容を評価していきます。その結果、分岐するストーリーについて、もっとも評価の高い話を選択していくと満足度の高い物語が完結します。栢氏はこの仕組みについてWeb2.0の進化型と紹介しました。Web2.0とは、ユーザーが参加するコンテンツです。ユーザーによってコンテンツが増え、多様化して魅力も増加します。そこへ新たな要素として"評価"する人を組み込むと、コンテンツが洗練されて完成度が高くなります。つまり、システムを作る人、コンテンツを作る人以外の第三者が客観的に評価することで、初めて物語に参加する人に面白さが解りやすくなります。

ユーザーが価値の順位付けなど評価を行うとシステムが洗練される


振り返ってみると、Eスポーツにはこの"評価する人"がいません。Eスポーツの選手や試合を情報の発信元だとすると、Eスポーツの観客は受信者。しかし、観客もEスポーツ選手として試合に参加し、イベントを盛り上げられるから、Web2.0のような図式が書けそうです。しかし、その両者を客観的に評価し「Eスポーツがおもしろい!」と伝えてくれる人がいません。いや、もしかしたら私のように、ゲーム雑誌やWebサイトのライターがその役目を担うべきかもしれません。しかし、そのメディアがゲームファン、Eスポーツファン向けである限りは、観客向けのツール制作者の域を出ないような気がします。

では、従来のスポーツには"評価者"が居たのでしょうか。自身はスポーツのプレイヤーでもなければ観客でもない。スポーツの面白さを客観的に評価し、そのスポーツを知らない人にとってのガイド役になる存在です。実はたくさんいます。漫画家、小説家、映画監督などのアーチストです。例えば漫画家の高橋陽一氏。彼はサッカー選手ではありません。サッカーファンとして観戦を楽しんでいることでしょうけれど、本来の仕事はサッカー業界ではなく漫画家です。漫画家としてサッカーの面白さを再評価し、サッカーの面白さを広めたい、主人公の友情や挑戦、挫折などを通じて様々なメッセージを込めて「キャプテン翼」を作ったはず。小説家の東野圭吾氏はデビュー作「放課後」でアーチェリー部を登場させましたが、文庫版の後書きによると彼自身がアーチェリー部に所属したことがあり、アーチェリーというマイナースポーツを広めたかったそうです。

スポーツは様々な創作メディアに登場しています。「キャプテン翼」がサッカーを広めたように、それまでマイナーだったスポーツが、物語性のある作品によって注目されて社会に認知されたという事例はいくらでも見つけられます。しかし、Eスポーツはまだ題材になっていません。評価者としての作家に面白さを認知してもらう。そして誰もが楽しめる物語になって、より多くの人々に親しまれる。そんな働きかけが必要だと思います。日本のEスポーツに「スーパースター」が存在しない今、架空のスターを創り出し、リアルなスタープレイヤーの代役を務めていただく、というアイデアはいかがでしょうか。漫画家や作家のかたがたが、Eスポーツという題材の面白さに気付いて頂けることを期待します。また、Eスポーツ経験者によって漫画や小説、映画が作られる事例があっても良いと思います。未来の作家のみなさんも、ぜひEスポーツに注目してください。

このシステムはリアルスポーツと文化作品の間では成立していた
《杉山淳一》
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