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【GDC08】EAのウィル・ライト氏が関係者限定イベントで「ゲームデザイン哲学」について講演

米サンフランシスコで開催されたGDC期間中、EAは会場内のセッションに加えて、会場の外でも幾つかのイベントを主催しました。そのうちの一つが、21日(現地時間)に開催された「ウィル・ライトとの夕べ」です。業界関係者とプレスを招待し、クラブを貸し切って開催されたトークライブ&パーティで、ウィル・ライトは自分のゲームデザイン哲学について持ち前の万華鏡のような展開で語り、会場を爆笑の渦に巻き込みました。

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米サンフランシスコで開催されたGDC期間中、EAは会場内のセッションに加えて、会場の外でも幾つかのイベントを主催しました。そのうちの一つが、21日(現地時間)に開催された「ウィル・ライトとの夕べ」です。業界関係者とプレスを招待し、クラブを貸し切って開催されたトークライブ&パーティで、ウィル・ライトは自分のゲームデザイン哲学について持ち前の万華鏡のような展開で語り、会場を爆笑の渦に巻き込みました。

GDC名物「ライト節」全開で講演するウィル・ライト氏


ウィル・ライトの講演は多彩なスライドと、ユーモアあふれる語り口、そして鋭い考察力で、GDC名物の一つとなっています。特に2005年のGDCで披露された「Spore」のプレゼンテーションは、過去のGDCの全セッションの中でも異色の出来でした。しかし「Spore」の開発の遅れからか、昨年はセッションが行われず、参加者をやきもきさせたものでした。これが限定された形とはいえ、今年は復活したことで、「ライト節」を心待ちにしていた、少なくないファンの飢えを満足させたと言えるでしょう。

しかしライト氏の講演は、話題がフライパンで火にあぶられたポップコーンのようにはね回り、その場は楽しいのですが、終わった後で何が言いたかったのかよく分からないことも少なくありません。誤解を恐れずに言えば、ライト氏の講演は90%が冗談と無駄話でできており、ゲームデザインを扱った漫談だとさえ言えるでしょう(ビバ! エンターテイナー)。または一つのテーマをありとあらゆる角度から、少しずつ角度を変えてリフレインし、聴衆のボルテージを高めていく、クラシックの名曲のようだと言えるかもしれません。

というわけで、本記事では講演の中でも中心となったに違いないテーマ「世界とストーリーの関係性」について、象徴的なスライドをもとに読み解いてレポートします。この手のテーマは最初か最後に登場すると相場が決まっているので、ラストに近いスライドを紹介しましょう。もっとも、これは筆者の読みとり方なので、あしからず。

このスライドではストーリーが解体され、プレイ(消費)され、それを元に再構成され、そして新たなストーリーが再構成されるという、ゲームシステムとストーリーの典型的なループ構造が示されています。これはまた原作のストーリーがギミックに解体され、遊びとなり、それが組み合わさってゲームが作られ、それがプレイされてユーザーごとにストーリー体験が生まれる、デザインプロセスとも言い換えられるでしょう。

ゲームとストーリー体験のループ構造。ループ構造は多数が集まり、現実世界に影響を及ぼす


さらに、こうしたフィードバックループを持つコンテンツは、個々のゲームだけに留まらず、映画や玩具など多種多様です。私たちの生活は、これらのコンテンツが生み出す体験に取り囲まれています。そしてこれらが現実世界にさまざまな形で影響を与えていきます。ゲームをプレイした感想をブログに書き込んだり、コスプレをしたりといった行為は、その一つかもしれません。これは氏の代表作「シムシティ」や「シムピープル」をはじめ、多くの優れたゲームに共通して見られる構図です。

たとえばコスプレなんかもその一つだったりして?


