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Shoot it! - #039 進化する液晶ディスプレイ『LCD-MF241X』のゲームモードを試す

アイ・オー・データ機器は『LCD-MF241X』を発売しました。この24インチワイド液晶ディスプレイは液晶応答速度6ms、最大1920×1200ドットのフルHD表示ができます。

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テストの様子。右がLCD-MF241XBR
  • テストの様子。右がLCD-MF241XBR
アイ・オー・データ機器は『LCD-MF241X』を発売しました。この24インチワイド液晶ディスプレイは液晶応答速度6ms、最大1920×1200ドットのフルHD表示ができます。

PC入力2系統、HDMI入力2系統、S-ビデオ端子、AV端子、D5入力端子など備えて、PCモニタだけではなくAVモニターとしても使えます。手持ちのテレビゲーム機をすべて繋げるという意味でもゲームファンにオススメの製品です。『LCD-MF241X』は豊富な機能や画像モードを搭載していますが、Eスポーツプレイヤーがもっとも注目すべき機能はドットバイドット表示とゲームモードです。そこで今回はこのふたつに絞って検証しました。



テストの様子。右がLCD-MF241XBR



検証に使うソフトはWindows版の鉄道をテーマとした経営RTS(リアルタイムシミュレーションゲーム)『シド・マイヤー レイルロード!』です。選択の理由は単純で、私がいまもっとも遊んでいるゲームだから。Eスポーツの観点からすればFPS(一人称視点射撃ゲーム)を検証すべきですが、これは後ほど専門家に試して頂きます。

ドットバイドット表示は入力した解像度をそのまま表示する機能です。つまり、1024×768ドットの画面をドットバイドット表示させた場合、液晶パネルの1920×1200ドットの表示エリアのうち、中央の1024×768ドットだけ表示させて、周囲は黒いままになります。画像を引き延ばさないため、ゲーム本来の映像を楽しめるというわけです。

まず始めに1024×768ドット、ドットバイドット表示をオフ、つまりフル画面表示で遊んでみました。視野が広がり迫力があります。この画面を見れば、ワイドモニタを買ってよかった! と思うことでしょう。次にドットバイドット表示に切り替えます。画面が小さくなりますが、風景がクッキリします。これが元の映像の姿なのでしょう。ゲーム画面全体をひと目で見渡せるので、長時間遊んでも疲れにくいと思います。

『シド・マイヤー レイルロード!』はワイド画面対応の1600×1200ドットも選択できます。この解像度ならドットバイドット機能をオンにしてもワイドな画面を楽しめます。このゲームには現在の資金、ライバルの資産状況、ミニマップ、輸送需給を示すリストなどのサブウィンドウがあるのですが、ワイド画面になったことでこれらのサブウインドウが隅に寄ったため、メインの映像が広々と見渡しやすくなりました。このように複数のサブウインドウを開くRTSやMMORPGとワイド液晶はとても相性が良いと思います。小さなキャラクターたちの動きが大きくはっきり表示されて、ゲームが楽しくなりました。

一方のゲームモードはゲーム映像の遅延問題を解決するモードです。液晶モニターは映像信号を高画質回路で処理して美しい画像を表示しますが、その処理によって映像の表示に若干の遅延が起こり、映し出される映像は実は「ちょっとだけ過去の映像」なのです。射撃ゲームの場合はこの僅かな遅延のおかげで命中率が下がったり、移動のタイミングがずれたりします。ゲームモードは遅延を解消するために、高画質モードの処理をキャンセルします。さっそくゲームモードのオン/オフを試しましたが、RTSではミリセカンド単位でタイミングが重要になる場面が少ないので、私には違いがわかりませんでした。

そこで、ゲームモードについてはFPSの達人に試してもらうことにしました。KeNNy選手とNoppo選手です。ふたりともFPSのカウンターストライクの選手で、2006年のWCG(ワールドサイバーゲームズ)日本代表でした。KeNNy選手は画面表示のタイミングが重要な音ゲーの達人でもあり、O2Jamというゲームでも日本代表になっています。Noppo選手はプロゲーマーを目指してスウェーデンに留学することが決まっており、出発の2日前にもかかわらずテストに参加してくれました。

さっそくふたりにゲームモードのオン/オフ、ドットバイドット表示オン/オフの組み合わせで『カウンターストライク』をプレイしていただきましたが、感想はとても厳しい結果でした。「残像が気になります」「ゲームモードのオン/オフの差がありません」。リフレッシュレートの変更など、さまざまな環境を試しましたが、印象は変わらないようです。最新のゲーマー用液晶ディスプレイですが、残念ながらEスポーツ選手のレベルには追いつけなかったようです。

もっとも、彼らはふだんCRTモニターしか使いません。したがって比較対象はCRTモニタの性能になります。液晶ディスプレイの反応速度がCRTと同等レベルに追いついていない現状では、「残像が気になる」という答えは当然といえるでしょう。ちなみに私の感覚では残像の差もわかりませんでした。それが普通だろうと信じたいです。