一方で現実世界の反対にあるのが、ゲームや映画などの仮想世界です。まず世界があり、それを何らかの形でシステム化することで、ユーザーは世界を消費することができ、プレイ体験を得ることができます。ライト氏は2004年からABCアメリカで放映されており、大ヒット中のテレビドラマ「LOST」を例にとり、ゲームと同じように細心の注意を払って構成されている様を示しました。「LOST」は島での生活というメインのストーリーラインの随所に、登場人物の過去のエピソードが挿入されていく「多様性展開」が特徴です。

テレビドラマ「LOST」のストーリー構造


またライト氏は明言しませんでしたが、9月第2週に全世界で発売が決定した最新作「Spore」もまた、細胞分裂から宇宙探検までの壮大な生物の進化を描いたシミュレーションゲームで、過去のタイトルの総決算とも言うべき内容です。このゲームから「世界」と「ストーリー」の関係性を連想することは容易でしょう。「プレイヤーの数だけストーリーが生まれる」なんて、この手のゲームを形容する常套句ですよね。

そしてポイントは、こうして生み出された各コンテンツをブランド化するにはどうしたらいいか……つまり「Sporeとブランド化」という話に繋がっていきます。仮想世界でのプレイ体験が現実世界に与える影響の中でも、最も「ゲームビジネス」と関係が深いのがブランド戦略だからです。海の物とも山の物ともつかなかった「シムシティ」の第一作目と異なり、「Spore」は当初からブランド展開を明確に狙っているようです。数々の追加パックなどの販売を考えれば、それも当然でしょう。またWii版・DS版とコンソール版の発売がすでに決まっていることも、ブランド戦略の一端を覗かせます。

では、そのブランド戦略とは何か……というところで、残念ながら今回のセッションは時間切れとなりました。ちなみにライト氏は、ここまでの講演の中で何度も「ゴジラ」や「007」シリーズなどを例に、おもしろおかしくブランド戦略について語っています。

ライト氏によると「ゴジラ」シリーズは、第一作は破壊の帝王だったのが、シリーズが続くたびに正義の味方になっていき、大衆化していったのが、1984年の新「ゴジラ」で再び悪役に戻った経緯をあげ、ゲームと反対だと皮肉っています。多くのゲームは続編のたびに複雑になり、ハードコア向けになるからです。「シムシティ」も同様で、初代・2000・3000・4と複雑になっていったものが、最新作「ソサエティーズ」でカジュアル路線に切り替わったのですが、従来のファンからは賛否両論なのだとか。もっともゴジラの大衆化の是非には、異論を唱える映画ファンが多いかもしれませんが。

(左)ゴジラはどんどん大衆化が進み、1984年に元に戻された、(右)シムシティシリーズはどんどんマニアックになり、5作目で戻したが賛否両論


さらに「世界」の例では、「LOST」と「宝島」の「島」が非常に似通ったデザインになっていることや、「ピーターパン」のネバーランド、「オズの魔法使い」の「オズの国」、さらにはアニメーションから現実世界に飛び出したディズニーランドなどを次々にあげていきます。また別の話の際に交えて「世界」そのものをレゴを使えばユーザーが自分で作り上げられたり、映画「スター・ウォーズ」が「レゴ スター・ウォーズ」になったり、「007」シリーズの悪役が巨大な秘密基地を持ちたがったりと、話が次々に展開していきます。このあたりが「万華鏡」または「漫談」の真骨頂というところでしょうか。

(左)「LOST」の島。ちなみに撮影はハワイ・ホノルル近郊で行われたとか(中)小説「宝島」の舞台となる宝島。「LOST」とよく似ている(右)ピーターパンが住む「ネヴァーランド」


(左)「オズの魔法使い」の舞台となる「オズの国」(中)ォルト・ディズニーはストーリーと世界の関係を良く理解していた(右)ディズニーランドの初期の構想図


(左)レゴで人々は自分の好む世界を作り上げられる(中)そして「スター・ウォーズ」もまたレゴで再構成された(右)007の悪役は秘密基地を持ちたがる(「007は二度死ぬ」のスペクター基地)


というわけで、非常にピンポイントかつ面白みのないレポートではありますが、ユーザーとしては、できるだけ早い「Spore」の完成を待つのみ、というのが本音でしょう。昨今の大規模開発においては、しばしば「おもしろい(=不要なストレスのない)ゲームを作るのは当然で、その上で『売るための仕組み』が求められている」などと言われています。これが「いきなり三部作」や、マルチプラットフォーム展開などの遠因にもなっているのですが、「Spore」においては、まずはウィル・ライト御大がもたらす「新しいプレイ体験」に期待したいところです。

講演の後には聴衆から質問タイムも設けられた。左側はEAのニール・ヤング氏
《小野憲史》
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