誤解の無いように書き添えますが、LCD-MF241Xがプロゲーマーに不適だ、ということではありません。KeNNy選手は遅延や残像の影響が出やすい音ゲーの『DJMAX』をLCD-MF241Xでプレイしましたが、ミスタイプゼロでクリアしています。KeNNy選手もNoppo選手も、「CRTに比べて残像が出る」、「ゲームモードの差が無い」と言いましたが、ゲーマー用液晶ディスプレイとして「ダメ」とは言っていないことに注意する必要があります。

また、ドットバイドット表示については良い評価でした。「Eスポーツにとって画面が大きければ良い、ということはありません。試合会場の画面サイズに近いほうが練習になりますし、小さい画面のほうが視線の移動が少なくて戦いやすくなります」とのことでした。LCD-MF241Xはドットバイドット表示で画面サイズを選択できます。これはふたりとも良い機能だと認めました。

しかし「ゲームモードのオン/オフの差がない」という回答には驚き、困りました。実は私はLCD-MF241Xのゲームモードというアイデアを高く評価していました。これならEスポーツ選手も納得し、液晶も良くなったと評価してもらえそうでした。だからこそ私は自信を持って、彼らEスポーツ選手に試してもらおうと考えたわけです。私はEスポーツライターとして、彼らの感性を信頼しています。しかし一方で、アイ・オー・データ機器がゲーマーに向けて開発の努力を続けていることも知っています。

この矛盾に悩み、私はアイ・オー・データ機器の液晶開発部応用製品開発課の太田和宏氏にありのままをお伝えし、ご意見を伺いました。太田氏は「実は想定していた回答でもありました」として、開発者としての意見を聞かせてくださいました。

太田氏によると、LCD-MF241Xは「ドットバイドット表示時の遅延回避にこだわり、きれいな画質を保ちつつも遅延を防止するという難しい問題に挑戦した」そうです。遅延の原因が高画質回路にあるということは、画質が良くなるほど遅延は大きくなり、遅延をゼロに近づけるほど画質を若干犠牲にしなければならなくなるわけですね。
実は、画質よりも遅延を優先するタイプのゲームモードは他社から製品化されており、市場からはあまり評価されていないというリサーチ結果があるそうです。

アイ・オー・データ機器としては画質をないがしろにはできなかった。つまり、遅延解決も画質も大切、という製品作りになりました。これが現在のゲーム用モニター市場のニーズだそうです。つまり、LCD-MF241Xはゲーマー用の液晶ディスプレイであるけれども、残念ながら「画質よりも遅延解消を優先する」プロゲーマー用ではないというわけです。

また、液晶ディスプレイモニタの高画質回路は、主にコンポジット、S端子、D端子のアナログ信号に対して強く作用する仕組みになっているそうです。そのため、テレビゲーム機ではゲームモードのオン/オフの差が大きく、デジタル信号で入力されるPCゲームについては差が小さいことも事実だとのことでした。

ちなみに、LCD-MF241Xは「ロボット系アクションゲーマーをメインターゲットとしてゲームモードを開発しました。大会にも頻繁に出るコアゲーマーのモニタリングやテストも実施しましたが、ゲームモードON/OFFを高い確率で当てたそうです。なるほど、それならKeNNy選手やNoppo選手の感性も証明されたといえそうです。

実は比較対象として、私が仕事用として使っているPC専用19インチモニタ(20ms)も試していただきましたが、KeNNy選手もNoppo選手も「画質はLCD-MF241Xのほうがずっと良い」という評価でした。残像や遅延については「PC用19インチのほうがいいかもしれない」という評価でしたが、PC専用モニタは高画質回路が簡素で、残像に関してはむしろ反応速度の遅れが残像自体を減らしている可能性もあります。液晶シャッターと残像については、数値では一元的に関連付けられない要素もあるのではないかと思います。

太田氏からは次のようなメッセージもいただきました。

「私たちはプロからの「ゲームモードON/OFFの差が無い」と言う意見を無視できません。今後の対応としては『フル表示でのゲームモード』もしくはそれ以外でのさらなる遅延防止方法を見出し『システムアップ機能』で機能拡充を検討しています」

とのことです。

実はLCD-MF241Xにはシステムアップ機能があります。モデムやマザーボードのファームウェアアップデート機能のように、PCとLCD-MF241XをUSBケーブルで接続し、LCD-MF241Xに内蔵されたフラッシュメモリ上のファームウェアを書き換えることで新しい機能を追加できます。Eスポーツ選手だけではなく、ユーザーからの意見を積極的に取り入れて、市場が望む液晶ディスプレイモニタを作っていく。そんなアイ・オー・データ機器のモノ作りが、きっと世界に通じるEスポーツ製品を作り出してくれることでしょう。今後のアップデート情報が楽しみです。
《杉山淳一》
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